超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION 作:投稿参謀
プラネタワーの上に花火が上がり、景気よく音を立ててはじける。
天気は快晴、気温を温暖。絶好のお出かけ日和だ。
「ガラッ! ガラッ! ガラッ!! アブネスちゃんねるを見てくれるみんなー! 清く正しく美しいアブネスちゃんよー!」
タワーの正門前、屋外なのに何故か扉を横開きして現れたアブネスはお馴染のフレーズと共に黒子の持つカメラに向けてポーズを取る。
「今日はプラネタワーにたくさんの幼年幼女が集められているという情報を手に入れたわ!! これは陰謀の臭いがするわね!! さあ、幼年幼女を救うわよー!!」
それはいったい、どういう経路で手に入れたの情報なのか?などとツッコむ者もなく、アブネスは我が道を突っ走る。
「ガラッ! 陰謀はそこまでよ! ……あれ?」
すぐさまプラネタワーに突入したアブネスだが、そこに広がっていたものは、老若男女入り乱れた人ごみと、色とりどりの垂れ幕に、『ダイナマイトデカい感謝祭』と書かれた横断幕、そして……。
「司令かーん! こっち向いてー!」
「バンブルビー、だーい好き!」
「アーシー、カッコいいー!」
子供たちに囲まれているオートボットたちだった。
この場所はプラネタワーの下部にある広いスペースで、ダイナマイトデカい感謝祭が開催されている今は、様々な屋台や出し物が並んでいて、何と小振りながらメリーゴーランドや観覧車まで設置されている。
簡易ステージの一つではアイエフがシルクハットから鳩やウサギを出して好評を博している。
だが、最大の目玉はやはりオートボットとの、『ふれあいコーナー』だ。
「良い子の皆、前の子を押さないようにしよう。割り込みもダメだぞ!」
「『はーいみんなー!』『元気かい?』『オイラは』『バンブルビー』『さ!』」
「うーん、やっぱり女性型ロボットは、子供受けがいまいちね」
「はーい! みんなの友達、ジョルトだよー!」
オプティマスは威厳タップリにポーズを決め、バンブルビーはラジオで音楽を鳴らしながら軽く踊って見せ、アーシーも慣れた調子で手を振りながらもちょっと難しい顔だ。ジョルトは名前を呼んでもらえなくてちょっと悲しそうである。
それだけではなく、ダイノボットたちも恐竜の姿で子供たちと戯れていた。
「わー! 恐竜だー!!」
「すっごーい! でっかーい!」
「グルルルゥ。我、グリムロック! 誰より強い!」
気位の高い騎士たちではあるが、賞賛の声を浴びるのは悪い気分はしないらしく、恐竜の姿に変形して宙に向かって炎を吐く。
その雄々しい姿に子供たちが歓声を上げた。
「むむむ、こちらも負けていられません! みなさん! こちらもご覧くださーい!! 秘儀! 人造トランスフォーマーピラミッド!!」
『おおー!!』
反対側では、スティンガー率いる人造トランスフォーマーたちが、何と数十体がかりで組体操を行っている。
巨大な人間ピラミッドならぬ人造トランスフォーマーピラミッドは中々に見応えがあるが、しかし、大人はともかく子供受けはいまいちのようだ。
「クッ! やはり恐竜でロボットで騎士とかいう属性過多には勝てないか! 仕方がない、こうなったら粒子変形を生かした大合体キングスティンガーを……」
「いや、無理だから」
スティンガーの横にいるトゥーヘッドは、力無くツッコミを入れる。
「というか、何で私はここにいるんだ? 私は一応、ディセプティコンなんだが?」
「まあまあ、そう言わず。これも奉仕活動の一環です」
憮然としている双頭の人造トランスフォーマーだが、スティンガーは気にしない。
スティンガーとしては、この感謝祭を通じて兄弟たる人造トランスフォーマーたちのエディンの走狗であったという悪いイメージを払拭する狙いがあった。
そのことはトゥーヘッドも分かっているのだが……。
「私はだな、痩せても枯れてもディセプティコンの一員としての自覚を持って……」
「ねえ? あなたは何で頭が二つあるの?」
スティンガーに小言を言おうとしたトゥーヘッドだが、恐竜より組体操に興味があったらしい小さな女の子が素朴な疑問を投げかけてきた。
「良い子の顔をよく見るためです」
「出鱈目を吹き込むな! 頭が二つあれば、二倍、物事を考えられるからだ!」
「そーなのかー!」
自分に代わって適当なことを言うスティンガーに、トゥーヘッドは慌てて訂正する。
すると女の子はニコニコと笑った。
そんな和やかな空気を読まずに、アブネスは声を上げる。
「こらー! 有害なロボットども! すぐに幼年幼女から離れなさい!!」
「? ……『ゲエッ!』『また出た』『幼女好き!』『余計なお世話!』」
「ちょっと! わたしは幼女が好きなんじゃないの、幼年幼女が好きなの!」
「『そこかよ!?』」
ツッコミどころがおかしいアブネスに、ツッコミ返すバンブルビー。
しかし使命感に燃えているらしい自称幼年幼女の味方は、それを無視して吼える。
「わたしの目の黒い内は、幼年幼女に悪影響を与えることは許さないわよ!」
「アブネス、君はまた……」
そろそろ顔も馴染んできただろうに、態度を軟化させないアブネスに、さしものオプティマスも少し辟易した様子だ。
アブネスは気にせず、カメラに向かって声を上げる。
「これは幼年幼女をたぶらかす作戦よ! きっとこの国の幼女女神が悪巧みを……きゃあ!」
「うわあ!」
しかし、横から走ってきた幼女女神こと当のネプテューヌにぶつかって、諸共倒れてしまう。
その拍子にネプテューヌが複数持っていた箱の一つが床に落ちて、中身が散乱した。
「いたたた……もう、なに?」
「ネプテューヌ!」
「お姉ちゃん! 大丈夫!?」
「ちょっと! あたしの心配は!?」
オプティマスと姉を後ろから追いかけてきたネプギアが心配そうにネプテューヌを助け起し、アブネスが文句を言う。
それで初めて、ネプテューヌはぶつかった相手が何かと縁のある広報戦士だと気が付いた。
「あ、ロリコンの人だ」
「人をどっかの変態と同じ扱いにしないでちょうだい!! まったくこれだから幼女女神は……あら? 何よこれ」
アブネスが床に散らばった箱の中身を拾い上げると、それは精巧な車の玩具だった。
赤と青のファイアーパターンが特徴的なトレーラートラック、黄色地に黒のストライプの入ったスポーツカー、無骨な黒いピックアップトラック、曲線的なフォルムの真紅のスポーツカー、リアウイングが目を引く銀色のスポーツカー、
オートボットたちのビークルモードを模しているのは明らかだった。
「ネプテューヌ様、これってオートボット?」
周りの子供たちが、それらを手に取る。
立ち上がったネプテューヌは、トラックの玩具を持ち上げるとニッと笑んだ。
「そう! トランスフォーマーの玩具だよ! 見てて!」
そう言って手の中の玩具をカチャカチャと弄ると、トレーラートラックは今まさにこちらを興味深げに見下ろしているオートボットの総司令官の似姿へと変形した。
「各国教会プロデュース、T社から全世界同時電撃発売の変形する玩具! これ、名付けてトランスフォーマー『ディーバ・アライアンス』シリーズと呼ぶ!!」
『おおー!!』
「さ、みんなも手に持ってみて!」
たちまち子供たちは歓声を上げて玩具で遊びだす。
トランスフォーマーたちは感心した様子で、その様子を眺めていた。
「なるほど……いいな、これは」
「ギ…ア…『が持ってるのも』『オートボットの』『玩具?』」
「ううん、これはね……」
ネプギアがバンブルビーに問われて自分の持っていた箱を開ける。
すると、それに入っていたのは戦闘機や戦車の玩具だ。
「これは……ディセプティコンか?」
「そう! やっぱり両方いないとね! 戦車とか建機とかも人気出ると思うんだ! ほら、ミリオタも取り込めそうだし!」
「ふむ、面白そうだ」
こうは言うネプテューヌだが、これも国民のディセプティコンに対する憎しみを削ぐためだと、オプティマスは理解していた。
「ち、ちょっと! 良い子のみんな、騙されちゃだめよ! これは子供に悪影響を及ぼす……」
「いいからいいから! アブネスも手伝ってよ! あれは試遊用だから、こっちの展示用を向こうに運んで!」
グチャグチャと言おうとするアブネスに、ネプテューヌが強引に落としたのとは別の箱を渡す。
「はあ!? 何でわたしが……!」
「あ、アブネスさん……でしたっけ? お願いしますね!」
「だから……ああもう、分かったわよ!」
ネプギアも自分の持っている箱の一つをアブネスに押し付けた。
その場の勢いに流されて、アブネスは箱を受け取る。
「ネプテューヌ様、これどうするの?」
「あ、これはねえ、ここをこうするんだよ! ……う~ん、やっぱりもうちょっと簡単に変形できたほうがいいかな? ワンステップチェンジャー的な」
「盛り上がってるみたいね、ネプテューヌ」
「ネプっ?」
ネプテューヌは子供たちと一緒に笑っていたが、突然かけられた声に振り向くとそこにはラステイションの女神、ノワールが立っていた。
いやノワールだけでなくブランとベール、その後ろにはアイアンハイド、ミラージュ、ジャズの三人もいる。
「ノワール! みんなも、来てくれたんだ!!」
「アイアンハイドが来たいって言うからね」
思わぬ来訪者に嬉しそうなネプテューヌに、ノワールはツンと澄ました顔をするが、アイアンハイドがポツリと漏らした。
「必死にスケジュール弄って時間作ったのは誰だったけかな?」
「あ、アイアンハイドォ……! ま、まあウチには優秀な妹と教祖がいるからね! これくらいの時間は作れるわ!」
悪戯っぽい笑みを浮かべるアイアンハイドにむくれるノワールだが、すぐにニヤニヤしているネプテューヌに気付いて取り繕う。まあ、妹が優秀なのは本当だ。
「あはは……それにしても、ベールもよく来れたね。今日はネット番組の生放送なんじゃなかった?」
「うふふ。それなら、わたくしも自慢の妹がいますので」
「ああ、なるほどね」
喜色満面とばかりのベールに、ネプテューヌも納得する。
今頃は、あの子が姉に代わってネット番組に出演しているのだろう。
『み、みなさんこんにちは。ベールの部屋へようこそ。今日は姉のベールに代わって、リーンボックスの女神候補生である、私、アリスがお送りいたします。……さ、さっそくですが、我が国の誇る歌姫、5pb.ちゃんが特別ゲストとして来てくださいました』
『こんにちは! 5pb.です! アリスさん、今日はよろしくお願いしますね』
『は、はい、こちらこそ…………ううう、どうしてこうなった。私、こういう目立つ仕事には向いてないのに……』
『アリスさん、生放送中だから』
『あ、うん! それでは最初のコーナーは……』
「やれやれ、ベールも念願叶って妹が出来たとはいえ、ちょっと喜びすぎだな」
子供たちの相手をしているオプティマスたちや談笑する女神たちを横目に見ながら、ジャズは腕を組んで苦笑する。
一方でアイアンハイドは難しい顔だ。
「元ディセプティコンの女神候補生か……その、大丈夫なのか? 色々と」
「平気さ。俺は信じてみたいんだ。アリスは変わった。本気でベールを姉として愛してるんだって」
「ああ、そこもだが……ほら、あれだ。元ディセプティコンっつうと周囲の目もあるだろうからな。苦労すんじゃないかと思ってな」
思わぬアイアンハイドの言葉に、ジャズはバイザーの下で目を剥く。
この友人は、とかくディセプティコンに容赦がないのだ。それが気付かうようなことを言うとは。
副官の驚きを察したアイアンハイドは少し照れた様子だった。
「ノワールらの影響だな。俺も、変わっちまったらしい」
「……そうだな」
感慨深げに、ジャズは微笑んだ。
この世界に来てから誰も彼も
オプティマスも、アイアンハイドも、……ディセプティコンたちでさえも。
一方、当のノワールはアブネスがせっせと展示スペースに並べた玩具の中から相方の姿をした物を取り、しげしげと眺めていた。
「ふ~ん、これがアイアンハイドの玩具? 中々よく出来てるわね……ん?」
と、視界の隅でモゾモゾと動く影があることに気が付いた。
白い布を被った何かが、展示用の台の陰に隠れている。
「あら、あなたも感謝祭に来た子供かしたら?」
気になって声をかけてみれば布を被った何者かはビクリと震えるが、言葉は返さない。
「ねえ、あなた……」
訝しがるノワールだが、ふと冷静になって見てみれば、布の塊は大人一人くらいの大きさはある。
もしや不審者ではと思ったノワールは、おもむろに布の端を掴みめくり上げた。
「わあ!」
「ッ! あなたは……」
そこにいたのは、銀と青、黒のカラーリングと二本の角を持った金属の人型……トランスフォーマーの雛だった。
「確か……ガルヴァ、だったかしら?」
「…………」
「何よ、まだ私のこと悪い女神だって思ってるの?」
低く唸って警戒心をむき出しにするガルヴァに、ノワールはちょっと呆れる。
「…………」
「そんなに怯えないでも……」
「ガルヴァちゃん! こんな所にいたのね!」
そこへ何処からか灰色がかった青い髪と角飾りが特徴的な女性が走ってきた。
「キセイジョウ・レイ」
「レイです。……ガルヴァちゃん、目を離した隙にロディちゃんと一緒にいなくなるんだもの、探したのよ」
自分の名前をキッパリと訂正しつつ、レイはガルヴァの傍に寄る。
すると、ガルヴァはそそくさと母の背に隠れてしまう。
「ガルヴァちゃん、どうしたの?」
「…………」
「何だか、私を怖がってるみたいね。まあ無理もないか」
いつになく無口な我が子にレイは首を傾げ、ノワールは肩をすくめる。
R-18アイランドで襲ってきたのを返り討ち……というかアイアンハイドが捕まえたので、恐怖感があるのだろうとノワールは考えた。
一方で、レイはノワールの顔をチラチラと見ては慌てて顔を引っ込めるガルヴァに得心がいった。
「ああ、なるほど……」
「何よ?」
「いいえ別に」
意味深にクスクスと笑うレイに、訝しげな顔になるノワール。
「それじゃあ、行きましょうガルヴァちゃん。ロディちゃんを探さないと。……ノワールさん、お手数をおかけしました。これからも、この子と会ってあげてくださいね」
「え? ええ、いいけど」
「ありがとう。……さて、ここにいないとなると、やっぱりあそこかしら?」
レイがブツブツと呟きながら人差し指で一文字を描くように空を切ると、ガオン!という異音と共に空間が裂けてポータルが形勢された。
そして息子を伴ったレイが空間の裂け目に入ると、最初から何も無かったかのように綺麗に閉じる。
「ノワール、どうした?」
そうこうしているうちにアイアンハイドが異変を察知してやってきた。
ノワールは難しい顔で呟く。
「……あの能力があるんだから、拘束とか監視って無意味なんじゃないかしら?」
相方の言っていることが理解できず、アイアンハイドはポカンとするのだった。
「ふう、手品も人前でやるとなると中々大変ね」
「お疲れ様です、アイちゃん! 後は午後の部ですね!」
一方、午前中の手品ショーも終わり、一息吐いているアイエフに、コンパがドリンクを渡す。
ここからは、ネプ子様FCがオタ芸を披露するらしい……需要あるんだろうか?
「ラチェットたちも来ればよかったのに」
「しょうがないですよ。ラチェットさんはジェットファイアさんの治療がありますし、ホイルジャックさんは派手なイベントは苦手みたいですから」
「ふふ、そうね。それにしても、ネプ子の奴も大変みたいね」
微笑むアイエフの視線の先で、ネプテューヌは何をしているかと言えば……。
「グルルルゥ、我、グリムロック! ダイノボットの玩具、ないのか!」
「あ、ごめーん! そっちは開発中でさー!」
「ネプテューヌ、スティンガーの玩具も見当たりませんが……」
「うーん、粒子変形は再現不可能だからねー」
自分たちの玩具が見当たらないことに不満を言う面々を相手にしていた。
「あらあら、ネプテューヌも大変ですわね。ねえ、ブラン。……ブラン?」
それをにこやかに見ていたベールだが、隣に立つ白い女神は黙りこくっている。
いや、そもそもブランはここに来てから、真面目くさった顔で沈黙し、一言も喋っていない。
一方で、ミラージュは自分の玩具を見つめて、どういうワケか感動しているようだった。
ゲイムギョウ界とは異なる世界において発売されているトランスフォーマーの玩具において、実写ミラージュはサイドウェイズのリデコ品としてしか発売されていないことを、次元を超えて無自覚に感じ取ったからだった。
「どうしましたの、ブラン?」
「……ちょっとね」
ようやくそう言って、ブランはトランスフォーマーに囲まれているネプテューヌの傍に近づく。
「ネプテューヌ、ちょっと……」
「ん、なにーブランー? あ、ブランもこの玩具で遊ぶ? いや、この造形はさすが玩具の老舗T社の技術で……」
「いいから。ちょっと二人きりで話しましょう」
ブランは問答無用でネプテューヌの手を掴み引っ張っていく。
「ちょっとブラン!」
「ネプテューヌ?」
「あ、大丈夫! オプっちたちはそのまま楽しんでてね!」
心配げに声をかけるオプティマスだが、ネプテューヌは明るく笑うのだった。
* * *
「それでブラン、話しってなあに?」
プラネタワーのテラスに出た二人だが、ブランは真剣な表情では重々しく口を開いた。
「……ネプテューヌ、最近のあなたの国のシェアの上昇、どう思う?」
「何さ、急に? うんでも、やっぱりわたしが本気を出せばザッとコンナモンで……」
「そうじゃないと思うわ」
ドヤ顔で胸を張るネプテューヌだが、ブランはバッサリと斬り捨てる。
ネプテューヌは首を傾げる。
「どういうこと?」
「気になって調べてみたの。そしたらビックリよ、ルウィーのシェアが下がったのとピッタリ同じだけ、プラネテューヌのシェアが上がってる。ラステイション、リーンボックスも同じ」
「それって……」
「ええ、そうよ。……エディンが使っていたシェアを奪う装置。あれを誰かが使っているんだと思う」
さしもにネプテューヌの表情も真剣になる。
建国間もないエディンが、あれほどの権勢を誇れたのは、他国のシェアを奪う装置があればこそだ。
ブランは続ける。
「最初は、あなたがやっているのかと思った。次は、イストワールやネプギア……あるいはオプティマスとも考えたわ。……でもミラージュにそんなワケがないって言われてね」
さすがに不機嫌な顔になってくるネプテューヌだが、ブランは先んじてもう疑っていないことを伝える。
「それでも、誰かが装置を使っているの確かだと思う。……気を付けるにこしたことはないわ」
「……ああ、つまり心配してくれてるんだ」
ブランの真意を察し、ネプテューヌはパッと明るい笑みを浮かべる。
対し、ブランはプイッと顔を逸らす。それが何よりの答えだった。
「……別に。ただ、ことはプラネテューヌだけの問題じゃないから……注意しなさい、ネプテューヌ。……この件には何か、深い裏がある。そんな予感がするわ」
「もう! ツンデレはノワールの専売特許だよ! ……ありがとう」
「…………仲間だからな、一応」
荒い口調になりながらも顔が赤くなっていたブランは、足早にバルコニーの出入り口に向かっていく。
一人残されたネプテューヌは、笑みながらも少し不安げに空を見上げる。
本当に、良い天気だ。日は暖かく、そよ風は心地よい。
シェアのことは気にかかるし、アイエフやイストワールに調べてもらおうか。
そう考えて、自分も戻ろうかと思った時だ。
『ネプテューヌ、ちょっといいだろうか?』
「オプっち? どうしたの?」
急に、インカム型通信機にオプティマスからの通信が入った。
『いや、センチネルがそろそろこちらに来るはずなんだが……まだ来ないんだ』
「道に迷ったのかな?」
『分からないが、郊外の公園からセンチネルのビーコンが発信されている。迎えに行ってくるよ』
ネプテューヌはちょっと考えてから答えた。
「ああ、いいよ! わたしが迎えに行くから」
『しかし……』
「いいからいいから! オプっちは今日の主役なんだからさ!」
『……分かった。それじゃあ、位置情報を携帯端末に送信する』
「ありがと! じゃ、楽しんでてね!」
通信を切って、ネプテューヌは女神化し飛び上がる。
シェアのことをはじめ、色々と不安はある。
だがまずは、今日を最高の一日にすることだ。
そのためには、センチネルにも楽しんでもらわないと。
ネプテューヌはそう思いながら、スマホに送信されてきたセンチネルの位置に向けて飛んでゆくのだった。
今回の解説
ディーバ・アライアンス
言うまでもなく、実在のトランスフォーマーの玩具シリーズの一つ『ヒューマン・アライアンス』が元。
アライアンスの意味が同盟なので、『女神との同盟』とでもいった意味。
ミラージュの玩具
本当に、サイドウェイズのリデコ品(故に劇中と似てない)しかない。
ミラージュが変形してる車の製造元がヤダって言ってるんだとか。