超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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書いて字のごとく。オプティマスとメガトロン、第一ラウンド。


第130話 オプティマス対メガトロン part1

 雷鳴轟く暗雲の下、実体弾と光弾が飛び交う。

 ダイノボットが総がかりでデバステイターに飛びかかり、さらにレッカーズと直属部隊が壮絶な銃撃戦を繰り広げっている。

 

 そんな戦場のど真ん中で、オプティマスとメガトロンは斬り合っていた。

 

 恐ろしい硬度と剛性を誇るハーデスソードと何度となく打ち合ってなお、チェーンソーには刃こぼれは無い。さすがはレッカーズの自信作だ。

 

 チェーンソーの刃が唸りを上げてメガトロンに襲い掛かるが、メガトロンはハーデスソードとデスロックピンサーを交差させてそれを受け止める。

 飛び散る火花が、総司令官と破壊大帝の顔を照らした。

 二人の全身に込められたあまりの力に、地面が罅割れていく。

 

「ぬ……ううう!!」

「おおおお!!」

 

 本来ならメガトロンの方がオプティマスより力は上だ。しかしオプティマスは自身のリミッターを外すことで力を底上げしていた。

 肉体に多大な負荷を懸け、ともすれば自滅に繋がりかねない危険な手だ。

 事実、オプティマスの体からは煙が上がっている。

 

「舐めるな!」

 

 しかしメガトロンはオプティマスの腹を蹴って距離を取ると、剣を高く掲げた。

 

「見せてやろう! この剣には、こういう使い方もあるのだ!!」

 

 黒雲が雷鳴と共に稲妻が剣に降り注ぎ、刀身が雷を纏う。

 その状態で再びオプティマスのチェーンソーと斬り結ぶと、強力な電気エネルギーがチェーンソーの内部機構を破壊し、さらにオプティマスを感電させる。

 

「ッ……!」

 

 内部機構の何処かが破損したらしく動かなくなったチェーンソーを放り出して両腕のエナジーブレードを展開し、オプティマスは湧き上がる怒りのままにメガトロンに襲い掛かる。

 しかしメガトロンが力を込めて剣を横薙ぎに振るうと、エネルギーの斬撃が飛び出し、オプティマスを大きく弾き飛ばした。

 剣に吸収させたエネルギーは放出することも自在らしい。

 

「ぐおおお!!」

「ハッハッハ! この場におらずとも俺の力になるとは、まったく出来た女よ! それに比べて貴様の愛しい女は援護にも来ないようだな! とんだ出来損ないだわい!」

「……ッ! 貴様……!!」

 

 立ち上がったオプティマスは、ビークルモードに変形するやエンジンを回転させてメガトロン目がけて突進する。

 

「また、お決まりの轢き逃げか? ワンパターンだぞ!!」

 

 鋼鉄の弾丸となって向かって来る宿敵を真っ二つにしてやろうと剛剣を横薙ぎに振るい斬撃を飛ばすメガトロンだが、オプティマスは変形しながらジャンプして、エネルギーの斬撃を飛び越える。

 

「何だと……がッ!?」

 

 目を向くメガトロンの顔面に、オプティマスはビークルモードでのスピードを乗せて飛び膝蹴りを叩き込んだ。

 メガトロンの顔が物理的に歪み、牙が何本か折れる。

 よろけるメガトロンの後ろに回り込んで押し倒し、その後頭部を掴んで地面……そこから露出した岩に顔面を叩き付けてやる。

 

 何回も、何回も、何回も。

 

「出来損ないだと!! 貴様に! 彼女(ネプテューヌ)の! 何が! 分かる! この! メタルの屑が!!」

「ッ……! ッ……!」

 

 メガトロンの顔が岩より硬いので効果は薄いが、それでも痛みはあるようだ。

 しかしオプティマスがエナジーブレードを展開して止めを刺そうとした瞬間、メガトロンは身を捻って裏拳でオプティマスの頭を殴り、怯んだ所でその身体を押し退け逆にマウントポジションを取る。

 そのまま肩のミサイルランチャーを毟り取り、背中の翼を広げ足裏のジェットを吹かしてオプティマスごと飛び上がった。

 この飛行形態は、ビークルモードに比べれば短時間しか飛べず速度も無いが、それでもオプティマスを持ち上げるには十分なパワーを持っていた。

 何とか拘束を抜け出そうともがくオプティマスだが、メガトロンはさらに加速し、戦場から離れていく。

 そしてそのまま近くの高台に到達すると、オプティマスの背中を岩がむき出しの地面に押し付け引きずる。

 荒い岩肌にオプティマスの装甲が擦れて焼け焦げる。

 

「ぐわあああ!!」

「どうだ、オプティマス? 地べたの味は!!」

「ッッ……はあ!!」

 

 オプティマスは、何とか右腕のエナジーブレードを展開して全力で振るう。

 赤熱した刃はメガトロンの体の一部分を溶断するにとどまった。破壊大帝の翼を、その中ほどから。

 

「ぬおおお!?」

 

 片翼を失ったメガトロンはバランスを崩し錐もみ回転しながらオプティマス共々墜落する。

 地面に激突し、その衝撃で離れた場所に転がった二人は、それぞれ立ち上がろうともがく。

 オプティマスのエナジーブレードは、墜落の衝撃で根本から折れていた。

 

「ぐ、お……お」

「翼が……これでは変形しても飛べん。おのれ……!」

 

 ほとんど同時に立ち上がったオプティマスとメガトロンは、それぞれレーザーライフルとフュージョンカノンで相手を撃つ。

 撃ち出された光弾がお互いに相手の体を穿つも、両者はそれに構わずメガトロンは剛剣ハーデスソードを構え、オプティマスは銃を捨ててテメノスソードとバトルシールドを抜いて、弾かれたように走り出す。

 

「オプティマァァァァスッッ!!」

「メガトロォォォォンッッ!!」

 

 オプティマスの剣が届くよりも、ほんの一瞬早く、メガトロンの剣が宿敵の頭を捕らえていた。

 その瞬間、オプティマスは左手に持っていた盾をメガトロンに向け円盤投げの円盤のように投げた。

 顔面に向けて回転しながら飛来したそれを、メガトロンは手に持った剣で盾を思わず防ぐ。

 これよって僅かながらメガトロンに隙が出来た。

 時間にして一秒足らず。

 

 だが、その刹那にも満たない隙が致命的だった。

 

「これで、終わりだぁぁああッッ!!」

 

 オプティマスは全身全霊の力と、あらん限りの殺意を込めて全身の体重を乗せてテメノスソードをメガトロンの腹に突き刺した。

 悠久の時を放置されてなお、錆一つ浮かばなかったアダマンハルコン合金製の刃は、破壊大帝の装甲を容易く貫き、さらにその身体を背中まで貫通した。

 

「が!? き、貴様ぁ……!」

「…………」

 

 メガトロンの全身から力が抜け、指の間からハーデスソードが地面に落ちて金属的な音を立てた。

 赤々と燃えていたオプティックから光が消え、ガクリと四肢と首が垂れる。

 

――勝った……!

 

 この時、オプティマスは残心を欠かしていたワケではなかった。

 しかし、いかな彼と言えど一瞬だけ気を緩めてしまったのは確かだった。

 

 瞬間、メガトロンの目がギラリと光った。

 

「なッ!? ぐうッ!!」

 

 急に右脇腹に走った激痛に、オプティマスが視線を落とすと、メガトロンが何かナイフのような物を手に持ち、オプティマスの脇腹に突き刺していた。

 さっき墜落した時に折れたエナジーブレードだ。いつの間にか手元に忍ばせていたらしい。

 伝導されていた熱を失っていてなお、鋭い切っ先は容易くオプティマスの装甲を貫く。

 

「貴様のだ。返すぞ」

 

 ニィッと口角を吊り上げたメガトロンはオプティマスの肩を掴んで引き寄せ、膝蹴りをエナジーブレードに当てて、さらに押し込む。

 元はオプティマスの武器だった刃は主人の腹を破り、背中まで突き抜けた。

 

「……ッ! ぐ、ああぁぁあああッ!!」

「終わりだと? 終わるのは貴様だ!!」

 

 たまらず悲鳴を上げるオプティマスに、さらにゼロ距離でフュージョンカノンを発射。

 オートボットの総司令官は空き缶のように宙を舞い、数十m後方の地面に轟音を立てて落ちた。

 

「ハハハハ! 見たかオプティマス! 俺の勝ちだ! 勝ち…だ……! ぐ、ぐふぁぁッ

!!」

 

 しかしメガトロンもまた、体に蓄積したダメージが限界を大きく超えていた。

 口から細かい部品の混じった液体エネルゴンを吐き、腹を貫いているテメノスソードを引き抜いて投げ捨てる。

 そのまま数歩後ずさりすると腹に開いた大穴を手で押さえながら仰向けに倒れた。

 

 地面ではなく、すぐ後ろにあった崖の下へと。

 

 オプティマスは激痛にうめきながらも立とうとするが、体にまるで力が入らない。

 右脇腹の傷口からは液体エネルゴンが流れだし、ブレインの中でアラートが絶え間なく響く。

 全身のいたる所から火花が散り、いくつもの部品が欠け、ビークルモード時のフロントガラスに当たる部分は完全に割れていた。

 それでもオプティマスは力を振り絞って立ち上がる。

 

 オプティマスには分かっていた。まだメガトロンは生きている。止めを、止めを刺さねば。

 

 脇腹に刺さったままのエナジーブレードを何とか抜くと、傷口から大量のエネルゴンがこぼれ落ちた。

 

――戦わねば。戦うことだけが、自分に出来ることなのだから。

 

 自らを叱咤し、すでにボロボロの体を引きずっていく。

 

 ブレインサーキットは、すでに生命維持が困難と言う警告メッセージで埋め尽くされていた。

 

「オプっち!!」

 

 その時、聞こえないはずの声が聞こえた。この場で聞こえてはいけない声が聞こえた。

 だからオプティマスは最初それが幻聴の類いかと思った。

 

「オプっちー!!」

 

 しかし、遠くから聞こえてくるその声は、どうやら現実の物であるらしかった。

 ギギギと首を軋ませながら声のする方向を向けば、やはり声の主がこちらに向かって飛んでくるのが見えた。

 

「……ネプテューヌ」

「オプっち! やっと追いついた!」

 

 高台に着地したネプテューヌは女神化を解いてオプティマスに駆け寄る。

 

「酷い怪我……待ってて! 今、シェアを共鳴させて……」

「不要だ。ネプテューヌ……何故ここに来た?」

 

 痛々しい恋人の姿に、当然心配そうな顔と声になるネプテューヌに、オプティマスは酷く冷たい調子で言った。

 そして体を引きずるようにして動くが、一歩歩くたびに火花が散り、脇腹からエネルゴンが流れる。

 

「無理しちゃだめだよ! そんな体で……」

「あと少しなんだ。あと少しでメガトロンを倒せる!」

「でも、そんな傷で動いたら死んじゃうよ!!」

 

 たまらず、ネプテューヌは叫ぶ。

 しかし、オプティマスは目だけをギラギラと輝かせて恋人の制止を振り切ろうとする。

 

「死んでもいい! 戦争が終わるのならば、望む所だ!」

「なッ!? オプっちの馬鹿! 何で男の人ってすぐに死んでもいいとか言い出すのさ!!」

「それが使命だからだ! プライムとしての、使命だからだ!! 務めを果たす!」

「使命って、死んじゃったら、元も子もないでしょう!! …………わたしはあなたに、幸せになってもらいたいんだよ」

「使命を果たすことが、皆のために死ぬことが、プライムとしての幸福だ!!」

「プライムとしての……幸福?」

 

 傷口という傷口からエネルゴンを流すオプティマスの言葉を聞いて、ネプテューヌの顔が険しい物になる。

 

「でもそれって、『プライム』としての幸福であって、『オプティマス』としての幸せじゃないよね?」

「…………何を言っている? その二つは同じ物だ。私は『オプティマス・プライム』なのだから……」

 

 当然とばかりに言ったオプティマスは、また歩こうとするが、その前にネプテューヌが回り込んだ。

 

「じゃあ何で……そんな泣きそうな顔してるのさ!!」

「ッ……!」

 

 オプティマスはネプテューヌの瞳に映り込んだ自分の顔を見た。

 彼女の言うとおり、今にも泣き出しそうな顔をしていた。

 そして、ネプテューヌもまた、吊り上げた目から涙を溢れさせていた。

 

「ねえ、オプっち……もう一度言うよ。わたしはあなたに、幸せになってもらいたい。『オプティマス・プライム』がみんなのために戦うんなら、わたしは『オプティマス』を幸せにする。……馬鹿なこと言ってると思う。でも、そんな馬鹿なのもいていいのが……自由、なんじゃないかな?」

 

 吐露されるのは、あまりにも一途な恋……いや、それは愛だ。

 愛しい人が、戦いの坩堝に落ちようとするのを、引き留めようとする愛だ。

 

「わ、私には……」

 

 しかし、オプティマスはその愛を受け入れることを拒んだ。

 

「私には、君に愛される資格なんて、……幸福になる資格なんて無いんだ……!!」

 

 オプティマスは膝から崩れ落ちて頭を垂れ、両手で顔を覆った。その姿はまるで、許しを請うているかのように見える。

 

 今までどれだけ傷ついても見せなかった弱々しい姿だった。

 

「見てくれ、私を。数え切れないオートボットが死んでいった、数えきれないディセプティコンを殺してきた。私の体には、死の臭いが染みついている。これが……これが私なんだ」

 

 かつて、ロックダウンはオプティマスを虐殺者と罵った。ハイドラヘッドは戦うことでしか生きていけない者だと言った。

 そしてそれは、おそらくその通りだった。

 

「その癖、私は今まで何も守れなかった。惑星サイバトロンを守れなかった。クリスタルシティを守れなかった。……エリータを守れなかった」

 

 それは、総司令官(プライム)としてではなく、個人(オプティマス)としての慟哭であり、ずっと内に秘めていた苦悩だった。

 その証拠にオプティマス自身は気付いていないかもしれないが、口調が崩れている。

 いつもの威厳のある口調ではなく、何処にでもいる青年のように。

 

「それだけじゃない、結局ピーシェを助けることも出来なかった。あの子を助けたのはスタースクリームと君だ。その間、私は何をしていた? ……何も、何も出来なかった。それどころか、私はあの幼い少女を殺すことさえ考えていたんだ……」

 

 断っておくとオプティマスがプライムとしての使命と義務から逃げたことなど、逃げようとしたことなど、唯の一度も無い。

 しかし、それと心に傷付かないこととは別だ。

 どれだけ強い精神を備えていようと、僅かずつでも心に傷は残る。肉体の傷は溶接され、破損したパーツは交換されても、心に負った傷は治り切らずに重なっていく。

 いつか、傷の痛みで(スパーク)を押し潰さんばかりに。

 

「オプっち……」

「私は幸せになんかなれない。幸せになんか、なっちゃいけないんだ……」

 

 増して、彼は本来、優しく繊細な性質なのだ。

 強い戦士としての顔は、所詮対外と自己防衛のための仮面にすぎない。

 いったいどうして、こんな男が自分の幸福を受け入れることが出来ようか?

 

「……分かった。それなら、わたしもオプっちに呪いを懸けてあげる。……幸せになる呪いを」

 

 ネプテューヌは静かに言い切った。

 

 オプティマスは呪われている。

 

 プライムとしての重責に、死んでいった者たちへの責任に、積み上げてきた過去そのものに、オプティマス自身に。

 だったら、ネプテューヌが新しい呪いで上書きするしかない。

 

「いつか言ったよね。わたしの幸せが、自分の幸せだって……わたしも同じなんだよ。あなたが幸せじゃないと、わたしは全然、これっぽっちも幸せじゃないんだよ」

 

 オプティマスが顔を上げると、ネプテューヌの瞳から光が消えていた。

 まるで、オプティマスを引きずり込もうとする紫色の底なし沼だ。

 

「あなたがいなくなったら、わたしは泣いて暮らすよ。国も何もほっぽり出して、あなたを探すことに一生を費やすよ。それが無駄だとしても。

 あなたが死んじゃったら、わたしは寂しくて悲しくて、後追い自殺しちゃうよ。それも世界とか運命とか呪いながら死んじゃうよ」

「そ、そんな……」

 

 よくある殺し文句と、オプティマスを説き伏せるための詭弁と言うことは簡単だ。

 しかし、それでは済まない一種の凄みが、ネプテューヌの表情から感じられた。

 オプティマスは悟った。ネプテューヌが本気であることを。

 

「そんなの……卑怯じゃないか……」

 

 自分が幸福にならなければ、ネプテューヌの不幸になる。

 なるほど、これは呪いだ。

 

 結局のところ、オプティマスが望むのは、ネプテューヌの幸福に他ならないのだから。

 

 オプティマスの両眼から、ついに涙のように液体がこぼれた。

 

「わ、私は……幸せになってもいいのだろうか? 死んでいった皆は、それを許してくれるだろうか?」

「分からない。でもね、少なくともエリータさんは、許してくれるんじゃないかな」

 

 確信めいてネプテューヌは笑む。

 

「二人で幸せになろう。そのために、こんな戦争、終わらせよう」

「……ああ、そうだな」

 

 ようやっと、オプティマスは微笑んだ。

 ネプテューヌの知る彼らしい、力強くも優しい笑みだった。

 

「何はともあれ、とりあえず回復を……」

 

 ネプテューヌはオプティマスのスパークと自身のシェアエナジーを共鳴させて彼を回復させようとする。

 

 その時だ。

 

「オ、プ、ティ、マァァァァァスッッ!!」

 

 崖の下から、恐ろしい叫び声と共に何かが飛び上がってきた。

 

 メガトロンだ。

 

 いや、頭部と背中に一対ずつの角に、右腕の巨大なキャノン砲、一回り大きくなった体躯。戦車形態(ハードモード)のレイと合体した姿であるレイジング・メガトロンだ。

 

 だが全身に赤黒い血管のような模様が浮かび上がり、黒いオーラを立ち昇らせている。

 

 表情たるや、唯でさえ悪鬼羅刹の如き顔が、さらに悍ましいほどの怨念で歪んでいた。

 

『メガトロン!?』

「オートボットの屑どもめが! 一人残らず滅ぼしてくれる!!」

 

 余りに異常な様相に、ネプテューヌとオプティマスが面食らっていると、二人を見とめたメガトロンはいきなり右腕のディメンジョンカノンを発射した。

 オプティマスは咄嗟にネプテューヌを庇うが、しかし光線は不自然なまでに狙いが甘く、二人を逸れて山肌を抉った。

 

「おのれぇぇ! レイ、何故邪魔をする!!」

 

 虚空に向かってメガトロンが吼える。

 どうやら、合体しているレイがメガトロンを抑えようとしているらしい。

 その叫びからは、今までのメガトロンとは違う、深い悲しみと絶望が滲んでいた。

 

「いったい、何が……?」

「メガトロン!! 話しを聞いてよ!! オプっちとあなたに言わなきゃいけないことがあるんだ!!」

「俺には話しなど無い!!」

 

 オプティマスが唖然と呟き、ネプテューヌが必死に叫ぶも、メガトロンは聞き入れずに稲妻のような破壊エネルギーをまき散らし、無茶苦茶にディメンジョンキャノンを発射するが、全く当たらない。

 ネプテューヌは、女神としての感覚でメガトロンと合体しているレイの気配がメガトロンの気配に飲まれて消えそうなほど小さくなっているのを感じていた。

 

「マズイよ! このままだと、『レイの霊圧が……消えた?』みたいなことになっちゃうよ!」

 

 ネプテューヌの言うことは相変わらずよく分からないが、レイが危険な状態なのは理解できた。

 そして今のメガトロンが他者はもちろん、メガトロン自身にとってすら危機的状況なのも、直観的に分かった。

 

「止めなければならない……か」

「うん! メガトロンを止めよう。わたしたち、二人で!」

 

 オプティマスが傷を感じさせないスムーズさで立ち上がった。

 ネプテューヌと共にいると、シェアを共鳴させていなくても、力が湧いてくる。心が落ち着きを取戻し、勇気が漲ってくる。

 

「ネプテューヌ!!」

「うん、オプっち!!」

 

 そして、二人は声を合わせる。

 

『ユナイト!!』

 

 ネプテューヌの体が光に包まれて四枚の前進翼を持った未来的な戦闘機へと姿を変える。

 そして、いくつかのパーツに別れてオプティマスの体へと合体。

 

 背に翼とスラスター、両腕に武装、胸に象形化されたNの文字とオートボットのエンブレムが重なったマークを持つネプテューンパワー・オプティマス・プライムへと融合合体(ユナイト)した。

 

「行くぞ、メガトロン!」

『少しだけ待ってて、レイさん!』

 

 オプティマスは背中のジェットを噴射して飛び上がり、メガトロンへと向かっていくのだった。

 




次回、強化形態対決……の前にメガトロン視点の話。

それにしても、最後の騎士王について新しい情報が出てきましたが、チビダイノボットが可愛いですね。
オートボットは、目玉のホットロッドとスクィージ以外はロストエイジから続投のようですね。
ディセプティコン側は、メガトロン、オンスロート(幹部枠?)、バリケード(新デザイン)、ドレッズの生き残りのバーサーカー……の他に何人かいるようですね。

っていうか、人間側の生活もかなり世紀末ってるんですけど……。何があったの……。

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