超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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第173話 決戦! ザ・フォールン!!

 惑星サイバトロンの見える空の下、青い稲妻を纏った神機一体メガトロンと、業火のような赤いオーラを纏ったサヴェッジモードのザ・フォールンが激突する。

 

「メガトロォォンッ!! この馬鹿弟子がぁああッ!!」

 

 ザ・フォールンは念力を放って自分に向かって飛んでくるメガトロンを弾き飛ばそうとするが、もはやメガトロンに超能力は通用しない。

 身を縛ろうとする念力を難なく振り払い、右腕のフュージョンカノンを撃つ。

 ザ・フォールンも体の周囲に、火球を出現させてメガトロンに向け放つ。

 

 互いに飛び回りながら放つ攻撃の、その一発一発が並のトランスフォーマーなら蒸発するほどの破壊エネルギーを秘めいていた。

 

 しかし、それぞれが身に纏うオーラと稲妻がバリアの役割を果たし、互いに碌なダメージを与えられない。

 

「今更、オートボットと仲良しゴッコか! 貴様、野望を忘れたか!! 憎悪を忘れたか!!」

「野望も憎悪も忘れたつもりはないわ! だが『そんなこと』よりも、子らの未来の方が大事という、それだけの話だ!!」

 

 怨嗟に満ちた咆哮を上げるザ・フォールンに、決意を込めてメガトロンは吼え返す。

 愛しい我が子らの未来よりも……そして、レイよりも優先することなどあるものか。

 

 しかしその決意も、ザ・フォールンの憤怒に油を注ぐ結果になった。

 ザ・フォールンの怒りに呼応して地上の瓦礫が浮かび上がり、砲弾のようなスピードでメガトロンに向けて飛んでくる。

 砲弾と化した瓦礫群を、メガトロンはキャノン砲や全身から稲妻で撃ち落とすが、瓦礫はその数と勢いを増し、行く手を阻む。

 

「ぬう……!」

「メガトロォォォン! 貴様如きがプライムである俺を倒せると思ったか!! プライムはプライムにしか倒せぬ! それが理という物だ!!」

 

 湧き上がる怒りのままにザ・フォールンが両腕を掲げると、突然破壊エネルギーの竜巻が起こり、瓦礫群もろともメガトロンを飲み込んだ。

 

「プライムはプライムにしか倒せぬだと? ……そんな理は、破壊するのみ!!」

 

 エネルギーの大渦に翻弄されるメガトロンだったが、万力を籠めてタリの剣を振り、渦を真っ二つに切り裂いた。

 そのまま一気に接近し、大上段からザ・フォールンに斬りかかる。

 

「うおおおおおッ!!」

「なんのぉおおおおッ!!」

 

 メガトロンの大剣をザ・フォールンの杖が受け止めると、炎と雷が迸り衝撃波で大気が震える。

 だが純粋な力比べではメガトロンの方が僅かに上らしい。

 ジリジリと押し始めるが、ザ・フォールンは念力による衝撃波を発し、その反動で距離を取ると、次いで瞬間移動でメガトロンの後ろに転移すると、その背に向けてエネルギーを纏った杖を槍のように突き出す。

 

「死ね!!」

「ッ!」

 

 その瞬間、メガトロンはレイの技であるポータルを開き、一瞬にしてその中に飛び込むことで杖を回避する。

 これまでになくレイと強く結びついたことで、彼女の能力を使えるようになったのだ。

 

 そこからは、両者共に目まぐるしく瞬間移動を繰り返しながらの戦いとなった。

 互いに後ろを取ったかと思えば、その瞬間には背後を取られ、都市の両端まで離れた、と思えば組み合う位置まで接近している。

 縦横無尽天地無用、空間と次元軸さえ超越し、破壊大帝と堕落せし者は死闘を続ける。

 

 しかしその時、余計なことが起こった!

 

『そこらへんにしてもらおうか、メガトロン!』

 

 何処からか通信がメガトロンとザ・フォールン、双方の回路に飛んできた。

 ブレイン内に、カメラレンズ状の単眼が映し出される。

 ザ・フォールンに着いたディセプティコンの一人、スウィンドルだ。

 後ろには、似た姿のドレッドウイングとペイロードもいる。

 

 三体の単眼ディセプティコンは、幾何学模様の球体にそれぞれの武器を向けていた。

 あの、トランスフォーマーの卵を保護するための保護カバーだ。

 球体は空中神殿に運び込まれ、そのまま安置されていた。

 それを人質に取ろうというのだろう。

 

『へっへっへ、テメエの大事な卵を壊されたくなかったら、大人しくしな!』

 

 卵は雛と並んでメガトロンのアキレス腱。

 そう睨んだ三体は、戦いにも加わらず、この時をジッと待っていたのだ。

 ザ・フォールンに最大級の恩を売れる時を。

 

 これで、スウィンドルたちの未来は明るい。……そのはずだった。

 

「……この、愚か者どもが!!」

『へ?』

 

 しかし、ザ・フォールンは褒めるどころか、スウィンドルたちに向かって心底呆れ果てたという顔をして怒鳴る。

 

「そんなものは、反乱を計画した時点で運び出したに決まっておろうが! そんなことも分からんのか!!」

 

 確かに卵はメガトロンの弱みだ。

 だからこそ、戦場のど真ん中になるだろう空中神殿に卵を置いておくはずがない。

 怒鳴られたスウィンドルは慌てて卵の保護カバーを外す。

 すると、そこには青く輝く卵は唯の一つもなく、代わりに一枚の紙切れが残されていた。

 紙にはこう書かれていた。

 

『お疲れさまだYO!』

 

 それは、メガトロンの命を受け、卵を脱出させたドレッズたちが残した物だった。

 ご丁寧にクランクケース、クロウバー、ハチェットのデェフォルメされた顔が描かれていて、アッカンベーしている。

 

『な、な、な!?』

 

 動揺する単眼三体に、メガトロンはニィッと残酷な笑みを送った。

 

「……さてとだ。未遂に終わったとはいえ、トランスフォーマーの未来を担う命を奪おうとした罪、万死に値すると思うのだが。レイよ、お前はどう思う?」

『あら? 殺すだけで終わらせるだなんて、お優しい。……見ていましたよ、その三人は私の可愛い坊やたちを苛可愛がってくれましたからね……殺すだけじゃ飽き足らないわ。想像を絶する苦しみを味あわせてやる……!』

 

 メガトロンと融合した状態でありながら、レイはゾッとするような低く冷たい声を出す。

 単眼三体のブレインには、メガトロン以上の苛烈さを垣間見せるレイの美しくも凄絶な笑顔が映し出されていた。

 

『ひ、ひぃいいい!!』

 

 恐ろしさのあまり情けない悲鳴を上げて、スウィンドルが無理矢理回線を切ると、メガトロンは清々したとばかりに鼻を鳴らし、剣先をザ・フォールンに向ける。

 

「最後に残った手下がアレとは、貴様の程度も知れるな!」

「おのれ……役立たずどもが!!」

 

 再びメガトロンに攻撃しようとするザ・フォールンだが、その時ハッと空中神殿の方に顔を向けた。

 空中神殿は健在だったが、底部のシェアハーヴェスターは轟音と共に崩れ落ちていく。

 連合軍が、ついに作戦を完遂したのだ。

 

「これで終わりだ、堕落せし者よ。貴様の目的は潰えた」

「いいや、まだだ! まだ終わってはいない!! まだ終わるワケにはいかぬ!!」

 

 冷厳としたメガトロンの声に、しかしザ・フォールンは怒声で応える。

 堕落せし者の体のオーラが大きく膨らみ、纏うエネルギーが最大級まで高まると同時に杖の先に集中していく。

 

「我はオールスパークの子! 子は親のために尽くす物! オールスパークの意思の完遂こそが、我が存在意義!!」

『……違う!!』

 

 敵と同じように最大以上にエネルギーを溜めるメガトロンの中で、レイは叫ぶ。

 

『子供は、いつか親から離れるもの! いつか親を超えていくもの! オールスパークだってそれを望んでいるわ!』

 

 普通とは大分違う形だが、子供を得て理解できたこともある。

 全ての親がそうとは言わない。例外はいくらでもある。

 子の成長、自立を嫌う親もいるだろう。

 それでも、少なくとも自分は子供たちがいつか立派に巣立つ日を夢に見る。

 

『貴方はオールスパークに愛してほしいだけ! どれだけの力を持っても、どれだけの年月を生きても、小さな子供と同じよ!!』

 

 結局、それがザ・フォールン……メガトロナスの行動原理の全て。

 兄弟を殺害し、オートボットとディセプティコンに戦う運命を強い、メガトロンやレイを含めた多くの者たちを利用して、その全ては創造主の愛を得る、そのためだけに。

 

「ディセプティコンは、より強い者の言うことには、良く考えずに従う、か……」

 

 メガトロンはレイの叫びに、以前スタースクリームが言っていたことを思い出した。

 なるほど、そう考えるならば、ザ・フォールンはやはりディセプティコンの始祖なのだろう。

 

「ほざくな!! 我が最大の攻撃で、灰燼と化すがいい! これで、終わりだぁあああああッ!!」

 

 ありったけの怒りと怨嗟と共に、ザ・フォールンは全てのエネルギーを赤い破壊光線として杖先からメガトロンに向けて放った。

 

「いいや! 終わるのは貴様だぁああああッ!!」

 

 メガトロンもまた、全てのエネルギーを込めて右腕のカノン砲から青い破壊光線を撃つ。

 二者の間で破壊光線がぶつかり合い、拮抗する。

 

「女、それにメガトロン! 貴様らはこの俺が見出してやったのだ!! 飢えた浮浪者と、意味なく死ぬはずだった鉱夫をな! 貴様たちの歩んできた道! 掴んだ物! その全て全て、俺が用意してやった物だ!!」

 

 あまりのエネルギーに杖のみならず全身にビシビシと罅が入りながらも、ザ・フォールンは光線の放射を止めない。

 

「貴様らは俺の子も同然! 子が親に逆らうなど、言語道断! 増して、超えることなど出来るものか!!」

 

 対するメガトロンのカノン砲、そして全身にも細かい罅が入っていく。

 両者は全くの互角……いや僅かにメガトロンの光線の方が少しずつ押されていく。

 だが、メガトロンの目に諦めも絶望もない。

 そんな物は、レイと共にいる限り、有り得ない。

 

「師よ! ディセプティコンの始祖たるメガトロナスよ! 確かに貴方は我が父も同然! なればこそ、我らは貴方を超えてゆく!!」

 

 メガトロンが叫ぶ。

 

『貴方がいなければ、今の私たちはいなかった! だからこそ、貴方を倒す! 私たち、二人で!!』

 

 レイが吼える。

 

『うおおおおおおおッ!!』

 

 メガトロンとレイの咆哮が重なり、カノン砲から吐き出されるエネルギーが強くなってゆく。

 徐々に、ザ・フォールンの熱戦を押し返しはじめた。

 

「ば、馬鹿な……!」

 

 ザ・フォールンは目を見開き、さらなる力を己の内側から引き出そうとするが、光線を押し返すことはできない。

 

「馬鹿な……こんな、馬鹿なぁああああああッッ!!」

 

 絶叫もろとも、ザ・フォールンを破壊光線が飲み込む。

 その瞬間、堕落せし者、あるいはメガトロナス・プライムのブレインに、ある考えが浮かんだ。

 

――子は親を超えるもの。親の手を離れ歩いて行くもの。もしそれが正しいのならば、奴らの言い分が正しいのなら……母上(オールスパーク)よ、私は間違っていたのですか?

 

 その疑問への答えはなく、メガトロナスの意識は闇の中へと墜ちる(フォール)のだった……。

 

 

 

 

 

 

 同じころ。

 主を失った空中神殿の中枢。

 レイが囚われていた場所には、彼女の代わりにダークスパークが設置されていた。

 

 しかしそれを制御するディセプティコンの始祖は、もはやいない。

 

 シェアエナジーをたらふく喰らったダークスパークは、鼓動するように明滅を繰り返す。

 その明滅は時間を経るごとに激しく、また不規則になっていた。

 

 ピシリと、金属フレームに覆われた魔剣の欠片に一筋の罅が入るのを見たものは、誰もいなかった。

 




メガトロンとレイは、書いてるうちにドンドンと思い入れの強くなったキャラでした。
実のところ、この二人を組ませたのは『オプティマスにヒロインがいるんだから(この頃は愛し合うか、あくまで友情でいくかは決めてませんでしたが)メガトロンにもヒロインがいてもいいだろう』くらいの理由でした。

しかしよー考えたらこの二人、
『孤独な男と孤独な女』
『美女と野獣メソッド』
『一介の剣闘士からの成り上がりという、ロマン溢れる出自のメガトロン』
『自分の国を滅ぼしてしまった太古の女神という、ロマン溢れる出自のレイ』
という自分的にドストライクな要素が詰まっており、気づけば凄い優遇しておりました。自分でもやり過ぎと思うくらいに。

次回は、それぞれの最終決戦、オプティマス編。

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