超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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第174話 センチネル・プライム、最後の戦い!

 戦場の真ん中で、オプティマスとセンチネルの師弟が相対する。

 センチネル・プライムの攻撃は素早く的確だった。

 エイペックスアーマーの各所に配置された火器を使い弾幕を張る。

 

「武器もなく、儂に挑むか! オプティマス!!」

 

 復活したとはいえ、今のオプティマスは離れた敵に対応する武器を持っていない。

 近づけなければセンチネルの重火力の前に為す術もないはずだ。

 

『武器ならあるよ!!』

 

 しかし弾幕の中のオプティマスが左手を翳すと、手の中に虹色のオーラが集まってガトリング砲が現れる。

 以前、ネプテューヌとの合体形態の時に使っていた、ビームガトリング『ヴァイオレットバルカン』だ。

 唸りを上げて回転するバルカンから吐き出される光弾の雨はエイペックスアーマーを傷つけるには至らないものの、動きを鈍らせることはできた。

 すかさず右腕を翳すと、先ほどと同じようにオーラが結集して長い砲身のキャノン砲『プラネティックキャノン』が形作られると同時に発射される。

 

「なに!?」

 

 高出力のビームは狙い違わずセンチネルの鎧……その右肩のキャノン砲の砲口に直撃する。いかにエイペックスアーマーが絶対不壊と謳われても、砲の内部構造まではそうはいかない。

 センチネルは即座にキャノン砲を本体から切り離し、ダメージを防ぐ。

 

 だが、一瞬の隙はできた。

 

 その一瞬の間に、オプティマスは脹脛に新たに備えられたスラスターからジェット噴射して飛び上がると半ば体当たりするようにしてセンチネルに組み付いた。

 

「落ちろ!」

「舐めるな!!」

 

 そのままバランスを崩したセンチネル諸共、戦場の近くの河に架かる橋に落ちるが、体格差からくるパワーの違いゆえかセンチネルに橋の反対側に投げ飛ばされる。

 

 この橋は戦闘が行われている区画のちょうど合間にあるらしく、周囲に他の者の姿はない。

 

 すぐに立ち上がろうとするオプティマスだが、センチネルは両腕にブラスターライフルを構えると同時に撃った。

 オプティマスは正面に障壁を張ると、そのまま突っ込む。

 

「ッ! 愚か!!」

 

 銃撃が障壁に弾かれるのを見たセンチネルは、あえてテメノスソードを抜きオプティマスに斬りかかる。

 オプティマス自身の愛刀である古のプライムの遺産は、女神の力による障壁を軽々切り裂き、その頭部を捉える。

 間一髪、オプティマスは両腕からエナジーブレードを展開して頭上で交差させることで斬撃を防いだ。

 

『ちょっと! それはオプっちの剣だよ!!』

「これは偉大なプライムの遺産!! それにこの世界の諺にもあるだろう! 『お前の者は俺の物、俺の物は俺の物』とな!!」

『それ諺じゃないし!』

 

 ネプテューヌの抗議に構わず斬り合いに移行するオプティマスとセンチネルだが、三手打ち合った所でセオプティマスのエナジーブレードが刃こぼれし、四手目で罅が入り、五手目で砕け散った。

 

「グッ……!」

「未熟! あまりに未熟!! 彼我の戦力差すら見誤るとは! その程度で、未来を掴めると思うのか!!」

『それなら!!』

 

 回し蹴りでオプティマスを蹴り飛ばし怒声を上げるセンチネルだが、ネプテューヌは次なる手を打つ。

 

『32式エクスブレイド!!』

 

 虹色の光が結集しオプティマスの眼前の空中で大剣の形に結集した。

 オプティマスは迷いなくその剣の柄を手に取る。

 

 32式エクスブレイドは、シェアエナジーで出来た剣を空中に作り出し、敵にぶつけるネプテューヌの技だ。だが今回は、それを手持ち武器としてオプティマスが握った。

 今度は何回打ち合っても、剣が壊れることはなく、それどころか一瞬の隙を突いてエイペックスアーマーの右翼を斬り捨てる。

 

「ッ! 馬鹿な! そんな剣がテメノスソードと互角なばかりか、エイペックスアーマーに傷をつけるだと!?」

『ふふ~んだ! この剣はわたしへのシェアに、オプっちへのシェアを混ぜって作ったスペシャルバージョンだもん!』

 

 ネプテューヌの自慢にオプティマスも勝気な笑みを浮かべ、シェアの剣でセンチネルに向かって剣を振り下ろす。

 センチネルがそれをテメノスソードで受け止め、二人のプライムは鍔迫り合いになる。

 

「センチネル! 自由は全ての生命の権利だと、教えてくれたのは貴方だ!」

「それを言うなら、生存は適者の権利だ! 相応しくない者は消えてゆく!」

 

 一旦離れたセンチネルは、剣を右手で握り左手で背中から盾を取り出す。

 それは以前使っていた物よりも一回り小さく丸い盾だ。

 

「これはベクターシールド! かの最初の13人が次兄、ベクタープライムの盾だ!!」

 

 わざわざ盾について説明したセンチネルは、今やデッドウェイトとなった翼とスラスターを備えたバックパック部と脚部のブラスター、装甲の一部を切り離し、オプティマスと斬り結ぶ。

 一手、二手、三手目にしてセンチネルは大きく踏み込み、横薙ぎの一撃をオプティマスの腹に喰らわせる。

 

「グッ!」

「三太刀目に踏み込みが甘くなるのが、貴様の悪い癖だ!」

 

 痛みに堪えて反撃しようと剣を振るうオプティマスだが、剣は盾に阻まれカウンターとして繰り出された鋭い突きが腹に刺さった。

 明らかに動きが読まれている。

 

「貴様に剣を与え、技を教え、知恵を授けたのは、この儂だぞ! 貴様の動き、貴様の考え! 手に取るように分かるわ!!」

 

 エイペックスアーマーが破損したことで、いよいよ無意識下の油断や慢心もなくなったらしい。

 センチネルは往年の英雄らしい、鋭い動きと技で徐々にオプティマスを圧倒してゆく。

 

「この儂は人生の全てをサイバトロンのために尽くした! プライムとしての使命を果たしてきた! 貴様が如き、女と乳繰り合っているような半端者に負ける道理はないわ!!」

 

 防戦一方に追い込まれるオプティマスだが、センチネルの叫びを聞いてなお、諦めなど微塵もない。

 

「センチネル! 私は負けない! ネプテューヌのため、サイバトロンとゲイムギョウ界のため、そして私自身が幸福になるために!!」

「それこそが、貴様の半端者たる所以よ! ()を殺し、サイバトロンのために全てを捧げるのがプライムだ!!」

「ならば、私は新たな道を行く! サイバトロンの未来も自分の幸せも、両方掴み取ってみせる!!」

 

 吼え合いながら、斬り合い続ける二人のプライム。

 変わらず、全ての技と動きを読んでいるセンチネルが優勢だ。

 

「貴様は昔から残酷な決断ができん奴だった! その温さ、その甘さ! 唾棄するに値する!!」

『それがオプっちの良さだもん! 完全に冷酷無慈悲なオートボット総司令官なんて、シャッタードグラスだけで十分だよ!!』

 

 ある意味で正論なのだろうセンチネルの怒声に、ネプテューヌは感情論とメタネタで反論する。

 この局面でもブレない女神に、センチネルはさらなる怒りで顔を歪める。

 

「貴様の技で儂は倒せん!」

「確かに、私の剣で貴方は倒せない。だが……クロスコンビネーション!」

 

 オプティマスは、剣を目にも止まらぬ速さで剣を振るう。

 盾と剣で防ぐセンチネルだが、四回目の斬り上げに防御を崩され、最後の上段からの一撃を凌ぎきれず肩を負傷する。

 

「ッ! なんだと!?」

「まだまだぁ! クリティカルエッジ!」

 

 続いてオプティマス下から大きく斬り上げて相手の体勢を崩し、居合切りにも似た一閃を繰り出す。

 防御が間に合わず、エイペックスアーマーの脇腹に一文字の傷が刻まれる。

 傷ついたことよりも、己の教えた剣技とは全く違う技と太刀筋にセンチネルは戸惑う。

 

「なんだ、その技は!!」

『わたしの必殺技だよ!』

 

 それに対する答えは、ネプテューヌの得意げな声だった。

 極限まで一体化したことで、オプティマスはネプテューヌの技を使えるようになったのだ。

 

「ッ! 文字通り二人で戦っているとでも言うつもりか!」

「二人だけではない! ネプテューヌを通して伝わってくる。みんなの祈りが、想いが!」

『わたしだけじゃなくて、オプっちのことも応援してくれてる! わたしたちは、みんなと一緒に戦ってるんだよ!!』

 

 オプティマスの、いや『オプティマスとネプテューヌ』の体から迸る虹色のオーラが輝きを増していく。

 圧倒されて一歩後ずさりそうになるセンチネルだが、グッと前に踏み止まる。

 

「ッ! いや、いいや! 儂はサイバトロンのために全てを捧げてきた! 個を捨て、情を捨て、誇りさえ捨て、一人でサイバトロンのために尽くしてきたのだ!! 残酷な決断もできぬ甘ちゃんのお前たちに、孤独に耐えることもできぬお前たちなどに……負けてなるものかぁあああ!!」

 

 威厳の何もかなぐり捨てて、地を蹴りオプティマスに向かって走り出す。

 オプティマスもまた、地を蹴ると同時に脹脛からジェット噴射してセンチネルに向かっていく。

 ジェット噴射の勢いで放った一太刀目は盾で防がれた。

 しかし、反撃されるより前に素早く飛び退いたオプティマスは、縦横無尽に飛び回りながら二太刀目、三太刀目と浴びせていく。

 

「……ッ!」

 

 反撃の機会を窺いながら剣と盾で斬撃をいなすセンチネルだが、オプティマスの早さと斬撃の勢いはどんどんと上がっていき、ついに分身して見えるほどに加速するに至って、防ぎ切れなくなっていく。

 シェアで出来た32式エクスブレイドは、エイペックスアーマーに次々と深い傷を刻みつけていく。

 

「ぐッ……おおおぉぉおおおッッ!!」

 

 これぞ、かつてメガトロンとの戦いでも使われたネプテューヌの必殺技。

 その名も……。

 

『ネプテューンブレイク!!』

 

 最後の一太刀が炸裂し、ついにエイペックスアーマーが粉々に砕け散る。

 だが同時に、32式エクスブレイドも限界を迎えて光の粒子になって消滅した。

 

 エイペックスアーマーを失い生身を晒したセンチネルだが、なおも咆哮を上げて跳躍し、背中から双剣プライマックスソードを抜き無防備なオプティマスに向けて振り下ろす。

 

「もらったぁ!!」

「まだだぁ!!」

 

 その瞬間、オプティマスは両手を頭上に掲げて自分に迫る刃を真剣白刃取りで止めて見せ、同時に、その胸から分離したネプテューヌが現れた。

 

「な、なんだとぉッ!?」

 

 驚愕するセンチネル。

 オプティマスは元のトレーラートラックの意匠を強く残した姿に戻りながらも刃を放さない。

 そしてネプテューヌは、女神化してセンチネルに向け飛翔し、そして……。

 

「クリティカルエッジ!!」

 

 手に持ったオトメギキョウで一文字にセンチネルの剣を持つ右腕を斬りつける。

 その攻撃で腕に傷を負いプライマックスソードを取り落としたセンチネルだが、しかしなおも左手で腐食銃を抜き、反撃しようとする。

 

「オプティマァァァス! まだだぁあああッ!!」

「いいや、これで終わりだ!!」

 

 再び神機一体形態に融合したオプティマスとネプテューヌは、本来の愛刀であるテメノスソードを手元に召喚すると声を揃えて最後の技を繰り出した。

 

『ビクトリィースラァァッシュ!!』

 

 右上から左下に向かって振り下ろされた最初の斬撃で腐食銃を両断し、そしてそのまま返す刀で左上に斬り上げ、センチネルの体を大きく切り裂いた。

 

「ぐ、ぐわあああああッッ……!!」

 

 

 

 

 

 

 

――ああ、敗れたか……。

 

 橋の上に仰向けに倒れたセンチネルは、酷く穏やかな心地だった。

 体はもうほとんど動かない。

 胴体には斜めに大きく傷が刻まれ、背中のマント状パーツも、頭部も守るヘルメットも衝撃で吹き飛んでしまった。

 おそらく、端から見たら酷いザマだろう。

 

 ぼやける視界に、オプティマスが近づいてくるのが見えた。

 

――何故、儂は敗れたのだろうか?

 

 エイペックスアーマーの性能に胡坐を掻いたからだろうか?

 遠距離戦を捨て、接近戦に持ち込んだからだろうか?

 本来の得物ではなく、テメノスソードとベクターシールドを使うことを選択したからだろうか?

 

 奴らの言う通り、自分が独りだったからだろうか?

 

――そうかもしれんな。

 

 惑星サイバトロンに有った頃から、そしてゲイムギョウ界に来てからも、センチネルはたった独りだった。

 オートボットを裏切り、ディセプティコンは利用していただけだ。

 ザ・フォールンとも、お互いに利用し合う関係でしかなかった。

 

 しかしそれも終わりだ。

 オプティックだけを動かせば、シェアハーヴェスターが崩落してゆくのが見えた。

 サイバトロン再興の望みは絶たれた。

 未来はオプティマスたちを選んだ。

 

――これで良かったのかもしれんな。

 

 全ては故郷サイバトロンとトランスフォーマーの未来のために。

 しかしセンチネルとて、子供たちが戦い合う未来、どこまでも続く争いに、心を痛めていないワケではなかった。

 サイバトロンのためにゲイムギョウ界に犠牲を強いることに躊躇いを感じていないワケではなかった。

 自らが、どれだけ罪深いかは、良く分かっていた。

 

「オプティマス、儂が望んだのは種族の存続だけだ。どうか分かってくれ……何故、儂がお前を裏切らなければならなかったか……」

 

 だから、最後まで敗者らしく、みっともなく不様に散るとしよう。

 

「私を裏切ったのではない。貴方は自分を裏切った」

 

 すぐ傍までゆっくりと歩いて来たオプティマスは冷たく言い捨てると、右手にプラネティックキャノンを顕現させてセンチネルの頭に狙いを付ける。

 

「よせ、オプティマス……!」

 

 そして、引き金が引かれ銃声が響いた……。

 

 

 

 

 

 しかし、銃口から吐き出された光弾は、センチネルの頭のすぐ上のコンクリートを抉っただけだった。

 

「……何故殺さない?」

「私は殺すつもりだった。狙いを外したのは、ネプテューヌだ」

 

 愕然と問うセンチネルに、オプティマスはシレッと答えた。

 その顔の横に、女神化した状態のネプテューヌが幻のように現れた。

 神機一体になると、こんなことも出来るらしい。

 

「何故だ。情けをかける気か?」

「約束したからね。いっしょにゲームをするって。……考えてくれるのでしょう?」

 

 問えば、ネプテューヌは女神態の美しい顔に悪戯っぽい笑みを浮かべて言った。

 その答えに、センチネルはこの女神がこの後に及んで自分を憎んでいないことを覚った。

 恋人の言葉に頷いたオプティマスは、厳かに宣告した。

 

「だが、貴方には罰を受けてもらう。……センチネル・プライムよ、マトリクスを保有するプライムリーダーの権限において、貴方から『プライム』の称号を剥奪する」

「ははは……」

 

 自然と笑いが漏れた。

 やがて、笑いは大きくなってゆく。

 

「はははは、あーっはっはっは!」

 

 妄執も遺恨も、気負う物も何もない、純粋な笑みだった。

 ネプテューヌにだって怒りも憎しみもあったはずだ。

 しかし、それでも甘さを捨てなかった。

 何とも天晴れなことではないか。

 

「負けた負けた! 大負けだ! これは敵わんわ! わーっはっはっは!!」

 

 そして、最後の寄る辺であった『プライム』の称号も失った今、ただの『センチネル』はもう、威圧的に振る舞う必要は無かった。

 

 力で負け、心で負け、センチネルは完全敗北したのだ。

 

「見事だ。よくぞ、この儂を破った。……未来は、お前たちのものだ」

「センチネル……」

 

 オプティマスはセンチネルに手を差し出す。

 それは、単純に彼を立たせようという以上の意味があった。

 

 今まで、センチネルは差し出された手を振り払ってきた。

 

 しかし今なら……。

 

 センチネルは観念したと言う風に笑みを浮かべると、何とか上体を起こしてオプティマスの手を掴もうとした。

 

 

 

 

 その瞬間、轟音と共に上空から強烈なエネルギー波が降り注いだ。

 

 エネルギー波はオプティマスとセンチネルの間に命中し、橋は爆発と共に崩落し、センチネルは為す術もなく河に落ちた。

 

「センチネル!!」

 

 エネルギー波に阻まれながらも手を伸ばそうとするオプティマスを水面越しに見上げながら、センチネルは呟く。

 

「ああ、馬鹿めが……」

 

 最後まで甘い弟子に、苦笑するセンチネルの上に、特大のエネルギー波が落ちてきた……。

 




実はこの小説、『オプティマスを(他のオートボットたちも)幸せにする』というのが書いてる目的の一つだったりします。
そしてネプテューヌは紆余曲折あれど、その願いに応えてくれました。

まあ、オプティマスのシリアス分に引っ張られてネプテューヌまでシリアスになったり、前世設定が生えたりしましたが……。

これからも、誰かが望む限り永遠に戦い続けるんだろう『オプティマス』に、せめて二次創作の世界でくらいは幸福に暮らしてほしいと願うのは、ひょっとしたらファンの意識や原作の醍醐味に唾吐く傲慢なことなのかもしれません。

それでも、ロストエイジや最後の騎士王を視聴した後だと、そう願わずにはいられません。

次回は、最後の展開。

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