超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION 作:投稿参謀
またプレダキング一人ぼっちになってしまったん? 殺されたとも思えないし、どこかに捕まっているか潜んでいるのか……。
もうスタスクは、メガトロンに認めてほしいだけなんでしょうねえ……。宇宙征服もニューリーダーもその手段に過ぎない。
でも、本人が気づいてなくて、やり方がアレだから、いつまでも認めてもらえない悪循環……。
あくまで、個人の感想です。
エディン軍の空中戦艦グラディウスに突入したネプギアとバンブルビーは、共に乗り込んだロックダウンの手下たちと共に艦内の通路を前進する。
「右! タレットガン!」
「正面から人造トランスフォーマーが五体!」
「任せろ!」
傭兵たちは慣れた様子で無数のセントリーガンを破壊し、何体もの人造トランスフォーマーを打ち倒す。
ネプギアも銃剣からビームを撃ち、人造トランスフォーマーを撃破していく。
「ギ…ア…『大丈夫?』」
「……ごめん、あんまりダイジョばない」
バンブルビーが心配そうに声をかければ、ネプギアは複雑な表情を浮かべる。
対し、傭兵の一人が小馬鹿にしたように鼻を鳴らす。
「覚悟が足らない奴だな。『殺す覚悟』をしろよ。戦場では必須だぜ」
「『いらねえよ、そんなもん』『手を汚すのは』『オイラ』『だけで十分だっての』」
共に戦っているとはいえ、バンブルビーは……そしてほとんどのオートボットは、女神に自分たちのようになってほしくはない。
もちろん頼りにはしているが、そこらへんは線引きをしていた。
「ビー……」
「『思いつめないでね』『適材適所』」
「……ふん」
「お前ら呑気に話してる暇はないぞ!」
本来ロックダウンの副官を務める傭兵が一同を注意する。
倒しても倒しても、次のドローンや人造トランスフォーマーが現れる。
副官は、ネプギアに問う。
「で? 一応の指揮官はアンタだ。どうする?」
「……このまま、艦橋を目指します! この艦は艦橋を押さえれば機能を掌握できます!」
『了解!』
ネプギアの指示に傭兵たちは、仕事は仕事と割り切って従う。
さっきのネプギアに食って掛かった傭兵も、素直に戦闘に復帰する。
この艦を制圧できるかに、プラネテューヌの命運が掛かっているのだ。
* * *
グラディウスの艦橋で、トゥーヘッドは二つの頭に一つずつの目を光らせていた。
「第一次防衛システム……突破。第二次防衛システム……突破。しかし、これ以上防衛に兵士を回すワケには……」
この艦に乗っているのは、プラネテューヌ攻撃のための兵。
あんな少数の敵相手に、消費するワケにはいかない。
だがそれは間違いだ。
戦力を出し渋って艦を墜とされては元も子もなく、戦力の逐次投入は下策と相場が決まっているのだが、未熟なりしトゥーヘッドにそれは分からない。
分かるのは、メガトロンから預かった兵と艦を無駄に傷つければ、主人ショックウェーブの評価に関わると言うことだけ。
ならば、打つべき手は決まっていた。
* * *
戦艦の中を進んでいたネプギアたちは、広い空間に出た。
部屋の壁に沿って大きな金属製の箱が並んでいる。
「ここは?」
傭兵の一人が呟くと、ネプギアは箱を調べる。
「人造トランスフォーマーの体を構成する特殊金属、その予備を保管しておく部屋みたいですね。多分、負傷した人造トランスフォーマーの修理に使うんだと思う」
「その通り、さすがは人造トランスフォーマーの母だな」
ハッとネプギアが振り向くと、彼女たちが入ってきたのとは反対の通路から、双頭のトランスフォーマーが現れた。
その姿を見とめて、バンブルビーが忌々しげに電子音を鳴らし、ネプギアも険しい顔でその名を口にする。
「トゥーヘッド……!」
「残念だが、お前たちはここまでだ。……これ以上、メガトロン様より預かったこの艦と兵を傷つけることは出来ない。私が直接相手してやろう」
「ヘッ! テメエ一人で何が出来る! この銃弾で死にな!」
傭兵の一人が早々に会話を打ち切りトゥーヘッドに向け発砲する。
だが銃弾はさしたるダメージを与えることなく、お返しとばかりにトゥーヘッドは腕を粒子波動砲に変形させて発射する。
「散れ!」
副官の声に、バンブルビーとネプギア、傭兵たちは箱の影に隠れて光弾を防ぐ。
箱が壊れ、中から粒子状の金属が漏れ出る。
「囲め、囲め! 相手は一人だ!」
「確かに数の上ではお前たちの方が有利……だが」
トゥーヘッドが手をかざすと、粒子金属が波うち、彼の背中に集合していく。
そしての前身であるドリラーのそれを思わせる触手の形に結集した。
「ここには武器がある。お前たちには意味はなく、私にとって万能の武器がな!」
「何を!」
物陰から銃撃する傭兵たちだが、トゥーヘッドの前に粒子が盾を作り出し、銃弾を弾く。
機械触手を振るい、ネプギアが後ろにいる箱を真っ二つにするトゥーヘッド。
ネプギアは飛び上がってM.P.B.Lで斬りかかる。
「パンツァーブレイド!!」
盾で防ごうとするトゥーヘッドだが、銃剣は盾ごと人造トランスフォーマーの脇腹を抉る。
「ぐッ!」
「特殊合金の強度は、私が一番良く知っています!」
「の、ようだな……だが、これは知っているかな?」
金属粒子がトゥーヘッドの傷口に集まり、瞬く間に傷が再生する。
「粒子を取り込んで、傷を治した?」
「確かにお前は我ら人造トランスフォーマーの開発者。しかし、それを実践に足るまで研究を重ねたのは我が主、ショックウェーブに他ならない!」
勝ち誇るトゥーヘッド。
その背中にさらに粒子が集まり新たな触手が現れる。
主人の研究によって特殊合金にプログラムを入力して操作する力を得たトゥーヘッドに、ネプギアたちに負ける道理なし。
ビームや銃弾を盾で弾き、粒子で右腕に巨大なドリルを形作って突撃する。
「ッ!」
「後ろに回り込め! 遮蔽物を利用しろ! 何人か援護射撃に回れ!!」
ネプギアが障壁でドリルを受け止めている間に、バンブルビーと傭兵たちがトゥーヘッドの後ろに回り込もうとするが、まるで意思を持つかのように動き回る触手に阻まれる。
それでもバンブルビーは触手の間をすり抜け、トゥーヘッドに掴みかかる。
「ッ!」
「『スティンガー』『のパチモンが!!』『永遠に冷たくなってな!!』」
怒りを込めて右腕のブラスターをゼロ距離発射しようとする情報員と、右腕をブレードに変形させる人造トランスフォーマーの視線が交錯する。
だが、その瞬間トゥーヘッドの左腕が『本人の意思に反して』動き、バンブルビーの右腕を掴んで射線をずらした。
光弾は、トゥーヘッドの腹の僅かに横を通り過ぎた。
『!?』
驚く二者だが、トゥーヘッドはすぐに正気を取戻し、ブレードを振るおうとするが『何故か』腕が動かない。
その隙に傭兵がナイフを手に後ろから飛びかかろうとするが、瞬間的にトゥーヘッドの触手が反応し、傭兵を弾き飛ばした。
「があああ!!」
「ッ! 『テメエ!!』」
悲鳴を聞いて怒りを滾らせるバンブルビーだが、トゥーヘッドは相手の腕を掴んで放り投げる。
バンブルビーは空中で一回転して綺麗に着地する。
それを見てホッとしたネプギアは傷付いた傭兵の様子をうかがう。
「大丈夫ですか!? 傭兵さん!」
「いや……腹をやられた。こりゃ動けん……くそ、ミスったぜ、素直に銃で撃っときゃよかった」
「負傷者を物陰に! 衛生兵の方に治療してもらいつつ、みんなでカバーしてください!」
しかし、ネプギアの指示に従いつつも、傭兵たちはさらに合理的に判断を下した。
負傷した傭兵がネプギアに声をかける。
ネプギアに殺す覚悟を説いた、あの傭兵だった。
「おい、女神様。俺らがアイツを引き付けるから、お前とハチ野郎は艦橋を制圧しろ。これ以上馬鹿正直にあんなのとやり合う必要はない。ちょうどここに、囮に丁度いい足手まといが出来た」
「ッ! それってあなたたちを……見殺しに、しろってことですか!?」
「この作戦の勝利条件は、この艦を墜とすか、制圧することだ」
理路整然と、当然とばかりに言い切る傭兵に、ネプギアは声を上げる。
「そんなこと……!」
「ああもう! 姉の方といい、何で女神ってのはこんな甘ちゃんばっかりなんだ! 勝利のためなら、『何かを犠牲にする覚悟』って奴が必要だろうが!」
「……ッ!」
言われて、ネプギアは意を決してM.P.B.Lを握り締め……。
負傷した傭兵を庇う位置に立った。
「な、何を……」
「確かに私には『殺す覚悟』も『犠牲にする覚悟』も有りません。……有るのは、『守る覚悟』だけです!!」
ネプギアの言葉に唖然とする傭兵。
他の傭兵たちも呆気に取られ、トゥーヘッドすらも驚愕している。
唯一、バンブルビーだけがヤレヤレと排気しつつ納得した様子で頷いていた。
「…………さすがは『アイツ』の母。聞きしに勝る甘ちゃんっぷり……」
そんな声を出したのは、トゥーヘッドだ。
「しかし、この場は戦場! その甘さは命取り以外の何者でもない!」
「だとしても! 私はお姉ちゃんやあの子の……スティンガーが恥じるようなことはしない! 助けられる人は助ける、国は守る。両方やらなくちゃいけないのが女神の辛いところです!!」
「ならば、その甘さに容赦なく付け込ませてもらう!」
周囲の粒子がトゥーヘッドの周りに結集し、双頭の人造トランスフォーマーは完全に粒子の中に消えた。
うねり波打つ金属粒子が形作るのは、長大な蛇のような長虫のような姿。
サイズダウンしているが、かつてのドリラーその物だ。
「私もマスターのために負けるワケにはいかない!!」
ドリラーは咆哮を上げ、真っ直ぐネプギア目がけて突っ込んでくる。
バンブルビーや傭兵たちの銃撃を意にも介さず、ドリラーはまるで獲物に跳びかかる蛇のように女神候補生に一直線に向かっていく。
咄嗟にネプギアを抱えてよけようとするバンブルビーだが、距離があって間に合わない。
さらに、ネプギアが避ければ後ろの傭兵がドリラーの餌食になってしまう。
双頭の人造トランスフォーマーは、そこまで見越しているのだろう。
ネプギアは障壁を張ってドリラーを防ごうとした。
「もういい! あんた逃げろ!!」
「いいえ、逃げない! 退くことだけは、できません!!」
悲鳴を上げる傭兵に構わず、ネプギアはドリラーの巨体を障壁で受け止める。
案の定、障壁はアッサリと砕け、ドリラーの何重にも牙の連なった口がネプギアの美しい肉体を飲み込もうとして……。
寸前で、静止した。
「え……?」
思わず声を出すネプギアの前で、ドリラーは細かく振動するが、それ以上動く様子は無い。
「ッ!」
『まったく……無茶しすぎです、ネプギア』
ギチギチと体を鳴らしながら、しかし動くことが出来ないドリラーから、トゥーヘッドの物ではない声が聞こえた。
同時に、ドリラーの体が粒子に戻って崩れていく。
「その声……」
『優しいのはあなたの美点ですが、同時に弱点ですね。失くしてはいけない弱点ですが。……それとバンブルビー、不甲斐ないですよ。あなたはネプギアを守るんでしょう? 兄弟』
「『兄弟?』……ま…さ、か…!?」
ネプギアもバンブルビーも、その声の、その言葉の意味することに勘付き、目を見開く。
そんなことがありえるのか?
ドリラーが完全に崩れ去り、残ったのは床に膝を突いたトゥーヘッドだ。
「やはり……やはり、お前か!」
碌に動かない体でトゥーヘッドは、憎々しげに異変の原因となっている存在の名を呼んだ。
「スティンガー!! ぐ、ぐわあああ!!」
トゥーヘッドが悲鳴を上げたかと思うと、装甲の中から一筋の光が飛び出す。
それは、小さな輝く結晶だった。
結晶の周りに特殊金属の粒子が集まり、人型を作っていく。
蜂を思わせるバトルマスク、鮮やかな赤の体色。
バンブルビーに似せて作られ、トラックスたちの雛型となった姿へと。
ネプギアが、ホイルジャックが、アノネデスが、生み出した人造トランスフォーマー第一号の姿へと。
スティンガーの復活だ。
「肉体の再構成完了……機能に問題なし」
赤い人造トランスフォーマーは、ゆっくりと腕や肩、首を回す。
「スティンガー……お前ぇぇ! コアクリスタルは隔離していたはずだ……!」
「あなたが使ったのと同じ手です。インセクティコンの一匹のプログラムを書き換えて、あなたのプログラム制御を奪わせてもらいました」
「ふ、不覚だ……!」
悔しげに呻くトゥーヘッド。
ネプギアとバンブルビーは信じられないと言った顔で、スティンガーを見つめた。
「スティンガー……本当にスティンガーなの? どうやって……」
「『いったい何たって』『そんなとこに?』『まるでワケが分からんぞ!?』」
当然の如くスティンガーに疑問をぶつける二人だが、スティンガーは首を横に振る。
「その話は長くなるので、後にしましょう。ただ、一つハッキリしているのは、私は偽物でもコピーでもなく、紛れもないスティンガーだと言うことです」
「スティンガー……」
我知らず、涙ぐむネプギア。
理屈は分からなくとも、スティンガーが帰ってきてくれたことが何より嬉しい。
バトルマスクを外し、バンブルビーによく似た顔で微笑むスティンガーだが、表情を引き締めた。
「さあ、この戦艦を無力化しましょう」
スティンガーは集中し、改めて戦艦のシステムに接続を試みる。
動けないトゥーヘッドは、傭兵たちに四方から銃を突きつけられていた。
だが、その装甲の隙間から二匹のインセクティコンが這い出したことに気が付く者はいなかった。
二匹の内、一匹は戦艦の外へ、もう一匹は戦艦の奥深くへと飛んで行った。
集中していたスティンガーだったが、突然の衝撃にシステムの掌握を中断せざるを得なかった。
「この揺れは……?」
「自爆装置を作動させた。お前たちに奪われるくらいなら破壊する。合理的な手だ」
静かに放たれたトゥーヘッドの言葉に、傭兵たちが慌てだす。
「マジか!? お前も死ぬぞ!」
「覚悟の上だ」
「ぐッ……急いで脱出しないと!」
「はい! 皆さん、撤退します! 降下船まで戻ってください!」
ネプギアの号令に傭兵たちは即座に撤退を開始する。
「スティンガーも、早く!」
「待って、ネプギア。今、この艦を人のいない所に落ちるように移動させます。……それと、待機状態の人造トランスフォーマーたちのいる区画を切り離します。落とす場所は崖の手前側にしておけばいいでしょう。これで、彼らも大丈夫」
システムを介して人造トランスフォーマーたちを脱出させ、スティンガーは動けないまま捨て置かれようとしていたトゥーヘッドに近づく。
「トゥーヘッド、あなたもいっしょに行きましょう」
「……馬鹿を言え。こうなった以上、艦と運命を共にするのが筋だろう」
にべもなく断るトゥーヘッド。
だがスティンガーは、そんな双頭の人造トランスフォーマーの腕を自分の肩に回す。
バンブルビーは、弟分の行動に怪訝そうな表情になった。
「ス…ティ…ン…ガー…?」
「すいません、バンブルビー。でもトゥーヘッドは、スティンガーのトモダチなんです」
「トモダチ、だと?」
スティンガーの言葉に誰より驚いたのは、当のトゥーヘッドだった。
双頭の人造トランスフォーマーに、スティンガーはニッと笑む。
「違いましたか? スティンガーはそのつもりでしだが」
「…………」
トゥーヘッドは、もう何も言わずにされるに任せた。
バンブルビーはフッと排気すると、スティンガーが担いでいるとは反対側の腕を肩に担ぐ。
「『しょうがねえなあ』『さあ行くぞ』『ゴーアヘッド!』」
「ありがとう、兄弟」
そんな二人を見て、ネプギアはあらためて実感を得る。
やっと、スティンガーが帰ってきてくれたのだ。
「スティンガー、後で聞かせてね。あなたに何があったのか、友達のこととか、ね」
* * *
あまりのことに唸り声をあげるメガトロンだが、その隙をラチェットとロックダウンが見逃すはずもない。
渓谷を眼前にしてメガトロンとラチェット、ロックダウンの戦いは続いていた。
「温いわぁあああ!! 貴様ら如きに、この首取れると思うなよ!!」
「ハッ! 自分を特別視するなよ! お前なんかタダのトランスフォーマーだ!!」
「悔しいが同感だね!」
ラチェットのEMPブラスターを受けながらも、ロックダウンのフックを剛剣ハーデスソードで受け止めるメガトロン。
力比べで敵うはずもないため、すぐさま相手の腹を蹴って離脱したロックダウンだが、メガトロンはフュージョンカノンでそれを撃とうとする。
瞬間、待ってましたとばかりにラチェットが回転カッターで後ろから首に目がけて斬りかかる。
宿敵同士であるにも関わらず、いや宿敵なればこそ相手のやろうとすることが分かると言ったところか、ラチェットとロックダウンの連携は中々のものだ。
「おのれ、雑魚どもが……ムッ!」
二対一でもなおも互角に戦うメガトロンだが、グラディウスが渓谷を眼前にして方向転換し、戦場から遠ざかろうとしていることを察知した。
「何をしている! 何故離れる!! トゥーヘッド、応答せよ!! トゥーヘッド!!」
獅子の如き唸り声を出すメガトロンの顔の横に、いつの間にかインセクティコンが止まっていた。
インセクティコンから送られてくるデータから、メガトロンはトゥーヘッドの敗北を知る。
「ッ! 何というざまだ!! ショックウェーブめ、部下の教育はちゃんとせんか!!」
怒り心頭のメガトロンは天に向かって叫ぶ。
彼方で、空中戦艦グラディウスが火の玉となって消えた。
「なんちゅう脆い船じゃ」
「何だそれは?」
「いや、言わなきゃいけない気がしてね」
燃えながら遠くへ落ちていく空中戦艦を見て、何故かラチェットが声を漏らしロックダウンがツッコミを入れる。
「ええい、かくなる上は! レイ、レェェェイ!! イエローハートを呼ぶのだ!!」
メガトロンの咆哮を受け、雲の中から新たな影が現れる。
大きな翼と角ある女神、レイが女神態で空から降りてくる。
天を覆う暗雲と雷鳴は、彼女の仕業であるらしい。
だとすれば、人間離れならぬ女神離れした力だ。
「いいのかしら? もうちょっと温存しとく予定では?」
「今更、出し惜しみ出来る状況ではないわ!!」
軍の指揮を取っていたネプテューヌはそれを見上げた。
「レイさん!」
「いつか言ったでしょう? 今度もまた、敵として出会うってね」
「私も言ったはずよ。あなたたちがプラネテューヌに攻めてくるのなら、全力で抵抗すると!」
「…………おいで、ピーシェ」
太刀を構えるネプテューヌを一瞥したレイが手招きすると、雲の中に潜んでいた古代魚のような空中戦艦キングフォシルから、イエローハートが飛び出してくる。
「はーい、ママー!!」
「ピーシェ、教えた通りにしなさい。ただし、体に変な感じがあったり、痛かったりしたらすぐに言いなさい。分かったわね?」
「はーい! それじゃあ……いっくよー!!」
元気よく答えたピーシェの全身に装着した機械が光だし、黒いオーラのような物が吹き上がる。
「みんなー! パワーアーップ!」
すると、ディセプティコンや人造トランスフォーマーたちも黒いオーラに包まれ、戦いで負った傷が治っていく。
「フハハハ! いいぞ……いいぞぉ! 力が漲るわ!!」
「おお……! これがシェアエナジー! 氷のように冷たく、溶岩のように煮え滾り、闇のように底が知れん!!」
「傷が治っていくぜ! これなら、いくらでも戦えるってもんよ!!」
新たな力に歓喜の声を上げるディセプティコンたち。
「これは……シェアエナジーの共鳴!?」
女神とトランスフォーマーの間に起こり、互いを強化するシェアとスパークの共鳴。
プラネテューヌでの最初の戦いではオプティマスを強化し、ズーネ地区でも戦いでは女神候補生とオートボット逆転勝利をもたらし、オプティマスとネプテューヌの合体の鍵ともなったそれ。
今まで女神とオートボットたちを救ってきた現象が、ディセプティコンたちに恩恵を与えているのだ。
「このために……ピーシェを!」
ネプテューヌは俯いて拳を血が出るまで握り締めた。
あの機械で、ピーシェのシェアエナジーを無理やり共鳴状態にしているに違いない。
グチャグチャに混ざり合って煮えたぎる複雑な感情に、ネプテューヌが翻弄されている間にも、メガトロンは青いオーラに包まれて部下たちに号令をかける。
「立ち塞がる者は打ち破れ! 刃向う者は叩き潰せ! オートボットと女神を破壊しろ!! 我らの勝利は目前ぞ!!」
『おおおおおおッッ!!』
雄叫びを上げ、エディン軍は一斉攻撃を再開した。
戦いは、終わらない。
そんなワケで、何十話かぶりにスティンガー復活。
やたらアッサリ墜ちる戦艦も、TFらしいんじゃないでしょうか。
まあ、こんな状況とはいえ、女神たちまで『覚悟』を免罪符に戦いに囚われなくていいよねっていうことです。
あくまで私心ですが、他人に覚悟を説くなら、他人が綺麗でいるために自分が汚れ役に徹するくらいの覚悟はもってほしいと思う今日この頃。
繰り返しますが、あくまで私心です。
では。