超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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EXTRA STAGE:4 これにて一件落着……?

 あれから、どれくらいたったでしょうか?

 卵から孵った子供たちを育てるうち、女神の心から憎しみが消えていきます。

 獣の姿をした子供たちも巣立っていき穏やかに暮らす女神でしたが、ある時のこと、遠い地で新しい女神が誕生したという噂を耳にしました。

 

 ちょっと気になり、何人かの子供たちと共に、新しい女神に会いにいってみることにしました。

 野を越え、山を越え、河を越えて、辿り着いた国で見たものは、民の上に君臨する女神でした。

 重税を課し、周りの言葉を聞かず、好き勝手に振る舞う姿は、昔の自分その物。

 

 自分と同じ過ちは犯させまいと女神は、新しい女神の居城に乗り込みます。

 

 獣たちを引き連れた女神を、新しい女神やその取り巻きは怪しみ、捕らえようとします。

 しかし、ロボットの姿に変身した獣たちに兵士たちはまるで歯が立ちません。

 女神と新しい女神の戦いが始まります。

 若く強い新しい女神ですが、古い女神は獣たちからの信仰を受けているので敵いません。

 

 倒れた新しい女神に、古い女神は言います。

 

「あなたも一人だったのね?」

 

 古い女神は、新しい女神の孤独を見抜いていたのです……。

 

  *  *  *

 

「ってな感じで前回入れ忘れた話が入った所で、大女神様って、レイさんだったの!?」

「こらお前! 不敬だぞ!! っていうかメタいなおい!」

 

 驚愕してメタな声を上げるネプテューヌにメガトロンがやはりメタに注意する。

 それを大女神……レイが止めた。

 

「構いません。皆さんも、どうぞ楽にしてください」

「失礼した。お会いできて光栄の至りだ。自己紹介は不要だろうか?」

 

 オプティマスは完璧な角度で会釈する。

 レイはフッと笑みを浮かべた。

 

「ええ。貴方がたのことは、仮面を通して見ていました。……故に、最初にお詫びを。ザ・フォールンにピーシェちゃんが誘拐されることを防げず、申し訳ありませんでした」

 

 真摯に頭を下げるレイに、ビーストフォーマーたちが慌てる。

 

「そんな、大女神様……!」

「マスクで見える未来は限定的です!」

「それは言い訳になりません。見える未来に屈するのは、罪です」

 

 ビーストのオプティマス・プライマルとメガトロンの声にも、レイは頭を上げない。

 オートボットのオプティマスは、チラリと脇のネプテューヌ見た。

 紫の女神は、困ったように自分の後頭部を撫でていた。

 

「いやー……そんなこと言われても別に気にしてないし? ねえ?」

 

 恋人の声に厳かに頷いたオプティマスは、次いでスタースクリームと当のピーシェに視線をやる。

 ピーシェは呆けた様子で首を傾げていたが、彼女に塁が及ぶことを警戒しているらしくスタースクリームは鋭く目を細めていた。

 超次元でのエディンの件は紆余曲折あったが、この二人にとっては良い結果に終わったと言える。

 犠牲者は零ではないが、その責任をピーシェやこちらのレイに求めるのは筋違いだろう。

 

「ネプテューヌたちがそう言うのなら、私としては言うことはない。……どうか顔を挙げてください。ザ・フォールンはすでに報いを受けました。この件は、すでに終わったことなのです」

「……ありがとうございます」

 

 オプティマスに言われて、レイはようやっと頭を元の位置に戻した。

 しかしその顔は、まだ真面目な物だった。

 

「……さて、皆さんが来た理由は知っています。コウリャクボンの花ですね? 少し待ってください」

 

 皆が見る中でレイは花畑の中まで歩いていき、数本の白い花を摘み、ネプテューヌたちに差し出した。

 

「ピーシェちゃんの件のお詫びというワケではありませんが……はい、これがコウリャクボンの花です!」

「こ、こんなアッサリ……まさにお使いイベント後の徒労感……!」

 

 例によってメタいことを言い出すネプテューヌだが、レイはそこで視線を巡らした。

 

「さて……これをまず使うべき人がいるようですね」

「…………」

 

 視線の先にいたのは、この間にも二人のベールの間に挟まれた……表情を固まらせたアリスだった。

 ベール……彼女の姉である超次元のベールは、目をカッと見開くと次いで妹を見下ろした。

 

「アリスちゃん、あなた……まさか、あなたもバットエンド症候群に……!」

「…………」

 

 苦虫を噛み潰したような顔のアリスに、超次元ベールの顔が険しくなっていく。

 

「考えてみれば、他の国の候補生たちは皆、病気に罹ったのにアリスちゃんだけ無事、というのがおかしな話でしたわね。出自が特殊だからだと思っていましたが……」

「おそらく、その子は悪夢に耐性があるのでしょう。辛い現実を体験した者は、そう簡単には夢に溺れないものです」

 

 レイがベールの疑問に答えた。

 

「いつからですの?」

「…………みんなが寝込む、少し前からです」

「何故、言いませんでしたの!」

「……こうして動けてるんですから、いいじゃないですか」

「よくありませんわ!! もし、こうしている間に倒れてしまったら、どうする気でしたの!!」

 

 怒鳴られて、アリスはビクリと肩を震わせる。

 たまらず、神次元のベールが助け船を出す。

 

「あ、あの、もう一人のわたくし? そんなにキツク言わなくて……」

「いいえ! アリスちゃんが、この場で動けなくなれば我々の行動にも支障をきたしますわ! 感染するような病気ではないからいいようなものの、他の次元の女神にまで迷惑を懸けて、リーンボックスの恥を晒す気でしたの!!」

「そんな言い方……!」

 

 もう一人の自分の物言いに、神次元ベールはムッとするが、超次元ベールの眼に涙が光っていることに気付き、口を噤む。

 眼を泳がせるアリスの正面に立ち、超次元ベールは問う。

 

「アリスちゃん……どうして、言ってくれませんでしたの?」

「怖かったんです」

 

 呟くようにして、アリスは言葉を漏らした。握りしめた拳が、震えている。

 

「恐ろしい夢を見たんです。その夢では、私はディセプティコンのスパイのままで、ある任務を受けて動いていたけど失敗して……死ぬ。そういう夢です」

 

 瞳を揺らしながらも淡々と語るアリスに、神次元のベールは息を飲む。

 

「夢の中で死ぬ瞬間、思ったんです。ああそうか、こっちが現実なんだって。姉さんやネプギアたちがいる、暖かい世界の方が夢なんだって。……どうしようもなく、納得してしまったんです。だから言えなかった。悪夢のことを話したら……本当に、夢から覚めて、あの何処とも知れぬ世界の路上で、プリテンダーの姿で転がっているんじゃいか? そんな気がして……ごめなさ、きゃ!」

 

 超次元のベールは、段々と震えていく妹をキツク抱きしめた。

 

「ね、姉さん……」

「アリスちゃん、あなたのいる現実はここですわ。あなたは、わたくしの妹……だから、もっとわたくしのことを頼ってください」

「は、はい。……ごめ、いえ、ありがとう」

 

 抱かれるに任せるアリスの顔が柔らかくなり、そして目じりに涙が浮かぶ。

 神次元のベールは、複雑そうな笑顔で抱き合う姉妹を見ていた。

 もう一人の自分とアリスが、単なる憧れからくる姉妹ゴッコではなく、確かな絆で結ばれた本物の姉妹だと分かってしまったから。

 

「神殿の中へ。調理場があるので、まずはその子にこの花を煎じて飲ませてあげてください」

「分かった。感謝します、お美しい大女神様」

 

 レイの指示にジャズがあえてふざけた調子で応じた。

 

「俺らが案内するじゃん!」

 

 神官と僧兵たちの案内でジャズは、ベールとアリス姉妹を伴って、神殿の中へ入っていく。神次元のベールは、名残惜しげながらもそれを見送った。

 残ったのは、オプティマスとネプテューヌ、ショックウェーブ。

 五か国の女神と五部族の族長、神官長と僧兵長。

 そしてスタースクリームだ。

 

 レイ……大女神は、これまでとは違う威厳を感じさせる表情で、オートボット司令官の顔を見つめた。

 

「さて、ここからは少し、大人の話になります」

「分かっている。我々にコウリャクボンの花を渡すだけなら、ここまで来させるのは不自然。増して、女神や族長を集めるとなると……」

 

 オプティマスの言葉に女神たちは顔を見合わせるが、族長たち……その中でもタイガトロンとブラックアラクニアは難しい顔をしていた。

 

「そう、話し合うためです。あなた方と、我々の、関わり方について」

「ほえ~?」

「かかわり?」

 

 状況が飲み込めていないプルルートとピーシェは揃って首を傾げる。

 代わりと言うようにスタースクリームが説明を始めた。

 

「俺らディセプティコンやオートボットと、ビーストフォーマーが関われば、混乱が起きるだろう。それについての話し合いだ」

「ビーストフォーマーは、遠い昔にサイバトロンから出奔した種族。溝は簡単には埋まらん」

 

 ショックウェーブが補足すると、彼の主君と同じ名を持つ僧兵長がギラリと目を光らせた。

 

「カーッペッ! 何を言う! 俺様たちの先祖は、お前たちに追い出されたのだ!! それを今更どの面下げて現れた? 貴様らとの交流など願い下げだ!!」

「ダー、それには同感だ」

「ま、当然ッシャね」

 

 ディセプティコンの破壊大帝の激しい怒りを見せるメガトロンに、スケイルウォーカーとシャドウウォーカーの族長たちも同調する。

 

「しかしだな。それももう一万年も前のことではないか。我々は手を取り合うことが出来るはずだ」

「甘い! 貴様って奴は糖蜜かけた芋屋の羊羹より甘い!! こいつらが我らを差別できぬと誰が言える!」

 

 ビーストのオプティマスの言葉にも、メガトロンは咆哮で返す。

 

「しかし、今日一日共にいる限り、オプティマス殿は信用に足る人格者でござる」

「そりゃ、オプティマスはな。しかし、他の連中がそうとは限らない。……ディセプティコンにゃ、有機生命体蔑視の価値観が根付いてるからな。緩和されてきてるとはいえ、一日二日でなくなるもんじゃない」

 

 タイガトロンのフォローに、スタースクリームが冷徹に駄目だしをする。

 オートボットのオプティマスは険しい顔のまま重々しく意見を出す。

 

「正直に言わせていただく。サイバトロンとしても今は長く続いた戦争が終わったが故の混乱期にある。今、ビーストフォーマーと交流を始めるのは、時期尚早ではないかと思う」

「そうだね。仮に関わっていくにしても、段階を踏んでいくべきだと思う」

 

 エアレイザーは、オプティマスの言葉に同意するが、メガトロンは尚も納得しない。

 

「いいや、一切関わるべきではない! そもそもキャラ被り過ぎでややこしいんだよ! 地の文も大変なことになってんじゃねえか!!」

「あーそれは分かる。タダでさえキャラ多いのに、同名キャラが増えたらもうどうしようもないもんね!」

「ネプテューヌ!?」

 

 メタい理由から危惧するネプテューヌにオプティマス(オートボット)は目を丸くする。

 

「んん! とにかく、トランスフォーマー同士の交流については、まだ議論が必要と言うことか」

「交流、断絶、どちらになるにせよ、それ相応の準備が必要だ。それに種族単位では無理だが、個人個人としての交流については、禁ずるべきではないと思う」

 

 これからどうなるにせよ、後腐れがないように手を回さなければならない。

 が、個人的な友情までは否定しない。

 つまり、結論としては……保留。

 後日、改めてじっくり話し合うべきだろう。

 

「それでいいと思うでござる」

「同じく」

「エーイ、異議なし」

「ダー、賛成」

「今はだけどッシャ」

 

 五部族の長たちも、それに賛成する。

 

「そんな玉虫色の回答があってたまるか! ここはガツーンッと……」

「メガトロン」

「ガツーンッと、そんな感じでいいんじゃないかな! かな!」

 

 なおも何か言おうとするメガトロンだが、レイの目が座るのを見て掌を返す。

 どうも、彼女には頭が上がらないらしい。

 

「では、後は女神同士の交流についてですが……」

「それについては、大丈夫なんじゃないでしょうか? すでにプルルートとピーシェがガッツリ関わってますし」

「そうだね~。もうねぷちゃんたちとは~お友達だもんね~」

 

 次の議題をレイが出すと、これまで黙っていたノワールが意見を言い、プルルートもノンビリと同意する。

 その言葉にブランとベールも頷き、ピーシェも声を上げる。

 

「ねぷてぬたち、ぴぃのかぞく!」

 

 こちらは、揉めるまでもないようだ。

 自分たちと違い円満に纏まった女神たちを見て、タイガトロンは溜め息を漏らす。

 

「女神とは平和な精神の持ち主でござるな……拙者はいつも思うのでござる。何故、我々は女神のようには生きられないのかと」

「女神だって、喧嘩もするし間違いも犯すけどね」

「その度に、大女神様に叱られたしね」

 

 対し、ノワールとブランは懐かしげに苦笑する。

 レイもまた、穏やかに笑んだ。

 

「私もまた、かつては間違いを犯した身。……遠い昔には、『世界に復讐だー!』とか言ってた時代もありましたし」

『ええーッ!?』

「まあ、子供たちを育てていたら、どうでもよくなっちゃいましたけどね」

 

 思わぬ告白に目を剥く一同に、レイは悪戯っぽい顔をする。

 一方でネプテューヌは何かを納得したようだった。

 

「なんて言うか、あなたもやっぱり『レイさん』なんだね」

「ええ、……全ての次元の私が同じようにとはいきませんが、ここにいる私はあなたの知る『レイ』と同じく、子供や後進を育てることに意義を見出したレイです」

 

 穏やかに語るレイに、ネプテューヌも微笑み返す。

 かつてオールスパークの意思に触れたネプテューヌと、トリプティック・マスクを通して様々な世界を見通せるレイの二人の間でだけ、分かる何かがあるようだった。

 

「……どうやら、話は纏まったようですわね」

 

 ここで、アリスを連れていったベールが神殿の中から出てきた。

 

「ベール! アリスちゃんは?」

「煎じ薬が効いたようで、今は眠っていますわ」

「そっか、良かったね!」

 

 ニパッと笑うネプテューヌに、ベールも安心したように笑む。

 ジャズも明るく言う。

 

「これで後は、俺たちの次元に戻ってネプギアたちを助けるだけだな」

「ああ、そうなる」

「よかったね~」

 

 厳かにオプティマスが頷くと、プルルートもニッコリと笑顔を浮かべる。

 

 これで一件落着……そんな空気が流れていたのだが。

 

「ところでプルルート。これまで自重していたのだが、そろそろ答えを教えてくれないか?」

 

 ショックウェーブだ。

 状況が状況なので、これまで黙っていたが、とりあえずの一区切りと見て話を切り出したらしい。

 彼が求める答えとは、当然告白の返事である。

 

「ほ、ほえぇ? な、なんのことかな~?」

「とぼけないでもらおう。プルルート、私と交際するかどうか、返事をもらいたい」

「え、えっと~、それは~……」

 

 顔を赤くして後ずさるプルルートだが、ショックウェーブはゆっくりと歩を詰めてゆく。

 

「YESだろうか? それとも、NOだろうか?」

「ふえぇ……み、みんな助けて~」

 

 助けを求めて辺りを見回すが、すでに全員が遠巻きに見守る大勢に入っていた。割と楽しそうに。

 

「あのプルルートが押されてる……」

「押しには弱いタイプでしたのね」

「むう……! なんなのよ、アイツ!」

 

 女神たちは興味深く見守っているが、ノワールだけは不機嫌そうに腕を組んでいた。

 

「ダー、ノワールはプルルートが大好きだからなぁ」

「あー、こっちのノワールは割りとガチなんだ……」

 

 ダイノボットとネプテューヌが話していると、プルルートはいよいよ悲鳴染みた声を出す。

 

「みんな~! 助けてってば~!」

「論理的に考えて、返答してくれればいいだけだ。……NOならば、理由まで聞きたい」

「ううう……」

 

 単眼をギラギラと光らせるショックウェーブに、プルルートは明らかに怖気づく。

 メガトロンが用意した椅子に腰かけ、レイはもう、何かキラキラしながら観戦(?)していた。

 

「プルルートさん。ちゃんと答えてあげなさい。優柔不断は男性でも女性でも褒められたものではありませんよ」

「そーそー、早く答えればいいんだって!」

「ファイト、ですわ!」

「ぷるると! がんばれー!」

 

 いつのまにやらテーブルを囲んでお茶を飲んでいるネプテューヌと超次元ベール、無邪気に応援するピーシェ。

 なおネプテューヌは、自身も結構な恋愛下手であったことを大きく棚に上げての発言である。

 プラネテューヌの女神は政治のセンスばかりでなく、恋愛のセンスにも難があるのかもしれない。

 

「さあ、プルルート。答えを……!」

「あ、あ、あ……!」

 

 周りに味方はなく、もはや四面楚歌。

 憐れプルルートはこのままショックウェーブの毒牙(意味深)に罹ってしまうのか?

 

「あ……あたしに勝ったら、考えてもいいわぁ!!」

 

 プルルートの体が光りに包まれ、その姿があどけない少女から、成熟した女性の物へと変わる。

 

「おおお……!」

「げえッ!」

「ひぃいいい!」

 

 普段何をされているのやら、蜂やプテラノドン、蠍の姿の神官たちが恐れおののき、エアレイザーはタイガトロンの背に隠れ、ビーストのオプティマスも冷や汗をかいている。

 こちらでも、やはりプルルートのドSっぷりは知れ渡っているようだ。

 

「うふふ、初めからこうすれば良かったのよぉ。さあ、ショッ君。踊りましょう」

 

 女神態のプルルートは髪をかきあげ、余裕を取り戻したようで、蛇腹剣を手元に召喚する。

 一方、当の科学参謀は単眼を怜悧に光らせ、菖蒲色の女神の姿態を上から下まで眺め回す。

 

「ふむ。前々から思っていたのだがね。変身時の君の恰好は、露出度が高く少々扇情的に過ぎる。臀部など、ほぼほぼ着ていないと同じだ。それでは男性の劣情を煽ってしまうぞ」

「せ、扇情!? れ、劣……!」

 

 淡々と放たれた思わぬ言葉にプルルートは自分の肩を抱いて動揺する。

 いつもの女王様っぷりはどこへやら、羞恥心に頬を染めた。

 スタースクリームは以前の科学参謀なら考えられない言動に、排気する。

 

「こいつ、変な方向に吹っ切れたなぁ……」

「……ところで、勝てば考えてくれるのだったな。では一勝負といこう」

 

 右腕の粒子波動砲を展開し、ショックウェーブは構える。

 さすがにここで戦われるのは問題なので、オートボットのオプティマスが止めようとするが……。

 

「ううう、ショッ君の、バカァアアアア!!」

 

 プルルートは翼を広げて、制止する間もなく飛び去ってしまった。

 

「ああ、行ってしまったか……」

「テメエがセクハラ紛いのこと言って強引に迫るからだぞ。……ま、あの調子だと脈はありそうだから、何かフォローしとけ。そうだな、プレゼントでも贈るといい」

 

 空を見上げるショックウェーブの肩に手を置き、スタースクリームはアドバイスを送る。

 科学参謀は特に落ち込んではいないようだった。

 

「そうしよう。しかし、正直なところプルルートが羞恥に震える姿を見ると…………滾る」

「そ、そうかい……」

 

 平時と変わらない様子で、しかし単眼を危険に輝かせる元同僚にドン引きしながらも、あの女神とはある意味お似合いなんだろうなと思うスタースクリームだった。

 

  *  *  *

 

 その後、アリスが目覚めるのを待った一同は、神次元レイの力によって超次元へと送り返してもらった。

 唯一人、ショックウェーブだけが神次元に残り、簡易スペースブリッジの仮設に取り掛かった。

 ほどなくしてスペースブリッジは開通したが、その間プルルートがショックウェーブから逃げ回るのが風物詩になったそうな。

 

 

 

 

『で、その結果がこれか』

「そういうことだ」

 

 超次元の新プラネタワー内。

 再建されたタワーの内部は、トランスフォーマーたちが動ける構造になっていた。

 オプティマス……オートボットのオプティマス・プライムは、サイバトロンにいるメガトロンと通信していた。

 

「きゃはは! ねぷぎゃーとあそぶー!」

「返してー! このあいだ買ったばかりの新機種なのー!」

 

 その前では、回復したネプギアが自分のNギアを持って走り回るピーシェを追いかけ、それをネプテューヌとプルルート、コンパとアイエフ、バンブルビーにラチェットとアーシーが見守っていた。

 何故か、タイガトロンとエアレイザーもいる。

 あの後、限定的にだが神次元の女神やビーストフォーマーが、こちらに訪れるようになったのだ。

 各国の女神たちは、もう一人の自分との出会いを、肯定的に受け入れていた。

 

「……それで、お前はどう見る?」

『他の連中は物の数ではないが、あの俺の名を持ったオオトカゲは曲者だな。奴から野心を感じる。用心した方がよかろう』

「向こうのレイが首根っこを掴んでいるようだが……だからこそ、ストッパーが無くなった時が恐ろしいか」

『幸いにして、向こうの連中はレイとイストワール以外に次元を超える手段を持っていない。スペースブリッジをこちらが厳重管理すれば、出来ることを限定できる』

 

 楽しそうな女神たちとは逆に、極めてシビアな会話をするオプティマスとメガトロン。

 異世界交流も前途多難だ。

 

『ふん! 貴様が選んだ道だろうが。今更、後戻りはできんぞ』

「……そうだな。では、後でまた連絡する。通信終わり」

 

 手厳しい励ましに苦笑して後で通信を切ったオプティマスのもとに、愛しい恋人が駆けてきた。

 手には器に盛られたプリンを持っている。……何故か、形が崩れているが。

 

「オプっちー!」

「ん? ネプテューヌ、どうしたんだい?」

「これから、みんなで乾杯するんだ!」

「司令官! これを、どうぞ!」

 

 そうネプテューヌが言うと、こちらに歩いてきたバンブルビーが飲み物の入ったグラス……当然、トランスフォーマーサイズ……を差し出した。

 

「む、そうか。いただこう」

「よーし、それじゃあ乾杯だー!」

 

 オプティマスがグラスを受け取ると、ネプテューヌはプリン入りの器を掲げた。

 

「プラネテューヌに! 三つの世界に! ゲイムギョウ界とサイバトロンに……」

『カンパーイ!!』

 

 笑顔でグラスを掲げる女神や人間、トランスフォーマーたちに、オプティマスは改めて笑顔になる。

 

 そうだ、これが我々の選んだ道。我々の掴んだ未来。

 

 問題は多々有れど、一つ一つ地道に乗り越えていこう。

 

 トランスフォーマーが力を合わせたならば、女神と共にあるのなら、人間たちが力を貸してくれるのなら、きっと不可能ではないはずだ。

 

 そして改めて実感する。

 

――ああそうか……。

 

「私は今、とても幸せだ」

 

 ふと呟いた後で煽ったドリンクの味は、格別だった。




これにて、神次元編、終わり。

次回は、ショートショートかレイとメガトロンとリージ・マキシモの話を書こうかな、と思っています。
それが終わったら、多分この作品は本当におしまいです。




……ユニクロン編、書くかもしれません。(期待しないでくださいね)

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