超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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話進まねえ……。


第126話 エディン 下っ端の意地

 ダークマウントの一室、雛たちの部屋では、ワレチューが不安そうにしていた。

 女神やオートボットが要塞に侵入し、戦闘が行われているからだ。

 爆音や衝撃がここまで伝わってくる。

 

「……ここは大丈夫っちゅよね?」

「この部屋が落ちる時は、ディセプティコンが滅ぶ時だな」

 

 部屋の端で機械を弄っているザ・ドクターが普段と変わらぬ調子で言う。

 ここと卵の置かれた希望の間は、要塞の中でも特に警戒厳重な場所だ。それこそ、シェアアブソーバーの部屋よりも。

 ワレチューは溜め息を吐いてから、一塊になっている雛たちの方を向く。

 

「お前ら、ちゃんといい子にしてるっちゅよ。こんな時に手間をかけさせるんじゃないっちゅよ」

 

 不安げな顔で身を寄せ合う雛たち。

 その中でも長兄たるガルヴァは、密かに怒りと使命感に燃えていた。

 

 自分と家族の家を荒らす輩に強く憤り、(レイ)に言われた通り弟たちを守ることが義務であると感じていたのだった。

 

  *  *  *

 

 一方、ノワール率いる攻撃部隊は数多の敵を退け、中枢部まで今少しの所まで進んできていた。

 

「部隊前進! この場所を突っ切るわよ!」

「今日こそディセプティコンどもを屑鉄の山に変えてやろうぜ!!」

 

 真っ先に突っ込んでいくのは、もちろんノワールとアイアンハイドである。

 アイアンハイドは両手に握ったへヴィアイアンとへヴィアイアンⅡを発射し、さらに両腕のキャノン砲を乱射する。

 さらに砲撃の合間を縫うように飛び回るノワールが、人造トランスフォーマーたちを切り裂いていく。

 その大火力と斬撃のコントラストの前に、人造トランスフォーマーたちは為す術なく沈んでいく。

 

 他の者たちも負けていない。

 

「さすがだなチーフ! ワンマンズアーミーとはこのことか!」

「…………」

「はいはい油断しないで!」

 

 リントとミスター・チーフが女神に続けと突貫するのを、ヴィオとソノタが援護している。何か時々ロケットランチャーがぶっ放され味方を巻き込みそうになるのはご愛嬌だ。

 さらに虎の子のパワードスーツたちが、敵を蹴散らす。

 

「見える! 吾輩にも敵が見えるであります!!」

 

 その中でも際立った強さを見せるのが、ジェネリア・Gの乗る機体だ。

 遠距離では特別使用のビームライフルで敵を撃ち、さらに近接ではビームサーベルで斬り捨てる。

 白、赤、青のトリコロールカラーのその機体は、額にV字アンテナが付けられるなどジェネリア自身の手によって強化改造されていた。

 

 快進撃を続けるノワールたちとは逆に、エディン側は士気が低かった。

 これはひとえに、ショックウェーブの指揮放棄による所が大きい。

 資材やら何やら積んで作った防壁の影で、一応の指揮官であるクランクケースは指示を出していたが上手くいっているとは言い難い。

 

「防壁を築け! 機銃持ちは前に出て、残りはそれを援護しろ!」

「クランクケース、もう一区画退くべきでは?」

「じゃあそうする! おら、一区画後退だ!!」

「クランクケース、口調が素になってるぞ」

「知るか! 畜生、俺は監察兵なんだよ! こういう指揮は柄じぇねえんだ!!」

 

 クロウバーの進言に従い、愚痴りながらも後退を指示するクランクケース。

 彼はこんな大人数を指揮することに慣れていないのだから、さもありなん。

 

「いくつかの部隊は他の通路から後ろに回り込め! 敵は少数だ、数で押し潰せ!!」

「え……でも、そういう犠牲前提の作戦はちょっと……」

「ああ!? じゃあテメエは代案を用意できんのか? 出来ねえなら行け! 兵士なら命令に従えや!!」

「うう……はい……」

 

 不満げながらもトラックスは仲間を率いて動く。

 そのノロノロとした動きに、クランクケースは舌打ちのような音を出す。

 どうにも、人造トランスフォーマーは士気が低い。

 子供のような人格であるが故に、尻を叩くショックウェーブとメガトロンの不在が響いている。

 

「クランクケース指揮官、ここは我らクローン兵が前に出ます」

 

 反対に、クローン兵は士気が高い。高すぎて扱い辛い。

 

「阿呆言ってんじゃねえ! テメエらは『死に安い』んだよ! 使いづらくてしゃあねえから下がってろ!!」

「は……」

 

 こちらも渋々と従う。

 何でこうもチグハグで纏まりが無いのか……。

 これでは勝てる戦も勝てない。

 

「アイツら、どうも士気が低いようね……」

「どうする? このまま殲滅するか?」

「馬鹿言わないで。士気が低かろうが纏まりに欠けてようがここは敵地。シェアを集めるカラクリをぶっ壊して、それで撤退よ!」

「それが正解だな」

 

 ノワールとアイアンハイドは短く方針を決め、さらに前進していく。

 

「ふっふっふ! 圧倒的じゃないか、我が軍は! であります!」

 

 一方で、ジェネリアの乗ったパワードスーツは敵陣に深く斬りこんでいく。

 それをアイアンハイドが咎めた。

 

「おい! 突出し過ぎだ!」

「大丈夫であります! このパワードスーツの性能を持ってすれば……」

 

 瞬間、壁の向こうから長い金属製の触手が飛び出してきて、ジェネリア機に巻き付いた。

 触手は凄まじい力で容易くパワードスーツを押し潰していく。

 

「うわああ!!」

「ジェネリア!」

 

 叫ぶとほぼ同時にリントとミスター・チーフがジェネリア機に飛び付き、コックピットハッチを無理やり開けて中からジェネリアを引きずり出すと、彼女を小脇に抱えて離脱する。

 そのすぐ後に、ジェネリアのパワードスーツは圧潰した。

 

「ああ! 吾輩のパワードスーツがぁ!!」

「命があるだけ儲けと思え!!」

 

 消沈するジェネリアにリントが怒鳴る。

 そうしている間にも、ジェネリア機を潰した触手の主が姿を現した。

 

 それは巨大な……箱だった。

 

 正立方体の機械が、浮遊しながら面の一つから触手を伸ばしている。

 さらに他の面からビーム砲を展開して連続発射する。

 強力な砲が、パワードスーツを次々と破壊していく。

 

「ッ! 何なのコイツは!」

「ハーッハッハ! 見たかこの『リンダキューブ』の威力を!!」

 

 ノワールが叫ぶと立方体から声が聞こえてきた。

 ディセプティコンの下級兵、リンダの声だ。

 

「その声は……下っ端!」

「リ、ン、ダ、だ! 忌々しい女神め! これ以上好きにさせてたまるかよ!」

 

 すると、立方体……リンダキューブに乗っているらしいリンダが憤慨した声を出した。

 リンダキューブからさらに触手がノワールに伸びる。

 今度の触手は先端に大きな丸鋸が付いていた。

 

 迫る触手を大剣でさばくノワールだが、怒涛のような攻撃を前に少しずつ押されていく。

 

「クッ……!」

「俺を忘れるなよ下っ端!!」

 

 ノワールを助けるべくアイアンハイドがへヴィアイアンⅡを撃つが、砲弾はキューブの張るバリアに阻まれた。

 

「なに!?」

「アッハッハッハ! そんなもんが効くかよ!」

「うお!」

 

 お返しとばかりにキューブの一面からミサイルが発射される。

 アイアンハイドは軽快にそれを躱すが、それでも爆風に煽られて倒れてしまう。

 

「リンダちゃん……乗っちまったのか」

 

 大暴れするリンダキューブだが、一方でクランクケースは苦々しい顔をしていた。

 リンダは高笑いと共に、リンダキューブに搭載された殺人兵器を次々と繰り出す。

 先端が丸鋸やドリルになった触手や、様々なビーム砲、ミサイルが飛び出してくる。

 まるでビックリ箱だ。

 

「どうだ! これがアタイの……ぐう!?」

 

 勝ち誇るリンダだが、急に呻き声を上げた。

 

「げはあ! はあッ……はあッ……!」

 

 続いて、何か嘔吐するような音と痛みを堪えるような荒い息。

 それを聞いて、攻撃を躱していたノワールが怪訝そうな顔になる。

 

「いったいどうしたの?」

「おそらく、あの機械は脳波コントロールによって制御されているのであります! でも、脳波コントロールは操縦者の心身への負担が大きいのであります……それこそ、死にかねないほどに!」

 

 メカに詳しいジェネリアが憶測を告げると、それを証明するようにクランクケースとクロウバー、ハチェットが慌てた声を出す。

 

「リンダちゃん! もう降りるんだ!」

「もう止めろ! やっぱりそいつは……!」

「がうがう!」

「うるせえ! ……アタイが守るんだ! あのヒトたちの帰ってくる場所をアタイが!!」

 

 リンダの絶叫に答えるように、キューブの一面から、さらに巨大なビーム砲が現れる。

 その照準は、真っ直ぐノワールに向いていた。

 

「ッ! あなたは何でそこまで……! ディセプティコンがあなたに何かしてくれた!? メガトロンが、あなたを認めてくれるとでも思ってるの!」

 

 思わず、ノワールが叫ぶ。

 そんな身を削るように忠を尽くしても、報われるとは到底思えなかった。

 すると、キューブからリンダの笑いが聞こえてきた。

 かなり無理をしているらしく、声がかすれている。

 

「へ、へへへ、女神様も案外馬鹿だな……これはあのヒトたちがアタイに何をしてくれるかって話しじゃねえんだ……アタイが! あのヒトたちのために! 何が出来るかって! そういう話しなんだよ!!」

 

 絶叫と共に、巨大ビーム砲が発射された。

 吐き出されたビームは拡散し、ノワールたちの上に降り注ぐ。

 

「退避! 退避ぃいいい!!」

 

 ビームの嵐の中で、兵士たちは物陰に隠れ、ノワールは障壁を張って防ごうとする。

 しかしビームの威力は障壁の強度を上回っており、障壁は破壊されビームがノワールに命中する。

 

「きゃあああ!!」

「ノワール!」

 

 吹き飛ぶノワールを咄嗟にアイアンハイドが受け止める。

 

「ノワール! 大丈夫か!?」

「ええ……大丈夫よ。アイアンハイド、援護してちょうだい」

 

 気丈に答えたノワールは、毅然とした表情でキューブの前に飛んでいく。

 

「まだ、くたばってなかったか……!」

「……リンダ、だったわね」

「ッ! へ、へへへ。やっと名前を憶えやがったか……! テメエらときたら下っ端下っ端と人を馬鹿にしやがって……」

「ええそうね。……でも認識を変えるわ」

 

 ノワールは大剣を正眼に構える。

 まるで決闘に臨む騎士のように。

 

「あなたは女神たる私が、全力で倒すべき敬意に値する敵よ」

「……ッ!」

 

 キューブの中のリンダが息を飲むのが分かる。

 路地裏の小悪党は、ついに女神が全力で挑むに足る存在となったのだ。

 

「……なら、こっちも全力だ!! このリンダ様の死ぬ気の攻撃、喰らって目に物見やがれ!!」

 

 リンダキューブの全ての面からあらゆる兵装が展開される。

 ノワールは真正面からそれに突っ込む。

 

 迫るミサイルや触手をアイアンハイドが撃ち落とし、ビームをノワールが切り払う。

 

「クソがぁあああ!!」

 

 再び巨大ビーム砲を撃つリンダだが、ノワールは紙一重でエネルギーの奔流を躱し、そのまま剣にシェアエナジーを纏わせ斬り込む。

 

「ラステイションが女神の剣舞、見せてあげる!! インフィニットスラッシュ!!」

 

 触手を、ビーム砲を、ミサイル砲を、縦横無尽に飛び回るノワールが斬り捨てていく。

 キューブの装甲が切り取られ、内部機構が露出する。

 そして、最後に渾身の力で投擲された大剣が、機構に突き刺さり、剣に込められたシェアエナジーが爆発を起こした。

 

「こ、こんな……まだ終わるワケには……!」

 

 崩壊しゆくキューブの操縦席で、リンダは何とか体勢を立て直そうともがく。

 しかし、ハチェットがキューブの操縦席に取りつき無理やり蓋を開けてリンダを引きずり出した。

 リンダを咥えたハチェットが離れると同時に、リンダキューブは粉々に吹き飛んだ。

 

「まだだ……アタイは、アタイは……メガトロン様と姐さんの役に……ガキどもを守って……」

「もういいYO。リンダちゃんは良く頑張ったZE」

 

 ハチェットから受け取ったリンダを抱え、クランクケースは怒りに燃える。

 

「……畜生が! こうなりゃ徹底抗戦あるのみだ!! 奴らを生かして帰すな!!」

「女の子が命張ったのにここで退いたら男が廃る!!」

「人造トランスフォーマー舐めんなよぉぉ!!」

「クローンにはクローンの意地がある!!」

 

 ドレッズや人造トランスフォーマー、さらにはクローン兵たちがノワールらに襲い掛かる。

 リンダの戦いに心打たれた彼らは一丸となっていた。

 

「もう少しよ! このまま前進するわ!!」

「ノワール様たちを援護しろ!!」

「こっちも祖国のため、女神様のため! 負けるワケにはいかん!!」

「今こそ信仰の見せどころ!」

 

 だが攻撃部隊もここまで来て退くワケにはいかない。

 エディン軍に対し攻撃を開始する。

 

 

 戦いは続く。

 

  *  *  *

 

 幼いガルヴァは、思考を巡らし、使命を果たさんとしていた。

 偉大な父がそうであるように、愛する母の言葉の通り、『みんな』を守ることこそ、ガルヴァの役割だった。

 

 弟であるスカージの分身に毛布を被せて身代わりとし、ワレチューやドクターが目を離した一瞬の隙に、通風孔に潜り込んで育成室を抜け出した。

 

「わるものめ。ぼくがやっつけてやる……!」

 

 自分たちの家を荒しに来た『侵略者』を討つために、ガルヴァは一人行くのだった……。

 

 

 

 エディンでの戦いはまだ終わらない。

 しかし、物語は再びプラネテューヌへと戻る。

 




そげなワケで、プラネテューヌで決戦に場面は移ります。

本当はこの回でシェアアブソーバーぶっ壊すつもりだったんだけど、しっくりこなかったので、こんな形に。

では。

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