超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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最後の騎士王。
バンブルビーやら他のTFたちは、一作目以前から地球に来ていた!
……すげえ設定だなおい。


第137話 老雄、目覚める

 オプティマスは彼にしては落ち着かない様子で、リペアルームの扉の前を行ったり来たりしていた。

 

 ホイルジャックたちから連絡を受けた時は、聴覚回路の故障かと思った。

 今でも、己のブレインを何度もチェックしている。

 

 周囲には、ほとんどのオートボットが集まっていた。

 それから、女神も。

 

 女神たちはネプテューヌが自身が企画したダイナマイトデカい感謝祭への参加を頼むためにオートボット共々招いたのだが、どうも各々エディン戦争の後始末で忙しいらしく、色よい返事は貰えなかったようだ。

 

「それで……何者なの? その、センチネル・プライムっていうのは」

「オプっちのお師匠様で、前のプライムだよ」

 

 腕を組んでいるノワールの問いに、ネプテューヌが答える。

 ネプテューヌは、以前スペースブリッジの転送に巻き込まれた時の不思議な現象によってセンチネルのことを知っていた。

 

「そう、センチネル・プライム。偉大な司令官にして戦士。思想家、科学者としても天才的だった。オートボットは彼の下で団結し、戦っていたのだ」

 

 静かに説明するオプティマスだが、それは自身の記憶を確認するためでもあった。

 

「……随分と設定を盛ってるわね」

 

 少し皮肉っぽく言うブラン。

 オプティマスは気にせず続ける。

 

「しかし、彼は死んだはずだった。……彼の乗った船が炎に包まれるのを、私はこの目で見た」

 

 そう、オプティマスはセンチネルが死んだものだと思っていた。

 オプティマスにプライムの座を譲ったセンチネルは、ある重要な任務を果たすために宇宙船アークに乗って宇宙に飛び出し……撃墜された。

 アークの残骸は発見されず、オートボットは……そしてオプティマスはセンチネルを始めとしたクルーの生存を絶望視した。

 

 それが何故、ゲイムギョウ界の、それも遥か太古の遺跡に安置されていた絶対安全カプセルの中にいたのか……。

 

 思い悩むオプティマスの前でリペアルームの扉が開きラチェットが顔を見せた。

 

「オプティマス、みんなも入ってくれ。センチネルが目を覚ました」

 

 その言葉に頷いたオプティマスを先頭にオートボットと女神たちがリペアルームに入ると、リペア台の前に赤いボディを持ち額にV字の角を生やした老人を思わせるトランスフォーマーが立っていた。

 老人ながら屈強な体つきが歴戦の戦士を思わせ、それでいて厳しくも静かな表情の中に叡智が滲んでいる。

 

 話題の渦中にあるオートボットの先代総司令官、センチネル・プライムだ。

 

 センチネルは重々しく口を開いた。

 

「久しいな、オプティマス」

「はい、センチネル・プライム……本当にあなたなのですね?」

「うむ」

 

 戸惑うようなオプティマスの問いに、センチネルは重く静かな声で答えた。

 するとオプティマスは跪き、敬愛の意を示す。

 

「お久しぶりです。色々話すべきことはありますが……まずは、無事で良かった。そしてようこそゲイムギョウ界へ」

「立つがいい、若き勇者よ。……大方のことは、ラチェットより聞いた。戦争は、二つの世界を跨いでなお続いておるとな。……苦労したようだな」

 

 重々しく話し合う二人のプライム。その姿は威厳に溢れていた。

 まるで、ファンタジー映画か大作RPGに出てくる偉大な王と英雄の会合のようだ。

 いや実際、彼らは偉大な王で英雄なのだろう。

 センチネルのオプティックが、弟子から外れてその後ろに立つ女神たちを映した。

 

「それでオプティマス。其方の者たちが……?」

「はい、女神です。我々は彼女たちと同盟を結んでいるのです」

 

 オプティマスが手で示すと、女神たちはそれぞれ自己紹介を始める。

 

「はじめましてー! ネプテューヌだよー!」

「お、お姉ちゃん、失礼だよ……あ、私はネプギアです!」

「初めまして、ラステイションの女神、ノワールよ。こっちは妹のユニ」

「ど、どうも、ユニです」

「ルウィーのブランよ……ロム、ラム、ご挨拶なさい」

「はーい! わたしはラムちゃんでーす!」

「ロムです……(もじもじ)」

「わたくしはベールと申します。……わたくしにも妹がいるので、いずれご紹介いたしますわ」

 

 センチネルは、個性豊かな女神たちの全員の顔をブレインに刻み込んでいるかのように見回すと、重々しい声を発した。

 

「オートボットたちが世話になった。聞いているとは思うが、儂はセンチネル・プライム。かつてはオートボットの総司令官であった者だ」

 

 丁寧だが威厳を感じさせる口調。底知れない何かを感じさせる目の光。なるほど、オプティマスの師というのも納得だ。

 オプティマスは元々真面目な顔をさらに引き締め、本題に入る。

 

「……それで師よ。いったい何があったのです? 私はこの目で、師の乗ったアークが撃ち落とされるのを見ました。その上、何故絶対安全カプセルの中に……」

「うむ……確かに儂の船にミサイルが命中したが、大破してはいなかったのだ。しかし、船内は衝撃と爆発、破壊と混乱に満たされた。儂は、自らあのカプセルに入ったのだ」

 

 センチネルは遠くを見つめ、過去の記憶を掘り出しているようだった。

 

「無論、命が惜しかったからではない。儂には使命があった。……スペースブリッジを起動するための柱を運ぶと言う使命が」

「スペースブリッジって……あの転送装置のこと?」

 

 ノワールが、センチネルが言葉を区切るのを待って質問する。

 かつて、タリ遺跡のストーンサークルに隠されていたスペースブリッジによってオートボットと女神たちが惑星サイバトロンに転送される事件があった。

 あそこで見た光景は、今も女神たちの脳裏に焼き付いている。

 センチネルは鷹揚に頷いた。

 

「そのとおり、物理法則を捻じ曲げ、時間と空間を超越する装置。儂が伝承を読み解き、今代に甦らせた。改良を加えてな。……あれを使えば、多くの民を星の外に逃がすことが出来る……はずだった」

 

 そして振り返り、リペア台の上に置かれた円柱状の機械を撫でた。

 

「儂は、一縷の望みを懸けてスペースブリッジを起動し、カプセルに入って……そこからは、分からん。おそらくスペースブリッジに何らかの誤作動が起こり、タイムスリップしてしまったのだろう」

「ふむ……そういうこともありうるか? ……だとしても、とてもスペースブリッジの機能だけで出来ることでは……ならば外部から何らかの……」

「……考察は後にしよう。それよりも、失われたスペースブリッジの行方が重要だ」

 

 顎に手を当ててブツブツと言いながら考えこんでいるホイルジャックを遮るように、センチネルが厳しい言葉を出した。

 

「数百本はあったブリッジの柱も今や、この中心柱のみ。これがなければ、スペースブリッジは動かせず、加えて起動できるのは儂だけだ。……だが、もしもスペースブリッジがディセプティコンの手に落ちれば……それはこの世界の破滅を意味する」

 

 深刻な口調と声に、オートボットたちも顔を険しくし、女神たちも表情を硬くする。

 

 唯一人、ネプテューヌを除いて。

 

「う~ん、まあ大丈夫なんじゃないかな? 何とかなるっしょ!」

 

 一瞬、センチネルは信じられない物を見たという顔をした。

 それから、愚かな生徒を諭す教師のような口調でネプテューヌに語りかけた。

 

「事態の深刻さを理解していないようだな。あれがどれほど危険な……」

「そうじゃなくってさ。そもそも戦争が終わっちゃえば、スペースブリッジが悪用されちちゃうことも無いんだよね?」

「…………」

 

 しかし呑気な調子を崩さないネプテューヌに、センチネルはいよいよ顔をしかめる。

 

「残念ながら、戦争はそう簡単に終わらせることは出来ぬ」

「うん、それは分かってるんだ。……でもまあ偉い人『戦争は腹が減るだけです』って言ってるし!」

「オプティマス。……この娘は、本当に女神なのか? 一国の長というにはあまりにも……」

 

 厳しい顔のセンチネルだが、逆にオプティマスは柔らかい笑みを浮かべる。

 

「センチネル、確かに最初は面食らうでしょうが、彼女は素晴らしい女神ですよ」

「なんたって、あなたの恋人だもんね」

 

 ノワールが茶化すように言うと、ネプテューヌは照れたように後頭部をかく。

 

「もー、ノワールったら、そんなホントのこと言ってー」

「皮肉だっての」

 

 そのやり取りに、一同を包む空気が柔らかくなる。

 反対に取り残されているのがセンチネルだ。

 

「恋人……だと……?」

「あ〜……はい。その、色々ありまして」

「色々」

 

 照れながらもバツが悪げなオプティマスに、センチネルは目を丸くし、そして大きく排気した。

 

「どうやらラチェットの説明だけでは状況理解が足りなかったようだ。その『色々』とやらを聞く必要がある。……お前自身の口から」

「それはもちろん……」

「しかし、まずは柱だ」

「それについては、私に良い考えがあります」

 

 今までに増して厳しい声を出すセンチネルに、オプティマスは自分の考えを述べる。

「我々はスペースブリッジが隠された遺跡を知っています。その遺跡を残した文明の専門家に意見を求めましょう。幸いにして二人ほど知己です」

「一人は専門家っていうか当事者だけどね! ほとんど攻略本みたいなもんだよ!」

 

 またしても口を挟むネプテューヌに眉をピクリと上げる。が、素直にその言葉に応じたのだった。

 

「……とにかく、まずはお前に任せよう。ここでは、お前の方が先達だ」

「恐れ入ります」

 

  *  *  *

 

 そういうワケで、オプティマスとセンチネルはその『専門家』ことスペースブリッジ内蔵のストーンサークルを造った文明である超古代国家タリの女神、レイを基地に呼び出していた。

 ちなみにネプテューヌは仕事があるそうでイストワールに呼び出され、他の女神やオートボットたちもいったん母国に帰っていった。

 

 そして、レイと対面したセンチネルだが、またも面食らっていた。

 

 レイが、ガルヴァとロディマスを引きつれていたからである。

 

「ごめんなさい。着いてくるって聞かなくて……」

 

 椅子に座ったレイの傍でガルヴァがセンチネルを睨み付け、ロディマスは真似して見上げる。

 どうもセンチネルのことを警戒しているらしい。

 

「オプティマス……この子らはいったい?」

「ああ、その……この子たちも折を見て紹介しようと思っていたのですが……簡単に言えばメガトロンの子供たちです」

「メガトロンの子供」

「はい、それも……その女性との間の」

「…………オールスパークにかけて、理解できん」

 

 途方に暮れたように天井を仰ぐセンチネル。

 マトモな神経ならば金属生命体と有機生命体の間に子供が出来るなど、考え付かないのだからしょうがない。

 

「そうだ! ぼくは、はかいたいていめがとろんと、いだいなめがみ、れいのむすこだ!」

 

 一方で、ガルヴァは大きく胸を張り、ロディマスもそれを真似する。

 レイは苦笑しながらも、目の前の金属生命体たちに頭を下げた。

 

「ま、まあ、そのことは後でゆっくりオプティマスから聞くとしよう。……それでレイ、と言ったか。貴公の国が儂のスペースブリッジの柱を使用していたとか」

「そのことについてまずは謝罪を。……しかし、私もあの柱のことについてはよくしりません」

 

 社交辞令として謝った後で、レイは首を横に振った。

 

「あの柱は当時、神官として国政を仕切っていたスノート・アーゼムという男が用意した物……細かいことは知らされていませんでした」

「国の頂点たる者がか」

「私は傀儡……というのもおこがましいダメな女神でしたから」

 

 悔恨と自嘲が複雑に混じり合った顔をするレイに、感情の読めない視線を向けるセンチネルだが、それをどう取ったのかガルヴァが声を上げた。

 

「ははうえをいじめるな!!」

「…………」

 

 そんなガルヴァに、センチネルは困ったような顔になる。

 さらに、いつの間にかロディマスが自身の足元にすり寄っていることに気が付いて、困惑が大きくなる。

 

「……可愛いものだな。とてもメガトロンの子とは思えん。……しかし、本当にメガトロンの遺伝子を継いでいるのだとしたら、それがこの子らの未来を曇らせるだろう。……あれは罪を犯し過ぎた」

「そこは否定しません。……でも、子が親の罪を受け継ぐことはないはずです」

 

 レイに言葉を余所に、屈みこんでロディマスの頭を撫でるセンチネル。

 

「……どうだろうな」

 

 酷く戸惑っているような調子のセンチネルに、オプティマスは疑問を覚えた。

 

 師もまた迷っているのではと。

 

 だとしたら、何に迷っていると言うのか?

 

「それよりも、柱を探す方法を見つけなければ……」

「それなら、トレイン教授に話しを聞いてみては? 私よりもタリのことには詳しいはずです」

「そうしよう。すまないなレイ、面倒を懸けた」

 

 話題を戻したセンチネルに、レイは自嘲気味に答えると、オプティマスは頷いた。

 

「いいえ、こちらこそお役に立てなくてすみません。……ガルヴァちゃん、ロディちゃん、行きましょう」

「はい! ははうえ!」

 

 立ち上がったレイに促され、センチネルに警戒心を向けていたガルヴァも、逆にセンチネルに撫でられて嬉しそうにしていたロディマスも、その背中を追っていく。

 三人が退室したところで、センチネルは立ち上がった。

 

「儂が眠っている間に、世界は随分と変わったようだ」

「はい。……それともう一つ、ご案内したい場所と……貴方に会わせたい者がいます」

 

  *  *  *

 

 プラネタワーの地下深く。

 ディセプティコンのために特別に設えられた牢獄で、センチネルとオプティマスは、大敵メガトロンと対峙していた。

 二人が部屋に入ると、床に溶接された椅子に固定されたメガトロンは、オプティマスの脇にいるのが何者か理解してギョッとした顔になる。

 だがそれも一瞬のことで、すぐに凄まじい怒気を孕んだ表情になると、そのまま黙り込んだ。

 

 しばらく全員が黙り、痛いほどの沈黙が場を支配した。

 

 やはりと言うか最初に声を出したのはオプティマスだ。

 

「センチネル。説明した通り、メガトロンはプラネテューヌの捕虜になりました」

「プラネテューヌの、か。つまり、我々にメガトロンを裁く権利はないと」

「そういうことになります」

 

 深く排気したセンチネルに、オプティマスは遠い昔、彼の下で学んでいた時に怒られた時のような緊張に包まれた。

 センチネルはオプティマスの目を真っ直ぐ見る。

 

「オプティマスよ、同盟が対等であることは分かっている。彼女たちのおかげで滞りなく活動できていることも。……しかしな、お前はプライムなのだ。全トランスフォーマーの指導者、宇宙の平和と自由を守る者。もっと強気に出てもいいはずだ」

「ご立派なことだ」

 

 これまで黙っていたメガトロンが茶々を入れる。

 それを一瞥したセンチネルの目はルウィーの吹雪もかくやという冷たさだった。

 

「メガトロン、かつては貴様に期待もしていたが……」

「期待だと? それは、オプティマスの当て馬としてか?」

「オプティマスを支える存在としてだ」

 

 絶対零度のセンチネルの視線と、ギラギラと燃えるメガトロンの視線がぶつかって火花が散る。

 その間にオプティマスが割って入った。

 

「センチネル、少し待ってください。貴方をメガトロンと会わせたのは……その、事実確認のためです」

「事実確認?」

「はい。あなたが私を後継者に選んだあの日に……メガトロンに言ったことの」

 

 オプティマスは慎重に言葉を選ぶ。

 センチネルは怪訝そうな顔になり、メガトロンはギラリと目を光らせる。

 

「あの日、貴方はメガトロンにこう言った。『お前がオートボットだったならば』と。……あの言葉が、メガトロンの中で……切っ掛けになってしまったのではないかと」

「おい、オプティマス。まるで俺が、その一言で狂ったみたいな言い方はやめろ。俺はそんな安い男ではない。確かにあれで現実を思い知ったがな」

 

 不愉快そうに顔を歪めるメガトロン。

 他方、センチネルは感情の読めない表情だった。

 

「なるほど、確かに軽率ではあった。それは認める。……しかし、お前を後継に選んだのは……そしてメガトロンを選ばなかったのは、決してオートボットとディセプティコンどうこうの話しではない」

「では、何だと? お偉いプライムの遺伝子か」

「無論、それもある。プライム王朝の威光なくして、もはやサイバトロンを治めることは不可能だった」

 

 挑発するようなメガトロンに、センチネルはよどみなく答える。

 正直なところ、それはオプティマスにとってあまり聞きたくない答えだった。

 弟子の表情を読み取ったセンチネルは、すぐさま続ける。

 

「もちろん、それだけではなくお前の隠された資質を感じ取っていたからだとも。……それにメガトロンの野心も」

「…………」

「メガトロンよ、確かにお前はプライムたる素質を備えていた。知性、力、高潔な精神……しかし、その理想はあくまでディセプティコンに向けられていた」

 

 弟子と、かつての弟子が静まる中、センチネルは厳かに続ける。

 

「プライムが考えるべきは惑星サイバトロンとサイバトロニアン全ての平和と発展。そのために私情は殺さねばならない。お前には、それは無理だっただろう。お前はあまりにも我が強すぎた」

「ふん!」

 

 つまらなそうに、メガトロンは鼻を鳴らすような音を出す。それがどうした、と言いたげだ。

 動じないセンチネルだが、その瞳の奥で微かに怒りの炎が揺らめいた。

 

「……行こう、オプティマス。これ以上ここにいても意味は無い」

「! センチネル、待ってください!」

 

 かつての弟子に背を向け、部屋を出て行くセンチネルをオプティマスは追う。

 メガトロンはまた一つ鼻を鳴らすように排気すると、不愉快そうに眼を閉じるのだった。

 

  *  *  *

 

「センチネル! あのような言い方は……!」

 

 牢獄の廊下で師を呼び止めようとするオプティマス。

 センチネルはピタリと足を止めると、やおら振り返った。

 今まで以上に険しい顔だ。

 

「オプティマス、間違えるではない。確かに儂は軽率であったし、そのことがメガトロンの狂気を呼び覚ましたのかもしれん。しかしそれで、過去が消えるワケではないのだぞ」

 

 怒気を孕んだ言葉に、オプティマスはしかし真っ直ぐに見つめ返す。

 

「分かっています。……しかし、過去は消えずとも、未来に残すことはありません」

「どういう意味だ?」

 

 弟子の言っていることを測りかねる師に、オプティマスは堂々と口にする。

 

「私には新しい道があるような気がするのです。遠い昔に諦めてしまった道が。……ディセプティコンとの共存、講和による戦争の終わりです」

 

 センチネルは、黙って聞いている。

 

「その道が単純に戦い続けるよりも困難な道であることは分かっています。それでも、女神たちが示してくれた道です。私は、それを信じてみたい。そして、ロディマスたちに平和な世界を見せてやりたい」

「……そうか」

 

 一つ排気したセンチネルは、それだけ言うと再び踵を返した。

 

「本題に戻ろう。柱を見つけねばな。その、教授とやらに会いに行こう」

「はい」

 

 話題を変えた師に自分の言い分を受け入れてくれたワケではないことを察し、オプティマスは少し残念に思う。

 ならば、何度でも説得するまでだ。

 センチネルも、メガトロンも。子供たちに平和な世界を残すために。

 

 

 

 

 決意に燃える弟子に見えないように、センチネルが苦渋に満ちた顔をしていることに、気付くことはなかった。

 




今回の話を簡単に言うと、浦島太郎状態のセンチネルが、ジェネレーション&カルチャーギャップに戸惑う話。

次回も、センチネルとオプティマスの誰得コンビによる珍道中になる予定。

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