超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION 作:投稿参謀
でも内容がないよう!(ヤケクソ)
ラステイションの教会近くに造られた仮設基地のリペアルームで、コンテナを並べて造った仮設リペア台にアイアンハイドが横たわっていた。
リペア台の近くでは、ラチェットが器具を準備している。
その横の足場に乗ってアイアンハイドの顔を覗きこむのは、ノワールである。
「それじゃあな、ノワール」
「ええ……しっかりね」
「そんな顔すんなよ! 俺は不死身の、アイアンハイド様だぜ?」
心配げな顔のノワールに、アイアンハイドはニッと笑ってみせる。
「さ、もう行きな! 国民と、敵が待ってる。……そうそう、俺の分も敵を残しといてくれよ」
「アイアンハイド……うん、行ってくるわ! 多分つまらない物しか残らないけど、我慢しなさいね! ……ラチェット、お願い」
「任された」
アイアンハイドの軽口に応じたノワールは、ラチェットに頭を下げてから足場から飛び降り、歩み去っていった。
彼女が出口から出て行くのを見計らってから、アイアンハイドは顔を引き締めて視線をラチェットに向ける。
「で、先生よ? 俺はどうなんだい?」
「正直、かなり苦しい。君の体はすでにかなりの部分がコズミックルストに侵されているが、この錆には特効薬がない。……だから、汚染された部分を除去するしかない」
「引き摺り下ろして細切れに……ってのが俺の常套句だが、まさが自分が生きながらに細切れになるとはな……」
極めて難しい顔のラチェットに、アイアンハイドは息を吐く。
ラチェットは努めて冷静に説明を続ける。
「本来ならジョルトに助手として付いてもらうんだが、彼はジャズの方のリペアが大詰めでね。変わりにホイルジャックと彼にサポートしてもらう」
そう言って傍らを示すと、ノワールからは見えなかった物陰に佇む人物がいた。
ショッキングピンクのメカニカルな鎧に身を包んだ男。
雇われ凄腕ハッカーのアノネデスだ。
「は~い♡ お、じ、さ、ま♡」
「……正気か?」
「正気だ。レッカーズやネプギア君も駆りだされている以上、彼が最も優秀な人間だ」
ヒラヒラと手を振るアノネデスに唖然とするアイアンハイドだが、ラチェットは至って真面目だった。
それを理解したアイアンハイドは、微妙な表情でオカマハッカーを見下ろした。
「テメエに命を預けることになるとはな……」
「アタシだって驚いてるわよ。……でもまあ、ここでノワールちゃんに恩を売っておくのも悪くないわ」
軽薄な態度のアノネデスに顔をしかめるアイアンハイドだが、ラチェットはさらに説明を続ける。
「おそらく、君の体からコズミックルストを完全に除去した時、今後君がトランスフォーマーとして活動することは、不可能だろう」
「不可能って……それじゃ困るぜ!!」
残酷な言葉に顔を曇らせるアイアンハイドに、しかしラチェットは自身あり気な顔をする。
「もちろん、君には早急に戦線復帰してもらわないとね。……だから、新しい治療法を試す。ホイルジャック」
ラチェットに呼ばれて、老人のような姿のオートボットの技術者、ホイルジャックがストレッチャーを押しながらやってきた。
ストレッチャーに、何かアイアンハイドと同じぐらいの大きさの物体を乗せている。
「ほいほい、これぞ私の画期的な発明、名付けてバイナルテック計画! かねてより進めていた人造トランスフォーマーの研究と、トゥーヘッドから得た緊急脱出システムを組み合わせて……」
「お、おい、大丈夫なのかそれ?」
「時間がない。始めよう。アノネデス君、頼む」
「りょーかい」
ホイルジャックの発明と聞いて急に不安になってきたアイアンハイドだが、ラチェットは無情にもことを進める。
アノネデスが機械を操作すると、アイアンハイドの体がステイシス・ロックに入りはじめ、意識が遠のいていく。
「お、おい! おーい! 患者には治療法を説明してもらう権利が……」
「大丈夫だ。……きっと生まれ変わった気分になれるよ」
ラチェットのそんな言葉が聞こえたのを最後に、アイアンハイドの意識は闇に落ちた。
* * *
一方、プラネテューヌ首都のある広場に、ディセプティコンが集結していた。
ラステイションへの侵攻のために選抜された部隊である。
それをセンチネルは腕を組んで、ビルの屋上から見下ろしていた。
上空からビークルモードで飛来したスタースクリームが、ギゴガゴと音を立てて変形し、センチネルの後ろに着地する。
「センチネル司令官『殿』、準備、万事完了しましたぜ」
皮肉っぽい表情と口調のスタースクリームにセンチネルは何も言わずにいた。
そんな先代オートボット総司令官に向けて、スタースクリームは苦い顔をする。
「思ったんだがな。こんな大勢で攻め込まずとも、女神に国を攻撃されたくなきゃ投降しろとでも言えば、済む話なんじゃねえの?」
「…………」
「よーするにザ・フォールン様が、人間を舐めきってるんだろうがな。……連中を甘くみると、痛い目見るぜ」
チラリと、センチネルは顔をスタースクリームに向けた。
「連中とは、オートボットか? 女神か? 人間か?」
「その全部さ」
皮肉っぽい言葉にそれ以上何も言わず、センチネルは軍勢に向かって宣言する。
「ディセプティコンよ! これより我らはラステイションに進軍する!! すでに女神は力を失い、オートボットは寡兵、人間どもは物の数ではない! 我らの勝利は確実ぞ!!」
センチネルの声に、軍勢は大歓声でもって応えた。
しかし、軍勢の中には歓声を上げない一団がいた。
ミックスマスターら、コンストラクティコンだ。
兵士に囲まれながらも、浮かない顔をしている。
「ねえ、ミックスマスター……マジで行くんですか?」
「…………しゃーねーだろ」
不安げなスクラッパーの言葉に、ミックスマスターは物憂げに排気しながら答える。
他のメンバーも、不安なり不満なりが表情に出ていた。
「オラ、やだべ、こんなん」
「この作戦も美しくありませんねぇ……」
「とても宇宙一た、言えねえな……」
「ワシだって嫌じゃい」
「でも嫌っつってもどうなるもんじゃないんダナ」
スカベンジャー、ハイタワー、オーバーロード、ランページ、ロングハウル。
口々に文句を言うが、ミックスマスターは諦めたような口調で言った。
「しゃーねーだろ、俺らは、ディセプティコンなんだからよ」
そんなコンストラクティコンたちに気付かず、センチネルはスペースブリッジの中心柱を取り出した。
このスペースブリッジを空中神殿のシステムとリンクさせることによって、本来はレイ意外が通ると何が起こるか分からないポータルを安定させているのだ。
「これから開くポータルは、人間どもが潜んでいる避難所に通じている! そこで破壊の限りを尽くすのだ!!」
「つまり、非戦闘員を虐殺しろ、と」
スタースクリームが皮肉っぽく付け加えるが、センチネルは意に介さない。
そうしている内に、軍勢の前に空間の裂け目が開いた。
「では、各員、あらかじめ指示された順番通りにポータルを潜れ!!」
すると、小柄で腕の長いディセプティコンと、円柱状の頭部に単眼を備えたディセプティコンが進み出て、それぞれ中型フォークリフトとバン型のテレビ中継車に変形してポータルに入る。
すると一回ポータルが閉じ、すぐにもう一度開き、軍勢の中から別のディセプティコンたちがその中に入っていく。
それを繰り返すことで、軍勢を各所に送り込んでいるのだ。
* * *
ラステイション首都郊外のとある地下鉄駅。
この場所は今、国民の避難所として使われていた。
薄暗い中、何人もの国民が一塊になっていた。
恐怖に震えているのか、皆一様に頭から足元までスッポリと布を被って蹲っていてる。
その脇には大きな荷物か何かが、やはり布を被せられていた。
と、急に何もない空間に裂け目ができ、そこから中型フォークリフトとバン型のテレビ中継車が飛び出してきた。
二台の車は、ギゴガゴと音を立てて恐ろしい姿のディセプティコンに変形する。
「み~つけた!」
剥き出しの歯が猿を思わせるフォークリフトから変形した方が、本来なら荷物を運ぶ爪が変じた長い両腕の先に握った大振りなナイフをこれみよがしに光らせる。
「早く、人間どもの皮を剥げ!! そいつらが酷いザマになるのを見たい!!」
中継車から変形した、円柱状の頭を持つディセプティコンは、ビークルモードの車体の上に乗っていたテレビカメラをハンディカメラのように持って、相方を急かす。
フォークリフト型は、ナイフをヒラヒラと揺らしながら下卑た笑みを人間たちに向ける。
「焦るなよ……楽しもうぜ。ホラァ、生死の瀬戸際だぞ? 喚け! 抵抗しろぉ!!」
「ふ~ん、抵抗してもいいんだ?」
蹲る人間たちの中から、一人がスクッと立ち上がると、被っていた布を脱ぎ捨てた。
布の下に隠されていたのは、黒いワンピースに、黒いツーサイドアップの髪。
赤い瞳が白い肌に映える。
愛銃を構えた、ラステイションの女神候補生、ユニだ。
『え?』
いきなりの展開に、唖然とするディセプティコンたちの前で人間たちが次々と立ち上がり、布を脱ぎ捨てる。
現れたのは、アサルトライフルや重機関銃を手にした兵士たちだ。中にはロケットランチャーを持った者もいる。
荷物と見えた物も、実際には未来的なシルエットの白銀のスポーツカーであり、変形し立ち上がる。
もちろん、サイドスワイプだ。
『え?』
呆気に取られるディセプティコンたちに、ユニとサイドスワイプは勝気な笑みを向ける。
「ようこそ、ラステイションへ」
「歓迎しよう、盛大にな」
ディセプティコンたちに無数の銃弾が襲い掛かった……。
* * *
同じころ、別の場所の避難所を襲うべくディセプティコンの部隊がポータルから吐き出された。
その中の一体、汚泥とも排油ともつかぬ粘液に覆われた汚らしいクーペから変形したディセプティコンは、興奮に震えていた。
背中の昆虫の翅のようなパーツと額から伸びた長い触覚が粘液塗れの汚らしい体と相まって、ある種の害虫を思わせる。
「人間どもめ! 貴様らの死因は、避難中の不運な転倒事故だぁああああ!?」
しかし、彼らは出た先からビークル、ロボットの区別なく転倒していく。
足元が凍結していたからだ。
滑って転んで、何とか立ち上がろうとした粘液塗れディセプティコンが見たのは、杖を手に持つよく似た二人の少女と、身の丈ほどもあるハンマーを担いだ二人よりも背の高い少女……氷の魔法を操るルウィーのロムとラム、その姉であるブランだった。
「よう、ゴキブリ野郎。 お前の死因は、進軍中の不幸な転倒事故だ」
「け、けけけ、やれるもんならやってみな……!」
ドスの効いた声でハンマーを振りかぶるブランに、しかし粘液塗れディセプティコンは薄ら笑いを浮かべる。
彼の粘液は、あらゆる衝撃を吸収するのだ。
本来なら、ブランにとっては天敵と言えた。本来なら。
『アイスコフィン!』
「な!?」
だが、ロムとラムの唱えた呪文によって、粘液が見る間に凍りついていく。こうなっては、衝撃を吸収できない。
「うまくいったね、ロムちゃん! カチカチ作戦大成功!」
「うん、ラムちゃん! 大成功!」
ハイタッチする双子に呆気に取られる氷漬けディセプティコンに、ブランはニッと笑ってやる。
「やれるもんなら、やってみな? 了解だ。……テンツェリントランペ!!」
* * *
「匂う、匂うぞ……女の匂いだぁ!」
幾人かのディセプティコンは、ポータルを出るや襲うはずの避難所を離れて別の場所に向かっていた。
黒いスポーツカーから変形した、ハリネズミのような姿のディセプティコンは鋭い鉤爪をカシャカシャと鳴らす。
「やっぱり殺すなら女と子供に限る……!」
下劣な願望を持つ、このディセプティコンは、獣的な嗅覚で狙うべき獲物が避難所にいないことを察知していた。
「ああ虹色の象がぁ……ぐへへ……」
その隣を歩くのは、水の代わりに薬品を満載した給水車から変形した、背中にタンクを背負いそこから伸びたチューブが全身に麻薬物質が循環させているディセプティコンだ。
口から止めどなく唾を垂らしている姿から、正気は感じられない。
麻薬の見せる醒めない妄想の中にいる彼を突き動かすのは、殺戮衝動だけだった。
「ひひひ、俺は他の連中と違って有機生命体を差別したりしねえんだ。ああ、女の壊れる音が聞きてえなあ」
「ひへへ、柔らかいお肉……悲しみと苦しみ……バッタの群れが泳いでる……ひへへぇええええ!?」
「どうした……ヒィッ!」
お互いに聞かせ合うでもなく妄想を垂れ流す二体だったが、チューブだらけが急に悲鳴を上げ、鉤爪が億劫そうに首を回せば、給水車型ディセプティコンの首が体から落ちて地面に転がっていた。
麻薬とエネルゴンが混じった液体が噴水のように吹き出している向こうの薄闇の中に青いオプティックを光らせて、曲線的な体躯の真紅のオートボットが佇んでいた。
両腕のブレードには、給水車型のエネルゴンがベッタリと付着している。
「て、テメエ、オートボット!」
「……そいつは任せたぞ」
「おう」
「オッケー」
泡を食って武装を展開しようとする鉤爪だが、ステルスクロークを解除して姿を現したマッドフラップと、ホログラムで壁の模様と一体化していたスキッズに挟まれる。
「なあ……!?」
「ハイクを読め。介錯してやる」
「女の壊れる音が聞きたいって? ……自分の壊れる音を聞けよ」
反撃する間を与えず、双子のブラスターが鉤爪のディセプティコンの頭を吹き飛ばした。
* * *
『こ、こちら奇襲部隊! ポータルを抜けた先には人間なんかいなくて、オートボットと女神が……』
『我、奇襲に失敗せり! 繰り返す、我、奇襲に失敗せり!!』
『こんなの上から聞いてな……アバー!!』
『ロックダウンです! あのならず者と手下どもが……ぎゃあああッ!』
「どうやら、奇襲は読まれてたようだな」
次々と飛び込んでくる奇襲失敗の報告を受けながらも、スタースクリームは一切動揺することはなかった。
それ以上に、センチネルは不気味なほどに平静だった。
「ふむ。……そう言えば、今回の奇襲作戦、部隊を編制したのは貴様だったな」
「それが何か?」
「やられたのは、オプティマスの骸を辱めた者たち……つまりザ・フォールンのシンパばかりだ」
「……何が言いたい?」
睨み合うセンチネルとスタースクリーム。
かつてセンチネルが乗った船をスタースクリームが撃墜したこともあって、二人の相性は良いとは言えない。
「……まあ良い。では手を変えるとしよう。寡兵と言えど侮らず、全力で叩き潰す…………人造トランスフォーマーたちよ!! お前たちが真にディセプティコンに忠誠を誓うと言うなら、先陣を切り見事軍団に尽くしてみせよ!!」
センチネルの声に応え、トラックスやアビスハンマーら、完全武装の人造トランスフォーマーたちが進み出る。
彼らは皆一様に、見慣れない腕輪のような物を着けていた。
『おおー!』
「ここで活躍すれば、待遇改善間違いなーし!」
「僕らもディセプティコンだって、皆に分かってもらおー!」
「がんばるぞー!!」
『えいえい、おー!!』
鬨の声を上げる人造トランスフォーマーに混じって、クローン兵たちも銃を掲げる。
「そして、クローン兵たちよ! ザ・フォールンは貴様たちの活躍如何では貴様らの女神を解放することを考えてくださるそうだ!! 励めよ!!」
『おおおお!!』
「我らの女神、レイ様の解放を!!」
「元より我らは消耗品! ならば、この命レイ様のために!!」
一方で、このセンチネルの采配に動揺したのがスタースクリームだ。
「どういうつもりだ……? こんなのは聞いてないぞ」
「言っていなかったからな。……この作戦を開始する直前に奴らに伝えたのだ」
スタースクリームをチラリと見るセンチネルの目はギラリと光っていた。
「儂はメガトロンと違って、お前を信用などせんのでな」
「……テメエ、何をたくらんでやがる?」
「こちらの台詞だ」
互いに探るように睨み合うセンチネルとスタースクリーム。
やがて、センチネルが一つ鼻を鳴らして中心柱を操作すると、またしてもポータルが開く。
今度は、前の物よりも大きく、大勢が入れそうだ。
人造トランスフォーマーとクローン兵の混成軍は、我先にとポータルに飛び込んでいく。
「あいつらだけで、ラステイションを落とせるとでも?」
「無論、思っておらん。他にも絡め手を用意してある……貴様もいくがいい。ザ・フォールンに忠誠を誓っているのなら」
「……ケッ!」
スタースクリームは飛び上がり、ジェット戦闘機に変形してポータルへと飛び込んでいった。
* * *
「来たわね……!」
ノワールは、教会前の大通りの向こうに開いたポータルを見て呟いた。
巨大なポータルからは、次々と人造トランスフォーマーやクローン兵が湧き出してくる。
「状況が変わったわ! 教会前に集結!!」
『了解!!』
通信を受けて、各避難所に散っていた部隊はただちに集結を始める。
その間に教会を護るべく、すでにラステイション軍の大部隊が展開していた。
部隊の先頭に立つノワールは、敵軍から目を逸らさないまま、傍らに立つ人物に声をかける。
「……いいの、ネプギア? あなたたちまでこっちに来て」
すると、ネプギアは勝気な笑みを浮かべた。
バンブルビーも、後ろから歩いてきてブラスターを展開しながらラジオ音声を鳴らす。
「いいんです。お姉ちゃんでも、きっとこうするはずです。……私たち、仲間、ですから」
「『さあ、いっちょ派手にやろうぜ!!』」
その言葉に、ノワールは一瞬柔らかく微笑むが、すぐに表情を引き締める。
「さあ、皆! ここが正念場よ!! 私たちの国を、侵略者から守りましょう!!」
『おおおおお!!』
女神の檄に歓声でもって応え、ラステイションの軍は人造トランスフォーマーやクローンを迎え撃つのだった。
アイアンハイドの治療は、まあネタ振り。
やられたD軍はオリジナル。(何故かニンジャスレイヤーネタ推し)
一応、名前まで設定してあるけど、誰得なのでモブ扱い。
ちなみにこのやられるモブの中に最後の騎士王組や玩具組を入れる案もあったけど、こんなんでネームドキャラを消費すんのもなあ……ってことで、オリキャラに。
では。