超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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祝・トランスフォーマーアドベンチャー放送開始!!
……しかし、自分はアニ○ックスと契約してないので、ネット配信待ちです。
早く見たい!


第29話 ショックウェーブの再生

 ある登山隊が、その雪山アイツクルマウンテンの山頂付近でそれを発見したのは偶然だった。

 足元を滑らせ、少し本隊を離れてしまった隊員が、山影に佇むその像を発見したのだ。

 こんな場所に、こんな物が有り得るはずはない。

 アイツクルマウンテンは万年雪に覆われ気温は常時氷点下、頻繁に吹雪が吹き荒れるゲイムギョウ界でも指折りの高山なのだ。

 文明の跡など有り得ようはずがない。

 しかしとにかく、大発見だ。

 無事合流した隊員たちはこの偶然を喜び合い、登頂に先駆けてその像の前で写真を取るのだった。

 その写真が、ある種の存在の強い興味を引くとは知らずに。

 

  *  *  *

 

 メガトロンは司令部の玉座に腰かけ、これからの策を練っていた。

 雛が生まれてきた以上、彼らのためにもより多くのエネルギーが必要だ。

 シェアクリスタルを得られればそれに越したことはないが、当面は無理だろう。

 『例の物』を手に入れたいが、師がどこに送ったのか分からない。伝えてくることもないだろう。師はそういう方だ。

 

「は~い、ごはんよ~♪」

 

 玉座の傍らではこのたび育児担当に任命されたレイが雛に液体エネルゴンをスプーンにすくって与えている。

 雛はキュルキュルと未熟な発声回路を鳴らし、おいしそうに液体エネルゴンを飲みはじめた。

 この雛、やたらレイに懐いており、彼女が長時間離れると大声で泣き出すのだ。

 レイはレイで雛に愛着があるらしく、この任命を快く受けた。

 このことについて卵の育成を担当していた某航空参謀が地味に傷ついていたが、それはまあどうでもいい。

 さてどうしたものかと、修理を後回しにしている……さすがにエネルゴン漏れは止めたが……右腕の断面をさわりながら思考する。

 

「失礼スル」

 

 そこへ、情報参謀サウンドウェーブが司令部に入ってきた。

 

「サウンドウェーブか、どうした?」

 

 主君の問いに、サウンドウェーブは簡潔に答えた。

 

「ショックウェーブ ガ発見サレタ」

 

「なんだと!?」

 

 その言葉にメガトロンは声を上げる。

 大声に驚いて、雛が泣きだした。

 

「ああ! 泣かないで~!」

 

 それをなだめるレイが非難がましい目つきで見上げてくる。

 メガトロンは一つ咳払いのような音を出すと、サウンドウェーブに近づいていく。

 

「それで、本当だろうな?」

 

 声を小さくしてたずねるメガトロンに、サウンドウェーブは部屋の中央の円卓に組み込まれたホログラム発生装置を起動させる。

 そこには、防寒装備に身を包んだ数人の人間が笑顔で並んでいる写真が映しだされた。

 だが重要なのはそこではない。その後ろにそびえる巨大な金属の人型がメガトロンの興味を引いた。

 単眼に水牛のような角、そして周囲を取り巻く長大な何か。

 

「間違いないぞ! ショックウェーブだ!!」

 

 凍りついているとはいえ、久々に見る科学参謀の姿にメガトロンは喜ばしい声を上げた。

 しかしやっと泣き止んだ雛がまた泣き出し、レイは顔をしかめる。

 しょうがないとメガトロンはサウンドウェーブを伴って司令部を出た。

 

「それで、今は誰が動ける?」

 

「ドレッズ ハ問題ナク。直属部隊ノ、バリケード、フレンジー。コンストラクティコン ノランページ ハ、動ケル。……後、スタースクリーム モ、スデ二回復シタ」

 

 腹心の部下の答えに、メガトロンは難しい顔になった。

 ズーネ地区の戦いでいろいろと盛大にやらかしたスタースクリームを連れていくのは不安だ。

 しかし前回の戦いのおりにダメージが大きい者は、大半はまだリペア中だ。

 オートボットもすでに動き出しているだろう。

 奴らに先を越されれば、科学参謀の回収は非常に難しいものになるはずだ。

 

「……背に腹は代えられん。動ける者全員で、ショックウェーブを回収に向かうぞ」

 

「了解」

 

 主君の決断に、忠実なる情報参謀は一つ頷くと兵士たちに招集をかけるべく歩き出す。

 だが、ふと振り返った。

 

「メガトロン様」

 

「なんだ?」

 

「育児スペース ノ増設ヲ提案スル」

 

「……そうだな」

 

 司令室で育てるのは限界がある。

 少し名残惜しいが、しょうがない。

 

  *  *  *

 

 アイツクルマウンテン。

 北国ルウィーのそのさらに北方の海のそばにそびえ立ち、万年雪に覆われ、山頂付近は常に氷点下、おまけに頻繁に吹雪くという険しいことこの上ない高山である。

 女神たちとオートボットたちはこの山の麓に来ていた。

 今は天気も良く、太陽が針葉樹林を照らしている。

 

「それでは、これから我々はショックウェーブを確保するため、山頂を目指す」

 

「おお~!!」

 

 オプティマスの宣言に、ネプテューヌが元気よく答えた。

 今回のメンバーは、四女神とパートナーのオートボット。

 そして他のメンバーに先駆けて退院したスキッズとマッドフラップ、それにくっ付いてきたロムとラムだ。

 もちろん幼いロムとラムがついて来ることは、みんな反対したのだが、他ならぬ姉のブランがOKをだしたのだ。

 曰く、「大丈夫。ある意味地元だから」だそうだ。

 当然ながら、女神たちは防寒具に身を包んでいる。

 

『腕の調子はどうだ? 二人とも』

 

 居残り組の一人、ラチェットが通信してきた。

 その言葉に、スキッズとマッドフラップは新しい腕をブンブンと振り回す。

 

「おうよ! 前より調子がいいみたいだ!」

 

「へへ、早く試してみたいぜ!」

 

 双子の腕はリペアついでに強化されており、本来イレギュラーな合体砲を正式な機能として組み込んでいる。

 これで威力は落ちるものの負荷で爆発するようなことはなくなった。

 

『しかし、あまり無理はしないように』

 

 はしゃぐ二人をラチェットが制する。

 と、通信にまだリペア中のバンブルビーが割り込んできた。

 

『『司令官!』『気をつけてくださいね!』『また』『捕まらないでくださいよ!』』

 

「ああ、バンブルビー。そのときはまたよろしく頼む」

 

『『もう』『臨時指揮官は』『こりごりだよ』』

 

 軽口を言い合うオプティマスとバンブルビー。

 ズーネ地区での戦いは、二人の関係にも少し変化をもたらしたようだ。

 

「ネプギアも、お留守番お願いね!」

 

 ネプテューヌが自身のインカム型通信機でネプギアたちに声をかける。

 

『うん! でも気をつけて……』

 

『ねぷてぬー!!』

 

 突然、ネプギアの声をさえぎって幼い声が聞こえてきた。

 

「こーら、ぴーこ! ねぷてぬじゃなくてネプテューヌだって言ってるでしょ!」

 

『ねぷてぬ、ねぷてぬー!』

 

 言い間違えられて訂正を求めるネプテューヌだが、幼い声の主は一向に直す気配はない。

 

『はやくかえってきて! あそんで!』

 

「はいはい。何か、お土産持って帰るから、おとなしくしててね!」

 

『わーい! おみやげ、おみやげー!』

 

 嬉しそうな幼い声。

 単純なその思考にネプテューヌはヤレヤレと苦笑するのだった。

 

  *  *  *

 

「しかし、ピーシェだっけか? 何者なんだ?」

 

 山道を歩き出してしばらくたったころ、アイアンハイドがオプティマスに件の幼い声の主について聞いてきた。

 

「ああ、そろそろあの子が来てから二週間たつというのに、一向に手がかりなしとはな……」

 

 ジャズも少し難しい顔になる。

 ピクニックに出かけたネプテューヌたちが連れ帰った、幼い女の子。

 あの女の子がどこから来たのか、なぜアイエフやコンパのことを知っていたのか、そしてどうして小さなディセプティコンを連れていたのか。

 本人が幼いこともあって、皆目見当もつかなかった。

 唯一分かったのが、下着に書かれていたピーシェという名前だけ。

 連れていたディセプティコン、名をホィーリーにしても上役にピーシェに張り付いているよう命令されただけで実際のところは何も知らないらしい。

 その上役にしても、さらに上の者から命じられ、さらにその上司も…… と、ようするに永遠とたらい回しにされた仕事が最終的に一番下っ端、つまりホィーリーに押し付けられたということのようだ。

 いと悲し、縦割り社会。

 

「オプティマス、なぜあのディセプティコンを生かしておくんだ?」

 

 ミラージュが怪訝そうに、小ディセプティコンを殺さないと決めた総司令官にたずねる。

 オプティマスは部下の疑問に決然と答えた。

 

「我々はディセプティコンではないからだ。戦う力も意思もない者の命を奪うのは、オートボットのやりかたではない」

 

 あのホィーリーなるディセプティコンは、見ためによらない力があるでもなく、何か特殊な能力や技能があるでもなく、オートボットを出し抜く知恵もなく、さらには自分の何倍もあるような相手に噛みつく度胸もない。ついでに自爆装置や盗聴装置もない。

 ないない尽くしのザ・下っ端だった。

 そんな相手を破壊するのは、オートボット的ではないとオプティマスは考え、彼を捕虜として扱うことにした。

 もっとも、好戦的なレッカーズや割と容赦のないラチェットとアーシー、隙あらば分解調査を目論むネプギアに囲まれているのが、ホィーリーにとって幸運なことかは別だが。

 一応納得したらしいミラージュは、パートナーであるブランの隣を歩いていく。

 ふと、オプティマスは空を見上げた。

 そのセンサーが気圧の変化を敏感に捉える。

 

「雪が降りそうだな……」

 

  *  *  *

 

 女神とオートボットが登っているのとは、ちょうど反対の斜面。

 雪がしんしんと降るなか、一匹の白熊が得物を求めて歩いていた。

 何で白熊が雪山にいるのかとか、しかも海パンはいてサングラスしているのは何でかとかツッコんではいけない。

 とにかく、巨体の白熊は生まれつき体が大きく力も強かったので、いまやこの辺りの生態系の頂点に君臨し怖い物など飢え以外に有りようもない。

 そして見つけたのはアザラシだ。

 だから何で雪山にアザラシがいるのかとか考えてはいけない。

 不幸にも生態系の王に見つかってしまったアザラシは、必死になって逃げる。

 それを余裕に満ちた態度で追う白熊。

 やがてアザラシは、切り立った崖の上に追い詰められてしまった。

 白熊はよだれを垂らしてアザラシに迫る。

 と、その動きが止まった。

 崖の下から、異様な存在が顔を出したからである。

 それは灰銀色で金属製の悪鬼羅刹の如き恐ろしい顔だった。

 白熊とアザラシは弱肉強食的関係も忘れて唖然とする。

 顔が低く唸ると、白熊とアザラシは全速力で逃げていくのだった。

 

「まったく、忌々しい天候だわい!」

 

 メガトロンは隻腕にも関わらず軽々と崖をよじ登る。

 さらに、スタースクリームとサウンドウェーブをはじめとしたディセプティコンたちも崖の下から姿を現す。

 ついでにリンダもクランクケースに抱えられて現れた。

 

「しかし何で、飛んで行かないんですかい?」

 

 スタースクリームが当然の疑問を口にする。

 この場には、メガトロン、スタースクリーム、ハチェット、飛行可能な者が三体もいるのだ。

 

「コノ山ノ上空ハ、強イ磁場二覆ワレテイテ、我々ノ センサー ヲ狂ワセテシマウ。加エテ、吹雪ガ非常二発生シヤスイ。飛行スルノハ、危険」

 

 それに答えたのは不機嫌そうに体に纏わりつく雪を払うメガトロンではなく、サウンドウェーブだった。

 

「そういうことだ。分かったら黙って歩け」

 

 山頂の方角を見るメガトロンがピシャリと言い放つ。

 

「へいへい、分かりましたよ」

 

 不満げながらもスタースクリームは従う。

 

「よし、ではディセプティコン軍団(登山的な意味で)アタック!」

 メガトロンの号令にディセプティコンたちは登山を開始した。

 

 *  *  *

 

「すっすめ~! すっすめ~!」

 

「のぼっれ~! のぼっれ~!」

 

 ロムとラムは元気よく歌いながら、だんだんと傾斜がきつくなってきた山道を進んでいく。

 すでに辺りは雪で覆われていた。

 

「元気ね、あなたの妹たち」

 

 モコモコとした防寒具に身を包んだノワールが、同じく防寒具を着こんだブランに話しかける。

 空を飛んでいければ早いのだが、とにかく寒く吹雪が起きやすいこの山を、女神化状態の薄着で飛ぶのは自殺行為だ。

 

「言ったでしょ? ここはある意味、ロムとラムのホームグラウンドなのよ」

 

 ブランのその答えに、ノワールは苦笑する。

 

「ああ、それにしてもいいですわねえ。ブランには二人も妹がいて。どうでしょう、一人くださいませんこと?」

 

 ロムとラムのことを羨ましそうに見つめながら、ベールがとんでもないことを言い出した。

 

「断固、拒否するわ」

 

 ブランは素敵な笑顔で断言するのだった。

 

  *  *  *

 

 ディセプティコンたちが山を登り始めてからしばらくたつと、本格的に吹雪いてきた。

 

「寒い……」

 

「このままじゃ、俺ら冷凍ディセプティコンになっちまうぜ……」

 

 口々に弱音を吐くバリケードとフレンジー。

 すでに気温は零度を下回っていた。

 そもそも金属生命体は、寒さには弱いのである。

 

「ガウ、ガウガウ?」

 

「ありがとなハチェット。アタイはダイジョブさ」

 

 防寒具姿のリンダにハチェットが心配そう鳴き声を出す。

 リンダはまだ平気そうだ。

 体を震わすスタースクリームはさっそくメガトロンに進言する・。

 

「メガトロン様、帰りましょうよ…… ショックウェーブなんか、ほっときゃいいじゃないですか……」

 

「そう言うわけにはいかん。今の我らにはショックウェーブの頭脳と力が必要なのだ。それなくして我らの勝利はない」

 

 メガトロンは航空参謀の不満を封じる。

 ショックウェーブにはそれだけの価値がある。

 強力な戦士であると同時に優秀な科学者でもある科学参謀の存在は、これからの戦いに必要不可欠だとメガトロンは考えていた。

 しかし、これ以上自分の地位を脅かされる……と、本人は思い込んでいる……のが気に食わないスタースクリームはさらに文句を続ける。

 

「ショックウェーブならああだ、ショックウェーブならこーだ、ショックウェーブがご立派なのはよぉく分かりましたよぉ……」

 

「ショックウェーブこそは理想的な兵士だ。勇敢でしかも忠実、第一出しゃばらん。……誰かと違ってな」

 

 冷たいメガトロンの言葉にカチンときたスタースクリームは、腕をミサイル砲に変えて即時発砲しようかと思ったが、やめた。

 今はサウンドウェーブがそばにいる。

 さすがに二対一はキツイ。

 

 吹雪は、さらに強くなってきていた。

 

  *  *  *

 

「さーむーいー!!」

 

 吹雪が吹き荒れるなか、ネプテューヌが叫んだ。

 防寒着にも限界という物がある。

 加えて、傾斜もかなりきつくなってきており、すでに女神たちはオートボットたちに抱えられて山を登っていた。

 

「みんな、これくらいの寒さで情けないわね~!」

 

「うん、全然寒くないよ……(にこにこ)」

 

 ロムとラムを除いて。

 双子の女神候補生は寒さに震える女神たちや雪が張り付いているオートボットたちとは違って、すごく元気である。

 

「いやこれやばいよ! すでにギャグで済むレベルを通り越して寒いよ!」

 

 わりと真剣に騒ぐネプテューヌに、オプティマスは真面目に頷く。

 

「そうだな。寒さをしのげそうな所は……」

 

 オプティマスが各種センサーを働かせる。

 

「この先に洞窟があるようだ。そこで吹雪をやり過ごそう」

 

 その場の全員、誰も反対するはずもなかった。

 ロムとラムも元気いっぱいに歩き出す。

 

「おまえら、いくらなんでも元気過ぎだろ……」

 

「寒くないのかよ……」

 

 人間臭く肩を抱いたスキッズとマッドフラップが、力無くツッコムとロムとラムはやはり元気に答える。

 

「ぜんぜん! なんていうか、むしろ元気がわいてくるっていうか!」

 

「実家のような安心感っていうか!」

 

 女神候補生の双子の言葉に、オートボットの双子は顔を見合わせる。

 そして、スキッズが呆れた声を出した。

 

「まったく、二人は生粋の雪山登山家(アイスクライマー)だな」

 

 つまりそういうことである。

 

  *  *  *

 

 洞窟の中は案外広く、オートボットたちも入ることができた。

 オートボットたちは近くで拾ってきた木の枝を積み上げて火をつけ、女神たちのために暖を取ってやる。

 金属生命体にとっては、この程度の熱は何の慰めにもならないが、女神たちにとっては貴重な命の火だ。

 とりあえず火の周りに円陣を組むようにして座る女神たち、その周りでオートボットたちも少し休憩する。

 やがて少しウトウトしてきた女神たちを、オートボットたちは火の番は自分たちがしているからと眠らせてやるのだった。

 

「しかしあれだな……」

 

 女神たちが全員寝静まったのを確認してからアイアンハイドが小さく声を出した。

 

「こうしてると、普通のガキにしか見えないんだがな……」

 

 寝息を立てるノワールに、そっと毛布を掛けてやる。

 

「どうしたんだよ、アイアンハイド?」

 

 彼らしくないしんみりした声に、ジャズが訝しげな顔をする。

 アイアンハイドは深い排気を吐いた。

 

「いやなに、子供なのに国なんてデカいもん背負うことになるなんて、どうかと思ってな」

 

「彼女たちは女神だからな」

 

 オプティマスが厳かに言う。

 ゲイムギョウ界に生きる者なら、この一言で納得しただろう。

 だが、幾多の戦場を潜り抜けてきた兵士であるアイアンハイドはそうはいかない。

 

「そこだよ、俺が気になるのは。……なあ、女神ってのは、いったい何なんだ?」

 

 その疑問に、金属の巨人たちは訝しげな顔になる。

 

「シェアエナジーが一つの所に集まって生まれてくる存在で、シェアを力の源としている国の統治者…… そこまでは分かる。じゃあ、シェアってのは何だ?」

 

 アイアンハイドがそう言うとジャズが難しい声を出した。

 

「確かに、信仰や信頼みたいな感情が、具体的な力として現れるってのは、俺たちの常識を超えてるな」

 

 人知を超えた力を持つのは、トランスフォーマーとて同じだが、彼らは彼らなりの現実に則した力しか持っていない。

 しかし、女神の持つシェアエナジーと共鳴することでそれを超える力を発揮できる。

 

「それにズーネ地区での一件からするに、俺たちもシェアエナジーを持ってたことになるな」

 

 ジャズは顎に手を当てて考え込む。

 マジェコンヌとの戦いでは自分たちのシェアがアンチエナジーに飲み込まれた女神たちを守った。

 つまりそれは、トランスフォーマーもシェアを発しているということだ。

 

「……女神は、国民から得たシェアを国……この場合は環境だろうか?……に加護という形で還元する。それが無ければ土地は荒廃し、人心は荒む」

 

 オプティマスはイストワールから聞いた言葉を反芻する。

 女神なき場所はそもそも人が住む環境として成り立たない。例えばこのルウィーなら、もっと寒さが厳しくなり全てが雪と氷で閉ざされる。

 だから、人々は加護をもたらす女神を信仰し、女神はシェアエナジーを発する人間を守る。

 それがゲイムギョウ界における、国の有りかただ。

 

「そしてなぜ、トランスフォーマー(我々)女神(彼女たち)は似ているのか……」

 

「似ている?」

 

 その言葉にジャズが首を傾げると、オプティマスは頷いた。

 

「ともに姿を変える能力を持つ。環境に適した擬態と、戦闘に適した真の姿と」

 

 アイアンハイドとジャズは顔を見合わせた。

 それは考え過ぎではないか?

 だが、オプティマスは言葉を続ける。

 

「私は、女神たちの出会ったことに、どこか運命的なものを感じる。彼女たちと信頼を結ぶことはとても重要なことなのだと……」

 

 その言葉に、オートボットたちは頷く。

 話の内容を理解できていないスキッズとマッドフラップも、それは分かったらしい。

 だが、ミラージュはどこか憮然としている。

 

「俺は、ディセプティコンを倒すために女神と組んでいるだけだ」

 

「ミラージュ、意地を張るのはよせ。おまえもすでに気づいているはずだ。おまえ自身がすでにパートナーのことを大切に思っていることに」

 

 でなければ、ズーネ地区での戦いであれほどのシェアを生み出すことはできなかったはず。

 それに答えず、ミラージュは立ち上がると洞窟の外へ歩いて行った。

 

「どこへいく?」

 

「少し外を見てくる」

 

 総司令官にそれだけ言って、ミラージュは洞窟を出て行った。

 

「……素直じゃないね。あいつも」

 

「照れてるだけさ」

 

 アイアンハイドがヤレヤレと排気すると、ジャズも苦笑した。

 ミラージュの背を見送りながらオプティマスはブレインサーキットの内で思考を続ける。

 メガトロンのシェアクリスタルに対する執着。

 共鳴する女神とトランスフォーマー。

 結果的に世界に生命をもたらすシェアエナジー。

 それらは、ある一つの可能性を示していた。

 

 この世界に、オールスパークが存在するのではないか?

 

 いや、オールスパークが失われた時期と、ゲイムギョウ界に初めて女神が現れた時期は重ならない。記録に残る女神の出現のほうが、あのタイガーパックスの戦いより前だ。

 だがそれでも、この奇妙な符合を無視することはできない。

 

 いずれは調べねばならないな……

 

 できればそれが、オートボットと女神の関係に悪い結果にならないことを、オプティマスはオールスパークに祈らずにはいられなかった。

 

  *  *  *

 

 一面白い景観の中に立つと、真っ赤なミラージュは凄まじく目立った。だが本人は気にしない。

 各種センサーは近くにディセプティコンやモンスター、注意すべき存在の気配を感じなかった。

 さらにセンサーの感度を上げ、近くに怪しい影がないか調べる。

 そして、洞窟の中から出てくる者に気が付いた。振り返らずに声をかける。

 

「何の用だ?」

 

「目が覚めちゃって……」

 

 それはブランだった。

 

「……中にいろ。この寒さはおまえら有機生命体には危険だ」

 

「大丈夫よ…… わたしも妹たちほどではないけど寒さには強いの。……隣、いいかしら?」

 

 ミラージュの隣に立ち、その顔を見上げるブラン。

 

「…………」

 

「沈黙は肯定と受け取るわ」

 

「好きにしろ」

 

 ミラージュはそっけなく言うと索敵に戻った。

 しばらくお互いに黙っていたがブランの方から口を開いた。

 

「そう言えばあのとき、初めて名前で呼んでくれたわね」

 

「……あのとき?」

 

「わたしが、アンチクリスタルの結界に捕まったとき」

 

 訝しげなミラージュにブランは微笑む。

 

「緊急事態だったけど、少し嬉しかったわ。あなたときたら、わたしのことを名前で呼んでくれたこと、なかったから」

 

「なんだそんなことか……」

 

 ミラージュは深く排気した。

 その態度に、ブランは一転カチンときたらしく口調を荒げる。

 

「なんだよ! 人が素直に嬉しいってんだから、何か他に反応があるだろ!」

 

「……例えば?」

 

 言葉に詰まるブラン。

 

「た、例えばだな、その……」

 

「ブラン」

 

 出し抜けに、ミラージュが白の女神の名前を呼んだ。

 ハッとしてブランが赤いオートボットの顔を見ると、彼は顔を背けていた。

 

「……これでいいのか?」

 

「……ええ、満足よ」

 

 再びニッコリと笑うブラン。

 少しだけ落ち着かなげに、ミラージュは一つ排気するのだった。

 

  *  *  *

 

 吹雪もやみ、女神とオートボットが登山を再開したころ、別の斜面では。

 こんもりと積もった雪の小山が、突然爆発する。

 その中から体に着いた雪を振り払いながら出て来たのは、ディセプティコンの面々だ。

 吹雪のなか登山を敢行した彼らは、雪に埋もれていたのである。

 

「も~やだ! とても耐えられねえ!!」

 

 スタースクリームが絶叫するが、メガトロンは意にも介さない。

 

「馬鹿言ってないで歩け」

 

 それだけ言うと、山頂に向かって山肌を登り始める。

 バンの姿のクランクケースの中からは、リンダが姿を見せた。

 彼女はクランクケースに乗り込むことで急場をしのいだのである。

 

「ありがとなクランクケース、助かったぜ」

 

「別にどうってことないYO!」

 

 礼を言うリンダに、軽い調子で返すクランクケース。

 一方、スタースクリームは我慢の限界を超えたらしく喚き散らす。

 

「やいメガトロン! テメエに従ってたら皆氷漬けだ! ショックウェーブがそんなに大事か!?」

 

 スタースクリームの言葉に、メガトロンはゆっくりと振り向き、オプティックを危険に細める。

 

「登るのが嫌ならここに残れ。他の者もスタースクリームに賛同するなら残るがいい」

 

 それだけだった。

 怒声も暴力もナシである。

 黙って登山を再開する、その背が、むしょうにスタースクリームの勘にさわる。

 まるで、自分など眼中にないかのようではないか。

 

 借りにも、ナンバーツーたる自分を!

 

 スタースクリームの中でドロリとした感情が渦巻くが、それを封印しておく。

 今はまだそのときではない。

 ディセプティコンたちは次々とメガトロンに続く。スタースクリームに賛同してその場に残る者は誰もいなかった。

 だからスタースクリームもそれに続いた。

 

  *  *  *

 

 そして山頂付近。

 氷漬けのディセプティコン科学参謀は、変わらずそこにいた。

 長大な蛇のような物に取り巻かれ、この極寒の地で眠りの中にいる。

 それはまさしく古代の神像のような風情を醸し出し、ちょうど山腹の台のようになった部分に乗っていた。

 そこへ先に辿り着いたのは女神たちとオートボットたちだった。

 ネプテューヌが、氷漬けのディセプティコンを見てはしゃぐ。

 

「おおー! これが、ディセプティコンの幹部なんだね! あれだね、モノアイだと雑魚メカっぽい風情もあるね!」

 

「雑魚だなんてとんでもない。ショックウェーブは幾多のオートボットを葬り去ってきた恐るべき兵士であり、いくつもの危険な発明をしてきた危険な科学者だ」

 

 ネプテューヌのおふざけに、真面目に返すオプティマス。

 

「どうやら、ディセプティコンはまだ現れてないみたいね」

 

 ノワールは冷静に辺りを見回している。

 

「そのようですわね。それでこのアイスマンをどうしますの? 破壊します?」

 

「ええ~! それはやり過ぎじゃないかな! 眠ってる相手を攻撃するなんて、正義の味方のやることじゃないよ! ねー、オプっち!」

 

 どこか冷淡なベールの言葉にも、ネプテューヌは明るく呑気な調子だ。

 この前、あれだけの目にあったのにディセプティコンを憎んではいないらしい。

 その言葉にオプティマスは考える素振りを見せる。

 

「確かにそれはさけたい手段だ。だが、どうするにせよ、いったんコイツを山の下まで降ろさないとな」

 

 とりあえず皆それに同意する。

 

「では、ショックウェーブだけ基地に運ぼう。……そっちの『ペット』は残念だが破壊するより他にない」

 

 オプティマスは厳かに言うと、ショックウェーブを氷から削り出し、周りのペットを始末するべくエナジーブレードを展開する。

 だが。

 

「そうはさせんぞ、オプティマス!」

 

 地獄から響くかのような声が聞こえてきた。

 一同がそちらを向くと、女神とオートボットが登ってきたのとは反対側から、メガトロンが姿を現した。

 しかし、片腕は無残に破壊されたままだ。

 ディセプティコンの兵士たちも次々と登ってくる。

 

「メガトロン!」

 

「ショックウェーブは渡さんぞ、プラァァイム!!」

 

 吼えるメガトロンに、なぜか一瞬目を輝かせるベール。

 だが、そんなふざけている場合ではないのは明らかだ。

 

「ディセプティコン軍団、攻撃(アタック)!! ショックウェーブを守るのだ!!」

 

「オートボット迎え撃て!」

 

 突っ込んでくるディセプティコンに、オートボットが応戦する。

 

「この場で重火器を使えば雪崩が起こる可能性がある! みんな格闘と軽火器で戦うんだ!」

 

『了解!』

 

 オプティマスの号令に、オートボットたちは発砲を控える。

 

「そういやテメエにゃ、借りがあったYO!」

 

「見逃してやった借りなら、その首で払え」

 

 両手で棍棒を振りかざすクランクケースに、ミラージュが対峙する。

 振るわれる棍棒をよけ、クランクケースの腹を一閃で切り裂こうとするが、飛びのいてそれをかわしたクランクケースが、ミラージュの頭をかち割ろうと棍棒を縦に振るう。

 だがミラージュはブレードでそれを受け止めた。

 

「懲りずに潰されにきたか、チビども!」

 

「あのときとは違うぜ!」

 

「今度はオマエが痛い目見る番だ!」

 

 二丁拳銃を乱射してくるクロウバーに、スキッズとマッドフラップは正確に射撃をよけて向かって行く。

 ハチェットが咆哮とともに二人に飛びかかるが、問題なくヒラリとかわしつつ、ブラスターを撃ちこんでやる。

 

「わたしたちも行こう! ロムちゃん!」

 

「うん! ラムちゃん!」

 

 双子の女神候補生はそろって女神化すると、双子のオートボットを援護するべく飛んで行った。

 

「全身砲台みたいなわれじゃ、ここじゃ戦いずらいじゃろう!」

 

 ランページが飛びかかってきたが、アイアンハイドは冷静にそこらへんの石を拾い上げ、投げつけてやる。

 石は見事にランページの顔面に命中した。

 

「がッ!」

 

「重火器が使えなくても、戦いかたはいくらでもあるんだよ!」

 

 アイアンハイドは、さらに足の装甲からナイフを引き抜くと、ランページに向かって行く。

 一方、ジャズとサウンドウェーブは睨み合っていた。

 

「サウンドウェーブか、相手にとって不足はないな」

 

「黙レ、コノ口ダケノ、イカレ副官ガ!」

 

 先手を取ったのはサウンドウェーブだ。

 振動ブラスターでジャズを狙い撃つ。

 だがジャズは怯まずに素早く相手の懐に潜り込み、その胴に回し蹴りを叩き込む。

 

「グッ!」

 

「さあ、レッツダンス!」

 

 女神たちも、この状況で寒いとは言っていられない。

 すぐさま女神化してオートボットを援護しようとする。

 だが、その前に立ちはだかる者たちがいた。

 

「ここで通行止めだ」

 

「へへ、この世界での初陣だ! 派手にいくぜ!」

 

 それはバリケードとフレンジー。

 

「この前の借りを返してやる!」

 

 そしてリンダだった。

 

「あなた、まだメガトロンの手下をしてたのね……」

 

「あたぼうよ! こちとらディセプティコン下級兵だぜ!」

 

 呆れたようなネプテューヌに、リンダは得意げに返す。

 リンダはどこからか、マシンガンを取り出すと女神に向けて発砲する。

 だが、女神たちに障壁に阻まれてダメージを与えることはまったくできない。

 

「それでお終い?」

 

「もちろん違うさ」

 

 小馬鹿にしたようなノワールに答えたのは、リンダではなくバリケードだ。

 その腕のタイヤをブレードホイール・アームに変形させてノワール目がけて投擲する。

 飛び回ってそれをかわすノワールだが、そこにさらに手裏剣のような刃物が飛んで来た。

 間一髪かわすノワール。

 手裏剣のような刃物の出どころは、いつのまにか女神たちの下に潜り込んでいたフレンジーだ。

 

「へへへ、これでも食らいな!」

 

 さらに両腕を小型機関銃に変形させると、それと胸部から発射するカッターで女神たちを攻撃する。

 バリケード、フレンジー、リンダの攻撃は女神を倒すほど激しいものではないが、彼らの目的は女神の足止め。

 オートボットを援護させなければそれでいい。

 

「このリンダ様の攻撃で死にやがれ~!!」

 

 理解していないのもいるが。

 しかし、この下っ端とディセプティコン二体の攻撃はなかなかに厄介で確実に女神たちの足を止める。

 そして、メガトロンの相手をするのは、もちろんオプティマス・プライムだ。

 

「ここで部下とともに眠るがいい、メガトロン!!」

 

「ほざけ!!」

 

 メガトロンの回し蹴りをかわし、エナジーブレードで斬りつけるオプティマス。

 だが、その腕を掴んで斬撃を防いだメガトロンはオプティマスの体を万力の力で引き寄せ、強烈な頭突きをオプティマスの顔面に食らわせる。

 さらに膝蹴りを連続して総司令官の腹に撃ち込む。

 オプティマスはメガトロンの腕を振り払い、逆にその腕を両手で掴むと、一本背負いの要領で投げ飛ばす。

 巨体が宙を舞が、受け身をとってスピーディーに立ち上がる。

 奮戦するメガトロンだが、いかに破壊大帝といえども片手でオプティマス・プライムの相手は分が悪い。

 

「スタースクリーム! 何をしておる、手伝わんか!!」

 

 唯一戦闘に参加していない部下に、メガトロンが怒鳴りつけるがスタースクリームは答えない。

 

「へいへい、分かりやしたよお!」

 

 スタースクリームは背中のブースターを吹かして勢いよく飛び上がると、両腕をミサイル砲に変形させる。

 

「スタースクリーム! 貴様何を……」

 

「うるせえ! 大好きなショックウェーブごとお陀仏しやがれ!!」

 

 叫ぶと、氷漬けの科学参謀に向けてミサイルを一斉発射する。

 この場でミサイルが爆発すれば、雪崩が起きて両軍が壊滅することもあり得る。

 

「よせぇえええ!!」

 

 メガトロンが絶叫するが時すでに遅し、単眼のディセプティコンにミサイルが命中し轟音が響き渡る。

 

「ひゃ~はっはっはっは!! これでショックウェーブも永遠にグッドナイトォ!!」

 

 高笑いするスタースクリーム。

 女神も、オートボットも、ディセプティコンも、誰もが一瞬固まる。

 そして地鳴りが起こり出した。

 

 すわ雪崩か?

 

 誰もがそう思ったが次に起こった出来事は全員の予想を超えることだった。

 

「動いてる……」

 

 そう茫然と呟いたのは誰だったか。

 皆の見ている前で、科学参謀の周りを取り巻く蛇……巨大なドローンがゆっくりと蠢いていた。

 さらに、当の科学参謀も左手の指をゆっくりと動かし、その単眼に光が宿る。

 爆発による熱と衝撃で覚醒したのだ。

 

「ははは……」

 

 茫然としていたメガトロンの発声回路から、笑いが漏れてきた。その笑いは科学参謀の覚醒と呼応するようにだんだんと大きくなり、やがて哄笑へと変わった。

 

「フハハハ、ハァーッハッハッハッハ!! でかしたぞスタースクリーム!!」

 

 メガトロンの言葉に、当のスタースクリーム自身が唖然としている。

 破壊大帝は残された腕を大きく広げて、腹心の覚醒を喜ぶ。

 

「さあ、目覚めるがいい! 我が片腕、ディセプティコン科学参謀ショックウェーブよ!!」

 

 その声に応えるが如く、残った氷を割ってショックウェーブは完全に復活した。

 濃紫の筋骨隆々とした男性を思わせるボディに右腕の巨大な粒子波動砲。

 水牛のような角と、そして赤く光る単眼。

 その大きさはメガトロンに並ぶほどの巨体だ。

 威容な迫力を滲ませ、ショックウェーブは主君を見やる。

 

「メガトロン様。状況はどうなっているのですか?」

 

 その声は意外にも穏やかなものであり、前評判のような危険人物には思えない。

 

「ここはゲイムギョウ界だ! 我らは目的の次元に辿り着いたのだよ!」

 

 メガトロンが嬉しそうに言うと、ショックウェーブはその動向に警戒するオートボットたちと、空を飛ぶ女神たちを見回す。

 

「状況把握。メガトロン様、私めは今は本調子ではありません。論理的に考えてここはいったん退却するのが得策かと」

 

 穏やかに、平静に、撤退を進言するショックウェーブ。

 そしてそれにメガトロンは頷いた。

 

「そうだな。おまえがそう言うなら、そうしよう」

 

「英断に感謝いたします。……ドリラー」

 

 ショックウェーブは穏やかな声で主君を称えると、自分のドローンに指示を出す。

 こちらも完全に覚醒した巨大なドローン、ドリラー。

 その全貌は、巨大な環形動物(ミミズ)を思わせる金属生命体だ。

 大口の中には幾重にも円形シュレッダーが重なり、巨大な本体からは何本もの触手が伸びている。その先端は丸鋸状になっていた。

 ドリラーは巨大な頭を地面に突っ込むと、そこに穴を掘り始めた。この巨大なドローンはその姿から想像できるとおり、穴掘りを得意とし地下を超高速で移動できるのだ。

 長大な身体がメガトロンとショックウェーブを巻き込み、もろとも地面の下へと消えてゆく。

 

「また会おう、オプティマス、そして女神どもよ!」

 

 メガトロンは機嫌よさげに声を上げた。

 ドリラーの触手が伸ばされ、ついでとばかりにスタースクリームらディセプティコンたちを巻き取って回収してゆく。

 そしてドリラーは、ディセプティコンごと地下へと完全に姿を消した。

 

「なんということだ。ショックウェーブが蘇ってしまった……」

 

 警戒を解いたオプティマスは愕然として呟いた。

 

「これで、ディセプティコンが大幅に強化される可能性も出てきたな……」

 

 ジャズが珍しく深刻な様子で言う。

 ショックウェーブの科学力があればそれも十分可能だろう。

 

「大丈夫よ。私たちがいる限り、ディセプティコンの好きにはさせないわ。そうでしょ、オプっち」

 

 努めて明るく、ネプテューヌがオプティマスに声をかける。

 

「……そうだな」

 

 オプティマスはそう答えた。そう答えるより他になかった。

 思えばゲイムギョウ界を訪れてから初めての敗北だ。

 これからの戦いはより厳しくなっていくだろう。

 だが、女神とともにある限り、自分たちは負けるわけにはいかない。

 

 女神たちとオートボットたちを雲の切れ間から覗く太陽が照らしていた。

 




ついに復活したショックウェーブ。
しかし彼の初陣は次々回の予定です。
次回はノワールのストーカーが登場。
そして新たな女神が……

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