超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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師走につき、遅くなりました。
おそらく、2017年最後の更新になります。

※ちょっと修正。


第171話 祈りの歌

「皆、待たせたな。……今、戻った」

 

 虹色のオーラを纏いオプティマス・プライムは新たな姿となって復活した。

 その声は通信となって戦場を駆け廻る。

 

『やった、やったぞぉぉ!!』

『オプティマスが帰ってきたぁああ!!』

『おお、センセイ……!』

 

 アイアンハイドを始めとした空中神殿攻撃組は歓声を上げ、否応なしに士気が上がる。

 オプティマスの帰還は、まるで魔法のようにオートボットにさらなる勇気を与えていた。

 

「オプティマス!!」

「『司令官!』」

 

 アーシーやバンブルビーも歓声を上げる。

 だがアイエフは、紫の女神の姿のないことに不安を覚えた。

 

「ネプ子は……?」

「お姉ちゃんは……オプティマスさんといっしょにいます!」

 

 それに応えたのはネプギアだ。

 彼女は、女神としての本能か姉がオプティマスと一体化していることを察していた。

 

「なるほど、女神とトランスフォーマーの一体化……神機一体とでも言うのかね」

「愛のパワーですね!」

 

 はしゃぐロディマスを抱いたラチェットは感心した様子で頷き、コンパも握りこぶしを作ってガッツポーズを取る。

 

 だがセンチネルは、信じられない物を見たという表情をしていた。

 

「オプティマス……生き返ったか!!」

「センチネル」

 

 その声に反応し、オプティマスはかつての師の方を向き、神々しさすら感じさせる表情で告げる。

 

「師よ、もはや貴方がたに勝ち目はありません。どうか、潔く降伏を」

「ほざけ! 生き返ったのなら、もう二度と甦えることのないようにしてくれる!!」

 

 瞬間、センチネルは腐食銃……あの、コズミックルストを撃ち出すトランスフォーマー殺しの武器を取り出すと、有無を言わさず発射した。

 しかし、あらゆる金属を瞬く間に腐食させるはずのコズミックルストの薬液は蘇ったプライムの体に届く前に消滅してしまう。

 

「な!?」

 

 一瞬、愕然とするセンチネルだが、続けてコズミックルストを発射する。

 だが何度撃っても、薬液は虹色のオーラによって中和されてしまう。

 

「センチネル。もう、止めにしましょう」

「いや……いいや! ここまで来て、もはや後戻りはできん!!」

 

 なおもオプティマスの申し出を拒否しセンチネルは飛び去る。

 追おうとしたオプティマスだが、その瞬間上空の戦艦が大爆発を起こし、炎の中から新たな姿のメガトロンが飛び出してきて、オプティマスの隣に着地する。

 

「メガトロン」

「オプティマス。ふん、やっと起きたようだな」

「ああ、おかげ様でな」

 

 オプティマスは、ネプテューヌを通してメガトロンたちが味方であることを知っていた。

 そしてそれは、不思議と頼もしさしか感じなかった。

 

『メガトロォォン! オプティマァァァス!』

 

 未だ空に浮かぶ神殿から、ザ・フォールンの声が聞こえてきた。

 

『おのれ、不信心者どもが……! それで勝ったつもりか? 女を取戻し、マトリクスの力で甦って、それで終いか?』

「師よ。負け惜しみはよせ、レイがこちらにいる以上、もうシェアエナジーを使った強化はできまい!!」

 

 メガトロンの吼える通り、ザ・フォールン派のディセプティコンたちからシェアの共鳴は消え失せている。

 シェアハーヴェスターも、女神がいなければ唯のデカブツ。

 数の理もない今、彼らに逆転の目は有り得ない。

 普通なら、だが。

 

『ふ、ふははは、はーっはっはっは!!』

 

 しかし、ザ・フォールンは哄笑する。

 天地を震わすそれは、しかしオプティマスとメガトロンを畏怖させるには至らない。

 

『愚かな奴らよ! すでに時間切れだ!!』

「なに? ……むっ!」

 

 神殿の下部に設置されたシェアアブソーバーから、さらなる光が放たれる。

 それは今までの虹色の光とは違う、禍々しい紫の光だ。

 同時に、ネプギアが地面に片膝を突いて苦しそうに喘ぐ。

 

「『ネプギア!』」

「し、シェアエナジーが……さらに吸い取られていく!」

 

 異変は他の場所でも起きていた。

 ノワールが、ブランが、ベールが、女神候補生たちが膝を突き地面に倒れる。

 

「これは……レイがいないのにどうやって……!」

『フハハハ! 保険は用意しておくものだ!』

「保険……? そうか、ダークスパークか!」

 

 オプティマス共々よろめくメガトロンは、師の言葉に現状を察する。

 ダークスパーク……魔剣ゲハバーンは元々ザ・フォールンが女神の力を保管しておくために作った物だった。

 そしてゲハバーンによって命を散らし、力を奪われた女神が長い歴史の中でレイだけとは思えない。

 

「こいつはお笑いだ……! あの野郎、本当にレイを痛めつけるためだけに機械に縛り付けてやがったのか……!」

 

 怒りに顔を歪めるメガトロン。

 だが、ザ・フォールンの悪辣さはさらに予想の上を行く。

 突然、稲妻のような光が地面に落ち、すると禍々しい紫色の波動が地面を伝って首都全体に広がっていく。

 

 それは生きる者には、一切の影響を与えなかった。……だが、死せる者はその限りではない。

 

 これまでの戦いで倒れたディセプティコンたちの亡骸。

 もう何も映さないはずの眼窩に紫色の光が宿り、すでに動かないはずの身体が動き出す。

 死者の復活……いやこれはダークスパークの力により、無理矢理動かされているだけだ。

 

 ゾンビ・ディセプティコンの群れは、拙い動きでオートボットを取り囲む。

 

『ハハハ、ハァーッハッハッハ!! さあ、今一度戦場に戻ってきたディセプティコンたちよ、その不信心者どもを引き裂き、叩き潰し、喰らい尽くせ!!』

「何と言うことを……!」

 

 死者への冒涜に怒るオプティマスだが、ザ・フォールンは勝利を確信して叫ぶ。

 

『これで、数の差も消えた! ましてシェアエナジーが無ければ、どれだけ数がいても女神などただの塵!! これで、詰みだ!!』

「そんな……ここまで来たのに、せっかくオプティマスさんも生き返ったのに……!」

 

 ネプギアは立っていられないほどに消耗し、絶望に顔を曇らせる。

 全てのシェアエナジーを吸い取られてしまっては、女神は何の力もない。

 

「フッ……」

 

 しかし、そこで不敵に笑う者がいた。

 

 メガトロンだ。

 

 破壊大帝は、自身に満ちた声を出す。

 

「シェアエナジーが無ければ、か。愚かだな、師よ」

『負け惜しみを……』

「女神と、ずっと戦ってきて分かった。シェアエナジーは、奪えば尽きてしまうような、そんな単純な物ではないのだ」

 

 隣に立つオプティマスも、力強く頷いた。

 

「シェアエナジーがオールスパークの力の一部……それはある意味において正しい。しかしそれだけではない。……シェアエナジーとは、信頼と絆の力。誰かが女神を信じる限り完全に無くなることなど有り得ない!!」

 

 その時、急に何処からか声が聞こえた。

 

『みんなー! ボクの声を聞けー!』

 

 

 

 

 サウンドウェーブは、未だ宇宙空間にいた。

 監視のディセプティコンを軽く始末した彼は、今はインターネットを介して5pb.の声をゲイムギョウ界中に発信していた。

 

『ゲイムギョウ界のみんな! 5pb.です! 今日は大切なお話があるんだ!!』

 

 この局面における情報参謀の使命は、決戦に参加することではなく、シェアエナジーが全て失われた時に、それを取り戻す手を打つことだった。

 

『今、女神様とオートボット……それにディセプティコンの皆が、この世界のために戦っているんだ』

 

 それこそが、5pbによる.呼びかけだ。

 レーザービークとラヴィッジを遣わして彼女に頼み込み……実際には二つ返事で了承してくれた。

 言ってはなんだが、彼女の知名度は下手な女神を上回る。

 必ず、みんな聞いてくれるはずだ。

 

『こんな時、ボクらに出来ることって何もないのかな? ……そんなことない。みんな、女神様やトランスフォーマーの皆を信じて、応援してほしい。ゲイムギョウ界では、想いは、祈りは、確かな力になるんだから!!』

 

 そして、5pb.は新曲である『Hard beat×Break beat』を唄いだす。

 想いを込めて、世界に届けと。

 それが、彼女の祈りなのだ。

 

 

 

 

 その歌声は、ゲイムギョウ界中に届いていた。

 あらゆるテレビから、ラジオから、ネットに繋がったパソコンから、5pb.の歌が流れる。

 同時に、戦場で戦う女神や人間、トランスフォーマーの様子が克明に映し出されていた。

 

「がんばれー、女神様ー!!」

「オートボットのみんなー、しっかりー!」

 

 最初に応援を始めたのは、各国の子供たちだった。

 それに釣られたワケではないが、大人たちも応援を始める。

 

「ネプテューヌさん、ネプギアさん……必ず帰ってきてください」

「契約はまだ終わっていないよ、ノワール、ユニ」

「ブラン様、ロム様、ラム様、どうかご無事で……」

「お姉さま! それにアリスも、負けないで!」

 

 各国の教祖を始めとした国民も、自分たちの女神に祈りを捧げる。

 

「えんちょうせんせー、めがみさま、まけないよね?」

「もちろんですよ、皆が応援すれば、ノワール様たちが負ける者ですか」

 

 幼稚園の園長は、園児たちと共に祈る。

 

「パパ、いっしょにロムちゃんやラムちゃんを応援しよう!」

「ああ! ……クマさん、アンタのことも応援するぜ!」

 

 ルウィーではテスラが友達の無事を祈り、父マークはブロウルのこともこっそりと応援する。

 

「女神様……それに、ミックスマスターたちも! 私たちの魂を見せてやれ!!」

 

 万能工房パッセのシアンは、工房の仲間たちと共に祈る。

 

「サイドスワイプ様……ユニ様……」

 

 サオリは、目を瞑って祈りを捧げた。

 

「パパ、サイドウェイズやジョルト……きっと勝てるよね!」

「もちろんじゃないか、僕やコーリーが応援するならね!」

 

 ルウィーの田舎の村、アニマルクロッシングのクリスとコーリーの親子は、避難所で友人たちの勝利を祈った。

 

「ガガガー! 野郎ども、ブラン様たちを応援するぞー!!」

『ヒャッハー!!』

 

 暴走族のメダルマックスも、無償ボランティアとして避難民に食事を配りながら祈る。

 

「ベール様、アリス様……」

 

 かつて秘密警察108号と呼ばれていた少女は、厳しくも優しい女神のことを信じ、祈る。

 

「父さん……」

「なにをしてるマニー、女神様のために祈らんか!」

「ッ! う、うん!」

 

 精神病院で父の世話をしていたマニー・モージャスは、祈る。

 

「ミスター・オプティマス。ミス・レイ。また会えることを信じています」

 

 ルウィーのトレイン教授もまた、祈る。

 

「オプティマス……見せてくれ、平和ってやつを」

 

 かつてハイドラヘッドと呼ばれていたクローンも、人々の避難を手伝いながら呟く。

 

「レッツ、ねぷねぷ!!」

『レッツ、ねぷねぷ!!』

「レッツ、おぷおぷ!!」

『レッツ、おぷおぷ!!』

 

 ネプ子様FCの面々も彼らなりの方法で祈りを捧げる。

 

「ベール様、アリス! がんばるビル!」

 

 ツイーゲはノートパソコンに向かって両手を振り上げる。

 

「ノワールちゃんたち、オートボットのみんな…………それにレイちゃん。アタシは快楽主義のどうしようもない悪党だけどね、アンタたちといた時間は楽しかったわ。……ちゃんと帰ってきなさいよ」

 

 アノネデスも、平時の不真面目さを捨てて真摯に祈る。

 

「マジェコンヌさん……」

「ふん、あんな奴らにいずれ私の物になる世界を壊されるのは不愉快だ。……女神ども、それにトランスフォーマーたち、必ず勝てよ」

 

 ナス畑で、マジェコンヌとマジックも敵に塩を送る形で祈る。

 

「…………」

 

 そしてアブネスは、無言で祈りを捧げていた。それが誰のための祈りかは、彼女のみぞ知ることだった。

 

 

 

 

 

 歌声と共に祈りはゲイムギョウ界中に広がっていく。

 

『これは……これは、何だ!?』

 

 祈りは、シェアエナジーとなって虹色の光として各国のシェアクリスタルに届いていく。……もちろん、空中神殿のシェアハーヴェスターにも絶えず吸い取られていく。

 

 しかし、どれだけ吸っても、シェアが尽きることはない。

 

『馬鹿な! シェアハーヴェスターの許容量を超えたエネルギーだというのか!!』

 

 ザ・フォールンの叫びの通り、もはやシェアハーヴェスターでは吸収し切れない。

 やはりシェアエナジーがオールスパークの力というザ・フォールンの考えは、完全には正しくなかったのだ。

 この世界と一体化したオールスパークの影響を受けた人々の祈りが、想いが、信頼が、実態的なエネルギーとなった物、それがシェアエナジーだったのだ。

 

 溢れるシェアエナジーは女神に、オートボットに、そしてディセプティコンに伝わっていく。

 

 

 

 

「届いたわ……皆の祈り、皆の想い!」

「うん。皆が応援してくれてる!」

 

 ノワールとユニは、胸を押さえて立ち上がる。

 

「これで負けるわけにはいかねえよな……ロム、ラム! いくぞ」

「うん、お姉ちゃん! 感じる……すごく、あったかい」

「よーし、こっからが女神の『ほんりょうはっき』だよ!」

 

 ブランとロム、ラムが声と共に光に包まれる。

 

「アリスちゃん、わたくしたちも!」

「はい、姉さん!」

 

 ベールとアリスがその姿を変える。

 

 十分なシェアを得て、人から女神の姿へと。

 

 黒が二つ、白が三つ、緑が二つ。

 七つの光が暗雲に覆われた空へと上がる。

 

「おお……何と美しい!」

「確かにな、こりゃ綺麗だ」

「あらあら、ますます可愛くなっちゃって!」

 

 その姿に、ドリフトとハウンド、クロミアは見惚れ、クロスヘアーズも感心したように見上げていた。

 

 女神化したノワールは、大剣となったワタリガラスを掲げ、鬨の声を上げる。

 

「さあ、みんな! これが最後の戦いよ!」

『おおおお!!』

 

 

 

 

「ギ…ア…!『ケリを着けよう!』」

「うん……やろう、ビー!!」

 

 明るい紫色の光に包まれて、ネプギアもまた女神の姿へと変身する。

 

「ネプテューヌ、感じているか? この力を」

『うん、感じるよ。みんなの信頼と愛。……これぞ王道! これぞ最終決戦!!』

 

 ゲイムギョウ界中から集まってくるシェアエナジーをオプティマスは穏やかに、ネプテューヌは騒がしく受け取る。

 オプティマスの身体から立ち昇る虹色のオーラが、どんどんと大きくなっていく。

 

「なるほど、これが機械で搾り取ったのとは違う、真のシェアエナジーか……勝てぬワケだ」

『こんなに暖かい物だったなんて……知らなかった。いいえ、知ろうとしなかった』

 

 心の底から感心したように、メガトロンは呟く。

 そのメガトロンの中のレイは、自らを通してメガトロンに流れるシェアエナジーに、その暖かさに震えていた。

 

「おのれ……イレギュラーどもが!!」

 

 空中神殿の真上に、黒い影が現れた。

 業を煮やしたザ・フォールンが、ついに自ら不信心者を討滅するべく打って出たのだ。

 

 顔の縁や背骨沿いの羽根のようなパーツが激しく蠢き、その細く曲線的な身体の全体から、地獄の業火のようなオーラが噴き上がる。

 

 これこそは堕落せし者の奥の手にして戦闘形態とでもいうべき、サヴェッジモードだ。

 

 その手前に、白銀の神々しいエイペックスアーマーを纏ったセンチネルが飛んできて空中で静止する。

 手には、変わらずテメノスソードが握られていた。

 装甲に覆われた顔から表情は窺い知れないが、あくまでもザ・フォールンに付いて戦う気であるらしい。

 

「オプティマス! 我らの未来が勝つか、貴様たちの未来が勝つか、雌雄を決する時がきた!!」

「メガトロン、来るがいい! その女共々、越えられぬ宿命という物を教えてくれる!!」

 

 裏切りのプライムたちは、それぞれのかつての愛弟子を最終決戦の相手として選ぶ。

 こちらの答えは、決まっていた。

 

「必ず、未来を掴み取る!!」

「宿命など、撃ち破ってくれる!!」

 

 オプティマスとメガトロンは、並んで今や打倒するべき敵となった師たちを見据え、揃って掛け声を上げる。

 

「オートボット!」

「ディセプティコン!」

 

攻撃(アタック)!!』

 

 そして最後の戦いが始まった……!

 




今回の解説

サヴェッジモード
炎のようなオーラを纏ったザ・フォールンの奥の手。
一部のザ・フォールンの玩具についている、クリアパーツを展開するギミックが元ネタ。

『Hard beat×Break beat』
原作アニメ、超次元ゲイムネプテューヌTHE ANIMATION最終回の挿入歌。
もちろん、5pb.ちゃんの曲。

サブキャラ大集合
蛇足でも、間延びしても、どうしても入れたかったんです。

※ツイーゲちゃん忘れてた……ごめんよ、ツイーゲちゃん。

シェアエナジー
オールスパークの力でもあるけど、同時にやっぱり人々の祈りや信仰のパワーでもあったという感じです。

次回は、それぞれの最終決戦、みんな編。

では、よいお年を。

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