超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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第165話 決戦開始

 暗い空間の中で、ネプテューヌは片膝を突いて屈んでいた。

 その姿は、どこか祈りを捧げているようにも見える。

 

「……お姉ちゃん、行こう」

「うん」

 

 ネプギアに声をかけられ、ゆっくりと立ち上がる。その首には、頑丈な鎖でマトリクスが下げられていた。

 空間の奥……高速飛行船フライホエールの後部ハッチが開いてゆく。

 

 ハッチから見えるプラネテューヌ首都は、すでに戦場だった。

 

 プラネテューヌの白兵戦部隊が、自慢の先進技術による武装と土地勘を生かしてディセプティコンにゲリラ戦を仕掛ける。

 

 ラステイションの量産性と安定性に優れた戦闘ヘリや戦車が、被害を出しつつもディセプティコンと死にもの狂いで撃ち合っている。

 

 ルウィーの帆船の帆をプロペラに変えたような旧式の飛行船が、ディセプティコンの金属で出来た空中戦艦の砲火に晒されて(たきぎ)のように燃え上がりながら、それでも果敢に砲撃を続ける。

 

 リーンボックスからやってきた戦闘機群が、ジェットファイアと共に戦闘艇や航空機型のディセプティコンと苛烈なドックファイトを演じている。

 

 そして地上では、アイアンハイドやジャズ、そして女神たちに率いられたオートボットと各国軍の混成軍が、並み居るディセプティコンと撃ち合いながら、進軍している。

 

「大丈夫よ。普段通りにいきなさいな」

「ねぷねぷ、わたしたちが付いてるです!」

 

 対トランスフォーマー用パルスライフルを背負ったアイエフが戦場の風を受けるネプテューヌの肩に手を置き、注射器型ビームガンを抱えたコンパは力強い表情を創る。

 

「さて、大一番だ。気合いを入れるとしよう」

「あらラチェット、今回は最初から本気モード?」

「アーシー、私はいつでも本気だよ」

 

 ラチェットとアーシーは軽口を叩き合っていた。

 ネプギアの脇に立つバンブルビーが、サムズアップをする。

 

「『大丈夫!』『オイラたちが』『着いてる!』」

「みんな……うん、ありがとう! よーし、行っくよー!」

 

 バンブルビーがプラネテューヌ姉妹を、ラチェットがコンパをそれぞれ優しく抱え、そしてアイエフがアーシーに抱きかかえられるようにして掴まる。

 己の目指すべき場所、プラネタワー跡を遠くに見とめたネプテューヌは、愛するオートボット総司令官に倣い、掛け声を出す。

 

出動(ロールアウト)!!」

 

 それに合わせ、オートボットたちがハッチから大空にダイブした。

 

  *  *  *

 

 センチネルは、高いビルの屋上にあるヘリポートで戦場を俯瞰していた。

 このビルは、プラネテューヌではプラネタワーの次に……タワーが健在だったころには……高い建物だった。

 

 風を受け、無感情な目で街を見下ろすセンチネルの後ろには、メガトロンが立っていた。

 

「……オートボットと女神どもの姿があったぞ。奴らは二手に分かれたようだ」

 

 元弟子に言われるまでもなく、老雄の各種センサーは敵の姿を捉えていた。

 数の多い方は空中神殿に向かい、少ない方は……。

 

「オプティマスを甦らせる気か……」

 

 リーダーのマトリクスは、オールスパークの分身のような物だ。

 ならば、死者を甦らせる力があるのかもしれない。

 

「しかし、それは下策だ。この状況ではシェアアブソーバーの破壊こそが急務だろうに。甘いことよ……」

「それが女神なのだ。まして、パープルハートはオプティマスを好いておるのだからな」

「ふん」

 

 鼻を鳴らすセンチネルに、メガトロンは表情を消して隣に並ぶ。

 

「俺はパープルハートの方をやる。お前は、本隊を……」

「貴様の指図は受けん!」

 

 メガトロンの提案を拒否したセンチネルは、不意にメガトロンの顔を掴むと地面に引き摺り倒す。

 

「ぐッ……!」

「貴様は信用できん。貴様の手下どももな。……ブラジオン!」

 

 呻くメガトロンから手を放すと、センチネルはザ・フォールンの使徒を通信で呼び出す。

 

『こちらブラジオン、聞こえている』

「部隊を率いて、オートボットと女神を叩き潰せ! ……パープルハートは儂が片付ける」

『了解』

 

 通信を切ったセンチネルは、目の前にやってきた降下船に飛び乗った。

 そして僅かに振り返り、侮蔑的な視線をメガトロンに向ける。

 

「女神に絆され、子供を可愛がれば罪が消えるとでも思っていたのか? あるいは、ザ・フォールンに利用されたから、とでも言い訳するか? ……いいや、故郷を焼いた貴様の罪は消えん。そしてその罪は他の誰でもない、貴様の物なのだ」

 

 厳しい物言いに、しかしメガトロンは表情を変えない。

 

「罪……罪か、確かにその通り、俺は罪人だ。……ならば、ガルヴァたちはどうなんだ? 俺たちの戦いを押し付けられ、兄弟で殺し合う、それは罰か? それだけの罪を奴らが犯したのか?」

「…………!」

 

 言葉に詰まるセンチネルをメガトロンはジッと睨む。

 

「教えてくれ、センチネル。まだ生まれて間もない餓鬼どもに、どんな罪があると言うのだ? 俺の子であることか?」

「……貴様は、そこで大人しくしているがいい……!」

 

 己の問いに答えずに言い捨てたセンチネルと共に飛び去る降下船を、メガトロンは黙って見送った。

 

 そして、立ち上がると小さく不敵な笑みを浮かべるのだった。

 

  *  *  *

 

 第一目標であるシェアアブソーバーの破壊のため、オートボットたちはプラネテューヌの町を進軍する。

 航空機や長距離砲撃で神殿を直接攻撃すれば、と思うかもしれないが、神殿の周りには極めて強力なバリアが張られており、それは叶わない。

 その状況をひっくり返す鍵を握るのが、軍団の中央を進む一台の戦車のような車だった。

 しかし砲塔に乗っているのは、大砲ではなく巨大なパラボラアンテナだ。

 まるでレトロSF、あるいは某怪獣映画に出てくる超兵器のようである。

 

 これぞ、ホイルジャックが旧式ラステイション戦車の車体やテレビ局の古いパラボラ、その他ありあわせの材料で造り上げた、『超音波砲』である・

 

 この砲から発する超音波を持ってすれば、空中神殿の周囲に張られたバリアを中和できるはずだ。

 以前、リーンボックスでサウンドウェーブがヘッドマスターのバリアを打ち消したのと同じ原理である。

 この砲でバリアを消し、その上でシェアハーヴェスターを破壊するのがオートボットたちの作戦だった。

 しかし射程距離の関係から神殿に接近せねばならず、こうして行軍しているのだ。

 

 一団の先頭で敵軍を蹴散らすのは、もちろんダイノボットである。

 

「ぐるおおお!! 我、グリムロック! いざや、一番槍!!」

「俺、スラッグ! 敵は全部ブッ飛ばす! 真っ直ぐ行ってブッ飛ばす!!」

「決戦!」

「ひょおおおお!」

 

 グリムロックが咆哮と共に業火を吐き、スラッグが唸りを上げて突進し、スコーンが不運なディセプティコンを噛み砕き、ストレイフが爪で引き裂く。

 

 その暴れっぷりはいつもに輪をかけて凄まじい。

 

 彼らは、今や敬愛する姫たちの最後の命令を忠実に実行しようとしているのだ。

 すなわち、ゲイムギョウ界を護れと。

 

「は! こりゃ、楽なもんだ!!」

 

 進軍するダイノボットの後ろで、彼らが仕留め損ねたディセプティコンを撃ちながら、アイアンハイドは軽口を飛ばす。

 実際、ここまでは順調だった。

 

「油断しないで! まだ何があるか分からないわ!」

 

 そんなアイアンハイドを戒めるノワールは大剣ワタリガラスを振るい、ディセプティコンの足を叩き斬る。

 ブランは跳躍して両刃斧ユキヅキで敵の頭を叩き割り、ベールは素早く足元に滑り込み脇腹に長槍コノハカゼを深々と突き刺す。

 ソラスの作った武器は、まるで体の一部のように女神たちの手に馴染み、トランスフォーマーの金属外皮すらも易々と切り裂いた。

 

 と、急にディセプティコンの姿が見えなくなり、辺りが静まり返った。

 

「攻撃が止んだ?」

「お姉ちゃん! あれ!」

 

 高い場所から長銃で敵を狙撃していたユニの声に、ノワールは異変を察する。

 空中神殿の下部にあるシェアハーヴェスターが、不気味な輝きを増している。

 

『オートボットよ。聞くがいい』

 

 どこからか禍々しい声が聞こえてきた。

 聞き間違えるはずもない、堕落せし者の声だ。

 

『貴様らの運命は尽きてはいない。この場で引き返すのなら、今は生き残らせてやる』

 

 傲慢で、悪辣な声は脳に直接届いてくる。

 

『そんな有機物の塵どもなどに構うことはなかろう。どうせ、そやつらの時間は瞬く間。命を懸けてまで助けるほどの物か?』

 

 それに対する答えは、まずはアイアンハイドの砲声だった。

 

「そんな分かり切ったことを今更聞くのか? 答えは、ほどの物だ! 俺は女神のため、ゲイムギョウ界のため、戦う!」

 

 続いて、ジャズも声を張り上げる。

 

「前にもいっただろう! 俺は愛する者のため、戦う! 女神のために!!」

 

 それに合わせ、ミラージュやサイドスワイプも、スキッズとマッドフラップも、他のオートボットたちも、皆で子を張り上げる。

 

「女神のために……!」

「女神のために!!」

「ゲイムギョウ界のために!!」

 

 気付けば、人間たちも皆で声を合せていた。

 

『女神のために! 女神のために!』

 

 そんなオートボットや人間たちに、女神たちも決意を新たにする。

 

「なら、私たちはゲイムギョウ界に生きる人々と、オートボットのために戦うわ」

「ああ。もちろんだ!!」

「ザ・フォールン。貴方の思う通りにはさせませんわ!!」

「一昨日きやがりなさい!!」

「みんなにヒドイことして、あなたのこと、絶対許さない!」

「絶対、許さない!!」

 

 ノワール、ブラン、ベール、ユニ、ラム、ロム……。

 シェアは吸い取られても、民の心は未だ彼女たちと共にあった。

 ならば、女神はそれに応えるのみ。

 

 そんな中、ベールの隣で弓に矢をつがえていた金髪に青い瞳の女神が、前に進み出た。

 

 元ディセプティコンのスパイ、今はリーンボックスの女神候補生のアリスだ。

 

「初めまして、始祖様。貴方は知らないでしょうけど、私の名はアリス。私、貴方に会ったら、どうしても言いたいことがあったの」

「あ……(察し)」

 

 戦場に似つかわしくない丁寧な礼をした後で、大きく息を吸うアリスに、ベールは何かを察したような顔で苦笑する。

 

「くたばれ、ヒヒジジイ!! 何がオールスパークの意思だ! 何が最初の13人だ! あんたはただのクソッタレの狂人だ!!」

「アリスちゃん、けっこう柄が悪い……」

 

 その悪態に、ラムはじめ女神候補生を呆気に取られる。

 何せ、生まれも育ちもやんごとなき女神たちと違ってスラムで生まれスパイ育ちなので致し方なし。

 

「ぐるおおおお!! 良く言った!!」

 

 一方で、グリムロックは宿敵に罵声を浴びせるアリスを賞賛する。

 

「話、終わり! 出てこいメガトロナス! 決着を着ける!!」

『そうか……良く分かった』

 

 吼えるグリムロックだが、返されたザ・フォールンの声は冷淡だが怒りに満ちた物だった。

 

『貴様らはオールスパークの意思に反するイレギュラー……! ここで粛清してくれる……!!』

 

 シェアハーヴェスターの光が増し、禍々しく輝きが増していく。

 堕落せし者が何をしようとしているのか、女神たちはすぐに理解した。

 

「この感じ……シェアの共鳴!!」

『少し惜しいが……ここで、確実にイレギュラーを排除する!! ディセプティコン、こやつらを葬り去るのだ!!』

 

『うおおおおおおおおッッ!!』

 

 瞬間、周囲の全方位から雄叫びが聞こえ、そしてディセプティコンたちが襲い掛かってきた。

 その目は煌々と輝き、狂気に満ちた表情をしている。

 シェアエナジーによって強化されているのだ。

 

「気を付けろ、今までと違うぞ!」

 

 ジャズを始め、連合軍は我先にと飛びかかってくるディセプティコンを迎え撃つのだった。

 

  *  *  *

 

「よーし! みんな行くよー!!」

 

 対空砲火を掻い潜り、地上に降りたネプテューヌたちは合流した部隊の掩護を受けつつ一路、プラネタワー跡を目指す。

 あくまでも第一の目標はシェアを奪う機械の破壊であるとして、こちらに裂かれた戦力は……。

 

「よーし頑張るぞ! 仲間の仇を打つんだ!」

「俺たちの任務は、あくまで女神とオートボットのサポートだ。忘れるなよ」

「兄弟たち、独断専行はしないように」

 

 スティンガー率いる人造トランスフォーマーとクローン兵の一団だった。

 彼らもまた、ディセプティコン側に残った仲間たちに対するザ・フォールンの暴虐に憤り、この戦いに参加することを決意したのだ。

 もちろん、信用していいのかとの声も上がったが、ネプテューヌは二つ返事で快諾し、今に至る。

 

 さらに、意外なトランスフォーマーも加わっていた。

 

「オヤビン、いっちょ張り切っていきましょう」

「…………止めろ、そういうの。これはあくまで仕事だ」

 

 ロックダウンと手下たちだ。

 彼らは彼らなりに思うところあるのか、礼金目当てではあるものの、こうしてネプテューヌたちの護衛に回っていた。

 

「またまたぁ! ロックダウンもツンデレだねえ!」

「そういうんじゃない。ただ、見届けたいだけだ。お前がどうなるかな。……それより、敵の様子がさっきと違う」

 

 ネプテューヌの軽口を切り捨てたロックダウンだが、ブラスターで撃ち倒した敵が立ち上がるのを見て表情を引き締める。

 

「ああ、どうやらシェアエナジーによる強化のようだね。身体能力の底上げと自動回復に、心理的リミッターの解除。エディンでメガトロンがやった手と似ているが、より強引だ。……おそらく、この現象のコアになっているであろう、あの女神の心身には莫大な負荷がかかっているはずだ」

「さすがはメガトロンの師匠。下種さも上回ってるわね」

 

 棍棒を振りかざしてきた敵を回転カッターで切り裂き、ラチェットが分析すると、アーシーもエナジーアローで遠目の敵を狙い撃ちながら吐き捨てる。

 あの女神、とはもちろんレイのことだ。

 

「シェアエナジーをこんなことに使うなんて……」

 

 ネプギアが怒りにグッとビームソードの柄を握り締める。

 人造トランスフォーマーへの非道もあって、目に段々と暗い光が宿り始めていた。

 そんな妹の手に、ネプテューヌは自分の手を重ねる。

 

「お姉ちゃん?」

「駄目だよ、ネプギア。怒るのはいい。でもわたしたちは、『オプっちとゲイムギョウ界を救いにきた』んだよ。それを忘れないで」

「う、うん」

 

 何処か大人びた顔つきの姉に、ネプギアは恥じ入ったように小さくなる。

 ネプテューヌは一転、子供のようにニッと妹に笑いかけた。

 

「そんな顔しない! 可愛い顔が台無しだよ!」

「お姉ちゃん……」

 

 そうして微笑みかけられると、ネプギアで芽生えかけていた黒い感情が氷解していく。

 まだまだ姉には敵わない。

 それを実感していたネプギアだが、何処からか聞こえた冷徹な声に凍りつく。

 

「相変わらず、甘いことだな」

 

 その声を忘れようはずもない。

 特にネプテューヌにとっては。

 

 紫の姉妹が見上げた先の空に、ディセプティコンの降下艇が浮かび、その上にセンチネル・プライムが仁王立ちしていた。

 

「だが、成長はしたようだ。本命(ハーヴェスター)の方に大勢を送り、こちらの戦力は……」

 

 老雄の瞳が、こちらの面子を素早く把握する。

 

「ラチェットとアーシーはともかく、他は有象無象の寄せ集め。紛い物のトランスフォーマーに紛い物の人間。それに薄汚い賞金稼ぎ」

「どうも、お偉いプライム様。……ところで薄汚い賞金稼ぎの方が、薄汚い裏切り者よりはマシに思えるんだがね?」

 

 侮蔑的な言い様に動じず、ロックダウンは両腕をブラスターに変形させて言い返すがセンチネルもまた動じた様子はない。

 

「センチネル! あなたも見たんだね! 未来を! 憎しみ合い、殺し合い続ける未来を!!」

 

 声を上げるネプテューヌに、センチネルの冷たい瞳がそこで初めて揺れた。

 

「だったら、そんな未来に従う必要なんかない! いいえ、もう、未来は変わり始めているんだ! 本当なら、このタイミングでわたしはここにいないはずだった。だからメガトロナスはわたしたちを恐れているんだよ!!」

 

 ネプテューヌは老いたプライムに向けて手を差し伸べる。

 

「終わらせよう、憎しみの連鎖を!」

「……言いたいことはそれで終わりか?」

 

 しかしセンチネルは、その誘いに冷たい言葉で返し、あからさまな怒りの表情を浮かべる。

 

「ディセプティコン、攻撃を開始せよ!!」

 

 腕を掲げてセンチネルが号令をかけると、ビルの屋上や影から次々とディセプティコンが現れる。

 

「こ、これは! ゲームお馴染、何処からか湧いて出てくる雑魚敵!!」

「アホなこと言ってないで走るんだ!! 我々が援護する!!」

 

 良く分からないことを言い出すネプテューヌに鋭くツッコミを入れつつ、ラチェットが敵を迎え撃つ。

 弾かれたように、ネプテューヌたちは走り出した。

 

 しかしプラネタワー跡……オプティマスは、まだ遠い。

 

  *  *  *

 

 プラネテューヌ首都近くの山中。

 首都を一望でき、それでいて首都側からは見えづらい……つまり狙撃に適した場所だ。

 サイドウェイズは、ここでレールガンの砲座に着いていた。

 レールガンは、サイドウェイズ諸共木の葉や土を着けた布……所謂ギリースーツを被せられており、万が一ディセプティコンが上空を通っても、発見は困難だろう。

 さらに泥を被せて、全体の温度を下げ、熱感知センサーにも探知されないはずだ。

 

 こうまでしてここにいるのは、サイバトロンからディセプティコンの援軍が送り込まれてきたら、それがエントリーフォームで大気圏突入してくるのであれ、戦艦や戦闘艇、あるいは自力で飛行してくるのであれ、最悪スペースブリッジで転送されてくるのであれ、残らず撃ち落とすためである。

 

 その時を、ジッと息を潜め、待つ。

 

 そう、狙撃の基本は『待ち』である。

 ゲームなどでは芋虫などと揶揄され嫌われることもある行為だが、これこそが狙撃の本質。

 狙撃手に銃の腕と同じくらい必要とされるのは、いかなる状況でも狙撃の機会を待つスタミナと忍耐である。

 

 もし出番がないなら、それはそれで良し。

 むしろ出番がこなければいいと思う。

 

 この地味だが重要な役目を、ディセプティコンの彼が任されたのは狙撃手としての実力と……ジャズの推薦があったからだ。

 どうもオートボットの副官は元ディセプティコンの斥候に期待しているらしかった。

 そしてサイドウェイズ自身にとっても意外なことだが……その期待は、中々に心地良かった。

 

「……やれやれ、本格的にオートボットに鞍替えするかな」

「今更だな。もう半分オートボットみてえなもんだろうが」

 

 ふと漏らした呟きに返された声に、武器システムを起動させて振り向こうとした瞬間、喉元に機銃が突き付けられた。

 

「動くなよ?」

「ス……」

 

 その相手を見て、サイドウェイズはオプティックを見開いた。

 

「スタースクリーム……!」

「悪いな。援軍を撃たせるワケにはいかねえんだ」

 

 ラステイション防衛戦でディセプティコンを離反し、以来姿を消していた航空参謀がそこにいた。

 

  *  *  *

 

 混沌としゆく戦場。

 オートボット、ディセプティコン、女神、人間。

 愛する者を助けようとする者、運命に抗う者、宿命に準ずる者。

 

 あらゆる役者が、終わりに向けて各々動いている。

 

 そして、遠い別次元でもまた。

 

「それじゃ~、行ってくるね~」

「ねぷてぬと、すたすく、たすけにく!!」

 




ええ、そんなワケで始まりました最終決戦。

色んなトコで色んなコトが同時進行してるので、視点がコロコロ変わって、すいません。

しかもはじめなんで、ほとんど動きがないっつう。

ネプテューヌ側の戦力はなんつうか、いつもの面々以外は心理的に信用できるか分からない(ネプテューヌは信用してる)って連中の寄せ集め。

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