超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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第176話 Love For Ever

 戦いは、終わった。

 

 終戦を宣言したオプティマスとメガトロンは、仲間たちの待つ広場へと降り立つ。

 

「お姉ちゃーん!」

「『司令官!』」

 

 最初に駆け寄ってきたのは、やはりネプギアとバンブルビーだった。

 その後ろには、ノワールら女神たち、アイアンハイドらオートボットたちがズラリと並んでいた。

 

「おおー、ネプギアー! 妹よー!」

 

 オプティマスが地面に降りると同時に分離したネプテューヌは、妹を抱きしめた。

 

「ネプテューヌ、終わったわね」

「これで、戦いも終わり……かしら?」

「みなさん、お疲れ様でした」

「おお、みんなー! おつかれー!」

 

 ノワールも、ブランも、ベールも、女神たちはお互いを労いあう。

 

「ふう、今回ばかりはさすがに死ぬかと思ったわ」

「あいちゃん、御苦労様でした!」

 

 オートボットたちも人間たちも称えあう。

 みな埃に塗れ、傷ついているが、その表情は輝くばかりに美しかった。

 

「ははうえー!」

 

 そこへディセプティコンたちもやってきた。

 もう、誰もそれを咎めたりはしない。……クロスヘアーズ以下若干名は不満そうな顔だったが。

 先頭を走るのは、青と銀の体色の雛、ガルヴァだ。

 後ろにはサイクロナスとスカージ、そしてロディマスも続く。

 

「ガルヴァちゃん! サーちゃん、スーちゃん、ロディちゃんも!」

 

 メガトロンから分離したレイは、やっと再会できた我が子たちを抱き留めた。

 勢い余って後ろに倒れそうになるが、メガトロンが合体前と同様に布一枚に包まれただけの、その身体を掌で受け止める。

 

「ははうえ! あいたかった! あいたかったです!」

「みんな……ええ、私も会いたかったわ! みんな無事で良かった……!」

 

 涙を流しながらキュイキュイと鳴く子供たちに、レイは優しく笑いながらも涙を流す。

 その姿を、メガトロンたちディセプティコンは優しい笑みを浮かべて見守っていた。……クロスヘアーズ以下若干名はもらい泣きをしていた。

 再会を喜ぶ親子に、ニッコリとしたネプテューヌは脇に立つオプティマスを見上げる。

 

「終わったね……」

「ああ……一先ずはだが」

 

 しみじみと呟くネプテューヌだが、オプティマスはまだ真面目な表情だ。

 メガトロンは、レイを放すと重々しい声を出した。

 

「これでめでたしめでたし、とはいかんぞ。この講和を受け入れられん者は、多くいるだろう。ディセプティコンにも、おそらくオートボットにもな」

「ああ、分かっている。それにサイバトロンを復興するためには、多大な時間と労力が必要だろう」

 

 厳かに頷くオプティマス。

 これから彼らには、サイバトロンの復興という大仕事が待っているのだ。

 

「しかし、今やそれは不可能なことではない。……メガトロン、お前も感じたはずだ。我々(トランスフォーマー)にも、シェアエナジーがあることを」

「ああ、……まったく、求めていた最高のエネルギーが、実は身内にあったとはな」

 

 ヤレヤレとメガトロンは首を振る。

 決戦の最中、オプティマスとメガトロンは融合していた女神たちを通じてシェアを感じ取っていた。

 そしてそれは、オートボットやディセプティコンからも確かに発せられていたのだ。

 

「シェアをサイバトロンに齎すことができれば、戦争の傷は癒され土地は豊かになる。ちょうど良く、暇そうな女神もいるしな」

「あら、お言葉ですこと。……貴方の隣が私の居る場所。お手伝いいたします」

 

 穏やかに微笑み自分を見上げるレイに、メガトロンもフッと笑み返す。

 そんな二人に、何故か満足げなオプティマスだったが、残る問題を整理しようとする。

 

「さて、後はシェアクリスタルか」

「オプティマス」

 

 そこへ、オートボットたちの間から一際大きな影が進み出てきた。

 グリムロック率いる、ダイノボットだ。

 

 古の騎士は、盟友の前に立つと、何かを差し出した。

 

 それは小さな丸と線を組み合わせた、女神の瞳に浮かぶ紋様と同じ形をした結晶……シェアクリスタルだ。

 

「グリムロック! これは……!」

「セターンの、シェアクリスタル。姫様たちに渡された。役立ててほしい」

「……いいのか?」

「我らには、もう、不要」

 

 驚くオプティマスに、グリムロックは静かに言う。

 女神を失った国に、もはやシェアクリスタルはいらない。

 ならば、必要とされる場所にあるべきだと、そう騎士たちは考えたのだ。

 

「……済まない、偉大なる騎士たちよ。感謝してもしきれない」

 

 頭を下げるオプティマスと、それに倣いメガトロンとレイも頭を下げた。

 それを見守っていたネプテューヌは明るく声を出す。

 

「良かったね! わたしたちも出来るだけ力を貸すからさ! スペースブリッジを使えば簡単に行き来できるから、もうお隣さんみたいなもんだし!」

「そうね。……もちろん、こっちも力や技術を貸してもらうけど」

 

 一方でノワールはしっかりとした意見を出す。

 傷付いたのは、サイバトロンばかりではない。

 ゲイムギョウ界も、この戦いの傷から立ち直るには時間と労力が必要だろう。

 

「ああ、もちろん……」

「論理的に考えて、それは難しいだろう」

 

 頷こうとするオプティマスだったが、ショックウェーブが割って入った。

 どうしたと視線で問うと、科学参謀は手に持ったスペースブリッジの中心柱に視線を落とした。

 

「ダークスパークのエネルギー波の影響で、スペースブリッジが極めて不安定な状態にある。このままワームホールを開いているのは危険だ。……そしておそらく、それでスペースブリッジは動作しなくなるだろう」

「そんな……!」

 

 僅かに動揺しているらしい声色に、女神たちはそれが真実だと悟った。

 トランスフォーマーたちは、自然とオプティマスとメガトロンに視線を集中させた。

 少しの逡巡の後で、総司令官は重々しく口を開いた。

 

「………………オートボット、故郷へ帰る時がきた」

 

  *  *  *

 

 かくして、オートボットとディセプティコン……トランスフォーマーたちはサイバトロンへと帰還することとなった。

 これから復興しようという故郷を放って、ゲイムギョウ界に止まるワケにはいかなかった。

 ドサクサに紛れて行方を眩ましたザ・フォールン派のディセプティコンもいたが、今の女神や人間なら、問題はないはずだ。

 

 降下船や空中戦艦、戦闘艇がワームホールの向こうのサイバトロンに向かって飛んでいく。

 そして、元々こちらにいたディセプティコンらはキングフォシルに、オートボットたちも広場に停泊したザンディウム号に乗り込もうとしていた。

 

「ええん! スキッズ、いっちゃやだー!!」

「マッドフラップ……(グスッ)」

「ごめんなラム……でも俺らはまだまだ未熟だから」

「次会う時には、もっと立派になってるからさ!」

 

 幼いロムとラムは、スキッズとマッドフラップとの別れを受け入れられずに泣いていた。

 オートボットの双子は、何とかして女神の双子を宥めるのだった。

 

「アイアンハイド……引き留めたりはしないわ。でもこれだけは言わせて……大好きよ、お父さん」

「ああ、そうだな。……お前は俺の、自慢の娘だ」

 

 名残惜しげに、アイアンハイドの首に抱きつくノワールだったが、やがて涙を流しながらも彼から離れた。

 

「ミラージュ……今だから言いたいのだけれど……いいえ、やっぱりいいわ」

「俺も言いたいことがある。……愛している。最初からずっと。どうか、待っていてほしい」

「!? て、てめえ、このタイミングで……ああもう! 待っててやるよ! だから必ず戻ってこいよ!!」

 

 ミラージュからの思わぬ真っ直ぐな告白に、ブランは顔を真っ赤にしていた。

 

「ベール……その……ああ、まったくこんな時だってのに、気の効いた台詞の一つも出てこない」

「構いませんわ。……言葉は不要、というのも素敵なものでしてよ」

 

 ジャズは、静かに抱き上げていたベールを地面に降ろした。

 アリスとサイドウェイズは、静かにそれを見守っていた。

 

「ねえ、スワイプ……行っちゃうの? ……な~んてね! 泣くとでも思った?」

「…………」

 

 苦い顔のサイドスワイプに向かって笑顔で舌を出すユニだが、目じりに溜まった涙を隠せてはいなかった。

 

「コンパくん、今までありがとう。……楽しかったよ」

「アイエフ、コンパと仲良くね」

「ラチェットさん、もっといろいろなことを教えてほしかったですぅ……」

「アーシー……あなたの乗り心地は最高だったわ」

 

 ラチェットとアーシー、コンパとアイエフも、互いに別れを惜しんでいた。

 

 一方で、ディセプティコンたちにも離別する者たちがいた。

 

「クランクケース、クロウバー、ハチェット……元気でな……」

「リンダちゃん、そんな顔しないでYO」

 

 キングフォシルにディセプティコンたちが乗り込んでいく横で、リンダはドレッズたちと別れを惜しんでいた。

 有機生命体である彼女は、惑星サイバトロンで生きることはできない。

 それでも付いていこうとするリンダを止めたのは、メガトロンだった。

 

「ディセプティコンの兵、リンダよ。いつか我らがこの世界に戻ってきた時のために、我らのことを広く世界に知らしめるのだ」

 

 そう命令されて、ようやくリンダは折れたのだった。

 

「それでプルルート。返事はもらえるだろうか?」

「え、ええと~……その~、ま、まずは文通から~……」

 

 まだまだ煮え切らないプルルートの返事に、ショックウェーブはヤレヤレと肩をすくめていた。

 しかし、諦める気はないらしい主に、その隣に立つトゥーヘッドは苦笑するのだった。

 

 意外なことにスタースクリームはディセプティコンを離れることになった。

 ホィーリーから、ピーシェが統治する新生エディンが、まだ形にもなっていないことを聞いたからだ。

 

「ま、ピーシェの奴はそれでいいんだろうし、プルルートたちにそんなつもりはないんだろうけどよ。このままじゃプラネテューヌの属国コースだからな。こっちでいう教祖の役をする奴がいるんだよ」

「はん! やるからには、徹底的にやるからな! エディンを向こうのギョウ界で、一番の国にしてみせるぜ!」

「おおー、がんばろーね! スタスク!」

「応よ!」

 

 いつにないやる気を見せるスタースクリームに、彼の肩に乗ったピーシェは無邪気にはしゃぐ。ジェットファイアも彼らに付いていくらしい。

 そんな航空参謀に、メガトロンは「まったくこのスタースクリームめ」と悪態を吐きながらも少し残念そうだったことは、特筆に値するだろう。

 

「5pb.、この戦いに勝てたのは、君のおかげだ。改めて、礼を言わせてほしい」

「そんな。ボクはただ、思い切り歌っただけだから」

「それこそが、勝利の鍵だった。……君と、君の歌のことは忘れない」

 

 サウンドウェーブはレーザービーク、ラヴィッジと共に5pb.と対面していた。

 わざわざ宇宙から降りてきたようだが、少なくとも情報参謀たちにとってはその価値があった。

 

 オプティマスは、グリムロックを始めとしたダイノボットたちと向き合っていた。

 

「グリムロック……本当に我々とこないのか?」

「行かない。友よ、我らダイノボット、ゲイムギョウ界と、セターン王国を護る。永久(とこしえ)に……」

「俺、スラッグ! 姫様たちの言いつけ、守る!」

「使命」

「ま、時にはこっちに遊びにくるさ!」

「そうか……ダイノボット、偉大な勇者たちよ。共に戦えたこと、誇りに思う」

 

 太古の騎士たちに頭を下げたオプティマスは、次いで少し離れた場所で自前の降下船に乗り込む部下たちに指示を出しているロックダウンに視線を向けると、彼らに向かって歩いていく。

 

「ロックダウン」

「何だ。報酬は教会の連中から貰った。仕事は終わりだ」

「いや、そうではなくて……礼を言わせてくれ」

「はん。プライムが薄汚い賞金稼ぎに礼か」

 

 皮肉交じりに言葉を吐くロックダウンに、しかしオプティマスは真面目な調子で言った。

 

「ネプテューヌを守ってくれて、ありがとう」

「…………ああいう女はな、その胸のお宝なんぞよりもよっぽど貴重なんだよ。大切にしてやれ」

 

 ぶっきらぼうに言うと、ロックダウンは降下船に乗り込んでいった。

 これからも、彼は孤高の賞金稼ぎとして何者にも属さず生きていくのだろう。

 

「スティンガー、本当にいっちゃうんだね」

「はい、ネプギア。……行ってみたいんです。我らトランスフォーマーの故郷へ」

 

 スティンガーは人造トランスフォーマーを率いてサイバトロンへと向かうことを決意していた。

 ネプギアは子供が巣立つことが寂しいような、嬉しいような複雑な気持ちになっていた。

 

「バンブルビー、行きましょう。……バンブルビー?」

 

 傍らに立つ兄弟分に出立を促すスティンガーだが、黄色いオートボットは俯いたまま立ち尽くしていた。

 やがて顔を上げたバンブルビーは、敬愛する司令官に向かって声を上げる。

 

「オプティマス……お願いが、あります」

 

 それは、いつものラジオ音声ではなく、彼自身の声であり、たどたどしさはあってもしっかりした言葉だった。

 

「ビー! 声が……!」

「シェアエナジーの影響でしょうか?」

 

 ネプギアやスティンガーが驚くなか、バンブルビーは言葉を続ける。

 その隣に、サイドスワイプも並び、さりげなくサイドウェイズも後ろに付く。

 

「女神のもとに……残りたい」

「俺も、彼女と離れることはできない」

「そうか……それが、お前たちの決断か」

 

 少し厳しい顔をするオプティマスだったが、すぐにフッと表情を緩めた。

 

「いいだろう。……女神がそれを望むなら」

「ッ! うん、望むよ!!」

「もちろん!」

 

 ネプギアやユニは、すぐに喜んで答えてパートナーたちの顔に抱きついた。

 アリスとサイドウェイズは、苦笑混じりに笑み合っていた。

 以外にもスキッズやマッドフラップは残りたいとは言わず、ロムとラムにさらに泣かれることになった。

 

「オプティマスさん、オプティマスさん」

 

 優しく頷いていたオプティマスだが、自分を呼ぶ声に振り向けばロディマスを抱えて、後ろにフレンジー、ガルヴァを肩に乗せたバリケード、サイクロナスとスカージを抱いたボーンクラッシャーを引き連れたレイがいた。

 

「レイ、どうしたんだ?」

「ネプテューヌさんの姿が見えないもので。探してきた方がよろしいのでは?」

 

 言われてみれば、確かに紫の女神の姿が見えない。

 もうじき出発なのに、らしくもない。

 

「よし、ちょっと手の空いている者で探して……」

「オプティマスさんが、『一人で』探すべきだと思いますよ?」

 

 部下たちに指示を出そうとした総司令官に、レイがやんわりと、しかし断固として意見する。

 その意味を少し考えたオプティマスだが、やがてハッとした様子で踵を返した。

 オプティマスの背を見送るレイは、ヤレヤレと息を吐く。

 

「まったく、オートボットの英雄も女心については若葉マークね……」

「そんなもんだよ、メガトロン様見てりゃ分かんだろ?」

「確かに、言えてますね」

 

 身体をブラブラさせながらシレッと言ってのけるフレンジーに、レイはロディマスの背を撫でながら苦笑する。

 やはり、面倒くさい男に惚れてしまった部分は、自分とネプテューヌは似た者同士らしい。

 

 

 

 

 プラネテューヌ市街を見渡せる丘の上。

 ネプテューヌは樹の下に立って、降下船や空中戦艦に乗り込んだディセプティコンたちが、サイバトロンに帰っていくのを見上げていた。

 やがて彼女の耳は、聞き慣れたトレーラートラックのエンジン音が近づいてくるのを捉えた。

 

「ネプテューヌ、ここにいたのか」

 

 オプティマスはビークルモードからロボットモードに戻ると、恋人の背に向かってゆっくりと歩きだした。

 

「オプっち……やっと終わったね」

「ああ、やっと終わった。永かった戦争も、何もかもが……」

 

 振り返らずにしみじみと呟くネプテューヌに、オプティマスも答えると隣に立って腰に手を当てて街を眺める。

 

「君と初めて出会った時のことを憶えている。まるで昨日のことのようだ」

「うん、あれから色々あったね……マジェコンヌに捕まったり、ダイノボットのみんなと出会ったり、サイバトロンに跳ばされたりもしたっけ」

「そうだな、本当に色々あった。成り行きとはいえ、君に告白して受け入れてもらえて……本当に嬉しかった」

「うん。わたしもさ、嬉しかったよ。いやなんせ、トランスフォーマーと女神が恋人同士になるとか、普通なら考えられないし!」

 

 とりとめのないことを語り合う二人。

 

「……バンブルビーは、こちらに残るそうだ」

「そうなんだ。うん、原作再現的にそうなるよね」

「ネプテューヌ、私は……私も……」

「ん。それ以上は、言わないで」

 

 残りたいと言おうとするオプティマスを、ネプテューヌはやんわりと制した。

 

「あなたはさ、残ったら残ったで、また苦悩しちゃうでしょう? 責任を投げ出して、過去を気にせず面白おかしく、なんて器用な生き方、できないでしょう?」

「………………すまない」

 

 淡々としたネプテューヌの言葉に返せたのは、ありきたりの謝罪だけだった。

 

「いいんだよ。それがわたしが……私が好きになった、オプティマスだもの」

「ネプテューヌ……私は必ず帰ってくる。私の幸せは、君の傍にしかないのだから」

「うん、待ってる。……我ながら都合の良い女だなあ。まあ仕方ないか。何せ人生三回分の惚れた弱みだし」

 

 苦笑するネプテューヌは、そこで初めてオプティマスに顔を向けた。

 紫の目から、とめどなく涙が流れていた。

 

「愛してるよ、オプっち。何度生まれ変わっても、この気持ちを失わない……!」

「私も愛している、ネプテューヌ。君と出会えて、良かった……!」

 

 光に包まれて女神の姿になったネプテューヌは、浮かび上がってオプティマスの顔に自分の顔を近づけた。

 オプティマスは優しい手つきで、恋人の体を自分の顔に引き寄せた。

 

 そして、ネプテューヌは愛するヒトの金属の唇に、自分の薔薇色の唇を重ねた……。

 

 

 

 

 

 女神や、人間たち、残存するオートボットたちが、見上げる中、オートボットの乗るザンディウムとディセプティコンの乗るキングフォシルが並んでワームホールを潜る。

 ややあって、ワームホールは窄まるようにして閉じ、空いっぱいに広がっていた惑星サイバトロンも見えなくなった。

 

 こうして、トランスフォーマーたちのほとんどは、ゲイムギョウ界から去っていった。

 プルルートとピーシェが、スタースクリームらを伴って彼女たちの次元へと戻っていったのは、その少し後だった。

 

 ゲイムギョウ界の復興は、今までトランスフォーマーから得た技術が十二分に活用され、有り得ないほど順調に進んだ。

 旧ザ・フォールン派のディセプティコンなど、軍を脱走した者たちが騒動を起こすこともあったが、バンブルビーらの活躍ですぐに鎮圧されるのが常だった。

 人々はオートボットのこともディセプティコンのことも、徐々に話題にしなくなっていった。

 

 アノネデスは教会を離れ、フリーの雇われハッカーに戻った。

 

 リンダとワレチューは、マジェコンヌのナス畑で世話になりながら、ディセプティコンの玩具の販促に努めていた。

 

 アブネスは何らかの事情で親がいなかったり親元を離れざるを得なかった幼年幼女を守るために、ネプテューヌらの手を借りて孤児院を開いた。

 

 孤児院の名は、『センチネル孤児院』という。

 

「どうせ、歴史の教科書には裏切り者とかって乗っちゃうんだろうしね。一ヶ所ぐらい、ポジティブな感じにアイツの名前が残る場所があってもいいでしょ?」

 

 とは、アブネスの弁である。

 

 

 

 

 

 そして、数か月の月日が流れた……。

 




次回、最終回。

迷走した、調子にも乗って挫折もした、何度か止めようかとも思った。
それでも、ここまでやってきた……!

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