超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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EXTRA STAGE:2 エディンってどんなトコ? こんなトコ!

 神次元ゲイムギョウ界。

 ここでもネプテューヌたちの超次元ゲイムギョウ界と同じように、危険なモンスターや厳しい自然の驚異に晒されながらも、点々と存在する集落で人は生まれ、育ち、死んでいく。

 

 ……やや大げさだったが、つまり超次元も神次元も、人々の生活はそうは変わらないということだ。

 

 そんな集落の一つ、新興国家エディンに属するエネルギー系の鉱石を掘り出す鉱山の街『ネクロマ』が危機に陥っていた。

 

 動物を思わせる姿をした、しかしこの世界土着のビーストフォーマーとは異なるトランスフォーマーの一団が、街を襲撃しているのだ。

 

「ズワーイ! エビーム!」

「革命だっつーの!」

「ガッチガチやぞ!」

「てやんでい!」

 

 エビのような姿のビスクが口からビームを吐き、ヤマアラシのような姿のクイルファイアが棘を飛ばし、蟹に似た姿のクランプダウンが鋏をカチカチ鳴らし、鹿を思わせる姿のサンダーフーフが足踏みと共に衝撃波を発生させる。

 

 彼らは、種族的にはディセプティコンであるが、メガトロンの配下ではなく言わば犯罪者の集団だ。

 それがどうやってか、戦後のドサクサに紛れて神次元に紛れ込んだらしい。

 

「この街は、これから我々が支配する! この地は新たなディセプティコンの故郷となるのだ!!」

 

 一団を率いるのは狼男のようなディセプティコン、スチールジョーだ。

 鋭い爪を振るって、街の住人たちを脅し付けている。

 

 ……余談だが、『スチールジョー』とはイヌ科動物型金属生命体の総称である。

 つまり、彼の名前をゲイムギョウ界風に訳すると『犬』になる。

 

 ともあれ、彼は野心家であり狡猾で残忍な、つまり割とよくいるディセプティコンだった。

 

「さあテメエら! 俺たちにエネルギーを寄越しやがれい!」

「じゃないと、エビームの餌食だガニ!」

 

 一ヶ所に集めた街に住人たちに向けて、サンダーフーフとビスクが凄む。

 怯える住人たちだったが、一人の子供が空を指差して叫んだ。

 

「シーカーズだ!」

 

 その声に、誰もが空を見上げた。ディセプティコンたちでさえ。

 抜けるような青い空に、五つの影が舞っていた。

 

 一つは、幾何学的なタトゥーに覆われたジェット戦闘機。

 一つは、黒と紫のジェット戦闘機。

 一つは、水色のジェット戦闘機。

 この三機は、同型機だ。

 

 さらに一つは、黒い高高度偵察機。

 そして最後に、光る翼を背負った女性の人影。

 

「ッ! ええい、クソ! もう嗅ぎ付けやがったか!!」

「おいスチールジョー! ヤバくねえか!?」

「狼狽えるな! 人間を人質に取れ!」

 

 悪態を吐きながらも、スチールジョーは住人を人質に取ろうとする。

 が、その瞬間には一味を取り囲むようにしてシーカーズ……スタースクリームと仲間たちが降り立った。

 スタースクリームは呆れたように排気する。

 

「またお前らか……懲りねえな」

「まったくだぜ! これで何度目だ?」

「ガッツは買うがな。いかんせん、無謀ってもんだ」

 

 スカイワープは小馬鹿にしたような顔をし、ジェットファイアはコキコキと首を回しながら、杖を斧に変形させる。

 

「さあ、みんな逃げてくれ。ここは俺たちが!」

 

 サンダークラッカーは、率先して住民たちを避難させていた。

 

「悪いことしちゃ、メッ! 正義のヒーローが、懲らしめるよ!!」

 

 そしてこの国の女神たるイエローハートことピーシェは正義に燃える胸を張る。

 スチールジョーはグルグルと唸り声を出した。

 

「ほざけ! お前ら、いけ!!」

 

 号令を受けて、サンダーフーフ、ビスク、クイルファイア、クランプダウンがシーカーズに飛び掛かる。

 

「シーカーズ、ゴー!」

 

 スタースクリームたちは、こちらもピーシェの掛け声と共に敵を迎え撃った。

 

  *  *  *

 

 一行は手分けしてピーシェとブラックアラクニアを迎えにいくべく、ネプテューヌとオプティマス、プルルートとショックウェーブの組がエディンへ、ジャズと二人のベールにアリスの組がシャドウウォーカーの集落へと向かうことになった。

 そして、ここはエディン。

 神次元ゲイムギョウ界に突如現れた新女神イエローハートことピーシェを頂点とする新興国家である。

 

 その首都そのものは、ゲイムギョウ界ではよくある街であるが、その中心には壮麗な白亜の城が立っていた。

 並ぶ尖塔の上には、黄色地に白い翼を広げた鳥のシルエットを横倒しにしてEの字に見立てた紋章が描かれた旗がはためいていた。

 

 この城こそが、エディンの教会である。

 

 もっとも何もない所に一から建てたワケではなく、無駄な出費を嫌ったスタースクリームの指示によって元々あった古城をリフォームした物であるが。

 

 トランスフォーマーサイズの応接間では、ネプテューヌら一行がピーシェの帰りを待っていた。

 この応接間は、トランスフォーマーサイズの部屋のロフト部分に人間用の応接スペースが設えられていて、会話しやすい高さになるように調節されていた。

 

「いやー、どうもどうもお茶まで出してもらっちゃって!」

「ま、一応は客だからな」

 

 カップを手に持つネプテューヌの声に、机の上に乗ったホィーリーが答えた。

 この小ディセプティコン、地味にエディンではそれなりの役職に付いているようだ。

 

 一方で、立っているオプティマスは感心したように窓から見える町並みを眺めていた。

 

「それにしても、意外と栄えているようだな。エディンの国は」

「まあね。スタースクリームの奴、『エディンをギョウ界一の国にしてやるぜ!』って張り切ってるからな」

 

 ホィーリーの言う通り、スタースクリームは教祖的な役割をキチンとこなしているらしい。

 街は活気にあふれ、人々の生活に不足はないようだ。

 

「でも意外だよね! ……スタースクリームと部下たちが、ヒーローとして認識されてるなんて!」

 

 エディンの国民は卑劣漢な小悪党だったころの航空参謀を知らず、ピーシェのために東西奔走し仲間たちと共に空を華麗に舞う彼しか知らない。

 ネプテューヌの言う通り、今やスタースクリーム以下『シーカーズ』は国民的ヒーローだった。

 

 アニメも企画中らしい。

 

「ああ……そこはスタースクリームも問題視しててな。この国の女神はピーシェなんだから、自分に人気が集まりすぎるのはマズイって」

「だから、ピーシェの人気を得るために一緒に悪党退治か」

 

 部屋の隅に佇むショックウェーブが納得した時、応接間の扉が開き当のスタースクリームがピーシェを肩に乗せ、ジェットファイアを伴って現れた。

 

「よう、お帰り! 首尾は?」

「問題ない。ならず者どもは、残らず檻にぶちこんどいた、これでピーシェの人気も上がるはずだ」

 

 ホィーリーとスタースクリームは、事務的な会話を躱す。

 

「ぴーこ!」

「ねぷてぬー! ……ぴぃぱーんち!」

「ねぷぅうううッ!?」

 

 肩から飛び降りたピーシェに駆け寄ったネプテューヌが角度、速度、共に申し分ないパンチを喰らって昏倒するお馴染のやり取りをしている横で、オプティマスは元航空参謀に握手を求めて手を差し出した。

 

「久し振りだな、スタースクリーム。元気にしているようだな。教祖として上手くやれているようで何よりだ」

「……ああ、どうも」

 

 少し困った様子だったスタースクリームだったが、ジェットファイアに背中を小突かれて手を握る。

 それから、元同僚に視線を移した。

 

「ショックウェーブ」

「ふむ、論理的に考えて、身体に異常はないようだな」

「相変わらずだなテメエは」

 

 平坦な口調のショックウェーブに、スタースクリームは少し嬉しそうにニヤリとする。

 ネプテューヌはピーシェを抱き上げながら、元航空参謀を見上げた。

 

「あ、でもこの国、なんかイメージと違くない? ピーシェの国っていうから、もっとメルヘンな感じかと思ったよ!」

「そうだね~、もっとかわいい動物さんとか~、キレイなお花とか~、い~っぱいの方がいいよね~」

 

 その意見にプルルートも同意する。

 この国は、良く言えば質素、悪く言えば地味な雰囲気だ。

 

「そういうのは、今は良くても将来がな。……俺は、ピーシェをずっと餓鬼のままにしとく気なんかねえんだよ。いずれ方法を見つけて、成長させる」

「ま、ずーっと子供のままなんざ、逆に残酷だからな」

 

 決然と返してきたスタースクリームと、それを補足するホィーリー。

 頼もしさすら感じさせる彼らに、ネプテューヌの頬が緩む。

 どうやらピーシェは、素晴らしい仲間に恵まれたらしい。

 

「それで、ぴーこに一緒に来てほしいんだけど……」

「ああ、聞いてる。で、どうするよ、ピーシェ?」

「ねぷてぬと、いっしょいく!」

 

 即答するピーシェに、スタースクリームは苦笑する。

 こうなっては、止まるまい。

 

「分かった。じゃあ行くか」

 

 スタースクリームは屈んでピーシェを手に乗せる。

 

「よーし! いこ、ねぷてぬ!」

「おー! よろしくね、二人とも!」

 

 元気よく手を挙げるピーシェに微笑むネプテューヌ。

 オプティマスは嬉しそうに笑むと、副官に通信を飛ばす。

 

「ジャズ、こちらオプティマス。無事ピーシェたちと合流した。そちらはどうだ?」

『こちらジャズ。……『合流は』できた』

「? どうかしたのか?」

 

 合流は、の所を強調するジャズに、オプティマスはハテ?と思う。

 と、通信に混ざって声が聞こえてきた。

 

『待ってくださいデス、ブラックアラクニアさーん!』

『もう知らないッシャ! 好きなだけ、あのコウモリと仲良くしてればいいッシャ!』

『い、いやナイトスクリームさんとは、あくまで友達で……そもそもナイトスクリームさんは男デス!』

『おホモだちってワケね! ……もういいわ、新しい恋を見つけてやる!!』

『ノ、ノオォォ!』

 

 よく分からないが、非常に揉めているらしい。

 今にも鮮血の結末に至ってNice boat.(ナイスボート)な感じになりそうな台所ロマン劇場状態にオプティマスは少し顔を引きつらせた。

 さらに別の声も聞こえる。

 

『ね、姉さんたち、歩きづらいから手を放してください……』

『あら、もう一人のわたくし。アリスちゃんが迷惑そうにしていますわ。そろそろ離れてくださらない?』

『それはできませんわ、もう一人のわたくし。アリスちゃんは『わたくしの』大切な妹ですもの』

『ううう……どうしてこうなった! どうしてこうなった!!』

 

 どうやら、ベールたちがアリスを取り合っているらしい。

 ジャズは深く、そりゃもう深ぁく排気した。

 

『まあ、何とか連れてくから……大女神の所で落ち合おう』

「分かった。…………なにか、すまん。では、通信終わり」

『いいよ、別に。通信終わり』

 

 苦労性を滲ませるジャズを、オプティマスは不憫に思う。

 ちなみに、彼も副官に結構苦労をかけている。

 

「話はまとまったみたいだな。じゃあ行くか。……爺さん、ホィーリー、留守を頼む」

「おう、任せとけ」

「いってらっさい」

「いってきまーす!」

 

 部下たちに後を任せ、スタースクリームはピーシェを肩に乗せて部屋を出ようとする。

 ネプテューヌたちも後に続く。

 

「いやあ、やっと大女神様のトコだね! どんな人なんだろう? やっぱり、ベールをさらに大人っぽくした感じかな?」

「そいつは着いてみてのお楽しみさ。一つ言えるのは、必ず驚くってことだけだな」

 

 自身あり気にニヤリと笑うスタースクリーム。

 

 こうして、一同は大女神の住むという霊峰へと向かうことになった。

 

 果たしてネプテューヌたちはコウリャクボンの花を手に入れて、妹たちを救うことが出来るのか?

 そして作者はこの話はまとめることが出来るのか!

 

 待て次回!

 




そんなワケで、次回、大女神のもとへ!

今回の小ネタ
スチールジョー一味
何故か登場のアドベンチャー組。
面子は好み。

来週は土日に泊りがけの用事があるんで、遅れるかも。

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