超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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今回で(とりあえず)一区切りになります。

文章力、構成力、表現力、演出力、すべてにおいて未熟なこの作品におつきあいいただき、本当にありがとうございます。


第13話 目に見える以上の……

 そして、再びメインストリート。

 

「メガトロン!!」

 

 オプティマス・プライムだ。立ちはだかるモンスターを全て血祭にあげ、ついに宿敵メガトロンに眼前に辿り着いたのだ。

 

「ほう、前より力を取り戻したようだな」

 

 メガトロンは、そんなオプティマスを見てニヤリと笑った。

 

「だが、余計なオマケまで付いて来たようだ」

 

 そう言って、オプティマスの後ろを見る。

 そこにはネプテューヌがいた。ブラックアウトに向かって行ったノワールと別れた後は、オプティマスの後でモンスターを相手にしていたのだ。

 

「オマケとは言ってくれるわね」

 

 ネプテューヌはオプティマスの横に並ぶ。

 ついにこの場に、オートボット、ディセプティコン、そしてプラネテューヌの代表者たちがそろった。

 張りつめた様子のオプティマスとネプテューヌ。余裕の笑みを崩さないメガトロン。

 三者は無言で睨み合う。

 

「メガトロン、一つ聞かせて!」

 

 最初に声を上げたのはネプテューヌだった。

 

「なぜシェアクリスタルを狙うの? アレは女神が持ってこそ意味のあるものよ!」

 

 ネプテューヌのその言葉に、メガトロンは嘲笑混じりに答えた。

 

「愚か者めが、それを決めるのはこの俺よ! 貴様は黙ってシェアクリスタルを渡せば良いのだ」

 

 とりつく島もないとは、このことか。メガトロンはネプテューヌの疑問に答える気はないらしい。それとも本気で、シェアエナジーを自分の物に出来ると思っているのだろうか。

 だがどちらにしても、やはりメガトロンにシェアクリスタルを渡すわけにはいかない。

 ネプテューヌは太刀をメガトロンに向け構える。

 

「……メガトロン」

 

 オプティマスは低く静かに声を出した。

 

「どこまで繰り返せば気が済むのだ。どれほどの破壊をもたらせば満たされる? 何を求めているというのだ?」

 

 その言葉には、とてつもない悲しみと苦悩が詰まっているように、ネプテューヌは感じた。

 しかし、それに対するメガトロンの答えは、やはり嘲笑混じりだった。

 

「破壊こそ我が喜び。俺が求めるのは宇宙を支配する力だ!」

 

 その言葉に、オプティマスの顔が怒りに満ちたモノになる。

 

「メガトロン…… 貴様は長く生き過ぎた愚かなロボットだ! スクラップがお似合いだぞ!」

 

 これまでにない怒りを漲らせ、オプティマスは右腕からエナジーブレードを展開する。

 メガトロンはそれを見て笑みを大きくし、自身も右腕をチェーンメイスに変形させた。

 ついにボス同士の対決だ。

 二体のトランスフォーマーは雄叫びを上げ、走り出す。

 オプティマスが左腕に持ったイオンブラスターを宿敵に向け撃つ。だが、それはメガトロンの装甲に弾かれダメージを与えることができない。

 メガトロンが走りながらチェーンメイスを大きく振り上げ、オプティマスに向け振り下ろす。それをオプティマスは躱したが、すかさず繰り出された破壊大帝の左拳が総司令官の左腕を捉え、衝撃でオプティマスはイオンブラスターを手から落としてしまった。

 それでも怯むことなく右腕のエナジーブレードを斬り上げるオプティマス。しかし、メガトロンは上体を反らしてそれを躱すと、オプティマスの胴体に回し蹴りを放つ。

 それを受け止めたオプティマスは、そのままメガトロンの体を投げ飛ばす。

 ビルの壁面に叩き付けられたメガトロンに向け、エナジーブレードを振り下ろす。

 その瞬間メガトロンはなんとエナジーブレードを真剣白刃取りで受け、掌が焼け付くのもかまわず、そのままブレードをへし折る。

 オプティマスはすかさず左拳をメガトロンの顔面に叩き込もうとするが、メガトロンは片腕を砲に変え、オプティマスの胸に撃ち込む。

 轟音とともにオプティマスは大通りの反対側まで吹き飛ばされ、今度はこちらがビルの壁面に叩き付けられ、そのままズルズルと道路に座り込む。

 メガトロンは両腕を組み合わせ長大な砲身を作り上げた。フュージョンカノン砲だ。

 エネルギーを充填し、狙いをつけるメガトロン。

 だがそこへネプテューヌが斬りかかる。

 

「クリティカルエッジ!!」

 

 その攻撃はフュージョンキャノンの砲身に命中するも、大したダメージを与えたようには見えない。だが、狙いはオプティマスから逸れ、発射されたエネルギー弾はオプティマスの脇に当たる。

 大爆発が起きてビルが崩れ、オプティマスは瓦礫に埋もれた。

 メガトロンは咆哮を上げ、ネプテューヌにチェーンメイスを振るう。

 ネプテューヌはそれを避けるが、次の瞬間突き出された左手が、その身体を捕まえる。

 

「この、ムシケラがッ!!」

 

 メガトロンに握られ、その恐ろしい声を真正面で聞くことになったネプテューヌ。

 そこから抜け出すべく全身に力をこめるがビクともせず、金属の指は容赦なく紫の女神の身体を締め付ける。

 

「このまま、捻り潰してくれる!」

 

 メガトロンは左手に力を入れてネプテューヌを潰そうとするが、その瞬間、瓦礫を跳ね除けオプティマスが飛び出してきた。

 

「彼女に手出しはさせんぞ、メガトロン!」

 

 オプティマスはメガトロンに飛びかかり、その胴にタックルした。衝撃でメガトロンはネプテューヌを手放す。

 ネプテューヌはすぐさま空中で体勢を立て直すと、胴に組み付いたオプティマスを振り解こうとしている破壊大帝の顔面に向け飛んでいく。

 

「クロスコンビネーション!」

 

 そしてメガトロンの顔面に剣技を叩き込む。

 

「ぐおおおッ!」

 

 とっさに右腕で顔面を庇ったメガトロンだが、右腕の装甲が大きく傷ついた。

 

「なんだと!?」

 

 その傷にメガトロンは驚愕する。油田での戦いでは白の女神の必殺技をもってしても僅かにしか傷つけることの出来なかった装甲だ。明らかに技の威力が上がっている。

 メガトロンは渾身の力でオプティマスを投げ飛ばす。

 オプティマスはなんとか立ち上がろうとするがうまくいかない。

 

「オプっち!」

 

 そのそばに、ネプテューヌが降り立つ。

 

「オプっち! 大丈夫?」

 

「ああ…… 大丈夫だ」

 

 ネプテューヌがそばに来たら不思議と体に力が入り、立ち上がることができた。

 

「仲の良いことだな! ならば二人まとめて、消え去るがいい!!」

 

 メガトロンは今一度両手を組み合わせ、フュージョンカノンの発射体勢に入る。今度は、エネルギー充填が不十分だがすぐさま発射した。

 オプティマスはとっさにネプテューヌを後ろに庇い、さっき落としたイオンブラスターを拾うと、メガトロンに向け撃つ。

 フュージョンカノンとイオンブラスターから放たれたエネルギー弾がぶつかり合い、空中で爆発する。

またもメガトロンは驚愕した。

 

「相殺しただと!?」

 

 オプティマスのイオンブラスターには、充填が不十分だったとはいえフュージョンカノンを相殺するような威力はなかったはず。

 驚いているのはオプティマスも同じだった。一瞬、自分の身にエネルギーが満ちたかと思うと、イオンブラスターの威力が信じられないほど増大したのだ。

 ただし、イオンブラスターそのものは過負荷に耐え切れず、銃口が融けかかっている。これではもう撃つことが出来ない。

 先に驚愕から回復したのはメガトロンだった。破壊大帝はオプティマスに向け、再度フュージョンカノンを発射する。

 だがオプティマスはビークルモードになることで、ネプテューヌは高く飛び上がることでそれを躱す。

 オプティマスはそのままメガトロンに向かって走り、体当たりした。

 

「ぬおおおッ!」

 

 メガトロンは大きく後ろに吹き飛ばされるも倒れるには至らず、オプティマスはすぐさまロボットモードに戻り、両者はまたしても激突する。

 四つに組み合った状態で拮抗状態になる、オプティマスとメガトロン。本来なら力で上回るはずのメガトロンに対し、オプティマスは互角だった。

 

「何故だ!?」

 

 メガトロンが吼える。

 

「何故そうまでして、あのムシケラを助けようとする!?」

 

 全ての武器を失い、ボロボロに傷ついてまで何故ネプテューヌを助けようとするのか。有機生命体を下等と断じるメガトロンにとっては、どうしても理解不能だった。

 対するオプティマスは静かに、だが決然と答えた。

 

「彼女が友と呼んでくれたからだ。……昔、あなたが兄弟と呼んでくれたように」

 

 その言葉に一瞬、ほんの一瞬、メガトロンの顔に動揺が浮かんだ。

 だがすぐさま怒りと憎しみに満ちた顔に戻ると、さらに力を込めてオプティマスを押し出す。

 そのとき、オプティマスを飛び越えてネプテューヌが現れた。

 

「クリティカルエッジ!」

 

 そしてオプティマスと組み合い防御も回避もできないメガトロンの顔面に剣技が炸裂した。

 

「ぐ、ぐおおおおッッ!!」

 

 思わず手を放し、仰け反るメガトロン。その顔には、斜めに大きな傷ができていた。

 

「ネプテューヌ!」

 

「なに、オプっち? いまさら下がってろって言うのは、なしよ!」

 

「勝負をかける! 援護してくれ!」

 

「いいわ! 決めましょう!」

 

 オプティマスは不思議な気分だった。ネプテューヌと共に戦っていると力が湧いてくる。スパークから、活力が全身に供給されていくのが分かった。

 それはネプテューヌも同じだった。シェアエナジーがどんどん活性化していく。力が溢れてくる。

 

 二人なら、どんな敵にも負けはしない!

 

「ふざ、けるなああッ!」

 

 メガトロンは吼え、チェーンメイスを伸ばし、反対の腕を砲に変える。

 

「死ぬがいい、オプティマアアス!! ムシケラアア!!」

 

 砲を乱射しながら、メガトロンは二人に向け走り出す。

 ネプテューヌはエネルギー弾をよけながら、メガトロンに向け突っ込んでいく。

 

「ネプテューンブレイク!!」

 

 縦横無尽に飛び回りながら、メガトロンを無数に斬りつける。

 大きくはないものの、それは確実にメガトロンにダメージを与え。動きを封じる。

 そして、一拍遅れてオプティマスが突っ込んできた。

 

「うおおおおおッッ!!」

 

 右の握り拳を、渾身の力をこめ、メガトロンの胸の中央に叩き込む。一瞬、その拳が虹色に光った。

 

「ぐ…おおおおおおおッッ!!」

 

 メガトロンは、破壊大帝は、後ろに何十メートルも飛んでいく。

 

「なぁめぇるぅなあああッ!!」

 

 それでも倒れることなく地面に踏ん張り、ギラギラとしたオプティックでオプティマスとネプテューヌを睨みつける。

 

「どうしたッ! それで終わりかあッ!」

 

 メガトロンは咆哮する。顔面を始め体中に傷がつき、胸がへこみエネルゴンが垂れているにも関わらず、その戦意は全く衰えていない。

 

「なんて奴なの!」

 

「メガトロン……」

 

 その姿にネプテューヌは改めて戦慄し、オプティマスは厳しい顔でもう一度拳を構える。

 

 だが、

 

『メガトロン様!』

 

 突如、メガトロンに通信が入った。それはプラネタワー奇襲を任せていたランページからだった。

 

「ランページか! プラネタワー奇襲は成功したのだろうな!」

 

『いえ、それなんじゃが……』

 

 妙に歯切れの悪いランページに、メガトロンはイライラとする。

 

「はっきり言え!」

 

『へ、へえッ! 失敗してしもぉたあ!』

 

 最悪の答えに、メガトロンは怒りが込み上げてきた。だが、さらに悪い知らせは続く。

 

『そ、それだけじゃのおて、オートボットの増援まで出てきたけん!』

 

「オートボットの増援だと!?」

 

『へえッ! 数は確認しただけで3体! メガトロン様! ワシらどうしたらいいんじゃ!?』

 

 メガトロンはブレインサーキットを回転させる。

 ここで、いたずらに徹底抗戦を命じて貴重な戦力を失うのは得策ではない。

 

「もうよい! 貴様はそのまま撤退しろ!」

 

 それだけ言うとランページとの通信を切り、他の全ディセプティコンに向け、通信を発する。

 

「ディセプティコン軍団! 退却ッ!!」

 

  *  *  *

 

 戦場で、ノワールの斬撃を躱しながらアイアンハイドと壮絶な撃ち合いを繰り広げていたブラックアウトが、

 ベールとジャズの攻撃で痛手を負い、身を隠していたグラインダーが、

 共生主の下へ向かって地中を進んでいたスコルポノックが、

 そして、ブランとミラージュを相手に一歩も引かぬ戦いを見せていたスタースクリームが、その通信を聞き戦場から逃れていく。

 女神とオートボットは、ある者は正直命拾いしたと一息吐き、ある者はまだ戦い足りないと、逃げゆくディセプティコンに罵声を浴びせた。

 ディセプティコンたちは、ほとんどの者は己のダメージを鑑みて退却は妥当だと考え、ある航空参謀は内心で指揮官の臆病さを罵っていた。

 モンスターたちは戦意を完全に失い、我先にと逃げ出していった。

 

  *  *  *

 

 メガトロンは退却命令が全軍に伝わったのを確認し、オプティマスとネプテューヌに視線を戻す。

 

「これは終わりではないぞ、オプティマス! これは始まりに過ぎん!」

 

 オプティマスはさらに表情を厳しくする。

 

「まだ続けるつもりか、メガトロン! 偶然導かれたこの世界を巻き込んでまで!」

 

 その言葉に、メガトロンは一瞬、虚を突かれたような顔をする。

 そして、大声で笑いだした。

 

「フハハ、ハァーハッハッハッハッ! 偶然!? 偶然だと! まさかここまで愚かだったとはな!」

 

 その言葉にオプティマスは驚愕する。

 

「どういう意味だ! 我々は意図せぬスペースブリッジの暴走に巻き込まれて、この世界に……」

 

「確かに、スペースブリッジに飲み込まれたのは計画外だ! だがそれは“早すぎた”と言う意味だ!」

 

 メガトロンは、おかしくてたまらないと言う風に言葉を続ける。

 

「行先は、俺の望んだとおりだったのだよ! 本来なら綿密な調査の後に大軍団で侵攻する予定だったのだがな!」

 

「そんな…… それじゃあ、あなたは最初から、ゲイムギョウ界を狙っていたというの!?」

 

 ネプテューヌはそれきり言葉を失う。

 メガトロンは笑うのをやめ、宿敵の、いや宿敵たちの方を真っ直ぐ見た。

 

「その意味を、よく考えるがいい! そして、ムシケラ……いや、プラネテューヌの女神、パープルハートよ!」

 

 その言葉に、ネプテューヌはビクッとなるが、メガトロンは構わず言葉を続ける。

 

「我らディセプティコンは、必ずシェアクリスタルを手に入れる。あらゆる邪魔者を排除してな! そのときを楽しみにしているがいい!」

 

 そう言うとギゴガゴと音を立ててエイリアンジェットに変形すると、瞬く間に飛び去って行った。

 

「メガトロン……」

 

 オプティマスは、エイリアンジェットが空に描いた軌跡を、じっと見つめていた。

 

「ねえ、オプっち」

 

 その足元に、ネプテューヌが変身を解いて立つ。

 

「ひょっとしてさ、オプっちとメガトロンって、昔は仲が良かったの?」

 

「何故、そう思う?」

 

「オプっちがメガトロンのこと、兄弟って言ってたから。あとは、なんとなくかな……」

 

 オプティマスはバトルマスクを解き、悲しげに微笑んだ。

 

「そうだ、我々は昔…… 遠い昔、親友であり兄弟だった」

 

「だったらさ!」

 

 ネプテューヌは努めて明るく言った。

 

「いつか、仲直りできたりして……」

 

 その言葉に、オプティマスは目を伏せる。

 

「いや、ネプテューヌ。それは有り得ない。……有り得ないんだ」

 

 それは、オートボット総司令官オプティマス・プライムらしくない弱々しい声だった。

 

 こうして、ゲイムギョウ界におけるオートボットとディセプティコンの戦い。その初戦はオートボットの勝利で終わったのだった。

 

  *  *  *

 

 他のオートボットと女神たちと合流したオプティマスとネプテューヌが、プラネタワーに帰り着くと、そこにはネプギアを始めとする女神候補生たちと、バンブルビーを筆頭とするオートボットたちが待っていた。

 候補生たちは、姉に飛びついて無事を喜び、オートボットたちは再会を喜んだ。

 

「ラチェット、アーシー、サイドスワイプ。皆、無事で良かった」

 

 オプティマスは笑顔で戦友たちに言葉をかける。

 ラチェットが一歩進み出た。

 

「オプティマス、合流が遅れてすまなかった。通信装置に不具合が出ていてね」

 

 その後ろでアーシーが残念そうに言う。

 

「おかげでパーティーに遅刻しちゃったわ」

 

 ラチェットとアーシーは転送された先で、それぞれプラネテューヌの他の町に潜伏していたのだが、通信装置が故障しており連絡が取れず、オプティマスの招集にも答えることができなかった。

 しかし、今朝のメガトロン電波ジャックを見て、メガトロンあるところオプティマス・プライムありと考えプラネテューヌ市街まで移動してきたのだ。

 ちなみにサイドスワイプは、プラネテューヌ近隣の山の中をグルグル回っていたが、なんとか、偶然、奇跡的にプラネテューヌに辿り着いたのである。

 当の本人はアイアンハイドに説教をくらい、項垂れていた。

 

「まったく、道に迷って敵を取り逃がすとは…… 情けねえ」

 

「面目ない……」

 

「まあいい、……無事で良かった」

 

 アイアンハイドは笑顔になり、サイドスワイプの肩に手を乗せる。

 そんな二人を、黒の女神とその妹が見ていた。

 

「まったく、男って不器用よね」

 

「うん、そうだね……」

 

 呆れたようなノワールに対し、ユニは微妙な表情だ。

 

「カッコいいかと、思ったんだけどなあ……」

 

 そんなことを呟くユニだった。

 

「それで、俺とドライブに行く気になってくれたかい?」

 

 ジャズは冗談めかしてベールに言った。

 

「そうですわね。お友達としてなら、行ってもいいですわ」

 

 その答えに、ヒュウと排気音を鳴らすジャズだった。

 一方、赤いオートボットは、みんなの輪から離れて一人立っていた。

 そこに、抱きついていた妹たちに少し待つように言って白の女神が近づいてきた。

 

「あなたはいいの? 仲間なんでしょ」

 

「ガラじゃないんでね」

 

 相変わらずぶっきらぼうに言うミラージュに、ブランは薄く微笑んだ。

 

「……なんだ」

 

「あなたのことが少しわかった気がしたわ」

 

 ミラージュが何か言い返すより早く、ラムとロムの声がした。

 

「お姉ちゃーん! いつまで待てばいいのー?」

 

「さみしい……(うるうる)」

 

「いま行くわ」

 

 その声にブランは赤いオートボットに軽く頭を下げると、妹たちの方へ小走りに駆けて行く。

 ミラージュはフンッと排気し、仲間たちの方へ歩いて行った。

 

「うわあ、ロボットがいっぱいだあ。うわあ……」

 

 ネプギアは、目をキラキラさせながらオートボットたちを見回していた。

 

「『みんな』『オイラの』『自慢の』『仲間たちさ!』」

 

 その横で、バンブルビーが誇らしげに胸を張る。

 

「頼んだら、分解させてくれるかな?」

 

「…………」

 

 紫の女神候補生がボソッと呟いた一言を、黄色いオートボットは聞かなかったことにした。

 

「うわッ! あいちゃん、傷だらけじゃん! 大丈夫!?」

 

「とりあえず大丈夫よ、あいたたた……」

 

 紫の女神は親友の思わぬ姿に本気で心配そうな声を出し、アイエフは大丈夫と言いつつも体が痛むらしかった。

 

「無理しちゃダメですよ、あいちゃん!」

 

 もう一人の親友、コンパがその身体を支えながらたしなめる。

 親友の言葉に、アイエフはごめんと頭を下げた。

 

「みなさ~ん! ご無事でなによりです!」

 

 と、プラネタワーのほうからイストワールが飛んで来た。

 

「お! いーすん! そっちはダイジョブだった?」

 

 補佐役の姿を認め、ネプテューヌが明るい声を出す。……彼女はいつでも明るいが。

 イストワールはネプテューヌのそばまでやってくると、ちょっと困った顔をした。

 

「私は大丈夫ですが……」

 

 そう言って後ろを見やる。そこには、プラネテューヌの国民たちが不安を拭いきれない様子で並んでいた。

 無理もない、昨日まで普通に暮らしていた人々が、急に戦乱に巻き込まれたのである。すぐには立ち直れないのも道理であった。

 しかし、ネプテューヌは笑顔で国民たちの前に進み出る。

 

 

「もう、みんな! な~に暗い顔してるの! わたしたち勝ったんだよ! オートボット、女神連合大勝利! 希望の未来へレッツゴー!! なんだよ!」

 

 ネプテューヌの声はどこまでも明るかった。

 

「他の国の女神のみんなや、オートボットのみんなが戦ってくれたから勝てたんだよ!」

 

 その言葉に国民たちがザワザワと騒がしくなる。

 そして最初に駆け出して来たのは、子供たちだった。

 続いて男たちが、女たちが、遅れて老人たちが、駆けて来た。

 

「わー! オートボット、カッコいいー!」

 

「ありがとう! 本当にありがとう!」

 

「かわいい! かわいいよ、ネプテューヌ様!」

 

「他の国の女神様も、ありがとうございました!」

 

 口々に礼を言い、褒め称える。

 歓声が、プラネタワー前庭を満たした。

 女神たちは慣れた様子で手を振り、候補生たちは慣れない様子ながらも笑顔になり、そしてオートボットたちは戸惑っていた。

 彼らはもっと、冷たい対応を想定していた。まったくの異種族なのだ、受け入れられないことも十分に有り得た。それどころか、戦乱の原因の一つであるとして憎まれることも覚悟していた。

 

「ネプテューヌ、これは……」

 

 オプティマスは自分の足元で目を輝かせながらこちらを見上げる子供たちに、どうしていいのか分からず、ネプテューヌに助けを求める。

 

「どう? オプっち!」

 

 紫の女神は満面の笑みだった。

 

「これが、オプっちたちの護ったものだよ!」

 

 満ち満ちる喜びの声、人々の生命。そして女神たちの笑顔。

 オプティマスは肩の力を抜き、フッと笑みを浮かべた。

 そして人々に向かって大きく腕を掲げる。

 バンブルビー、ジャズ、サイドスワイプの三人は人々の輪の中でダンスを披露する。

 ラチェットとアーシーは照れたように小さく手を振った。

 アイアンハイドは勇ましいポーズをとり、周囲を沸かせる。

 ミラージュは相変わらずそっぽを向きつつも、そばで見上げる人々を追い払うことはなかった。

 そんなオートボットたちを見て、女神たちとその妹たちは朗らかに笑い合う。

 人間と、女神と、トランスフォーマーと。

 異なる三つの種族は笑い合い、称え合った。

 いつまでも、いつまでも……

 

  *  *  *

 

 偶然か必然か、我々はこのゲイムギョウ界に導かれた。

 メガトロンの言葉の通り、これは始まりに過ぎない。

 ディセプティコンは必ずまたやってくるだろう。

 仲間たちは散り散りになり、故郷サイバトロンに戻る方法はようとして知れない。

 メガトロンの真意も分からぬままだ。

 それでも、希望はある。大きな希望が。

 この世界で、新たに得た友だ。

 彼女たちは我々と同様、目に見える以上の力を秘めているのだ。

 

 私の名は、オプティマス・プライム。

 女神とともに、この世界を護る!

 

 

 

 ~ミニシリーズ unexpected encounter~ 了

 




そんなわけで、今回で当作品の最初の章を書ききることができました。
ロストエイジでオートボットたちが迫害されるのを見て、どこかオートボットたちが受け入れてもらえる世界はないかと考え、ある意味なんでもありのゲイムギョウ界なら大丈夫なんじゃないかと思い妄想しだした、この作品。
じゃあ、ついでに前々から考えていた、ディセプティコン側にもキャラ付けするのもいっしょにやっちまおうということで、こういう感じになりました。
ここまで続けられたのも、本当に読者のみなさんのおかげです。
長くなりましたが、まだまだ、トランスフォーマーたちと女神たちの物語は続きますので、よろしければお付き合いください。

次回は次章の前に閑話になります。
ご意見、ご感想、お待ちしております。

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