超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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第147話 帰る場所

 空中神殿に向け、オプティマス、ジェットファイア、ストレイフの三人は飛ぶ。

 狙うは、レクイエムブラスターただ一つ。

 本当なら、手分けしてシェアアブソーバーも破壊したいが、この状況で貴重な航空戦力を分散させるのはリスクが高過ぎる。

 

「……うむ、やはりネプテューヌと合体している時の方がしっくりくるな」

 

 先頭を飛ぶオプティマスは、やはり違和感を漏らす。

 一体感や性能、精神的な高揚感に至るまで、ネプテューヌとの合体に比べるとジェットパックは劣っているように感じてしまうのだ。

 隣を飛ぶ高高度偵察機の姿のジェットファイアが笑う。

 

「カッカッカ! そりゃ、愛しい女といっしょになってる時には負けるさ!」

「まあ、確かに……」

「お二人さん。談笑してるとこ悪いけど、敵さんが来たぜ!」

 

 ジェットファイアと反対側を飛ぶストレイフの言う通り、空中大陸から無数の戦闘艇と二隻の空中戦艦が近づいてきていた。

 

「プライム! ここは俺たちが引き受ける! お前は行け!!」

「花道は譲ってやるよ!」

「了解した! ジェットファイア、ストレイフ、頼んだぞ!!」

 

 黒い高高度偵察機と双頭の翼竜が加速して敵の群れに突っ込んでいく。

 あの二人は空中戦においてはベテラン中のベテランだ。任せて問題ないだろう。

 オプティマスはジェットパックの出力を上げ、レクイエムブラスターに向かっていく。

 

「やあやあ、遠からん者は音に聞け! 近くば寄って目にも見よ! 我こそは風の騎士ストレイフ! 我が弓矢の威力を見よ!!」

 

 ストレイフは翼竜の形態で加速し、その状態で騎士の姿に戻る。

 マントを大きく広げて翼にすると、まるでグライダーのように滑空しながら、器用に敵機や弾幕を躱す。

 そして手に持ったボウガン、ブリッツウィングボウを連続で発射すれば、高速で動く敵機に狙い違わず命中、次々と戦闘艇を落としていく。

 とても時代遅れのボウガンの威力と命中精度とは思えない。

 

「ひょおおおお!!」

 

 さらに、二機の戦闘艇とすれ違いざまに両手に一本ずつ握った剣を振るい、戦闘艇を切り裂く。

 

「見るがいい、ジェットファイア様の永久なる栄光を!」

 

 ジェットファイアはロボットモードに変形しながら空中戦艦に取りつき、杖代わりのライディングギアを斧に変形させて戦艦に突き立てる。

 この老兵を叩き落とそうと、甲板に兵士たちが上がってきたが、ジェットファイアは好戦的にニヤリと笑うと、雄叫びと共に兵士たちに飛びかかった。

 先頭の兵士の首を一撃で刎ね、次の兵士が銃を撃つより早くその兵士を甲板から突き落とす。

 

「若造どもめが! 俺の時代の戦いを見せてやる!!」

 

 戦場がベテラン二人にかき回される中、オプティマスは飛んでくる弾を避けながらレクイエムブラスターに接近していく。

 空中戦艦の一隻が、オプティマスに向けミサイル砲や機関砲で攻撃してくる。

 縦横無尽に飛び回り、弾とミサイルを避けるオプティマスだが、機関砲の弾の一発がジェットパックにかする。

 

――ネプテューヌといっしょならば、こんなことはないのに……!

 

 思わず、恋人のことを思い出すオプティマスだが、その間にも敵の攻撃は苛烈さを増していく。

 しかし、不意に後ろから飛来した砲弾が、空中戦艦に命中する。

 

 フライホエールからの砲撃だ。

 

 一瞬振り返ったオプティマスのセンサーは、フライホエールの艦橋にある砲の制御席にネプテューヌが座っているのを捉えた。

 満面の笑みで、命中したことを誇っているようだ。

 自然と、オプティマスの顔に笑みが浮かぶ。

 

――ああ、そうだな。君は、いつでもいっしょだ。

 

 戦艦は空中でよろめくが、すぐに立て直した。

 しかしその時には、オプティマスは戦艦の脇をすり抜けて、レクイエムブラスターに接近する。

 その間にも、巨大な花を思わせる砲の中心に、エネルギーが集中していく。

 

『来たか、最後のプライムよ』

 

 何処からか、静かだが狂気に満ちたザ・フォールンの声が聞こえてきた。

 

『貴様の魂胆は分かっている。その身と引き換えに、レクイエムブラスターを破壊するつもりなのだろう?』

 

 余裕に満ちた声に、オプティマスは答えず、砲口に向けて飛んでゆく。

 

『ならば、やってみるがいい。その自己犠牲精神こそが、貴様のプライム足る所以だからな。……レクイエムブラスター、出力50%! 目標、有機物どもの溜まり場!!』

「ッ!」

『お止めください! そんなことしたら……!』

 

 何故かスタースクリームの必死な声も聞こえる。

 だが、ザ・フォールンが止める気配はない。

 砲口が目も眩まんばかりに光輝く。

 

「ザ・フォールンよ、貴様は一つ、思い違いをしている。貴様は私がレクイエムブラスターと刺し違えるつもりだと言ったが……私は死ぬつもりなどない」

 

 神殿にいるのだろうザ・フォールンに向けて言い放ち、オプティマスは持っていた金属製ケースを開けて中の物を取り出す。

 それは、刀身が柄のすぐ上で折れた一本の剣だった。

 

 かつてメガトロンの愛刀だった、ハーデスソード、その残骸だ。

 

 月面での決戦で砕かれたハーデスソードはポータルに吸い込まれてR-18アイランドに転送され、オートボットに回収されていたのだ。

 

 折れたハーデスソードをレクイエムブラスターに向け、オプティマスは砲口に向かっていく。

 

『発射ッ!!』

 

 同時に、レクイエムブラスターから世界の半分を破壊するほどのエネルギーは発射される。

 それが本当かは分からないが、おそらくプラネテューヌを丸ごと吹き飛ばすには十分な威力があるのだろう。

 

 しかし、オプティマスは怯まない。

 

 ハーデスソードを真っ直ぐ突き出し、ビームに飛び込んでいった。

 

 圧倒的なエネルギー量と熱量を前に、いかなオプティマスと言えどアッサリと蒸発……しない!

 

 何と、ビームは折れたハーデスソードに吸い込まれていくではないか。

 

『何だと!? そうか、ダークマターに吸収させているのか!!』

 

 ザ・フォールンではなく、ブラジオンが驚愕する声が聞こえた。

 ハーデスソードに埋め込まれたダークマター……魔剣ゲハバーンの欠片には、あらゆるエネルギーを吸収する性質がある。

 正直、オプティマスとしてもイチかバチかの賭け……それもかなり分の悪い賭けだったが、彼の勝負強さが奇跡を呼び寄せたようだ。

 

『だが、そんな物でいつまでも持つものか……!』

 

 それでも、堕ちし者の余裕は消えない。

 事実、エネルギーを吸収しきれず、刀身が融け始めている。

 

『認めろ、貴様はここで滅ぶ定めなのだ……』

「私は……!」

 

 ビームの影響はオプティマスにもおよび、エネルギーが装甲を焦がしていく。

 オプティマスのブレインに、仲間たちの姿が浮かんでくる。

 

 バンブルビー、ジャズ、アイアンハイド、ミラージュ。

 ラチェット、アーシー、ジョルト。

 サイドスワイプ、スキッズ、マッドフラップ。

 ホイルジャック、ロードバスター、レッドフット、トップスピン。

 ドリフト、ハウンド、クロスヘアーズ、クロミア。

 他の多くのオートボットの戦士たち……。

 

 アルファトライオン。

 

 そして……エリータ・ワン

 

『貴様が死すとも、その思いは他のオートボットが継ぐだろう……安心して、眠るがいい』

「私は…………!」

 

 ビームが持つ運動エネルギーに弾き飛ばされないようにジェットパックをフルパワーで吹かすが、それでもジリジリと押されていく。

 オプティマスのブレインに、この世界で出会った人々の顔が浮かんでは消える。

 

 アイエフ、コンパ、イストワール。

 ケイ、ミナ、チカ。

 ヴイとハイ。ダイノボットたち。

 スティンガーら人造トランスフォーマー。

 トレイン教授、ネプ子様FCの会長と副会長。

 アノネデスとアブネス。マジェコンヌとトリック。

 教会やGDCの面々。プラネテューヌの街の人たち。

 他にも、この世界で生きるたくさんの人々……。

 

『美しい自己犠牲ではないか。……それこそが貴様をプライム足らしめる資質なのだ』

「私、は…………!!」

 

 装甲が融けだし、全てのセンサーが生命が危険なことを知らせる警報を鳴らし続ける。

 

 オプティマスのブレインに、この世界で生まれた新たな命のことが浮かぶ。

 

 ロディマス。

 ガルヴァ。

 まだ見ぬメガトロンの子ら。

 まだ生まれていない命たち。

 

 脳意に一瞬、自らの命と引き換えに彼らとこの世界を護るという選択肢が過った。

 

「私は!」

 

 オプティマスのブレインに、女神たちの顔が浮かぶ。

 

 ノワール。

 ブラン。

 ベール。

 ネプギア。

 ユニ。

 ロム。

 ラム。

 

 そして最後に浮かんできたのは……。

 

 あちこち跳ねた淡い紫の髪に十字の髪飾り。

 パーカーと紫のワンピース。

 元気さが溢れる細い手足。

 深い紫の瞳と、溢れる笑顔。

 

――ネプテューヌ……!

 

「……うおおおおッ!!」

 

 咆哮と共に、オプティマスは背中からテメノスソードを抜き放つや、ハーデスソードに重ねる。

 すると、テメノスソードにもビームが吸収されていく。

 ハーデスソードとテメノスソードは同じアダマンハルコン合金製、そしてこの合金にはエネルギーを伝える性質があるのだ。

 

「私は……生きる! 生きて帰る!! プラネテューヌに! みんなの……ネプテューヌの所に!!」

 

 ついにビームの放射が止まる。

 すでにオプティマスの装甲は焼け焦げ、融解しかけていたが、それでも彼は健在だった。

 

「この場所を、ここに生きる人々を、何よりネプテューヌを、愛しているから!! そして私自身が、幸せになるために!! お前たちの野望を打ち砕いて、帰ってみせる!!」

 

 その身を構成する鋼のような……いや鋼よりも硬く強く、そして熱く燃える決意を宣言するオプティマス。

 だがザ・フォールンの物と思しい唸り声が聞こえた。

 底知れない怒りを感じさせ、比喩でなく空間が揺れている。

 

『生きる? 愛? ……幸せ? ……愚かな、プライムともあろう者が、個人的な感情に固執するとは……!!』

「兄弟殺しの裏切り者よ! 貴様に言われる筋合いは無い!!」

 

 オプティマスの怒声に、一瞬だけザ・フォールンが言葉に詰まったようだった。

 しかし、すぐにさらなる怒りを感じさせる声がする。

 

『この俺は、偉大な意思に仕えておる……! 俺が、俺こそが、真のプライムなのだ……! もうよい……レクイエムブラスター、出力100%!!』

『そんな! 100%で撃ったら世界が……それ以前に連続発射なんかしたら、砲がオーバフローを起こして吹っ飛んじまう!!』

『構わん! どうせ、レクイエムブラスターの出番もここで終わりだ……! それよりも、奴はここで死なねばならんのだ!!』

 

 スタースクリームの悲鳴染みた声を上げるが、ザ・フォールンはこれまでの余裕を捨ててレクイエムブラスターの発射を敢行しようとする。

 

「そうは、させん!!」

 

 だがオプティマスは、エネルギーが充填されるより早く手に持っていた融けかけのハーデスソードを……レクイエムブラスターのビームを腹一杯に吸ったそれを、思い切り投げる。

 

『な……!?』

「レクイエムブラスターよ! この一撃が、私からお前への鎮魂歌(レクイエム)だ!!」

 

 砲口に向かって飛んで行くハーデスソードに向け、オプティマスはテメノスソードを大上段から振るう。

 剣に蓄えられたレクイエムブラスターのエネルギーが飛ぶ斬撃、エネルギーの刃として放たれる。

 

 エネルギー刃は、レクイエムブラスターの砲口に飛び込もうとする折れたハーデスソードに命中。

 剣が弾け飛ぶと同時に巨大な爆発を起こした。

 

『おのれ……!!』

 

 その瞬間、レクイエムブラスターが空中神殿から切り離された。

 次いでレイの力を使ったポータルが開き、爆発とそれに飲み込まれゆくレクイエムブラスターを諸共別の何処かへと転送する。

 

 一瞬間が空き、遥か空の彼方が光り、あまりの眩さに世界が真っ白になった。

 宇宙空間に転送されたレクイエムブラスターとハーデスソードが大爆発を起こしたのだ。

 

 ……奇妙なことだが、これらの一部始終は全世界に向け中継されていた。

 

 あらゆるテレビで、モニターで、インターネット動画で、オプティマスの勇姿が、その決意が、愛が、映し出されていた。

 

 避難していたイストワールやネプギア、アイエフにコンパはホッと息を吐いた。

 遠く離れた地にいるサイドスワイプやユニ、双子二組は喜びの声を上げる。

 アノネデスやトレイン教授は笑顔を浮かべ、ネプ子様FCの人々はレッツねぷねぷ!の変形系かレッツおぷおぷ!と唱和していた。

 ジェットファイアは満足げに頷き、フライホエールに乗っていた女神やオートボットたちも歓声を上げた。

 

 ゲイムギョウ界のあらゆる人々が、オプティマスに感謝し、彼を称え、無事を喜んだ。

 

 そしてネプテューヌは、オプティマスが約束を果たしてくれたことに満面の笑顔になった。

 

 オプティマスは、すぐにジェットを吹かそうとする。

 もう、シェアハーヴェスターを破壊する余力は残っていない。

 残念だが、ここまでだ。

 

――帰ろう……ネプテューヌのところへ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 瞬間、オプティマスの胸を突き破って、棒状の物がとび出していた。

 

「ッ!?」

「……困るのだよ。……シナリオに無いことをされると」

 

 ザ・フォールンだ。

 

 いつの間にかオプティマスの背後に転移してきて、両手で握った杖を総司令官の背中に突き刺したのだ。

 エネルギーを纏った杖は、ジェットパックごとオプティマスの金属で構成された体を貫通している。

 

「ぐ、ぐおぉ……!」

 

 オプティマスは胸から突き出た杖を握ろうとするが、それより早くザ・フォールンが杖を通して自身の身内を焦がす強烈なエネルギーを敵の体内に送り込んだ。

 

「貴様の出番は、ここで終わりなのだからな」

「ぐ……うぅぁあああああああッッ!!」

 

 恐ろしい悲鳴を上げるオプティマスの体内でエネルギーが暴れ回り、回路や機関を破壊していく。

 

「あぁああああああッッ!! ああああぁぁぁ……」

 

 やがて悲鳴が止むと、ザ・フォールンは敵の体から杖を抜く。

 オートボットの総司令官は、何の動きも見せず、重力に引かれて地上へと墜ちていった。

 

 ……それを、誰もが無言で見ていた。

 

 女神が、

 女神候補生が、

 オートボットが、

 ディセプティコンが、

 ゲイムギョウ界のあらゆる人々が、

 

 …………ネプテューヌが。

 

 地面にオプティマスが激突したその時、世界の全てから言葉が消え、動きが止まった。

 

 世界が静寂に包まれる中、センチネルだけが、小さく呟いた。

 

「だから、言ったのだ。後悔することになると……」

 

 その声にいかなる感情が籠められているのか、推し量れる者はいなかった。それどころではなかったから。

 次いで、空中に浮かんでいるザ・フォールンがエネルゴンに濡れた杖を掲げる。

 

「最後のプライムが、死んだ!! ……ははは、はははは、はーっはっはっは!!」

 

 大きくはないその嗤い声は、奇妙なことに遠く離れた者たちにも届いた。

 それを皮切りに、空中神殿にいるディセプティコンたちが凶暴な歓声を上げる。

 

 メガトロンは、宿敵の最後に呆けたように立ち尽くすだけだった。

 

「あ……あ……あ……いやぁあああああああッッ!!」

「ッ! ネプテューヌ!!」

「駄目!!」

 

 金切声をあげて艦橋を飛び出そうとするネプテューヌを、ノワールとブランが左右から押さえる。

 

「はなして! はなしてぇええ! お願い、行かせてぇええええッ!!」

「発進して! この場から離脱しないと!!」

「だめええええ!! オプっちを、オプっちを置いていけない!!」

「あなたまで死ぬ気!? ……何してるの、急いで船を出しなさい!!」

 

 半狂乱になってもがくネプテューヌを押さえつけるノワールに従い、フライホエールは急速反転してこの空域を離脱していく……。

 

 その間も、ザ・フォールンは哄笑し続けていた。

 

「はっはっは……さあ、次の幕だ!」

 

 ひとしきり嗤った堕落せし者は敵のエネルゴンが付着した杖を振る。

 

 すると、空中神殿がまたしても揺れ出し、表面にこびりついた土砂や瓦礫が落とされていく。今度は一部でなく、全体から。

 

 土砂が剥がれると、中から金属の壁面が姿を現す。

 上層部の遺跡も崩れ、金属製の尖塔が伸びてくる。

 

 やがて、空中神殿は古代の遺跡から、鋼の要塞へと姿を変えた。

 

「センチネル! 始めろ!!」

『御意』

 

 ザ・フォールンの指示に、丸ごと神殿の内部に収納されて司令室となったストーンサークルにいるセンチネルがスペースブリッジを起動する。

 

 ……かつて、タリは世界中に版図を広げ、故にタリの遺跡は世界中に存在する。

 女神とオートボットがサイバトロンに転送されたプラネテューヌの山中、ディセプティコンが基地としていたR-18アイランドの地下、フージ大火山の麓のタリ首都遺跡。

 それ以外にも、すでに発見された物、未発見の物、地上に出ている物、地中に埋もれた物、山の頂上にある物、樹海の奥深くに佇む物、海に沈んだ物……。

 全ての遺跡に仕込まれていたスペースブリッジの柱が、中心柱から信号を受信し、自身を隠していた岩と土を、あるいは植物と水を突き破って空へと飛んでいく。

 

 何十本も、何百本も。

 

 宇宙まで達した柱は変形してお互いに力を補いながら、巨大なワームホールを作り上げていく……。

 

 その向こうに、何かが見えた。

 巨大な……そんな言葉では言い表せないほどのスケールを持った何かが、ワームホールの向こうにある。

 

 星だ。

 

 ゲイムギョウ界……そう呼ばれる惑星よりも、一回りも二回りも大きな、金属の惑星だ。

 

 トランスフォーマーたちの故郷、惑星サイバトロンだ……!

 

 ゲイムギョウ界の地上にいる者たちから見ると、空一杯に惑星サイバトロンが広がり押し潰されそうだと錯覚してしまう。

 メガトロンやスタースクリームは、圧倒されるように空を見上げていた。

 

「おおお! 惑星サイバトロンよ……!」

 

 さしものザ・フォールンも、一万年ぶりに直接見る故郷に、懐かしそうに目を細める。

 

「あの星こそ、我らの帰る場所。この不様な世界ではなく……! そう言えば、あのプライムの面汚しめは、この国に帰りたいなどとほざいておったな……」

 

 ニィッと堕落せし者の口角が残忍に吊り上る。

 

「この国の出番も、じきに終わると言うにな。……ディセプティコン! 攻撃を開始せよ!!」

 

 瞬間、空中神殿とその周辺空域に待機していたディセプティコンたちの前に空間の裂け目(ポータル)が現れた。

 ディセプティコンたちは、弾かれたようにポータルに飛び込んでいく。

 ポータルを通じて、あるいは空中戦艦や降下艇に乗って地上に至ったディセプティコンたちは、自慢の武器で建物を破壊しつつ、目に付いた乗り物をスキャンして変形し、もっと刺激的な獲物……人間を求めて散開していく。

 

 一方、サイバトロンの地上では、彼らから見て頭上に見える星に向けて、次々と大気圏突入形態(エントリーモード)のディセプティコンたちが打ち上げられていた。

 そして、ワームホールと宇宙空間を抜けて、ゲイムギョウ界の大気圏へと突入し、プラネテューヌの街に、まさしく隕石その物となって降り注ぐ。

 

 衝撃と爆発が相次ぎ、プラネテューヌの街が壊れていく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 街が破壊に包まれる中で、オプティマスは、地面に仰向けに横たわっていた。

 誰かを護るために振るわれていた勇壮な手足は妙な方向に曲がり、オプティックから知性と感情を感じさせていた青い光が消え、皆を勇気づけるために言葉を発していた口は開かれていても何の言葉も出さない。

 胸に開いた大穴からは、炎と煙が上がっている。

 

 誰が見ても明らかだった。

 

 

 

 ……オプティマス・プライムは、死んだ。

 

 




ええ、いつかは書かなけりゃならなかった話です。

最初はそれこそお約束的にオプティマスが自己犠牲を発揮して散る予定だったけど、それではオプティマス自身の成長がないので、こういう形に。

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