超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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例によって長くなったので分割。

追記:って気が付いたらUA20,000超えとったー!?


第30話 ターゲットはノワール part1

 夜のラステイション教会。

 

 ノワールは執務室の鍵を厳重に閉め、さらに通信機の電源を切る。

 これで誰も執務室に入ることができないだけでなく、アイアンハイドも通信してくることはできない。

 鼻歌を歌いながら踊るように歩き、姿見の前で止まる。

 

「やっと始められるわ♪」

 

 そう独り言を言うと、服を脱ぎ始める。

 

 いったい、何が始まるのか?

 

  *  *  *

 

 アイツクルマウンテンの戦いからしばらくして。

 ディセプティコンが不気味に沈黙を保っている今日このごろのこと。

 

「おおっと! 危ない、間一髪!」

 

 ネプテューヌは相変わらず、ゲームにいそしんでいた。

 オプティマスの影響で前より仕事するようになったネプテューヌはであるが、それで他の女神と同じ水準に達しているかと言うと、そうではない。

 極端な話、0が1になったからと言って、10には及ばないのである。

 つまり、相変わらずグータラ遊び呆けているのであった。

 

「ぴぃ、たいくつ! あそんで!」

 

 そこへ、金髪碧眼の5~6歳くらいの女の子が声をかける。

 ピクニックの最中に突然現れた、あの女の子ピーシェだ。

 しかし、ネプテューヌはゲーム画面から目を逸らさない。

 

「ねーぷーてーぬー!」

 

「だからぴーこ、何度も言ってるでしょ! ねぷてぬじゃなくてネプテューヌ!」

 

「ねぷてぬ、ねぷてぬ!!」

 

 ピーシェの呼びかけよりもゲームを優先するネプテューヌに、ピーシェは頬を膨らませる。

そして。

 

「てい!」

 

 ゲーム画面がいきなり消えた。

 

「ちょっとぉ! いきなり電源抜いちゃダメだってば!」

 

 ネプテューヌはコードを確かめるが、ゲーム機の電源はコンセントに刺さったままだ。

 

「あれ?」

 

 不信に思ってピーシェのほうを見ると、彼女は千切れたコード片手に笑っていた。

 ネプテューヌが慌てて確認すると、ゲーム機のコードが根本から千切れている。

 これはもう修復できそうにない。

 

「ねぷてぬ! あそんで!」

 

 そして、ピーシェはネプテューヌに飛びかかった。

 いやそんな生易しいものではない。

 角度、速度ともに十分であり、全体重を乗せたタックルだ。

 

「ねぷぅおおお!」

 

 それを腹で受けて悲鳴を上げるネプテューヌ。

 へたすると、いろいろリバースしかねない強烈な一撃だった。

 

 じゃれ合う(?)二人を見て、紅茶を飲むコンパは微笑んだ。

 

「ねぷねぷ、すっかり仲良しさんですね」

 

「というか、完全に翻弄されてるわね」

 

 一方隣に座るアイエフは少し呆れていた。

 

『まあ、仲が良いのはいいことだ』

 

 そのそばに投射された立体映像のオプティマスは少し重々しい声をだす。

 

「おい、ピーシェ! 踏むな、踏むなって!!」

 

 一方、ピーシェにくっ付いてきた小ディセプティコン、ホィーリーは今、その足元で右往左往している。

 無害だろうという判断に加え、ピーシェがペットのような感覚で気に入っているためこの場に入ることを許可されたのだ。

 もちろん、何かしたら分かってるなと含んだうえで、だが。

 

『だが、ディセプティコンが見張っていたからには何かあるかも知れない。気をつけておこう』

 

 厳かにオプティマスが言うと、一同は同意を示す。

 

「ピィパーンチ!!」

 

「ねぷぅううう!?」

 

 その後ろでは、ピーシェがネプテューヌに速さ、角度ともに完璧なうえに捻りまで加えたアッパーカットをクリティカルヒットさせている。

 

「青の縞か。色気ねえな」

 

 そして吹っ飛ぶネプテューヌを見てホィーリーがしたり顔で言うのだった。

 

  *  *  *

 

 プラネタワー、テラス。

 そこでは今まさに百合の花が咲き乱れていた。

 

「うふふ、どうです? ネプギアちゃん。柔らかいでしょう?」

 

「はい、ベールさん」

 

 なぜか置かれた長椅子の上で、ネプギアとベールが寄り添っていた。

 ベールの豊満な胸に、ネプギアが抱かれている形だ。

 その柔らかさはまさに夢見心地、すごく気持ちよさそうである。

 

「いいんですのよ、お姉ちゃんって呼んでくれても……」

 

「でも、私のお姉ちゃんは……」

 

 慈母のような顔でとんでもないことを言い出すベール。

 その誘惑の前にネプギアは屈しそうに……

 

「ああもう、なんかベールさんがお姉ちゃんでいいかも」

 

 屈した。

 

「そうでしょう?」

 

 二人は仲睦まじげに抱き合う。

 ネプギアよ、前章での活躍っぷりはどこへ行った。

 

「ベール様……」

 

 その長椅子の隣では、アリスが心底冷たい三白眼でベールを見ていた。

 反対側には立体映像のジャズが嘆息している。

 

「こっちはこんなことになってるし……」

 

「リリィランクが爆上げですぅ……」

 

 それを見たアイエフとコンパが苦笑する。

 

『ふむ、姉妹愛、いや同性愛かな? これを医学的見地から言うとフェロモンが……』

 

『あなたはちょっと黙ってなさいな』

 

 平常運転のラチェットに、アーシーがツッコミを入れる。

 何が何でもフェロモンネタにつなげたいらしい。

 

「こらぁ、ベール!」

 

 そこにネプテューヌがテラスに出て来た。

 

「家の妹に、何してくれとんじゃあ!!」

 

 妹を誘惑するベールに、ネプテューヌは怒り心頭だ。

 

「お姉ちゃん!?」

 

 その様子にネプギアは慌てる。

 だが、ベールはネプギアの頭を胸に抱きかかえる。

 するとネプギアは恍惚とした表情でその胸に溺れるのだった。

 

「いいじゃありませんの。たまに親睦を深めるぐらい」

 

「って! ここんとこ毎日じゃない! ネプギアはわたしの妹なんだからね!!」

 

 怒りの冷めないネプテューヌにもベールは余裕を崩さない。

 

「すみませんすみません! よく言って聞かせますから!! ほら、ベール様も謝ってください!」

 

 隣のアリスが必死に頭を下げる。

 しかし何を考えたのやらベールはアリスに向かって微笑んだ。

 

「よろしかったら、アリスちゃんもこっちに来ませんこと?」

 

「は!? い、行きません!」

 

 困惑するアリスは顔を赤くした。

 あの百合フィールドに突入する勇気はないらしい

 

「あら、残念。右にネプギアちゃん、左にアリスちゃんなんて素敵なシチュエーションでしたのに……」

 

『ベール、ふざけるのはそれくらいにして、そろそろ本題に……』

 

 マイペースなベールに、ジャズが話を促す。

 頷いたベールはようやくここに来た理由を話始めた。

 

「実は、あなたを誘いに来たんですのよ、ネプテューヌ」

 

「ええ! わたしも攻略対象!? 姉妹ドンぶりなの!?」

 

 ベールの言葉にネプテューヌは身をクネらせる。

 

「やっぱり、色気がねえなあ……」

 

 いつのまにかテラスに出ていたホィーリーが、呆れたように呟く。

 

「違いますわよ」

 

 そしてベールはクネクネと動くネプテューヌにバッサリと言ってのけた。

 

「ブランから連絡が行ってますわよね?」

 

「あれ? そうだっけ?」

 

 首を傾げるネプテューヌ。

 その疑問には、立体映像のオプティマスが答えた。

 

『確か、GDCについて話があるからラステイションの教会まで来てほしい、ということだったな』

 

  *  *  *

 

 GDC、正式名称Gamindustri Defence Commandとは、ズーネ地区での反省とショックウェーブの復活によるディセプティコンの戦力増強を見越して、四ヵ国合同で結成されることとなった対ディセプティコン特殊部隊のことである。

 オートボットの技術を使った装備で武装し、各国から集った志願者、もしくは推薦された者を中心に構成される予定だ。

 アイエフも戦闘員として、またコンパも医療員として参加することになっている。

 

  *  *  *

 

 そして、ここがラステイション教会。

 ここにラステイションとルウィーの女神と妹たちが集っていた。

 執務室のテラスで、耳の長くなぜかズボンを履いた小動物が駆けている。それをユニが抱き上げた。

 

「どう? 耳長バンディクートのクラたんよ! 最近飼い始めたの!」

 

 それを見たロムとラムは目を輝かせた。

 

「かわいい……!」

 

「抱っこさせて、させてー!」

 

 妹たちは無邪気に笑い合う。

 一方姉たちは真面目な話をしていた。

 

「それで? いったい何の話なのよ?」

 

 ノワールが呼び出した張本人、ブランに問う。

 

「GDCのネットワークセキュリティは、ラステイションの担当だったわね。そのことよ」

 

 それにブランが答えると、ノワールは得意げな笑みを浮かべた。

 

「ええ、なんといってもウチのセキュリティは世界一ですもの!」

 

『だが、どうやら問題があったらしいな』

 

 二人のそばに通信装置が飛んできて、アイアンハイドの立体映像を投射する。

 黒いオートボットの言葉に、ブランは頷く。

 

「ラステイションのサーバーから、GDCのコンピューターにハッキングされた形跡がある。武器の製造データが盗まれた可能性があるわ」

 

 静かな言葉に、ノワールは驚愕した。

 

「はぃい!? 有り得ないわ! あのセキュリティはオートボットの技術でアップグレードしてるのよ! 破られるのは空から人が落ちてきて当たっちゃうくらいの確立よ!」

 

『そうとも言い切れねえ。ディセプティコンにはサウンドウェーブがいるからな』

 

 捲し立てるノワールをアイアンハイドが冷静に諭す。

 

「サウンドウェーブ…… ズーネ地区やアイツクルマウンテンでメガトロンの横にいた奴ね」

 

 ブランが記憶を辿るように言った。

 

『そうだ。メガトロンの懐刀で、スパイマスター。情報参謀と呼ばれてるハッキングのスペシャリスト。俺たちオートボットの機密情報をいくつも盗み出した奴だ』

 

 そうだった。敵はディセプティコンなのだ。こちらの半端な想定や常識など軽々と超えていく奴らだ。

アイアンハイドの忠言に、ノワールは同意する。

 

「じゃあ、今回のことも?」

 

『そこまでは分からん。だが警戒するに越したことはないと思う』

 

 女神たちは顔を見合わせ頷き合う。

 

 その時である!

 

「ねぷぅううう!! どいてどいてどいてぇえええ!!」

 

 空から声が聞こえてきたかと思うと、空から人が落ちてくるではないか。

 それは間違いなく、プラネテューヌの女神、ネプテューヌだ。

 

「のわぁああああ!?」

 

 そして、その落ちる先はノワールの頭上。

 二人は轟音を立てて衝突した。

 土煙を立てて落下した紫の女神に、その場にいた一同は呆気に取られる。

 

「いやー、助かったー」

 

 特に怪我もなく立ち上がり呑気に声を出すネプテューヌ。

 その下ではノワールが目を回していた。

 

 さらに。

 

「ほわぁああああ!!」

 

 少し離れた場所、オートボットのラステイション支部である赤レンガ倉庫の辺りに、オートボット総司令官オプティマス・プライムが落下していった。

 

  *  *  *

 

「まったく……」

 

 自分の執務室で、ノワールは不機嫌な声を出した。

 この場に、四女神と女神候補生、そして立体映像のオートボットたちが集まっていた。

 アリスは、『休暇』に入るためにプラネテューヌで一同と別れた。

 

「いきなり人の上に落ちてくるなんて、非常識にもほどがあるわよ!」

 

「ごめんごめーん!」

 

 ネプテューヌは悪びれずに謝る。

 実は最近の女神たちは国家間を移動するさい、オートボットといっしょに輸送機を使うことが多いのだが、なんとその輸送機の後部ハッチが勝手に開いてしまい、ネプテューヌとビークルモードだったオプティマスが落ちてしまったのだ。

 これについては、単にその輸送機の整備が終わってなかったのをネプテューヌが無理を押して発進させたのである。

 

『う~む、素直にネプテューヌたちだけで先に行ってもらい、我々は整備が終わるのを待っていればよかったな』

 

 立体映像のオプティマスが唸る。

 その言葉のとおり、当初はオートボットたちは輸送機の整備が終わってからラステイションを訪れる予定だったのだが、ネプテューヌがみんないっしょがいいと言い出したためにこうなった。

 

「まあ、結果オーライってことで!」

 

「全然オーライじゃないわよ!!」

 

 反省の色が見えないネプテューヌに、ノワールが怒鳴る。当然だ。

 

「すいません……」

 

 姉に代わってネプギアが謝る。

 

「それじゃあ、ぴーこ、御挨拶!」

 

 そこでネプテューヌが、みんなにピーシェのことを紹介した。

 

「ぴぃだよ!」

 

 無邪気に笑いながら、ピーシェが自己紹介する。

 

「ネプテューヌ…… こんな大きな子供がいたのね……」

 

 ブランが静かにとんでもないことを言い出した。

 

「そうそう、初めてお腹を痛めた子だから可愛くって!」

 

 そのボケにネプテューヌも乗り、ピーシェに頬ずりする。

 よく分かっていないピーシェだが、嬉しいのか笑顔だ。

 

『ううむ、ネプテューヌにとってピーシェは娘のような物というわけか……』

 

『『いや』『その理屈はおかしい』』

 

 さらにマジボケしだすオプティマスとそれにツッコミをいれるバンブルビー。

 

「……って、違ーう! 教会で預かってる迷子だから! オプっちまで何を言い出すのさ!」

 

 さしものネプテューヌも、ブランとオプティマスのボケにはツッコまざるをえない。

 

「まあ、知ってたけど……」

 

「ブランがまさかの誘いボケ!?」

 

 静かにぶっちゃけるブランと驚くネプテューヌ。

 一方のオプティマスはというと。

 

『いや、だが家族的な存在であるのは事実なわけで、まったくの的外れとも……』

 

「オプっち!? ひょっとしてわたしに母親属性を求めてるの!?」

 

 まだボケ続けるオプティマスに、ネプテューヌはボケ返上してツッコむのだった。

 ブランは付き合っていられないとばかりに、妹たちのほうを向く。

 

「ロム、ラム、仲良くしてあげて」

 

 優しい声色で言われて、双子の妹は元気に答えた。

 

「はーい!」

 

「いっしょに遊ぼ」

 

「うん、ぴぃあそぶ!」

 

 三人は仲良くクラたんを追いかけはじめる。

 

「で、さっきの話だけど……」

 

 ブランはボケるのはこれぐらいにして、真面目な話に移ろうとうする。

 だが、執務室には年少者三人の元気な声が響いていた。

 ノワールが一つ息を吐く。

 

「場所を変えましょ。ユニ、しばらくここをお願いね」

 

「あ、うん」

 

 ユニが頷くと、ノワールは女神と通信装置を伴い執務室に備え付けられたエレベーターで階下に降りていった。

 それを見送ったユニは、隣で同じく姉を送り出したネプギアに少しオズオズとした調子で声をかける。

 

「あのね、ネプギア……」

 

「なに?」

 

「ちょっと、相談があるんだけど……」

 

  *  *  *

 

「ノワールさんの様子がおかしい?」

 

 執務室のテラスに出たネプギアは、ユニにそう聞き返した。

 

「うん…… 最近夜になると、ずっと執務室にこもって何かやってるの……」

 

『『仕事でないの?』』

 

 心配そうなユニに、予備の通信装置から投射される立体映像のバンブルビーは有り得そうなことを言う。

 だがユニは首を横に振った。

 

「仕事なら鍵かけたりしないわ。それにときどき変な笑い声みたいのも聞こえてくるし……」

 

 確かにそれはおかしい。

 

「なんだか心配なのよ……」

 

 不安げなユニの姿に、ネプギアとバンブルビーは顔を見合わせる。

 そこへ、サイドスワイプの立体映像も投射された。

 

『すまないな、二人とも。俺は心配いらないって言ったんだが…… まあ、何かいい知恵があったら教えてくれ』

 

 頭を下げるサイドスワイプに、バンブルビーは後頭部をカリカリと掻く。

 一方ネプギアは、こんなことを言い出した。

 

「つまり、ノワールさんが一人で何してるか知りたいの?」

 

 その問に、ユニは少し自信なさげに答える。

 

「まあ、そういうこと……かな」

 

「じゃあ、いい物があるよ! たまたま持ってきたんだけど!」

 

 そう言ってネプギアは服のポケットから小さな機械を取り出した。

 

「これって……」

 

「映像を遠隔地に送る、目立たない大きさの機械だよ!」

 

 嬉しそうなネプギア。

 だが、その機械とはつまり……

 

『盗撮用カメラじゃねえか!!』

 

 思わずサイドスワイプが声を上げる。

 

「違うよ! これはオートボットの技術を応用して作った、非常に高度な機械なんだよ! これを使えば、気付かれないで相手のプライベートを丸裸にできるんだよ! 一度ちゃんとセットアップしてみたかったんだ!!」

 

 瞳にビカビカと危険な光を宿して力説するネプギア。

 そこに常識人の面影はない。

 

『『アカン』ギ…ア…『それアカン奴や!!』』

 

 パートナーの暴挙を止めるべく、バンブルビーはラジオ音声を出す。

 

「いやビー、これもユニちゃんのためなんだよ!」

 

『『盗撮』『ダメ、絶対』『盗撮』『は犯罪です!』』

 

 言い合うネプギアとバンブルビー。

 

「じゃあ、見せてあげるね! この機械がいかに素晴らしい画像解析度を持っているかを!」

 

『『そう言う問題じゃない!!』』

 

 ヒートアップしたネプギアはエヌギアを起動して映像を映し出す。

 だが、その映像にノイズが走り色々な角度から見たノワールの執務室が映り込む。

 

「何、これ?」

 

 それを覗き込んだユニが思わず声を出す。

 

「混線してる? あれ、でも混線するってことは!」

 

 ネプギアが何かに気付いた。

 

「あの部屋、隠しカメラがある!」

 

 その言葉の意味が、一瞬ユニには分からなかった。

 しかし、少ししてその意味を飲み込み声を上げた。

 

「え? ふえええええ!?」

 

  *  *  *

 

 ラステイション教会のコンピュータールームでは、ネプテューヌたち女神と、通信装置の投射するオートボットたちが話し合っていた。

 ノワールがさんざん自慢したセキュリティが破られたとあっては、ネプテューヌあたりが笑い出しそうなものであるが、さしもの彼女もディセプティコン絡みの話になると、若干だが真面目になる。

 

「それで今回のことは、そのサウンドウェーブの仕業というわけですの?」

 

『いや、正直そうは思えない』

 

 ベールの疑問に、ジャズが答えた。

 

「どうしてですか?」

 

『奴ならそもそも、痕跡を発見されるようなヘマは侵さないからさ』

 

 冷静な副官の言葉に、オプティマスも頷く。

 

『そうだな。今回のことは人間の犯行である可能性が高い。だが、その人間がディセプティコンと繋がっていないとも言い切れない』

 

「マジェコンヌみたいに…… ね」

 

 総司令官の懸念にブランが同意した。

 ディセプティコンの協力者が、マジェコンヌの他にいないとは限らないのだ。

 

「どの道、犯人を捕まえてみればハッキリするわ」

 

 ノワールも怒りを滲ませながらも冷静に意見を言う。

 

「おおー、ノワールが本気だー!」

 

 ネプテューヌが少し驚くと、ベールも自分の意見を言う。

 

「実は、こんなこともあろうかと、ある方を呼んでおきましたの。……お入りになって」

 

 その言葉とともにコンピュータールームの扉が開き、一人の女性が入ってきた。

 隙のないスーツ姿で、四角い眼鏡と綺麗に切りそろえられた黒髪が生真面目そうな印象を与える若い女性だ。

 その女性をベールが紹介する。

 

「リーンボックスが誇る超天才プログラマー、ツイーゲちゃんですわ」

 

 するとツイーゲは礼儀正しく自己紹介を始めた。

 

「初めまして、ツイーゲですビル。よろしくお願いしますビル」

 

 そのなんとも言えない語尾に、一瞬全員固まる。

 

「……び、ビル?」

 

「今時有り得ない語尾でキャラ付け!? このキャラ絶対失敗だよ!」

 

 呆気に取られたブランが言うと、ネプテューヌが騒ぎ出す。

 しかしツイーゲは慌てず騒がず平静に言葉を返す。

 

「ご安心くださいビル。このシーン限りの使い捨てキャラ……」

 

「ではありませんわ。彼女にはGDCにも、コンピューター部門として所属していただく予定ですの」

 

 ツイーゲの言葉をさえぎってベールが説明する。

 

「つまり、能力は折り紙付きってわけね…… あなたなら犯人を突き止められる?」

 

 ノワールの疑問に、ツイーゲは肯定する。

 

「お任せくださいビル」

 

 そう言うと脇に抱えていたノートパソコンを起動し操作しはじめる。

 一同はそれをジッと見つめていた。

 

  *  *  *

 

「この辺りだと思うんだけど……」

 

 黄色いスポーツカーから降りたネプギアが言うと、銀色の未来的なスポーツカーから降りたユニは怒り心頭で声を上げる。

 

「もう、ムカつく! お姉ちゃんを盗み撮りするような馬鹿は、アタシがメッタメタにしてやるわ!!」

 

「うう…… なんだか私に言われてるみたい……」

 

 ネプギアがショボンとすると、黄色いスポーツカーがバンブルビーに変形してラジオ音声を出す。

 

「『反省しろよ!』」

 

 銀色のスポーツカーもサイドスワイプに変形して、嘆息するように排気する。

 

「そうだな…… 盗撮はいけないな……」

 

 一同に注意されて、ネプギアは縮こまる。

 

「それで? どの建物なの!」

 

 ユニがそう言って睨むのは、ネプギアではなくパートナーであるサイドスワイプだ。

 最初はネプギアが、『女子の必須アイテム』としてなぜか持っていた電波逆探知機で探そうとしたのだが、だったらオートボットたちにやってもらったほうが早くない? ということになりサイドスワイプが逆探知したのである。

 

「ああ…… 多分この先だ」

 

 サイドスワイプが指差すと、ユニはキッとそちらを見据える。

 

「さあ、行くわよ!」

 

 その号令に、一同は歩き出そうとするが、そこでいっしょに来ていたピーシェがネプギアの腰にしがみついた。

 

「ねぷぎゃー! ぴぃ、おなかすいた!」

 

「へ! そうなの?」

 

「おなかすいたー! すいたー!」

 

 騒ぐピーシェに、ネプギアは困ってしまう。

 

「ふーん? ピーシェったら子供ね!」

 

 そこに声をかけたのは、緑のコンパクトカーから降りて来たラムだ。

 

「わたしはもうお姉さんだから、お腹空いても我慢できるよ!」

 

 ロムもオレンジのコンパクトカーから出てきて微笑む。

 

「わたしも、お姉さん♪」

 

 笑いかける双子の女神候補生を見て、ピーシェは頬を膨らませてネプギアから離れた。

 

「……ぴぃもおねえさん!」

 

 どうやら、負けん気を刺激されたらしい。

 

「じゃあ、我慢できる?」

 

「……うん、がまんする」

 

 ラムの問いに、ちょっと無理しながらも頷くピーシェ。

 

「なでなで♪」

 

 ロムはそんなピーシェの頭を撫でてあげるのだった。

 幼いピーシェに年長者として振る舞う双子の姿に、ネプギアとユニは感心した。

 

「ラムちゃんもロムちゃんもすごーい!」

 

「自分よりちっちゃい子がいると、がぜん大人びるのね……」

 

 一方、ロボットモードになったスキッズは大げさに肩をすくめて見せる。

 

「誰かさんもそうだといいんだけどな!」

 

 その視線の先には、同じくロボットモードに変形したマッドフラップ。

 

「おいおい、それじゃ俺が子供みたいじゃねえか!」

 

「そう言ってんだよ、ターコ!」

 

 反論するマッドフラップだが、スキッズはふざけた態度だ。

 たちまち殴り合いの喧嘩になるも、バンブルビーにゲンコツを落とされて静かになる。

 同じ年少者でも、男と女だとだいぶ違うものである。

 そんなこんなでしばらく道を進むと、廃工場が見えてきた。

 

「あそこだな」

 

 サイドスワイプがそう言うと、ピーシェを除く一同が身構える。

 しかし、その廃工場の前には赤と青のファイヤーパターンが特徴的なボンネットタイプのトレーラートラック、無骨な黒いピックアップトラック、赤い流麗なスポーツカー、リアウィングが付いた銀色のスポーツカーが停まっていた。

 正直、目立つことこの上ない。

 

「アイアンハイドさん? みんなも、どうしたの?」

 

「ユニか? それに他の連中も…… おまえらこそどうした?」

 

 ユニが怪訝そうな顔で聞くと、アイアンハイドはビークルモードのまま聞き返した。

 女神候補生たちとそのパートナー・オートボットたちは顔を見合わせる。

 秘密にすることではないし、協力してくれるならそれに越したことはない。ユニは事実を話すことにした。

 

「実は……」

 




そんなわけで、あのオカマの登場とノワールのトランスフォームは次回にお預け。

GDFは実写におけるNESTポジションの組織であり、番外編にも深くかかわってくる予定。

それはそうと、やっとトランスフォーマーアドベンチャーを見ました。
ストロングアームが思ってたよりかわいくて意外。
プライムとのつながりは匂わせる程度だろうなあ……

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