超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION 作:投稿参謀
昔々ある所に、一人の女神がいました。
女神は国を治めていましたが、酷く傲慢で強欲でした。
逆らう者は容赦なく弾圧、民に重税を課して贅沢三昧。
そんなでしてので、怒った国民たちに国を追い出されてしまいました。
何故こんなことになったのだろう?
考え続けた女神は、自分の罪から目を逸らし、いつしか自分を追い出した国民たち、さらには女神というシステムそのものに強い憎しみを抱くようになっていました。
いつか、必ず復讐してやる!
女神も、人間も、世界も、全部ぶっ壊してやる!!
激しい憎悪に身を焦がし、荒野を長い間彷徨った女神は、ある時、高い山に入り込みました。
本当は街を目指していたのですが、彼女は酷い方向音痴だったのです。
当然の如く迷ってしまった女神でしたが、山の奥で、奇妙な物を見つけました。
それは、金属で出来た船でした。
不審に思いつつも船の中に入った女神が見た物は、無数に並ぶ緑色に光る卵でした。
半透明の卵の中では何かが蠢いています。
不気味に思いその場を後にしようとした女神でしたが、卵の一つがブルブルと震えて罅が入り、そして……。
* * *
「やってきました。大女神様の山!!」
「山~!」
「やまー!」
ネプテューヌが両腕を掲げて叫ぶと、プルルートとピーシェもそれに倣う。
彼女たちに聞こえるよう、ノワールは大きく溜め息を吐いたが、それも効果が薄いようだ。
ここは大女神の住まう霊峰、その麓。
無事に合流した一同であるが、蜘蛛に変形するブラックアラクニアは不機嫌そうに腕を組んでいた。
「まったく、シルバーボルトの奴……」
「そう拗ねないで。彼が一番好きなのは、間違いなく君だからさ」
苦笑い気味のエアレイザーに言われても、ブラックアラクニアは鼻を鳴らすばかりだ。
……ちなみに、エアレイザーは女性である。
女 性 で あ る !
大事なことなので、二回いいました!
それはともかく、一党の目の前には、大きな石造りのアーチ門が聳えていた。
これこそ山の入り口である。
「全員いるようだな。ではいくとしよう」
「待ちいや!!」
先に進もうとするオプティマスだが、突然アーチの前の地面が盛り上がった。
土の下から現れたのは、メタリックな巨大蟹だ。
二本の鋏が、見るからに物々しい。
「ここを通るからには、儂に話を通してからじゃ! この門の番人! 大女神様の地の守護するランページにな!! 変身!」
巨大蟹は、ギゴガゴと音を立てて二足歩行のロボットに変形する。
蟹の節足が背中から突き出た恐ろしげな姿で、口が横に開くようになっている。
「おおー! ……って、何かコンストラクティコンの人と名前とキャラ被ってない?」
「じゃかわしい! こっちが元祖じゃ!!」
ネプテューヌの声にツッコんだランページは自前の武装をオプティマスに向けた。
その前に、デプスチャージが立ち塞がった。
「おお? なんじゃい、デプスチャージかい。またぶちのめされに来たんか」
「ランページ、貴様という奴は相も変わらず……今日こそは仲間の仇を取ってくれる!」
「おうおう、やってみい。仲間と同じ目に合せたるわ」
闘志を漲らせるデプスチャージに、ランページは挑発的な態度を取る。
超次元のベールはアリスを挟んで隣の神次元のベールにたずねた。
「あの二人、何か因縁が?」
「ええ、ランページは昔、手の付けられない暴れん坊でしたの。それで、デプスチャージが部下たちと一緒に捕まえにいって、その時に……」
「まさか、殺され……」
「いいえ、全員が己の無力さを感じ転職してしまいましたの」
「あらら?」
思わぬ顛末に、超次元ベールはガクリとなる。
とにかく、その時のことで仲が悪いらしくガンをつけ合うデプスチャージとランページだが、その頭上から声がした。
「ランページ、だめ!」
一同が見上げれば、一羽の美しい鳥……いやその先祖である恐竜と鳥の中間に位置する、所謂始祖鳥が舞い降りてきた。
始祖鳥は緑と黄色の美しい羽根を羽ばたかせて変身する。
「トランスミューテイト、変身!」
現れたのは、背中に翼を備えた小柄で細身な女性ビーストフォーマーだ。
トランスミューテイトと言うらしいその女性は、ランページの前に立つ。
「ランページ、大女神様、言ってた。お客様、歓迎する」
「お、おお……そうじゃったかのう?」
「そう。ボク、ちゃんと聞いてた」
自分より大柄なランページに対しても、トランスミューテイトは物怖じする様子はない。
そんな姿に、ネプテューヌは傍らのスタースクリームに聞いてみる。
「あの子は?」
「トランスミューテイト。大女神付きの女官なんだと。ランページのお目付け役だ」
ランページは困ったように後頭部をカリカリと掻く。
「まあ、ミューちゃんが言うんなら、そうなんじゃろう。……んなワケで、すまんかったの。先、進んでええぞ」
今までの厳めしい様子は何処へやら。
軽い調子で手を合わせると、蟹の姿に戻った。
「この先の道をずーっと登ってくんじゃ。そうしたら、広場があって、その先に大女神様の座す神殿があるけんの」
「ええー? 山登りするのー」
ランページの説明に、ネプテューヌは不満を漏らし、一同は苦笑いする。
するとトランスミューテイトは、門の向こうを指差した。
「ダイジョブ、ロープウェイ、ある」
「あるんだ!?」
* * *
トランスフォーマーも乗れるサイズという中々に無茶な大きさのロープウェイに乗って着いたのは、山の中腹にある広い場所だった。
濃い霧に包まれた広場にはいくつもの石像が並んでいた。
それらは、かつての女神や各部族の歴代の族長たちを模した物だった。
石像の間を進むと、霧の向こうから大小合わせて八つの影が現れた。
ゴリラ、サイ、チーター、ネズミ。
ティラノサウルス、サソリ、ハチ、プテラノドン。
計八匹の動物たちだ。
「安心して。この地を管理する神官と、大女神様を護る僧兵たちよ」
ノワールの言うように、それらはビーストフォーマーであるらしかった。
族長たちが頭を下げると、神官と僧兵の中からゴリラとティラノサウルスが進み出た。
彼らがこの一団の長らしい。
「遠路はるばる、よくぞこられた、異邦の勇者よ」
「しかし、あまり歓迎されてるとは思わんことだ」
「神官長、僧兵長、お久しぶりでござる」
タイガトロンが代表して一礼する。
ゴリラの姿をした神官長が、厳かに頷いた。
「皆壮健そうで何よりだ。さて自己紹介させてもらうが、私は……」
「ねえねえ神官長。そんなシリアスな顔は止めて、早く先へ進めるじゃん」
「そーそー。今時の子はせっかちだからね。チュー」
厳かな雰囲気をぶち破るように、チーターの姿の神官とネズミの姿の神官が茶化す。
ゴリラの神官長は、不機嫌そうに後ろを向いた。
「うるさいよ! 校長先生怒るよ!」
「カーッペッ! 漫才はそこらへんにして、さっさとしろ!」
「ああ、すまん」
ティラノサウルスな僧兵長の一喝に、ゴリラな神官長は咳払いしてから変形する。
「オプティマス・プライマル! 変身!!」
「……オプティマス?」
名を聞いて首を傾げるオプティマス・プライム。
ゴリラからギゴガゴと変形した姿は、名と同じく何処かオートボット総司令官に似ていた。
「偶然なのだろうか? 私もオプティマスと言うんだ」
「おお! これは嬉しい偶然だな。思わず最高にハイッ!な感じになりそうだ!」
屈んだオプティマス・プライムの手を、オプティマス・プライマルが取る。
和やかな空気が流れるが、またしてもチーターが口を挟んだ。
「夢のダブルオプティマスか~、口煩いのが二倍じゃん」
「この調子だと、メガトロンもいたりして」
「いるよー! っていうか、こっちにもいるの?」
『いるの!?』
ネズミも調子を合わせるが、チーターと揃ってネプテューヌの呑気な声にビックリ仰天する。
「ちなみに、俺様がメガトロンです! 千葉トロンでも可! メガトロン、変身! チーバー!」
何故かノリのいい感じで、僧兵長がティラノサウルスから右腕が恐竜の頭その物であり、左腕に尻尾が変形した武器を持ったロボットに変身した。
やはり、何処かディセプティコンの破壊大帝に似ている。
「なんと……いやはや、これは不思議な縁だ」
オプティックを丸くしているオプティマス(オートボット)だが、ネプテューヌはふと疑問に思った。
「あれ? ぷるるん、神官長さんたちと知り合いでしょ? 名前、知らなかったの?」
「あんまり合わないからね~」
「う~ん、またしても後付の香り……」
そんなことを言い合うプラネテューヌの女神たち。
「まあ、とにかく、そろそろ大女神様の所に行こう。お待ちになっているはずだ」
「そうだな。行くぞ」
神官長と僧兵長は、揃ってビーストモードに戻ると仕草で着いて来るよう促す。
一同は顔を見合わせてから、その後ろに付いて歩き出した。
広場から先は崖に挟まれた階段になっていて、それを登っていくと両側の壁面にはこの次元の歴史が壁画として彫り込まれていた。
「先程の石像といい、見事な物だ」
「例え体は死して魂はオールスパークに還っても、彼らがここにいた証になる物を残そうという大女神様の考えによる物だ」
「あの方は、あんまりにも長く生きてるからな。……あの像も、この壁画も、一種の墓標ってワケだ」
「ここにいた証、墓標、か。……そう、そうだな。忘れさられるのは、悲しいことだ」
オートボットのオプティマスは、それを興味深げに眺めていたが、ビーストのオプティマスとメガトロンの説明に顔を曇らせる。
戦争で失われた多くの命。
敵と和解はしても、それでも忘れてはいけない。
「……それでさ! 大女神様って、結局どういう立場のヒトなの?」
重くなりかけた空気を換えるべく、ネプテューヌは隣を歩くブランに話題を振る。
「そうね……勘違いされがちだけど、大女神様は、女神の上位存在というワケではないわ。ただ、新しい女神が生まれると山を下りてきて、女神としての心得を教えてくださったり、少しの間、国造りをサポートしてくださるの」
「それに……辛い時とかに悩みを聞いてくださるわ。あまりに調子にのっていると、お叱りにくることもあるけど」
「それも、わたくしたちを想ってのことですわ。ですから、わたくしたちはあの方を女神にとっての女神、大女神様とお呼びするのですわ」
ブランだけではなく、ノワールやベールも何処か懐かしそうに語る。
それに倣ったのか、スタースクリームの肩に乗るピーシェも声を上げる。
「おおめがみさま、ままみたいなひと!」
「あとね~。大女神様はね~、いつもお面をしてるんだよ~」
「お、お面?」
「ビーストの祖、オニキス・プライムが遺した、
プルルートのお面という言葉を聞いて驚くネプテューヌに、先頭をいくビーストのオプティマスが振り返らずに言った。
それを聞いたオートボットのオプティマスやジャズは、おそらく、その仮面の力で別次元のネプテューヌたちの動向も知り得たのだろうと当たりをつける。
「我らビーストフォーマーにとって大女神様は、より直接的な信仰の対象だ。彼の方は、太祖オニキスよりビーストの未来を託されたのだ……さあ、着いたぞ」
ビーストのオプティマスの言う通り、階段を登り終えた。
霧が晴れると同時に両側の崖も途切れて視界が晴れ、目の前に広がっていたのは、色とりどりの花々が咲き誇る花畑だった。
ここは山の頂上近くの台地であり、さらに上から湧き出した水が川となって流れ込み、泉を作っている。
その畔に、巨大な金属の船があった。
おそらく宇宙船だが、船体は植物に埋もれるようにして朽ちかけており、その前に石と木で作られたこじんまりとした家が建っていた。
家の周りには、小規模な野菜畑も見える。
「あれが……」
「神殿?」
トランスフォーマーサイズではあるものの、神殿という言葉から連想される建物とはあまりにも違う様子に、オプティマスやネプテューヌは面食らう。
これでは、せいぜいお屋敷と言った程度だ。
家の前には一人の女性が立っていて、慈愛に満ちた笑みを浮かべながら、腕を広げた。
「ようこそ、遠き異邦の英雄と女神たち」
上等な仕立てだが、女神が着るにしては質素な服装だった。
灰色がかった青色の長い髪と、角のような飾りが特徴的な、優しそうな若い女性。
その姿を見て、ビーストフォーマーたちや神次元の女神たちがどよめく。
「おお……!」
「仮面を、外されておられる!」
「そんなに驚かなくても……異邦の方々に、礼を尽くしているだけですよ」
女性……大女神は穏やかに返した。
しかし、ネプテューヌ以下超次元の者たちは、その姿を見て別の意味で呆気に取られていた。
最初に硬直を解いて声を上げたのは、やはりと言うべきかネプテューヌだった。
「あ、あなたは……あなたは、レイさん!?」
「初めまして。と言っても、『そちらの私』とは、知り合いでしたね」
大女神……神次元側のレイは穏やかな、しかし悪戯っぽい笑みを崩さずに挨拶するのだった。
まだもうちょっとだけ続くんじゃよ。
今回の解説
ランページとトランスミューテイト
つまり、この次元ではこの二人は幸せに暮らしているんだよ!(迫真)
ミューちゃんの方のビーストモードが始祖鳥なのは趣味。
オプティマス・プライマルと千葉トロン
ついに登場、無茶ゴリラとアドリブ大帝。
しかしビーストのノリが再現できん。やっぱりアレは声優さんのパワーあってこそんなんです。
他の面子は初代ビーストの皆さん。
……タランス? あいつ別枠ですし。
トリプティック・マスク
オニキス・プライムの遺物。
過去、現在、未来、死後の世界まで見通せるチートアイテム。
レイでは完全には力を引き出せない。
大女神
そんなワケで、大女神の正体はレイでした!
……正直、拍子抜けですいません。