超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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第167話 援軍、来る

 オプティマス救出に走るネプテューヌたちとは別に、シェアアブソーバー破壊のために進軍する連合軍。

 ダイノボットの存在もあって順調に歩を進めていた彼らだが、シェアで強化されたディセプティコンの大軍を前に徐々に圧され始めていた。

 

「ぼうぉおおおお!!」

「ぐるるるぅ……まだまだぁ!!」

 

 グリムロックは、自分と同サイズの巨大なトランスフォーマーと取っ組み合っている。

 

 スモルダーが意思を持たない四体のドローン……ヘリコプター、ジェット戦闘機、対空戦車、後輪の代わりに履帯を持つ半軌道の装甲車を四肢として合体し、さらに胸にチョップスターを砲台として胸に装着した姿だ。

 

 さしものダイノボットと言えども、波のように押し寄せる敵に疲労の色が見え始めている。

 

「このまま攻め続けろ! もはや敵に後は無いぞ!!」

 

 自分に向かってきたパワードスーツを中の人間ごと真っ二つにしたブラジオンは、ディセプティコン軍に指示を飛ばしていた。

 

「だーくそ! どれだけいやがるんだ!!」

「さすがにジリ貧だな……!」

 

 ブランは次々とバイクなどから変形した人間大のディセプティコンを叩き斬り、ミラージュも果敢に敵を斬るが、敵の数は一向に減らない。

 

「ミラージュ、わたしから離れんなよ!」

「そちらこそな」

 

 言い合いながら、女神とオートボット、人間は戦い続ける。

 この状況でも、彼らの目に諦めの色はない。

 

「ノワール、無茶すんなよ!」

「今は無理でも無茶でもしなきゃいけない時よ!!」

 

 全身の武装を斉射して敵の小隊を薙ぎ払うアイアンハイドに、自分より大きいディセプティコンの胴を剣で切り裂いたノワールが吼え返す。

 しかし上空が慌ただしくなっていることを感じ取り見上げると、大きな宇宙船がこちらに飛んでくるのが見えた。

 

 飛び回っているディセプティコンの戦艦よりも一回り大きく、また丸みを帯びたシルエットが特徴的だ。

 ディセプティコンの戦艦が古代魚なら、こちらはエイのようにも見える。

 

 最初はディセプティコンの援軍かと思われたが、戦闘艇が向かっていくところを見るに、違うようだ。

 

 ならば、あれは……。

 

「ザンディウム号! オートボットの船だ!!」

『ハッハー! 騎兵隊の到着だ!!』

 

 格闘戦で敵を叩きのめしたジャズが歓声を上げると、通信に前に……惑星サイバトロンで聞いただみ声が入ってきたのは、ほぼ同時だった。

 

  *  *  *

 

「ハッハー! 騎兵隊の到着だ!!」

 

 ザンディウム号のブリッジで、ハウンドは全身の武装を揺らしながら鬨の声を上げた。

 

「さあ、降りて戦いだ!! 今日の我が剣は一味違うぞ!!」

 

 ドリフトは背負った刀を抜くのを今か今かと待っていた。

 

『状況:混戦。降下、困難』

 

 しかしブリッジのコンソールからは冷静な意見が飛ぶ。

 この船にメインコンピューターとして組み込まれたオメガ・スプリームの意識の声である。

 それを受けたのは、艦長の位置にいる青いボディにタイヤの一本足を持つ女性オートボット、アイアンハイドの恋人であるクロミアだ。

 

「なら、まずは露払いね! エアリアルボット隊! 出動要請(スクランブル)!!」

 

 

 

 

「了解! エアリアルボット、出撃!!」

 

 クロミアの要請を受け、ザンディウム号の下部ハッチが開くや、三体のオートボットが踊り出た。

 そして、空中でそれぞれ曲線的なフォルムを持つ『スズメバチ』と呼ばれる戦闘機、『戦うハヤブサ』と綽名される軽量戦闘機、鋭角的なフォルムと単進式のジェットエンジンを持つ『電光』と言う名の戦闘機に変形するや、ジェットエンジンを吹かして高速飛行を始める。

 

 彼らはシルバーボルト、エアレイド、ブレイクアウェイ。

 

 オートボットの制空権を守る航空部隊エアリアルボット……その最後の生き残りである。

 

「さあエアリアルボット諸君! 天使とダンスだ!!」

 

 指揮官たるシルバーボルトの指示の下、三機の戦闘機は舞うような動きで戦闘艇を次々と撃ち落としていく。

 その後ろには、ディセプティコンから奪った戦闘艇に乗るクロスヘアーズも続く。

 

「そんな蝶々みたいな飛び方じゃあすぐに落とさるぞ、クロスヘアーズ!」

「へッ! そっちこそそんなフラフラした飛び方じゃあフライドチキンになっちまうぞ、エアレイド!」

 

 エアリアルボットの中でも特に命知らずで鳴らすエアレイドと言い合いながらも、クロスヘアーズも戦闘艇を撃破していく。

 そこへ、剣のようなシルエットの黒い高高度偵察機が並んで飛行を始めた。

 

「おう、若造ども! なかなかにいい飛び方をするじゃないか!!」

「あんたは?」

 

 直線飛行では並ぶ者なしと自負するブレイクアウェイは、いきなり現れて易々と自分に追い付いた老兵に驚いていた。

 老兵ジェットファイアは敵戦艦のブリッジにミサイルを叩き込みながら答える。

 

「俺の名は、ジェットファイア! 見よ、ジェットファイア様の永久なる栄光を!!」

「ジェットファイア! まさかあの、伝説にある天空の騎士!?」

「広まってんのか、その綽名……」

 

 歴史に残る偉大な戦士が眼前に現れたことにシルバーボルトは驚愕するが、当のジェットファイアは少し不満げだった。

 

 そう言っている間に人間の乗った戦闘機も参戦し、彼らの奮戦もあってとりあえずの制空権を確保できた。

 

 短い戦闘だが、ジェットファイアがエアリアルボットからの尊敬を獲得するには十分だった。

 

「若造にしちゃ、上出来な飛び方だ!! もっとも、前に一緒に飛んだ奴には負けるがな! アイツはスピードはピカイチでテクニックもかなりのもんだ! スマートだし機転だって効く!」

「貴方にそこまで言わしめるとは、その戦士に是非お会いしたいものです」

 

 感心するシルバーボルトだが、ジェットファイアの言う人物が、かつてタイガーパックスの戦いでエアリアルボットを壊滅にまで追い込んだスタースクリームであることには、当然気付いていなかった。

 

 

 

 

 

 パラシュートを使って地上に降下したオートボットたちは、さっそくディセプティコン相手に暴れだした。

 

「さあ、パーティーの時間だ!! 鉛玉料理をディセプティコンにご馳走してやるぜ!!」

「変わらねえな、ハウンド!」

「そっちこそ……いや何か変わったなおい!」

 

 ハウンドはすぐさまアイアンハイドと背中合わせになって、カバーし合う。

 歴戦の戦士二人の重火力は、敵を薙ぎ払うには十分だった。

 

『よう、ミラージュ。相変わらずスカしてんな。白いチビも元気そうじゃねえか!』

「…………」

「あなたもね、クロスヘアーズ」

 

 戦闘艇からわざわざ通信してきて煽ってくるクロスヘアーズに、ミラージュは安定の無視で、ブランが変わりに挨拶する。

 

「お久しゅう、麗しい方。ドリフト、ただいま参上いたしました!」

「ええ、お久しぶりですわね」

 

 一方のドリフトは、こんな時だというのにベールの前に片膝を突いて頭を垂れる。

 

「このドリフト、貴方のためなら山を越え、谷を越え、宇宙も越えて……」

「はいはい、挨拶してる暇があったら戦おうな!」

 

 何やら熱烈なことを言い出したドリフトを、敵を蹴り飛ばしたジャズが立たせようとするが、侍は何とも不愉快そうな顔をオプティマスの副官に向けた。

 

「ジャズ……貴様より一層、おちゃらけた姿になりよって……!」

「見た目云々をお前に言われたくはないな」

 

 再会早々に険悪なムードになるオートボット一の洒落者と、形から入るタイプの侍(自称)。

 この二人、元々相性が悪いばかりかオプティマスの件や、ベールを巡る形でより関係が悪化している。

 以前は一方的に突っかかってくるドリフトをジャズが適当に受け流すだけだったので、ある意味進歩だろうか?

 

「はいはい、二人とも喧嘩しないでくださいまし!」

「姉さん、モテますね……」

 

 そんな二人をピシャリと叱るベールに、アリスは我が姉ながらとんだ『(たら)し』だと若干呆れた様子である。

 

「みんな、来てくれたのね」

 

 ノワールはアイアンハイドと背中合わせに戦うハウンドや、喧嘩を共に敵を翻弄するジャズとドリフトを見て、笑顔を浮かべる。

 この状況下で、これほど頼もしい助けはない。

 

 だがしかし、だからこそ油断は死を招く。

 

「お姉ちゃん、あぶない!!」

 

 高所から狙撃手に徹していたユニは、姉の背後にディセプティコンが迫っていることを察知した。

 すぐさま銃を撃とうとするが、それより早く動いた影があった。

 

 アイアンハイドでもサイドスワイプでも当のノワールでもない。

 

「うちの娘に何すんじゃおりゃああああ!!」

 

 クロミアである。

 

 タイヤになっている足で自分の倍以上はあるディセプティコンに飛びかかり、右腕を変形させた銃で頭を吹き飛ばす。

 

「ノワール、大丈夫!?」

「え、ええ。……久し振りね、クロミア」

 

 華麗に着地して駆け寄るクロミアに目を丸くするノワールだが、すぐに笑顔になった。

 

「お姉ちゃん!」

 

 そこへ慌ててユニが高所から降りてきた。

 ユニは見慣れぬオートボットを少し警戒しているようだった。

 クロミアはと言えばユニを見て、ニッと笑みを大きくする。

 

「あなたがユニね! うん、なるほど。可愛い子じゃあないの!」

「え、え~と……」

 

 その態度に戸惑うユニだが、互いに自己紹介している暇はなかった。

 アイアンハイドが、両腕の砲を撃ちながら女神姉妹と恋人を呼ぶ。

 

「おーい、お嬢さんたち! こっちを手伝ってくれ!」

「了解! ノワール、ユニ、積もる話は後でね! まずはこいつらを片付けちゃいましょう!」

「ええ!」

「は、はい!」

 

 クロミアはすぐさま戦士の顔つきに戻り、女神姉妹に一言断ってから戦線に戻るのだった。

 

  *  *  *

 

 プルルートとピーシェ、二人の女神を相手取るセンチネルは、離れた場所の状況をすでに把握していた。

 

「あれはザンディウム号! オートボットめ、あくまでもオプティマスに着くか……!」

「あらあらぁ、意外と人望ないのねぇ!」

 

 小馬鹿にしたような口調で煽るプルルートだが、センチネルはギラリとオプティックを光らせる。

 盾でピーシェの拳を受け止め、剣でプルルートの蛇腹剣をいなす。

 女神と老雄、どちらも今だ敵を致命に至らせてはいない。

 

「……どうやら奥の手を使わざるを得ないようだ」

 

 言うやピーシェの飛び蹴りを躱し、背中から彼の掌ほどの五角形のプレートのような物を取り出した。

 よく見ればプレートは機械で出来ており、中央に発光する球体が埋め込まれている。

 

「何よそれぇ? そんなのでどうしようって言うのぉ? ファイティングヴァイパーⅡ!!」

「なんだか分からないけど、やっつける!! ヴァルキリークロー」

 

 馬鹿にした態度とは裏腹に、プルルートは油断せずに即行で決めるべく、より強力な電撃を纏った攻撃を繰り出し、ピーシェもそれに倣って大技をセンチネルに叩きこもうとする。

 

「甘い!!」

 

 センチネルは二人の手前の地面に向かって数発、実体弾モードの腐食銃を撃ちこむ。

 爆発で飛び散るアスファルトの欠片が二人の技が出るのを塞いだ。

 

「うわわ!?」

「ッ! つまんない真似を……」

 

 その一瞬の隙にセンチネルはプレートを胸に装着した。

 するとプレートがギゴガゴと音を立てて変形を始め、パーツが湧き出してきてセンチネルの体を覆っていく。

 やがて先代プライムの姿は金属のパーツに完全に覆われるが、それでは終わらず、その影はどんどんと大きくなっていった……。

 




やっと、ロストエイジ組+α合流。

今回の解説

ザンディウム号
原作では、ダークサイドムーンでオートボットが追放される時に登場。
サイドスワイプらはこの船に乗って地球に来たらしい。
この作品ではオメガ・スプリームがメインコンピューター役をすることで飛んでいる。

エアリアルボット
日本語版ではエアーボット。
面子は、ゲーム版ダークサイドムーンに登場した三人。(三人そろってスタスクに撃墜されたけど……)

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