超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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第149話 変わった者、変わっていない者

 ディセプティコンによって占領されたプラネテューヌ首都。

 その上を漆黒と灰色の軍用輸送ヘリが飛行していた。ブラックアウトとグラインダーだ。

 二機のヘリは機体から垂らしたワイヤーを巨大な鉄塊に結び付け、二機掛かりでぶら下げている。

 

 ……物言わぬ骸と化したオプティマス・プライムを。

 

 だらしなく手足を垂らしたオートボット司令官が上空を通り過ぎると、道路や建物の屋上にたむろしていたディセプティコンたちが汚いヤジを飛ばす。

 さらにテレビの中継車をスキャンした者が、この様子を撮影していた。

 

「ふん! 死した者をこうして辱めるとは……」

「兄者、仕方あるまい。これも命令だ……」

 

 しかし、当のブラックアウトとグラインダーは、この任務に余り乗り気ではなかった。

 一方で少し離れたビルの屋上では、スタースクリームが能面のような無表情で運ばれていくオプティマスを眺めていた。

 

「おーい、スタースクリームー!」

 

 呼ばれて振り向けば、二機のステルス戦闘機がこちらに飛んで来た。

 スタースクリームのビークルモードと同じ、ステルス性を齎す鋭角的なフォルムが特徴的な第五世代戦闘機だ。

 しかし二機のうち一方は紫、もう一方は水色という派手なカラーリングだった。

 二機はギゴガゴと異音を立てて変形し、スタースクリームがいるビルの屋上に着地する。

 その姿は、色こそビークルモードの時のままの紫と水色だったが、それ以外はスタースクリームと全く同じだった。

 

「やーっと見つけたぜー! どうよ、俺らの新しいビークルモードは! お前とお揃いだぜ!」

「久し振り、スタースクリーム。また会えて嬉しいよ」

「スカイワープ。それにサンダークラッカーか。……ああ、久し振りだな」

 

 サイバトロンにいたころは直属の部下だった同型の二人との再会に、しかしスタースクリームのテンションは低い。

 

「どうしたんだよ、スタースクリーム? って言うか何だよその刺青」

「似合ってはいるが……少し派手だな」

「ほっとけ」

 

 ジェット機型ディセプティコン三人が話している間に街を一周した二機のヘリ型ディセプティコンは、プラネタワーが吹き飛ばされた跡に出来たクレーターに飛んでいく。

 クレーターの上空にやってくると、ワイヤーを切り離して吊り下げていたオプティマスの残骸を地面に落とした。

 

 地上にはザ・フォールンを信奉するディセプティコン、十数体が待ち受けていた。

 彼らは地響きを立てて落着したオプティマスの骸を、プラネタワーの残骸を組み上げて造り上げた十字架に鎖で括りつける。

 その間にも、オプティマスを罵り、嘲り、愚弄する。

 あるいは足蹴にし、爪や武器で骸を傷つけ、唾を吐きかけ、得体の知れない粘液を擦りつけ、塗料でオプティマスの体に侮辱的な言葉を書き込んだ。

 ボーンクラッシャーの同型などは、オプティマスの顔を歪むまで殴りつけている。

 

 ビルの上から見物しているスカイワープが思わず声を上げる。

 

「うっひゃー! まったくヒデエもんだぜ!!」

「見るに堪えないな……ディセプティコンの信条は戦いだ。死者を愚弄することの何処に誇りがある」

「ああ……その通りだ」

 

 感傷的なサンダークラッカーの言葉に頷くスタースクリーム。

 スカイワープと当のサンダークラッカーは、このスタースクリームらしからぬ言葉にギョッとする。

 

 クレーターではディセプティコンたちがオプティマスを完全に十字架に固定すると、全員掛かりで十字架を起こし地面に立てた。

 そして、全員で歓声を上げる。

 中継車型ディセプティコンは一部始終を性的興奮さえ覚えている様子で、記録していた。

 

「あれがオプティマス・プライムに相応しい最後か? 奴はオートボットとはいえ偉大なリーダーであり、誇り高い戦士だったんだぞ? せめて丁重に葬ってやるのが、筋ってもんじゃねえか?」

 

 スタースクリームは苦虫を噛み潰したような表情で(はりつけ)にされたオートボット総司令官とそれに群がるディセプティコンたちを見まわす。

 

「俺たちは残酷だ。狡猾で欲深く、そして戦い好きだ。しかし下種じゃなかったはずだ」

「なあ、お前本当にスタースクリームか? 作画ミスで誰かと入れ替わってんじゃないか?」

 

 怪訝そうな顔で尋ねてくるスカイワープに、スタースクリームは相手と同じような顔をする。

 

「何言ってんだ?」

「つまりスカイワープはこう言いたいのさ。スタースクリーム……お前、変わったな」

「ああ、色々あったからな……本当に、色々とあったんだよ」

 

 何処か不安げな目で見てくるサンダークラッカーに対し、スタースクリームはしみじみと答える。

 静かに排気していたスタースクリームだが、急に飛んで来た通信に顔をしかめた。

 

「チッ! 呼び出しだ……ザ・フォールンからな。また後で話そう」

 

 そう言ってスタースクリームは同型二機を残して飛び立つのだった。

 

 

 

 今や鋼鉄の要塞と化した空中神殿の内部は、無数の曲線的なパーツが蠢き機械で出来ていながらまるで生物の体内のような様相だった。

 巨獣の腸内のような通路を、フレンジー、バリケード、ボーンクラッシャーの三人が歩いていた。

 しかし、ボーンクラッシャーはあちこち傷だらけで、すでに一戦やらかしたかのようだ。

 

「無茶しすぎだぞボーンクラッシャー」

「仕方ないだろ。……あんなのあんまりだ」

 

 バリケードが呆れたように言うと、ボーンクラッシャーはブスッとして言葉を返す。

 彼はこの神殿に入って祭壇の前に辿り着くや、良く考えもせずにレイを助けようとしたのだ。

 結果はザ・フォールンの超能力によって叩きのめされて今に至る。

 

「……何でメガトロン様は、レイを助けないんだ?」

「……知るかよ」

 

 不機嫌に問いを放つボーンクラッシャーだが、先頭を歩くフレンジーはボーンクラッシャー以上に不機嫌そうだった。

 レイと特に仲のいい彼は、故に特に現状に不満を抱いていた。

 

「なあ、バリケード。お前はどう思う?」

「…………どう、とは?」

「メガトロン様は、いつまであんな連中の好きにさせているんだ? レイちゃんを助けないのか? ……まさか、ずっとこのままか?」

「……俺が知るか。そもそも、俺らは一兵士だぞ。今まで通り、生き残ることに徹しっていればいいんだ」

 

 相方の問いを、バリケードは一蹴する。

 ディセプティコンの中にあって理に敏い彼は、ザ・フォールンに逆らって明日が無いことをよく分かっていた。

 それでも表情が苦み走った物になるのは避けられなかった。

 

「あーそうだな、お前映画シリーズとかだとチャッカリいつまでも生き残りそうな面してるし」

「何だそれ……」

「俺はやっぱり納得いかん。何とかしてレイを助けないと」

「そりゃ分かってるさ。しかしどうやって……おい、ありゃ何だ?」

 

 しばらく言い合いながら歩いていた三人だが、フレンジーが何かに気が付いた。

 何かと残る二人がそちらを見れば、何人かのディセプティコンが二つのグループに分かれて揉めていた。

 

「ああ!? テメエらもう一度言ってみやがれ! この無念三兄弟どもが!!」

「何度でも言ってやらあ、俺らの邪魔をするんじゃねえよ! このプレデターのパクリキャラどもが!!」

 

 一方は揃ってカメラレンズのような単眼が特徴的な、小柄で肘にビークルモードのドアが翅のように配置されている赤い体色のスウィンドル、翼を背負い後ろに伸びたトンガリ頭に上半身と下半身がアンバランスな灰色のドレッドウィング、この中では大柄で屈強な体格をした藍色のペイロードの三人だ。

 どういうワケか、この三人はブラジオンに取り入っており、周囲に威張り散らしていた。

 もう一方はドレッドヘアのような触手が特徴のクランクケース、クロウバー、ハチェットらドレッズの三人だ。

 

「テメエら! 何してやがる!!」

「こいつらがリンダちゃんたちを苛めてやがったんだ!!」

 

 トテトテと近づいたフレンジーが問えば、クランクケースは自分の背後を示す。

 見れば低く唸るハチェットの背後で、傷だらけのリンダとワレチューが蹲っていた。

 フレンジーが視線を向けると、三人の中では赤いボディで小柄なスウィンドルがカメラレンズその物の顔を面倒くさげに傾ける。

 

「ああん? 苛めとは人聞きの悪い……躾けだよ躾け! グズでノロマなゴミどもを一人前の兵士にしてやろうっつう先輩の親切心よ!」

「うそだ!!」

 

 急に幼い声がして、ハチェットの影からガルヴァが這い出してきた。さらに後ろからサイクロナスとスカージもいたが、どちらの雛も恐怖に震えている。

 

「りんだとわれちゅーは、こいつらから、ぼくたちをまもろうとしたんだ!!」

 

 ガルヴァの言葉にギロリと睨むフレンジーたちだが、スウィンドルは単眼しかない顔で器用に下卑た笑みを浮かべる。

 

「この餓鬼どもときたら、絵本だの玩具だのを弄ってばかりだからな! 俺らがディセプティコンにとって大事なことを教えてやったのさ!! それを邪魔するから、こうなるんだよ!!」

 

 スウィンドルの言葉に合わせ、ペイロードが何やら床に落とす。

 金属製の輪に鎖、棘だらけの棒に鞭、それに銃やら爆弾やらだ。明らかに子供に触れさせる物ではない。

 リンダは憎々しげな視線を床に転がる凶器に向ける。

 

「こいつら……訓練だっつってガキどもを傷つけてやがってんだ……!」

「テメエら! ガルヴァたちはメガトロン様の子供だぞ!! それを……」

 

 怒りに顔を歪めるフレンジーを見て、単眼三人組は腹を抱えて嗤う。

 

「ヒャッヒャッヒャ! こっちはザ・フォールン様の命令なんだよ!」

「それに何ムキになっているんだ? ガキなどこれから山と生まれるんだ」

「一匹や二匹壊したって……ウププ」

 

 さも可笑しいとばかりに笑う単眼たちに、フレンジーは怒りが爆発しそうになっていた。

 

「だいたいからしてメガトロンの子供だあ? なに? 有機生命体ゴッコでちゅかあ? まったくこれだから馬鹿な餓鬼は……あべし!?」

 

 次の瞬間、ボーンクラッシャーがスウィンドルのレンズ状の顔を殴りつけていた。

 

「な!? て、テメエ!」

「失せろ……!」

 

 低い声で脅すボーンクラッシャーに対し、すぐさまドレッドウィングが両腕を銃に変形させペイロードが掴みかかろうとするが、それより一瞬早くクランクケースとクロウバーが銃を抜きそれぞれの頭にピッタリと狙いを着けた。

 ハチェットはいつでも飛び掛かれる体勢になる。

 

「な!? て、テメエらぁ! 俺らにこんなことしてタダで済むと……ひでぶぅ!」

 

 立ち上がってグチャグチャと言うスウィンドルの顔面をボーンクラッシャーがもう一発殴る。

 

「お、おい! バリケード、こいつらを止めてくれ!!」

「俺が知るか」

 

 ドレッドウィングは喧嘩に加わらず腕を組んで佇んでいるバリケードに助けを求めるが、それをパトカー型ディセプティコンは低い声で切って捨てる。

 

「く、クソッ! ザ・フォールン様に言いつけてやるからな! 行こうぜ、皆!」

「馬鹿な奴らだ……」

「ああ」

 

 捨て台詞を吐いて、スウィンドルたちは退散する。

 単眼たちの気配が無くなったのを確認してから、ドレッズたちはリンダを助け起こす。

 

「リンダちゃん! 大丈夫か!?」

「ああ……わりいな、手間かけさせちまった」

「オイラの心配もしてくれっちゅ……」

 

 力無く笑むリンダと不貞腐れるワレチューは何をされたのか、あちこち擦り傷と打撲だらけだ。雛たちも身を寄せ合って震えている。

 バリケードは、ふと言葉を漏らした。

 

「なあ、これは提案だが……リンダたちにはいったん、ディセプティコンを抜けてもらった方がいいんじゃないか?」

「は?」

「いや、今のディセプティコンはリンダには辛いだろう。……リンダたちだけじゃない、クローンや人造トランスフォーマーが暴行されることが増えている」

 

 静かな中に怒りを滲ませながらバリケードが言う通り、ディセプティコンたちは有機生命体や人造トランスフォーマーを仲間として見ておらず、折に触れて暴力を振るっていた。

 その根底にあるのは、ザ・フォールンの『オールスパークに生み出した命以外は命に非ず』という思想だ。

 

「その方が良いかもな。オートボットはともかく、お人好しの女神どもなら、投降すれば悪いようにはしないはずだ」

 

 クロウバーもバリケードの意見に賛成する。

 相方の意見に、クランクケースは腕を組んで考える。

 確かに、今のままではリンダの命がいくつあっても足りない。

 安全のためには、その方が……。

 

「いや、それはできねえ」

 

 だが当のリンダは首を横に振り、サイクロナスとスカージの頭を撫でた。

 

「今アタイが抜けたら、だれがガキどもを護るんだ? アタイは姐さんに言われたんだ、ガルヴァたちを頼むって……」

「リンダちゃん……」

 

 決意を口にするリンダに、クランクケースは胸打たれていた。

 こうまでして子供を護ろうとする者も、忠を尽くす者も、ディセプティコンにはそうはいない。

 

「ならリンダちゃんは俺たちが守るYO!」

「まあ、それも悪くはない」

「がうがう!!」

「お前ら……おう、頼んだぜ!」

「ここまで来たら、付き合うっちゅよ。悪党には悪党の友情があるっちゅ」

 

 陽気に振る舞うドレッズに、リンダは感謝をこめてニッと笑み、ワレチューも笑みを浮かべるのだった。

 

「…………」

 

 一方で、ガルヴァは激しい怒りに満ちた視線をここではない何処かに向けていた。

 母や自分たちを酷い目に合せる堕落せし者に。

 その顔に何処か……オートボットを強く憎むメガトロンの面影が見えた気がしてフレンジーは思わず声をかける。

 

「なあ、ガルヴァ。無茶はすんなよ。……レイちゃんが悲しむぜ」

 

 しかしガルヴァは答えず、胸の内に決意を漲らせていた。

 

 何としてでも、母を救い出さねばと。

 

 

 

 

「ここから出しなさいよー! あたしを誰だと思ってるのよ!!」

 

 空中神殿の一室に天井から鳥籠のような檻が吊るされ、その中にこの神殿に似つかわしくない生き物が入れられていた。

 

「出さないと訴えるわよ! 訴えて勝つわよ! 出せー!!」

 

 デフォルメされたドクロをあしらったフリルだらけのピンクの衣装に、長い金髪。子供そのもの体躯。

 キャンキャンと甲高い声を上げながら、ガシャガシャと檻を揺らす。

 

 自称幼年幼女の味方のアブネスである。

 

 プラネタワーからこの空中神殿にセンチネルが転送されたおり、落としたテレビカメラを拾おうとしてひっそりとポータルに巻き込まれていたのだ。……なお、お付きの黒子は真っ先に逃げた。

 

「騒がしいぞ」

 

 老いた身でありながら屈強な赤い体を持つセンチネル・プライムが部屋に入ってきた。

 

「このガンダ○モドキ! ここから出しなさーい!!」

「殺されないだけでもありがたいと思って欲しいのだがな。……ほら、食事を持ってきた。食べるといい」

 

 センチネルはパンとハムとペットボトル入りの水の乗ったトレーを檻の隙間から入れる。

 アブネスは食事を受け取ったが文句を垂れる。

 

「毎日毎日、こればっかり! もうちょっとマシな物を食べさせてよ!」

「悪いが、人間の食べる物はよく分からなくてな」

「むう!」

 

 生殺与奪の権利を握られているのに、このふてぶてしい態度。

 ぶれないアブネスに、センチネルは表情にこそ出さないが感心していた。

 

「ここから出たところで、お前たちに未来はないぞ。いずれシェアエナジーは吸い尽くされ、この世界は滅ぶのだ」

「…………あんた、何でこんなことするのよ? あのデカブツは仲間だったんじゃないの?」

 

 言い終えてから、アブネスはバリバリとハムを噛み砕く。

 デカブツとは、非業の死を遂げたオプティマス・プライムのことに他ならない。

 センチネルは一つ排気した。

 

「未来のためだ」

「未来?」

「我が故郷の未来、我が種族の未来。トランスフォーマーが、これから先も永遠に生き残り続けるためだ」

 

 静かに、決然と語られた言葉に、しかしアブネスはしかめっ面を大きくする。

 

「子供を犠牲にした未来になんて、なんの意味があるってのよ!」

「…………それでも、だ。屍の山を築いたとしても、罪なき命を犠牲にしたとしても、儂は確実な種の保存を選ばねばならん。……それが、プライムの使命だ」

「何が使命よ! わたしは認めないわよ、そんなの! 幼年幼女を傷つけて得た未来なんて、願い下げよ!!」

 

 どこまでも我を貫くアブネスに、センチネルは少しだけ微笑んだ。疲れ切った笑みだった。

 

「君は自分本位で勝手気ままだが、本質としては利他的なのだな。……故にどこまでも我を通して生きられる。そんな生き方が少し羨ましい」

「何よその言い方! まるで自分が好き勝手に生きてないみたいじゃない!」

 

 吠えるアブネスだが、センチネルは鳥籠に背を向けた。

 

「仕方があるまい。君のようには生きられぬ。……儂は、プライムだからな」

「なによそれ……? ち、ちょっと待ちなさいよ!」

 

 自身の背に投げかけられるアブネスの声に応えず、センチネルは部屋を後にするのだった。

 

 

 

 ややあって。

 空中神殿の中心部にはあのストーンサークルが収納され、司令部として機能していた。

 

 無数の機械触手に取り込まれ、装置の一部のようになってしまったレイと共に。

 

 祭壇の上には球体状の巨大な光球が、虹色に輝いていた。シェアハーヴェスターが奪ったシェアエナジーの塊である。

 

「ぎゃあああああ! ぎぃゃああああああッ!!」

「……おそらくお前たちは、こう思っているだろう。何故、一思いにシェアエナジーを吸い尽くしてしまわないのか、と」

 

 祭壇の前で、ザ・フォールンが機械を操作してレイに苦痛を与えていた。その度に、シェアエナジーの球体が少しずつ大きくなっていく。

 その後ろにはメガトロン、スタースクリーム、サウンドウェーブ、ショックウェーブ、そしてセンチネルとブラジオンら、ディセプティコンの幹部が集まっていた。

 

「奴らに与えてやるためだ。恐怖、苦痛、悔恨、そして絶望をな……」

「しかし、ザ・フォールン様。このままミス・レイに苦痛を与え続けては、やがて彼女は力尽きてしまうのでは? そうなれば、もうシェアエナジーを集められません」

 

 冷静なショックウェーブの問いに、ザ・フォールンは答えない。

 代わりに、ブラジオンが口を開く。

 

「その時は、スペアを使えばいい。この世界には他に八匹の女神がいるのだ」

「……随分と、行きあたりばったりなこって」

 

 傲然と放たれたブラジオンの言葉に、スタースクリームが小さく吐き捨て、一方でサウンドウェーブが僅かに怪訝そうな顔をした。

 

「八匹?」

「そうまさにそこよ。女神どもを取り逃がしたのは、失態では無かった。……全ては運命の導きだったのだ。サウンドウェーブよ、貴様はこの世界のネットワークを通じて最後のプライムの姿をこの世界の塵どもに見せつけてやれ」

 

 ほくそ笑むザ・フォールンは、さらにこの世界の人々を苦しめる策を思いつく。

 底知れぬこの世界への憎悪に、三参謀は揃って顔をしかめた。

 そもそも彼らはメガトロンの部下であって、ザ・フォールンの部下ではない。

 

 だが彼らの主君たるメガトロンは、相変わらず生気の無い顔をしていた。

 

 それでも部下に指示を出す。

 

「……行け、サウンドウェーブ」

「了解」

 

 その一言で主君の意を汲み、サウンドウェーブは司令部を退出した。

 一方で、ザ・フォールンは酷薄な笑みを浮かべる。

 

「さて、次はラステイションを攻撃するとしよう……」

「ラステイションですか? しかしまずはプラネテューヌを完全に占領するべきでは?」

 

 堕落せし者の言葉にスタースクリームが参謀として異を唱えるが、ザ・フォールンは鼻を鳴らすような音を出す。

 

「愚か者めが。女神の予備を捕らえると言っておるのだ。……行け、センチネル。貴様が指揮を取れ」

「御意」

 

 センチネルが頷くと、ザ・フォールンはレイに苦痛を与えつつジワジワとシェアエナジーを奪う作業に戻る。

 話が終わったことを察し、ディセプティコンの幹部たちはそれぞれの仕事に戻るべく退室していく。

 

「もうすぐだ。もうすぐ、オールスパークが戻ってくる……!」

 

 ザ・フォールンは恍惚とした表情で、光球を見上げていた。

 残ったメガトロンは、ザ・フォールンと彼に甚振られるレイを見上げ、過去のことを回想する。

 

 プラネタワーで感謝祭が開催されていた裏で、自分たちがこの神殿に連れ去らわれた時。

 自身が心が叩き折られた、あの時のことを。

 

 




ま た し て も 分 割。
全く本当に計画性ないな……。

いやスタスクとスカワ、サンクラの再会とか、ドレッズとリンダのこととか盛り込んでたら長くなっちゃいました。

そんなワケで、メガトロンの話は次回。

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