超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION 作:投稿参謀
プラネテューヌ首都では、オートボットと女神、四ヵ国の軍からなる連合軍と、ディセプティコンの激しい戦闘が続いていた。
オプティマス・プライムを甦らせるべく進もうとするネプテューヌたちは、十字路の真ん中でシェアエナジーによって強化されたディセプティコンに囲まれていた。
「埒があかんな! 右の敵の数が少ない場所を強行突破するぞ!!」
「いやまて!」
ラチェットの号令に、ロックダウンが反論する。
「こいつは狩人の手だ! 包囲網が薄い場所の先には、何らかの罠があるはずだ! 頭のいい獲物を仕留めるためによくやる手だ!!」
「……確かに! よし、それなら正面を強行突破だ!! トランスフォーム!!」
すぐさま、ロックダウンの言うことを理解したラチェットは、作戦を変える。
この二人、長年戦い続けている宿敵同士だが、だからこそ通じ合っている部分があるのかもしれない。
「ネプ子! 乗って!!」
「アイちゃん!」
バイクの姿のアーシーに跨ったアイエフが手を伸ばす。
その手を掴んだネプテューヌは、アイエフの後ろに乗った。
「おお! 最終面にありがちな強制スクロールだね!」
「よくわかんないけど、二人ともしっかり掴まってて! 飛ばすわよ!」
ネプテューヌがアイエフの腰にしがみ付くと、アーシーはエンジンを全開まで回す。
オートボットたちはビークルモードに変形し、バンブルビーはネプギアを、ラチェットはコンパを乗せて、アーシーの周囲を囲んで走る。
人造トランスフォーマーたちは変形して近場のクローンたちを乗せる。
すぐさま、行く手を阻もうとディセプティコンたちが動き出した。
「くらいなさい!!」
アーシーに運転を任せたまま、アイエフはパルスライフルでディセプティコンの頭部を狙い撃つ。
倒すには至らずとも、怯ませることぐらいはできた。
「おお、アイちゃんビューティホー! いや原作では銃を持ってるキャラじゃないのに、サマになってるね!」
「茶化さない! 私だって、本当ならカタールで戦いたいわよ!」
相変わらずよく分からないことを言い出すネプテューヌにアイエフは愚痴で答えるのだった。
包囲網を突破するネプテューヌと仲間たちを、センチネルは降下艇の上に仁王立ちして見下ろしていた。
「ふむ、あえての厚い所を突いて来たか。なるほど、さすがに戦い慣れておる」
感心したように声を漏らすセンチネル。
そのまま薄い所を進めば、さらなる大軍団が待ち構えていたのだ。
だが、センチネルの顔から余裕は消えなかった。
「しかし、そこから先はそう簡単に行くかな? ……航空部隊、爆撃を開始せよ!」
『キキキ……了解』
「上からくるよ! 気を付けて!!」
アイエフの後ろに跨ったネプテューヌは、上空から飛来するディセプティコンの戦闘艇と、それを率いる何機かの航空機型ディセプティコンを見とめて声を上げる。
編隊の先頭にいるのは、鏃のような形状の黒いステルス戦闘機だ。
かつて惑星サイバトロンでネプテューヌたちを苦しめたマインドワイプである。
「全員、足を止めるな! 突っ走れ!!」
ラチェットが声を上げるのと、ディセプティコンが攻撃してくるのは同時だった。
たちまち路上は爆炎に包まれ、オートボットたちは降り注ぐ光弾やミサイルを右へ左へと避けながら走り続ける。
「うわああああ!!」
しかし、トラックスの一体がミサイルの爆風に煽られて横転する。
「! もど……」
「構うな! 止まったら君までやられるぞ!!」
助けにいこうとアイエフに叫ぼうとするネプテューヌをラチェットが一喝する。
アーシーは、その意を汲んでさらにスピードを上げる。
「…………ッ!」
ネプテューヌの脳裏に、前世で経験した戦争の記憶が浮かぶ。
消えゆく命、死にゆく戦士たち。
そしてネプテューヌは、それを自分の罪として背負う。
自らの都合に付き合わせた結果、死なせたとして。
ネプテューヌはアイエフの腰をギュッと抱きしめながら、叫ぶ。
「あのビルの下へ! あそこの地下で爆撃をやり過ごそう!!」
その指示に、オートボットたちは頑丈そうなビルへと急ぐのだった。
「仲間を犠牲に凌いだか。ならば、次に向かうのは……」
ひた走るネプテューヌたちを上空から見る裏切りのプライムのオプティックには、予想通りと言わんばかりの光が浮かんでいた。
地下駐車場に潜り込んだオートボットたちは、ようやく一息ついていた。
「怪我をした人はいないですかー!」
「ああ、こっちを頼む!」
「はーい!」
コンパがすぐに、負傷した者の救護に当たる。
彼女も、すっかり戦場での医療行為に慣れたものだ。
それがいいことかは、分からないが。
「全員、無事か?」
「一人やられました。それともう一人姿が見えません」
「そうか……」
ロックダウンは、副官格の傭兵から報告を受け、表面上平静を保っていた。
傭兵の死に涙は不要。それが彼らなりの矜持なのだ。
「ねぷねぷ」
「こんぱ……」
傭兵たちの方を見ながらギュッと拳を握るネプテューヌに、コンパが優しく声をかけ、その頬の傷の血を拭う。
いつの間にか、傷を負っていたらしい。
「駄目ですよ、好きな人に会いにいくのに、酷い顔してちゃあ。キレイキレイ、です」
「ありがと、こんぱ……ッ! し、染みるなー……」
「我慢するです!」
傷薬を塗るコンパと、口では文句を言いながらもされるがままのネプテューヌ。
この二人の関係は、昔から変わらない。
「……おかしい。建物の周りにディセプティコンの気配がない」
「こちらを見失ったんじゃないの?」
「『ないない』『アイツらは猟犬のように鼻が利く』」
一方で、駐車場の出入り口を警戒していたラチェット、アーシー、バンブルビーは、敵の動きに疑問を感じていた。
「どういうことだろう? スティンガー……スティンガー?」
そのことに首を傾げるネプギアだが、真っ赤な人造トランスフォーマーが上を見上げていることに気が付く。
内蔵された機能で、上階をサーチしているらしい。
「……! これは、マズイ! 皆さん、急いでこのビルから退避してください!! このビルには爆弾が仕掛けられています!!」
「罠か!! 全員、走れ!!」
すぐに状況を把握したラチェットの号令に、一同は走り出す。
全員が地下駐車場から走り出た瞬間、さっきまでいた駐車場とビルの一階から二階部分に懸けてが内側から爆発する。
しかし、全員無事で一安心……とはいかない。
「逃げろ! 走れ! 止まるな!!」
ビルその物が、こちらに倒れてくる。
ご丁寧に、出口側に倒れるように爆破したらしい。
さらに状況は悪化する。
倒れ込んでくるビルが、内側から爆発したのだ。
炎に包まれた瓦礫が、次々とオートボットたちの上に降り注いだ。
……ネプテューヌが意識を取り戻し、瞼をゆっくり開けた時、あたりには瓦礫が散乱し、土煙でほとんど何も見えなかった。
瓦礫に潰されなかったのが奇跡だ。
他の皆の姿は見えない。
「ネプギア! アイちゃん、こんぱ……!」
探そうと立ち上がろうとしたとき、土煙の中から大きな人影がこちらに歩いてくるのが見えた。
オートボットの誰かかと思ったが、この状況では一番見たくない姿だった。
「センチネル……!」
「また会ったな。プラネテューヌの女神」
両柄剣プライマックスブレードを持った裏切りの先代司令官が土煙の中から現れた。
すぐさま逃げようとするが、体が痛んで上手く動けない。
地面に突き刺さったヘリポートと思しい大きな瓦礫に手を当てるセンチネルの視線は、真っ直ぐに紫の女神の胸に下げられたマトリクスに注がれていた。
「それがリーダーのマトリクス……オートボットの至宝、プライムの証」
「欲しい? でもあげないよ。これはオプっちのだからね」
「さて、それはどうかな? この場でお前を殺し、骸から剥ぎ取るのは簡単なことだ」
勝気に笑んでみせるネプテューヌに、センチネルは酷薄な視線を向ける。
痛む体を引きずって逃げようとするネプテューヌだが、センチネルがゆっくり歩くだけで、追いつかれてしまう。
「私にこそ、マトリクスは相応しい……!」
「マトリクスは、自分で持ち主を選ぶんだよ。オートボットを見捨てたヒトが、マトリクスに認められるとは思えないけど?」
さすがに刺々しさを含んだネプテューヌの言葉に、センチネルは答えることなく、プライマックスブレードを振り上げ、そのまま女神目がけて振り下す。
「…………!」
無駄とは知りつつもオトメギキョウで防御しようとするネプテューヌ。
結果は明らかであり、冷たい金属の刃は刀ごと女神の肉体を破壊するはずだった。
しかし、そうはならなかった。
刃がネプテューヌに届く寸前、紫の女神とセンチネルの間に上空から光の柱が降ってきたからだ。
「何だこれは……!?」
センチネルは異常事態に警戒し、剣を引いて後ろに下がる。
その瞬間にセンチネルの脇の瓦礫が倒れて、裏切りのプライムの姿は消えた。
ネプテューヌも、突然現れた光の柱が何なのか分からず呆気に取られるが、その答えはすぐに分かった。
「ねぷちゃ~ん!」
砂煙が治まると同時に光が消えると、そこにいたのは薄紫のクシャクシャとした髪を三つ編みにして、パジャマのような独特の服を着た、おっとりとした少女だった。
異次元に存在するもう一つのプラネテューヌの女神、プルルートだ。
プルルートは、周囲の状況など構わずネプテューヌに抱きついた。
「ねぷッ!? ぷ、ぷるるん!?」
「ねぷちゃ~ん! 久し振り~!」
「う、うん、久し振り……でも何でこっちに?」
面食らいながらもプルルートを抱き返したずねるネプテューヌに、プルルートは前と変わらぬほんわかした笑みを浮かべて答える。
「あのね~、ねぷちゃんたちが大変そうだから~、助けにいってあげなさいって~、大女神様が送ってくれたの~」
「ち、ちょっとぷるるん、いきなりこの局面で『大女神様』とか、そんな新設定ブッ込まれても困るよ!? もう最終決戦なのに!」
何やら聞きなれない単語を言うプルルートに、即座にツッコミを入れるネプテューヌ。
しかし、プルルートは構わずにニヘラと笑った。
「えへへ~。それとね~、今日はスペシャルなお友達を連れてきたよ~」
ネプテューヌから離れたプルルートが自分の後ろを示すと、またしてもネプテューヌは驚愕に目を見開いた。
「ぴーこ……?」
瓦礫の陰に、黄色と黒の子供服に、黄色に近い金髪を肩まで伸ばした、青い瞳の元気そうな幼い女の子がいた。
かつて、ネプテューヌと共に過ごした少女。
家族同然に思っていた……今でも思っている少女。
メガトロンに利用され、ネプテューヌとスタースクリームによって救われた、女神……ピーシェだった。
幼い少女は、不安げな顔でネプテューヌの方を見ている。
「ぴーこ……ぴーこー!」
「ねぷてぬ……ねぷてぬー!」
二人は互いに駆け寄る。
最後に会った時、ピーシェは記憶を失い、思い出したのは別れの本当に間際だった。
今やっと、二人は再開を喜べるのだ。
「ぴーこー!」
「ねぷてぬー!」
互いに名前を呼ぶ以外の言葉はなく、必要なく、抱きしめ合おうとした瞬間……。
「ぴーたっくーる!!」
「ねぷぅうううう!?」
ピーシェの全体重を乗せた角度、速度、共に完璧なタックルを腹に受けて、ネプテューヌは昏倒した。
一緒に暮らしていた時のように。
「えへへ、ねぷてぬー! またあえたー!」
「いたた、いや今回はちょっとマジで痛いね! もう、ぴーこってば……また会えて、わたしも嬉しいよ」
その胸にピーシェは頬ずりする。
ネプテューヌは痛みに耐えながらも上体を起こし、ピーシェの体を抱きしめる。
この格闘攻撃が、ピーシェなりの親愛の情の示し方なのは分かっていた。
その時、瓦礫を弾き飛ばしてセンチネルが立ち上がった。
センチネルは、すぐさまプルルートとピーシェを把握する。
「感動の再会中に悪いが、君たちは別次元の女神で良かったかな?」
「そうだよ~、あたし~プルルート~」
「ぴぃは、ピーシェだよ!」
呑気に自己紹介する別次元の女神二人に、センチネルは顔をしかめる。
「ならば、引っ込んでいてもらおう。これは我らとこの次元の者たちの問題だ」
「それはやだな~、あたしは~ねぷちゃんの~お友達だもん~」
相も変わらずマイペースなプルルート。
センチネルは表情を無にして腐食銃を背中から抜き、プルルートに向けた。
「ならば、待つのは死だ」
「えっと~、よくわかんないけど~、あなたが~、ねぷちゃんを~苛めたのかな~?」
「そうなるかな」
プルルートの問いに答え、センチネルは腐食銃を実体弾モードにして引き金を引こうとする。
「君に何が出来る? 今さら女神が増えたとて、同じこと……」
「二人とも、逃げ……!?」
ネプテューヌが叫ぼうとした瞬間、プルルートとピーシェの体が光に包まれた。
「ふふふ、そっかぁ、やっぱり苛めたんだぁ。ならぁ、苛め返してあげないとねぇ!」
「ねぷてぬ、いじめた! ぴぃ、怒ったよ!!」
そうして現れたのは、菖蒲の花のような色の腰まで届く長い髪を持ち、ボンテージのような衣装に身を包んだ妖艶な女性……菖蒲色の女神、アイリスハート。
そして明るい金色の髪をポニーテールにした、豊満な肢体とそれとアンバランスなあどけない表情を持った女性……黄色の女神、イエローハートだった。
「馬鹿な!? 女神は変身できないはずでは!」
「お生憎様ねぇ。あたしたちはぁ、ちょっと特殊なのよぉ。……ファイティングヴァイパー!!」
驚くセンチネルに、嗜虐的な笑みを浮かべたプルルートは、蛇腹剣を召喚するや鞭のように伸ばしてセンチネルの体を打ちすえる。
彼女たちは『女神メモリー』という物を核とした女神であり、この女神メモリーは時空を超えて彼女たちの次元からシェアエナジーを中継しているのだ。
「ッ!」
「ねぷてぬを苛めるなんて、許さない! ガードストライク!!」
怯むセンチネルに、さらにピーシェが爪付き手甲で強力なパンチをお見舞いする。
咄嗟に盾で防いだものの、さしものセンチネルと言えど大きく後退した。
「ほらほらほらぁ! どうしたのぉ、もっと抵抗しなさいよぉ!!」
そこへプルルートの電撃を纏った蛇腹剣が襲い掛かり、センチネルはさらに後退する。
「ハードブレイクキィィック!!」
「ッ!」
センチネルの剣閃を掻い潜って接近したピーシェは、飛び蹴りを繰り出すも、盾で防がれる。
しかし、これは敵の防御を崩すための一撃だった。
すぐさま懐まで潜り込むや急上昇しながらのアッパーカットでセンチネルを殴り飛ばす。
「ぬお……! おのれ! ディセプティコン! こやつらを叩きのめせ!!」
倒れこそしないがよろめいて片膝を突くに至り二人が並の敵でないと気付いたセンチネルに呼び寄せられ、瓦礫の山の向こうから次々とディセプティコンが現れた。
恐ろしげな武器を振りかざし、ブラスターやマシンガンを撃ってくるディセプティコンに、プルルートはむしろ楽しげな笑みを浮かべた。
「いいわぁ、まとめて可愛がってあげる!!」
蛇腹剣を振り回し、プルルートは楽しそうに敵の群れに突っ込んでいった。
「プハッ! みんな大丈夫……って、プルルートさんにピーシェちゃん!? 何がどうなってるの!?」
一方、仲間たちと共に瓦礫を払いのけて現れたネプギアは、状況が飲み込めずに混乱する。
咄嗟にバンブルビーとスティンガーに庇われたらしく、アイエフやコンパともども大きな怪我はないようだ。
遅れてラチェットやアーシー、ロックダウン一味に人造トランスフォーマーたちも、瓦礫の下から這い出してくる。
「つまり、あの女神たちは味方、それ以外は敵。シンプルだ。……攻撃開始!!」
さすがと言うべきかロックダウンはすぐに把握すべき情報だけを把握し、部下たちを率いて戦闘に加わる。
「なんだか分からんが、ここまで来たらあと少しだ!! ビー、アーシー、何としてでもネプテューヌ君をオプティマスの所まで送り届けるぞ!!」
「『了解!!』」
「我々はここで敵を引き付けます!! 兄弟たち、クローン兵の皆さん! 行きますよ!!」
ラチェットが叫ぶと、オートボットたちは各々のやるべきことのために動き出す。
コンパはネプテューヌに駆け寄ると、救急パックから瓶入りの薬品を取り出し、ネプテューヌの傷口にかける。
「ねぷねぷ、コンパ印のお薬ですぅ!」
「おお、ゲーム的に一瞬で回復する便利なアレ、キター!」
「でも、あんまり酷い怪我や病気には効かないから、過信は禁物ですぅ!」
やけに説明的なやり取りを交わした後で、ある程度は傷が回復したネプテューヌはコンパに支えられて立ち上がった。
そこに敵と戦いながら、プルルートとピーシェが叫んできた。
「ねぷちゃんたちぃ、積もる話は後にしましょぉ! 早くイキなさいなぁ!!」
「ねぷてぬ、今度はぴぃがねぷてぬを守るよ!!」
「……うん、ありがとう!!」
短く叫び合ったあと、ネプテューヌは再び走り出した。
オプティマスまで、後少しだ……。
* * *
かくて、異界の女神は参戦した。
そして終着点に向け加速しゆく戦場に、新たな役者が上ろうとしていた。
「もうじき到着だ、野郎ども気合入れろよ!」
「分かってら! ……ロディ坊、待ってろよ」
「これぞ、まさに天下分け目の戦い! 敵はプラネテューヌに有り!!」
「はいはい、冷静にね。……アイアンハイド、ノワール、今行くわ!」
そんなワケで、神次元組、参戦。
実はホィーリーもひょっこり付いてきてたり。
念のため言っておくと、プルルートの言う『大女神』とはクインテッサのことではありません。
ネプテューヌたちの次元にいるんだから、プルルートたちの次元にもいるはずの女神です。
そして次回、やっとサイバトロン組も合流の予定。