超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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第127話 プラネテューヌ パープルハートとイエローハート

 マイダカイ渓谷の戦いは、大混戦の様相を呈していた。

 

「ぐるぉおおお!! 我、グリムロック! セターン王国が炎の騎士! ダイノボットの長! ダイノボット・アイランドの守護者! 名を上げんとする者はかかってこい!!」

 

 ダイノボットのリーダー、グリムロックは自身の身の丈ほどもあるメイスを振り回し、人造トランスフォーマーたちを蹴散らしていく。

 

「俺、スラッグ! 難しいこと、分からない! だから、全部ブッ飛ばす!!」

 

 スラッグは早々に角竜の姿に変形し、口から炎を吹きながら敵陣に突撃し、敵をボーリングのピンの如く跳ね飛ばしていた。

 

「粉砕! 玉砕! 大、喝、采!!」

 

 スコーンは鞭状の右腕で戦車を薙ぎ払い、さらに高くジャンプすると棘竜の姿に変形して背中から敵に圧し掛かる。

 人造トランスフォーマーが何体か纏めて串刺しになった。

 

「ひょおおおお!!」

 

 双頭の翼竜の姿で上空から急降下したストレイフが、足の爪で人造トランスフォーマーを掴み上げ、高高度まで持ち上げてから地面に落とす。

 

 ダイノボットたちの暴れっぷりは、まさに一騎当千、いやそれすら生ぬるい。天災のようですらある。

 

「ディセプティコンの屑どもが!! 報いを受けるがいい!!」

 

 さらにオプティマスも地面に着地するや、両手で持ったメガストライカーや右肩のミサイルランチャーを発射して、敵を打ち倒していく。

 前線基地から文字通り飛んで来たネプテューヌは、オプティマスの傍に並ぶ。

 

「オプっち!」

「ネプテューヌ! 遅くなってすまない!」

「いいの、来てくれたんだもの!」

 

 並んで戦う二人に、四方から人造トランスフォーマーが襲い掛かる。

 ネプテューヌは太刀を構え、オプティマスは引き金を引いて、敵を迎え撃つ。

 

「おのれぇ獣どもが! かくなる上はコンストラクティコン! 合体、デバステイターだ!!」

「カーッペ! いつかのリベンジだ! コンストラクティコン、トランスフォーメーション、フェーズ1 アゲイン、トランスフォーメーション、フェーズ2!!」

 メガトロンの指示にコンストラクティコンたちがダイノボットに対抗するため合体して、山のような巨体のデバステイターと化す。

 

「一度倒した敵! グリムロック、恐れはしない!!」

 

 咆哮を上げる合体兵士に、グリムロックはいつかと同じく果敢に挑んでいく。

 

 ダイノボットの不意打ちに合わせ、プラネテューヌの軍も出撃していきた。

 プラネテューヌ華撃団も乗機を修理して戦場へ戻る。

 

「パワードスーツ隊は前へ! 歩兵は、パワードスーツ隊を援護して!!」

 

 アイエフはビークルモードのアーシーに跨って陣頭指揮を執っている。

 コンパは後方だが、それでも全力で負傷者を治療している。

 

「ギ…ア…『は』『オイラが』『守る!』」

「オイラたちが、でしょう、兄弟?」

「ビー……スティンガー……わたしも!」

 

 ネプギアの迷いは未だ晴れない。それでも、友と仲間を守るため、剣を取る。

 

「行くぞジョルト! さあ、手術の時間だ!!」

「了解! さあてここが正念場だぜ!!」

 

 ラチェットとジョルトは相も変わらず医療要員なのに最前線に出て暴れている。

 

「ヒャッハー!! 右も左も敵だらけだ、的には困らねえ! 皆殺しにしてやるぜ!!」

「ついにヒャッハー、言っちまったなオイ!」

 

 ロードバスター、レッドフット、トップスピンのレッカーズは自慢の武器を振り回している。

 

「ええい、このままじゃ割に合わん! 後で追加料金を請求してやる!! 行くぞ、お前ら! 手柄を立てて、礼金倍増だ!」

『おおー!!』

 

 ロックダウンと手下の傭兵たちも、あくまでも礼金目当てではあるが奮戦していた。

 

「メガトロン様のため! 名誉と誇りにかけて! ディセプティコン、一歩も引くなよ!!」

 

 メガトロン直属の部隊はブラックアウトの号令の下、あらゆる武装を駆使して戦う。

 

 誰も彼もが武器を取り、己の信じる物のために戦う。

 砲火は止まず、悲鳴は消えない。

 

 レイは、メガトロンの傍により、悲鳴染みた声を上げる。

 

「メガトロン様! 撤退を! 撤退しましょう!!」

「撤退だと!? ここまで来て!!」

「プラネテューヌ内の領土を失った今、こちらが不利です! ダークマウントに引き返して、大勢を立て直しましょう!!」

 

 必死に捲し立てるレイに、メガトロンはブレインを高速回転させ、彼我の戦力差を計算する。

 ダイノボットが現れたことで、数の理はひっくり返されたと言っていい。

 イエローハートを使ったシェアエナジーによる強化と回復をフルに使ってなお、勝てるかは分からない。

 

 ……確かに、レイの言う通り、撤退した方が利口かもしれない。

 

 そう考えて口を開こうした時、聴覚回路が忘れようのない声を捕らえた。

 

「メガトロン! 逃げるつもりか、臆病者め!!」

 

 間違えるはずもない、オプティマスだ。

 戦場のど真ん中で、次々と人造トランスフォーマーや自動兵器を屠っている。

 そのオプティックが怒りと憎悪でギラギラと光っていた。

 

「お前がプライムになれなかったのも、道理と言う物だ!! お前は仲間たちと同じように、穴倉の底で意味もなく死ぬべきだった!!」

 

 ブチリ、とメガトロンの中で何かが切れる音をレイは聞いた気がした。

 瞬間、メガトロンもまた怒りの咆哮を上げた。

 

「オプティマァァス! 貴様ぁあああ!!」

「来いメガトロン! 終わらせてやる!!」

 

 メガトロンは、ハーデスソードを抜き、宿敵に向かって駆けていく。

 それを止めようとレイは必至に声を上げる。

 

「待ってください、メガトロン様! ダメです! ダメ! 撤退してください!!」

 

 しかし、メガトロンは聞き入れずにオプティマスに向かっていく。

 プライムになれなかったこと、そして穴倉暮らしだった出自は、メガトロンにとって逆鱗だったらしい。

 オプティマスはそれを突くことで、『撤退』という選択肢を封殺したのだ。

 

 ネプテューヌは恋人の言葉に驚愕していた。

 オプティマスが戦闘中に口が悪くなるのはいつものことだが、今日は何か、いつもと違う気がする。

 

「オプっち……?」

「ネプテューヌ、メガトロンは私が倒す。イエローハートも私が倒そう」

「そ、それには及ばないわ」

「そうか……だがネプテューヌ。もしもイエローハートが戻らない時は……」

「!? ぴーこを、倒せっていうの!」

「……そうだ」

 

 オプティマスの発言に、ネプテューヌは信じられないと言う顔をする。

 しかしオプティマスの目は真剣だった。

 

「君が辛いのなら、私が……」

「何処を見ているオプティマァァス!!」

「ねー、遊ぼうよー!!」

 

 そこへメガトロンとイエローハートが突っ込んできた。

 オプティマスは当然とばかりに宿敵メガトロンを迎え撃ち、ネプテューヌは悩む暇もなく、イエローハートの爪手甲を太刀で受け止め、そのまま揉み合いながら上昇していった。

 

「死ね、オプティマス!!」

「今日こそ最後の日だ! メガトロン!!」

 

 姿勢を低くしてメガトロンのフュージョンカノンの光弾を避け、オプティマスはメガストライカーを発射する。

 メガトロンは両腕を交差させて砲弾を防ぐが、後ろに吹き飛ばされる。

 さらにオプティマスは肩のミサイルを撃つ。

 しかし、メガトロンはハーデスソードを顔の前にかざして急所へのミサイルを防ぎながた弾幕を突っ切り、オプティマスに斬りかかる。

 

 咄嗟にオプティマスはメガストライカーを横にして掲げ、防御する。

 大剣の刃はメガストライカーの中ほどまで食い込んで止まった。

 即座にメガストライカーを捨てたオプティマスは、愛刀テメノスソードを抜き、そのままメガトロンを斬ろうとする。

 だが、メガトロンも一瞬でメガストライカーから剣を引き抜き斬り返す。

 

 テメノスソードとハーデスソードが交差し、鍔迫り合いに持ち込む。

 

 そのまま大怪力で押し切ろうとするメガトロンだが、力比べでは不利と見たオプティマスは一旦距離を取り、盾を構えて防御主体の戦法に切り替える。

 凄まじいスピードで斬り合う二人だが、やがてオプティマスが押され始めた。

 

「フハハハ! 所詮貴様は剣の性能頼り! 同じ硬さの剣ならば、腕の差が出るな!!」

「ッ! ならば!」

 

 再び鍔迫り合いになって押し込もうとするメガトロンに、オプティマスは右肩のミサイル砲を発射。

 

「ぐわッ!?」

 

 至近距離からミサイルを喰らって、たまらず後退するメガトロン。

 その隙に、オプティマスは右腕に装着した機械を変形させる。

 ギゴガゴとパーツが組み変わり大きくなって現れたのは、大きなチェーンソーだった。

 

 これこそ、レッカーズが神をもバラバラに出来ると豪語する自信作、対金属生命体チェーンソーである。

 

 唸りを上げてチェーンソーの刃が回転を始める。

 

「おい待て貴様、それは正義の味方の武器ではないだろう!?」

「メガトロン、貴様はやり過ぎた! 惑星サイバトロンを滅ぼし、ピーシェを洗脳し、ネプテューヌを悲しませた! もはや、許すことは出来ない!! 私は悪鬼となることで、貴様を殺す!!」

 

 あんまりな得物にさすがにツッコミを入れるメガトロンだが、オプティマスは怨嗟の籠った声と共にチェーンソーを振るう。

 迫るチェーンソーを剣で受け止めるメガトロン。

 回転する()と特殊合金製の刃の間で火花と散り騒音が起こる。

 

「ッ!」

「死ね、メガトロン! 死ぬがいい!!」

 

 その状態から再びミサイル砲を撃つオプティマス。

 ミサイルが命中し次々と起こる爆発に、メガトロンは体勢を崩しかける。

 それを好機と見てオプティマスはハーデスソードを払いのけ、メガトロンの体にチェーンソーを押し付けた。

 高速で回転する()によって、強固なメガトロンの装甲が削れていく。

 

「ぬおおおお!!」

 

 痛みに吼えるメガトロンだが、地を蹴って後退する。

 オプティマスはそれを追って、さらにメガトロンの脳天目がけてチェーンソーを振り下ろす。

 瞬間、横合いから太い光線がオプティマスを襲った。

 女神化したレイの必殺技『覇光の光芒』だ。

 

「大丈夫、メガトロン!?」

「ふん! 余計なことをしおって、一人で切り抜けられたわ!」

「はいはい。……これで分かったでしょう。撤退した方が利口よ」

「何を言う! ここから反撃だ! レイ、合体するぞ!!」

 

 隣に飛んできてメガトロンを諌めようとするレイだが、メガトロンは断固として聞き入れない。

 

「いやそれは……」

「太古の女神よ。メガトロンに組みするのなら、このオプティマス、容赦せん! チェーンソーでバラバラにしてくれる!!」

 

 レイの必殺技を喰らったにもかかわらず平気な顔で立ち上がり、物騒なことを言いながらチェーンソーを振り回すオプティマスを一瞥して、レイは顔をしかめた。

 

「仕方がないね……」

「よし、行くぞ!」

 

 破壊大帝と古代の女神は声を揃える。

 

『ユナイト!!』

 

 光に包まれレイが戦車の姿に変身すると、さらに分解してメガトロンの体を鎧のように包み込んでいく。

 

 頭部と背中から一対ずつ生えた禍々しい角に、刺々しい意趣を増した全身

 右腕に装着されたディメンジョンカノン。

 魔神か悪魔のような威容を持った、メガトロンとハードモード:レイの合体形態、レイジング・メガトロンが降臨した。

 

「フハハハ、アーハッハッハ!! 滅びるがいい、オートボット!!」

 

 踵のスラスターからジェット噴射して飛び上がったメガトロンは、全身から雷状のエネルギーを放ち、さらにディメンジョンカノンで大暴れしているグリムロックを撃つ。

 

「ぬおおおお!? ぐ、何の! 我、グリムロック、敗北はない!」

 

 グリムロックは突然の砲撃に思わぬダメージを受けたようだが、すぐに暴君竜の姿に変形してメガトロンに向かっていく。

 オプティマスもミサイル砲やレーザーライフルで空中のレイジング・メガトロンを撃墜しようと試みるが、雷状のエネルギーが光弾やミサイルを防いでしまい上手く行かない。

 

 レイジング・メガトロンがいる位置よりもさらに上空では、ネプテューヌとイエローハートが衝突していた。

 

「ぴーこ! 止まりなさい! 今ならまだ間に合うわ!」

「アハハハ! あなたは悪い女神だけど、遊んでると楽しいねー! もっともっといーっぱい! 遊ぼうよー!!」

 

 太刀と爪がぶつかって生じる火花に照らされて、イエローハートは満面の笑みを浮かべていた。

 一点の曇りもない、無邪気な顔。

 

「いっくよー! ガードストライク!!」

「ッ……きゃああああ!!」

 

 一瞬怯んだネプテューヌに、イエローハートの鉄拳が炸裂する。

 何とか空中で体勢を立て直したネプテューヌは、ふと眼下を見回した。

 炎が広がり、爆発音と怒声、悲鳴が何処までも広がっていく。

 オプティマスが、ネプギアが、アイエフが、コンパが、バンブルビーが、ダイノボットたちが、プラネテューヌの民が戦い、傷ついている。

 

「ッ! ぴーこ! あなたは、この光景を見て平気なの?」

「? 何でー? お祭り楽しいよー!」

「お祭りって……」

 

 戦火に照らされたイエローハートの顔はあくまで笑顔だった。

 遅まきながら、ネプテューヌは理解する。

 

 もはや会話は通用しない。

 

 下ではネプギアが、アイエフが、オプティマスが、自分の民が戦っている。

 ネプテューヌは覚悟を決めて、太刀を振るう手に力を込める。

 

「……これ以上私の仲間や民を傷つけさせるワケにはいかない! ぴーこ、あなたを倒すわ!」

 

 しかし手が震えているのは、隠しようもなかった。

 

  *  *  *

 

 戦場から少し離れた空に、ディセプティコンの空中戦艦キングフォシルが滞空していた。

 

 その中の一室のベッドにスタースクリームが横たえられていた。

 スペアパーツで応急処置が施され、液体エネルゴンがチューブで輸液されている。

 

「ッ……うう……」

「目を覚ましたか。峠は越えたな」

 

 意識を取り戻したスタースクリームはゆっくりと体を起こす。

 隣には治療してくれたのだろうジェットファイアが立っていた。

 スタースクリームは頭を振って意識をハッキリさせようとする。

 

「ッ! いってえ……!」

「まだ無理はするな。あくまで応急処置をしただけだからな」

「……状況はどうなってる?」

 

 スタースクリームの質問に、ジェットファイアは壁のモニターを指差す。

 モニターには、紫と黄色の女神が激戦を繰り広げている姿が映し出されていた。

 それを見て、スタースクリームは顔をしかめる。

 

「……チッ、やり方を間違えやがって。らしくもねえ」

 

 不愉快そうに言うと、ベッドから起きて立ち上がろうとする。

 ジェットファイアがそれを止めた。

 

「言っただろうが、応急処置をしただけだと。無茶すると命に関わるぞ」

「……ヒーローってのはな、無茶を通すもんなんだよ。ピーシェによるとな」

 

 スタースクリームは取り合わず、痛む体を引きずって部屋の外へ向かおうとする。

 よろけて倒れかけるが、ジェットファイアに支えられる。

 

「ジジイ……」

「やれやれ、まったく。ガキ一人のヒーローってのも楽じゃないな」

「全くだぜ……」

 

 何となく笑い合うスタースクリームとジェットファイア。

 二人は、戦場へと戻っていくのだった。

 




再び、スタースクリームのターン。

今回の解説。

対金属生命体チェーンソー
一応、ゲーム版のダークサイドムーンでオプティマスが使う武器。
それにしたって正義の味方の、それもリーダーが使う武器じゃない……。

では。

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