超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

150 / 203
最近、仕事が忙しいので疲労が激しく、書く気力が湧きにくいとです……。


第132話 オプティマス対メガトロン part3

 メガトロンは、自身の中でずっと抵抗を続けていたレイの意識が沈黙するのを感じた。

 死んだワケではなく、メガトロンの深層心理の奥深く……スパークの傍で、ジッと身を護っている。

 そうしなければレイの意識はメガトロンに飲み込まれ、二度と元に戻れないだろう。

 

「メガトロン!!」

 

 体が完全に自由になった直後、オプティマスがこちらに飛んで来るのが見えた。

 ネプテューヌと合体して、ネプテューンパワー・オプティマス・プライムになっている。

 メガトロンはさらなる怒りを燃やして、オプティマスを迎え撃つことにした。

 

 今、メガトロンの身内でかつてない憎悪が燃えていた。

 これに比べれば、今まで感じていた怒りや憎しみなど、序の口に過ぎなった。

 

 オプティマスが右腕のプラネティックキャノンと左腕のヴァイオレットバルカンでメガトロンを狙い撃つ。

 しかし、かつてメガトロンを叩き落とした光線とビーム機銃は破壊大帝が体の周囲に張ったバリア状の電撃に阻まれる。

 

『メガトロン! そのままじゃレイさんの意識が消えちゃうよ!! 今すぐ合体を解いて!!』

「この女は俺の物だ!! 貴様らなどには渡さん!!」

 

 ネプテューヌの声にメガトロンは叫び返し、ディメンジョンカノンを集束モードで発射した。

 自分目がけて一直線に襲い掛かるビームを、オプティマスは身を捻って躱す。

 オプティマスを外れたビームは、後ろにある岩山に当たるや、大爆発を起こして岩山を粉々に吹き飛ばしてしまう。

 岩山の欠片が火山弾のように下で戦っているオートボットとディセプティコンの上に降り注ぐ。

 

「どうわあああ!?」

「め、メガトロン様ぁあああ!!」

 

 両軍ともに戦闘を中断して降ってくる岩塊から逃げ惑う。

 さしものダイノボットやデバステイターも、これには戦いを止めざるをえない。

 

「何と言う破壊力だ……!」

『オプっち! ここで戦うのはまずいよ!!』

 

 メガトロンの合体形態の力は、先ほどよりもさらに上がっている。

 全身から発する稲妻は、どんどんと勢いを増している。

 このままオプティマスとメガトロンが激突すれば、下で戦っている両軍兵士にもさらなる被害が出かねない。

 

 ならば……。

 

 オプティマスはメガトロンと同高度に達すると、宿敵を睨み付けた。

 

「メガトロン! 味方を巻き込んでいるぞ!!」

「知ったことか!! 俺が見たいのは、貴様らが死に絶える、その姿だけだ!!」

「そんなに、私が憎いか……ならば、追って来い!!」

「ッ! 待て!!」

 

 背中のジェットを噴射し、オプティマスは上昇していく。

 それをメガトロンも踵のジェットを吹かして追う。

 

 総司令官と破壊大帝は、二条の流星のように空へと昇っていく。

 雲を越え、大気を越え、さらにその上へと。

 

 

 

 

「おい、どうする!? メガトロン様、行っちまったぞ!」

 

 戦闘を中断して物陰に隠れていたブロウルは、別の物影にいるブラックアウトに声をかける。

 すでにブロウルの肩のミサイルポッドを片方失い、ブラックアウトも体のあちこちに傷を負っている。

 

「どうもこうも、メガトロン様の命令だ! 戦うしかなかろう!!」

「兄者、現状それは無理がある。それにメガトロン様の様子を見ただろう? 明らかに……マトモじゃなかった」

「そ、それは……」

 

 脇にいる義弟グラインダーの諌めるような声に、ブラックアウトは思い悩む。

 基本、彼はメガトロンに忠実な軍人気質だ。

 しかし義弟の言う通り、メガトロンは尋常な精神状態でないのも確かだった。

 命令と仲間や自身の命の板挟みになって悩んでいるブラックアウトだったが、突然通信が飛び込んできた。

 

『こちらスタースクリーム。安全な場所まで誘導する。これから送るマップデータに従われたし』

 

 その通信にハッと空を見上げると、エイリアンタトゥーを機体に刻んだ第五世代戦闘機が軌跡を描きながら飛んで行く。

 

「スタースクリーム! 貴様どの面下げて……」

『小言は後にしろよ、後に。ラステイション軍とルウィー軍はまだ動きは無いが、依然こっちを包囲してんだぞ』

「ぐッ……し、しかしメガトロン様の命令は徹底抗戦で……」

『抗戦すりゃ、挟まれて潰されるのがオチだ。サンドウィッチになりたいってんなら、どうぞご自由に』

 

 ブラックアウトはまだ悩む素振りを見せるが、他の者たちはスタースクリームの送ってくる地図情報に合わせて移動を始める。

 

「いいんですか、ミックスマスター? 命令に背いても」

「カーッペッ! これ以上やってられっか!!」

「レイ……」

「追いたいのは分かるがな、ボーンクラッシャー。今は自分の身の安全が優先だ」

 

 いつのまにやら合体を解いていたコンストラクティコンたちは、ミックスマスターを先頭に動き、レイのことを心配いているボーンクラッシャーの背をバリケードが押す。

 グラインダーは、何とか冷静に義兄の方を見た。

 

「兄者、ここは……今死ぬよりも、生きてまた戦う方がメガトロン様のためになるはずだ」

「……ええい! 仕方がない!!」

 

 義弟に説得されて、ブラックアウトもようやっと動きだすのだった。

 

「ディセプティコンの奴ら、逃げ出したぜ!! 追いかけて、止めを刺してやる!!」

「待て。さっきオプティマスから通信があった。……これ以上の深追いは無用、後方に戻れ、だとよ」

 

 ロードバスターは移動しようとしているディセプティコンに追い打ちをかけようとするが、レッドフットがそれを止める。

 

「俺、スラッグ! まだまだ、戦い足りない!!」

「同意。不服」

「まあ、そう言うなって。な、グリムロック!」

 

 スラッグ、スコーン、ストレイフらダイノボットたちも、とりあえずは従う。

 そんな中、ダイノボットのリーダーたるグリムロックは、オプティマスの消えていった雲海を見上げていた。

 

「武運を。友よ」

 

  *  *  *

 

 雲を突き抜け、オプティマスとメガトロンは飛ぶ。大気圏を越えて星の外……宇宙へと。

 

 周囲の青空が、夜空のような星空へと変わっていく。

 

「オプティマァァァァス!! 逃げるなぁぁあああ!!」

 

 メガトロンは宿敵を追いながら、砲を撃ち、雷を放つも、オプティマスはそれらを躱し続ける。

 本来、真空の宇宙空間では電気は伝導しないはずだが、女神の力に由来するメガトロンの雷に常識は通用しないようだ。

 

「ネプテューヌ、まだシェアエナジーを感じるか?」

『うん、大丈夫。ここらへんなら、まだ力を保っていられる』

 

 決して被害の出ない宇宙空間にまで飛んできたのはいいが、ネプテューヌへのシェアの供給も問題ないようだ。

 

 これなら、思い切り戦える。

 

 そう判断した瞬間、大きな衝撃がオプティマスを襲う。

 

 何と、メガトロンは右腕のディメンジョンカノンを後ろに向けて発射し、その反動で推力を得て加速し、オプティマスに追いつくや体当たりしたのだ。

 

「死ねえ、オプティマス! 両目を抉り取ってくれる!!」

「ッ!」

 

 オプティマスに組み付いたメガトロンが腕を伸ばす。オプティマスがそれを掴んで防ぎ、組み合ったまま、二者は落ちていく。

 眼下の青い星ではなく、その周りを回る衛星……月へと。

 

  *  *  *

 

「はい……はい、投降した兵には人道的な配慮を。はい、はい、そのように……ええ、ご協力に感謝します、ケイさん、ミナさん、チカさん」

 

 プラネタワーのシェアクリスタルの間。

 本に乗ったイストワールは各国の教祖と連絡を取り合っていた。

 エディンとの戦争は終わった。しかし、戦争の残した爪痕は……思っていたよりはだいぶ浅かった。

 

『早期に国民の洗脳を解く方法が分かったおかげで、そちらに専念できたからね。軍人の死傷者もゼロではないが、かなり少なくてすんだ。洗脳されていた人々も、後遺症らしき物は見られない。エディンの戦力なら純粋な力押しも出来たはずだが、洗脳をメインの戦略に据えてきたおかげで結果的に被害を抑えることが出来た。……皮肉な物だ』

 

 少年的な容姿のラステイション教祖、神宮寺ケイが溜め息を吐く。

 本来、この規模の戦争ならもっと取り返しの付かない被害が出ていてもおかしくはなかった。

 まさに神の……いや女神の加護か。

 

 これは、レイがメガトロンに入れ知恵をした上で、兵士たちに殺戮や略奪の禁止を徹底させていたことが大きいが、教祖たちはまだそれを知らない。

 

『R-18アイランドも、我がリーンボックスの艦隊が包囲している。戦艦(バトルシップ)なんて前世紀の遺物をかき集めたんだから、これでディセプティコンとの戦いもお終いになればいいのだけれど』

 

 緑の髪を後ろで縛った、黒い服のリーンボックス教祖、箱崎チカもようやく終わりの見えた戦いに少しだけ期待しているようだった。

 リーンボックスの艦隊は、旧時代に活躍した旧式の戦艦を中心に構成されている。

 現代の艦隊で主戦力となるミサイル艦ではコンピューター制御の比重が大きく、サウンドウェーブのハッキングで無力化される恐れがあるからだ。

 しかし、コンピューターが普及する前の戦艦ならその心配はない。

 ハイテクにはローテクで、デジタルにはアナログで対抗するのである。

 

『しかしまだ、余談は許せません。警戒は継続すべきでしょう』

 

 青い髪とアカデミックドレスの女性、ルウィー教祖の西崎ミナが慎重な意見を出す。

 エディンの中核を成していた面々……ディセプティコンたちは、未だ捕らえられていなかった。

 何にせよ、彼女たちはそろそろ戦いが終わった後のことを考えはじめていた。

 戦争は勝ってハッピーエンドではない。

 勝つにせよ、負けるにせよ、戦いの後には膨大な事後処理が待っている。

 

「とにかく今後も協力を密に、ということで……」

『ああ。しかし、重ねて皮肉だね。ディセプティコンという外敵が、結果的にゲイムギョウ界の結束を高めるとはね……』

 

 そうして教祖たちが会話している間にも、幼きロディマスは生活スペースで退屈にしていた。

 大人たちの話しは理解できないし、皆は帰ってこない。

 

 何となしに、ロディマスは何もない中空に向けて手を伸ばした。

 

 すると、何もない空間に『穴』が開く。

 これはいつものことだが、その向こうに見えた光景はいつもと違った。

 

 赤と青のファイアーパターンのボディに紫のパーツが合体した戦士と、灰銀の巨体に青と銀のパーツが融合した戦士が対峙していた。

 

 オプティマスと……あれは父だ。

 ロディマスは超感覚的に、ネプテューヌと母……レイが共にいるのを理解した。

 

 ああ、何てことだろう!

 きっと、あの四人は一緒になって、何か秘密の遊びをしているに違いない!

 

 幼く無邪気なロディマスは、いままさにオプティマスとメガトロンが決戦に臨んでいることなど分からない。

 

 夢に見た光景に居ても立ってもいられなくなったロディマスは、未熟な衝動のままに『穴』に飛び込んだ。

 いつもはすぐに消えてしまう『穴』は、今回はロディマスが通り抜けるまで消えることなかった。

 だが通過して間もなく閉じてしまう。

 

 まるで最初から誰もいなかったかのように静まり返った生活スペースに戻ってきたイストワールが、ロディマスがいなくなったことに気が付いたのは、そのすぐ後のことだった。

 




そんなワケで、まだまだ続くオプティマスとメガトロンの戦い。
次回は月、……ええ月です。

分かる人には分かるでしょう。ギャラクシーフォース、あるいは勇者エクスカイザーです。

しかし現状、スタースクリームが『組織が硬直しないために反対意見を言う、自分がいない時のための予備』というメガトロンの期待に完璧に答えているという皮肉。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。