超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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エディン戦争、決戦開幕。


第120話 プラネテューヌ マイダカイ渓谷の戦い

 プラネテューヌ南方、マイダカイ村。

 閑静な田舎の村の中を、ビークルモードのブロウルを先頭に無数の人造トランスフォーマーや無人兵器、クローン兵が進軍していた。

 

 鳴り響く兵器群の駆動音と軍靴の足音。

 

「わーい! 遠足楽しいねー! すっすめー、すっすめー!」

 

 そんな物々しい空気の中、空中戦艦に先行して地上部隊の上を飛ぶイエローハート……女神化したピーシェは、無邪気に歓声を上げていた。

 その額、首、腰、両手首に両足首に鎧のような機械が装着されている。

 

 マイダカイ村のさらに先にはまるで巨神が大地を斬りつけたかのような、深い渓谷が横たわっていた。

 切り立った深い谷の底には川が流れ、橋は一本しかかかっていない。

 

 その橋の向こう……プラネテューヌ首都側に防壁が築かれ、村側にも簡易な防壁が置かれていた。

 崖の縁に沿って、戦車が並びプラネテューヌ軍の兵士たちが展開している。

 その砲口、銃口、いずれも対岸に向けられ、さらにその後ろには対空砲が置かれ、要塞の様相を呈していた。

 

 防壁の上に陣取るのは、プラネテューヌの守護女神ネプテューヌだ。

 女神化した状態で橋の向こうの森を睨んでいる彼女の横に、同じく女神化したネプギアが並ぶ。

 

「お姉ちゃん! みんな準備できたよ!」

「ありがとう、ネプギア。防御陣の展開は間に合ったわね」

「うん。……あの、お姉ちゃん、オプティマスさんは……」

「大丈夫よ、ネプギア。オプっちはきっと来てくれるわ」

 

 敵の進軍が予想より早く、援軍を得るためにプラネテューヌを離れたオプティマスは、結局決戦に間に合わなかった。

 それでもネプテューヌの目に迷いはない。

 

「今は、私たちが出来ることに全力を尽くしましょう」

「うん……あのね、お姉ちゃん」

 

 姉の言葉に頷いたネプギアだったが、フッと表情を曇らせる。

 

「無理しないでね。オプティマスさんだけじゃなくて、私やアイエフさんたちも、いるんだからね」

「大丈夫よ。……大丈夫」

 

 安心させようと微笑んだネプテューヌだが、森から聞こえてきた地響きに顔を引き締める。

 木々の合間から副砲やミサイルポッドを取り付けた戦車……ブロウルが顔を見せ、その後に無数の兵士と兵器が現れる。

 

 戦車は橋のマイカダイ村側の防壁を踏み潰そうとしたが、ネプギアが飛び上がりN.P.B.Lをその前の地面に撃つ。

 

「エディンの皆さん、止まってください! それ以上進むなら……撃ちます!」

 

 いったんは止まる戦車だが、それで退く気がないのは明らかだ。

 

「ああー! 悪い女神だー!!」

 

 しかし、イエローハートが飛んでくる。

 

「ピーシェちゃん……」

「悪い女神は嫌いだけど……遊ぶだけならいいってパパが言ってた!」

 

 厳しい顔だったイエローハートは、一転無邪気な笑みになり両腕に爪付きの籠手を召喚、装着する。

 

「だからー……遊ぼー!!」

「待ちなさい!」

 

 斬りかかるイエローハートとネプギアの間にネプテューヌが割って入り、爪を受け止める。

 

「ピーシェ……もう、やめなさい! 本当のあなた戻って!」

「む~……や!」

 

 不機嫌そう顔を歪めたイエローハートは、そのまま力で無理やりネプテューヌを弾き飛ばす。

 しかし、ネプテューヌはすぐに体勢を立て直した。

 

「ピーシェ、必ず元に戻してみせるわ……ッ!」

 

 瞬間、空に暗雲が立ち込め雷が鳴る。

 雲の合間から灰銀のエイリアンジェットが飛来するのを見たイエローハートは喜びの、ネプテューヌは戦慄の声を出した。

 

「パパ!」

「メガトロン……」

 

 それに応えるようにエイリアンジェットはギゴガゴと変形して橋の中央に降り立つや、檄を飛ばす。

 

「何をしている、攻撃を開始せよ!!」

『おおおおお!!』

 

 声を上げ、エディン軍が進撃を始めた。

 メガトロンは、イエローハートを見上げて厳しい声を出した。

 

「イエローハートよ! 貴様は下がっておれ!」

「ええー……」

「下がるのだ」

「は~い、パパ……」

 

 強い口調で言われ、イエローハートは渋々ながら後方へと飛んでいく。

 

「ピーシェ!」

「おっと、娘との交流は控えてもらおうか。貴様のようなチャランポランは教育に悪いでな」

「笑えない冗談ね……!」

 

 イエローハートを追おうとしたネプテューヌの前にメガトロンが立ちふさがった。

 ネプテューヌは太刀を構え、メガトロンに踊りかかった。

 ここでメガトロンがイエローハートを下がらせたのは、もちろん万が一にも洗脳を解かれないためだ。

 

「オプティマスは何処だ? あのお人好しがこの場にいないはずも無かろう」

「メガトロン! もう止めてちょうだい! こんなことが何になるって言うの!」

「答える気は無しか……ならば、一人で消えるがいい!」

 

 これ以上の会話は不要とフュージョンカノンを発射しようとするが、そこに緑の影が立ちふさがる。軍医ラチェットだ。

 

「おっと! 君の相手は私だ!」

 

 ラチェットは不敵に笑いながら回転カッターを振るう。

 医者なのに最前線、それも大将狙い。

 しかしそれがラチェットである。

 

「ラチェットか。医者風情が俺に敵うとでも?」

「私一人なら無理だろうな。だが、生憎と一人じゃないんでね」

「何? ……グッ!」

 

 訝しむメガトロンの背に何者かの狙撃が命中する。

 少し離れた茂みから、ロックダウンが顔面から生やした狙撃銃を収納しながら出てきた。

 

「ロックダウン。貴様、オートボットの狗に成り下がったか」

「いいや、雇い主はプラネテューヌさ」

 

 メガトロン相手にニヒルに笑いながら、ロックダウンは左腕をブラスターに変形させる。

 

「貴様らが組むとはな」

「甚だ不本意だがね」

「同感だが、これも仕事だ」

 

 会話もソコソコに三体の金属生命体による戦いが始まった。

 

「ネプテューヌ! 今は軍の指揮を執るんだ! ピーシェ君を助ける機会は必ずくる!」

「ッ! ……ことここに至っては致し方ないわ! 応戦しなさい!」

 

 メガトロンの剣を躱しながら回転カッターを振るうラチェットの声に、ネプテューヌは軍に勅命を下す。

 

「ただし、決して死なないで!! 生き残ることが、最大の信仰であり国民の義務であると考えなさい!!」

『おおおおお!!』

 

 女神の声に、兵たちは雄叫びでもって答えとする。

 

 エディン戦争、最後の戦い『マイカダイ渓谷の戦い』は、こうして始まった。

 

「来たわね……爆破装置、点火!!」

 

 時を同じくして橋を渡ろうとするエディン軍を見て、防壁のすぐ向こうにいるアイエフは手に持ったスイッチを押す。

 次の瞬間、橋の下に仕掛けられた爆薬が爆発。

 計算された箇所で起こる爆発に、橋は中ほどからへし折れ、川へと落下していく。

 

「これで時間が稼げるわ」

「ええ、ホイルジャックの発明が誤作動しなくて良かったわ」

 

 ホイルジャック謹製の爆薬が上手く作動したことに、アイエフの隣でひたすらエナジーボウを発射しているアーシーは安堵する。

 この渓谷を越えられる橋はここしかなく、プラネテューヌ首都へ進むには大きく迂回しなければならない。

 だがメガトロンは嗤う。

 

「フハハハ! 橋を落とすことなど、最初からお見通しよ! コンストラクティコン部隊、橋を懸けろ!」

『おおおお!』

 

 すると、森の中からミックスマスターらコンストラクティコンがやってくる。

 ビークルモードのロングハウルとオーバーロードが運んできた何かのパーツを皆して荷台から降ろす。

 コンストラクティコンたちがそのパーツを組み合わせていくと、それは巨大な長方形の箱のようになった。

 

「まさか……!」

 

 何をしようとしているのか気が付いたアイエフが部下に指示するより早く、コンストラクティコンたちは長方形の箱……組み立て式の橋を対岸にかける。

 橋は組み込まれた杭打機のような機構とその物の重量により、地面にしっかりと食い込み容易には外せなくなる。

 

「だーはっはっは! これぞコンストラクティコン特製、安い! 速い! 安全! の『インスタントブリッジ』でえ! 三分で完成だ!!」

「んなアホな……」

 

 あまりのことに一瞬愕然とするアーシー。

 簡単に造ったわりには兵器や兵士の重さに十分に耐えうるらしいインスタントブリッジをつたって、エディン軍が首都側に渡ろうとしてくる。

 中世の戦場では城壁に梯子を掛けて城を攻めたというが、これはその現代版か。

 

「ッ! 攻撃開始!! 一人も渡らせるんじゃないわよ! 戦車は橋を狙って!」

 

 橋に殺到するエディン軍の人造トランスフォーマーに向け、次々と銃弾が浴びせられる。

 

「崖の向こうの敵を掃討しろ! 出し惜しみは無しだ!!」

「了解!!」

 

 ラチェットとロックダウンを相手に奮闘するメガトロンの指示に、すぐさまブロウルが変形して砲撃を始め、さらにブラックアウトとグラインダー率いる攻撃ヘリ部隊が崖を飛び越えていく。

 

「フハハハ! 我がプラズマキャノンの前に、沈め!」

「砲台と戦車を優先して狙え!! 最悪、他は放っておいて構わん!!」

 

 変形したヘリ型兄弟はプラズマキャノンで敵陣を薙ぎ払おうとするが、ブラックアウトの背に何か紐のような物が絡みついたかと思うと、電撃が流れる。

 

「ガッ……!」

「どうだ? 俺の電撃鞭の味は!」

 

 それはオートボットの一員、青い体のジョルトの振るう電撃鞭だ。

 

「貴様! ……ええと、ラチェットの助手の……あれだ、ほら……」

「ジョルトだ!!」

 

 名前を憶えていなかったブラックアウトに激怒しつつ、ジョルトはさらなる電撃を流す。

 

「兄者!」

「おっと! テメエの相手は俺だぜ!! 腸をぶちまけな!!」

 

 義兄を援護しようとするグラインダーに斬りかかるのは、両腕にチェーンソーを装備したレッカーズのリーダー、ロードバスターだ。

 一方、インスタントブリッジを渡って雪崩れ込んでくる人造トランスフォーマーに向け、全身に装備したミサイルランチャー『インフィニティ』を発射しているのはレッカーズの一員トップスピンだ。

 敵兵を吹き飛ばすついでに橋も破壊するが、エディン側は次々と橋を懸けていく。

 そうして、遂に一本の橋から敵兵が乗り込んでくる。

 

「攻めてくるってんなら、このレッドフット容赦せん!!」

 

 だが右腕に18連装ガトリング『スクラップメーカー』を着けたレッドフットが敵に鉛玉をぶちこむ。

 

「やれやれ、私は本来こういう実戦は苦手なんだが……そうも言ってられんか。このネガベイターの威力を見よ!」

 

 ホイルジャックは戦車のような自身の発明品、ネガベイターに乗り込んで砲を撃ち続けている。

 このネガベイターは本来、対象を消滅させてしまう恐ろしい兵器だが出力を調整して、そこまでの威力は出さないようにしている。

 さらにパワードスーツ部隊が、人造トランスフォーマーに対抗している。

 

「どけどけどけ!! ボーンクラッシャーのお通りだ!!」

 

 地響きを立てて橋目がけて疾走するのは、ボーンクラッシャーだ。

 その突貫を止められる者、プラネテューヌにはいない。

 

 と思いきや、その眼前に数機のパワードスーツが躍り出る。

 先頭に立つのは桜色の機体で、手にレイピアを持っている。

 その後ろには、薙刀を持った菫色の機体、右腕をマシンガンに換装した黒い機体、拳を強化した赤い機体、肩にミサイルポッドを装備した緑色の機体、特別な装備は無いが何故かフヨフヨと宙に浮かんでいる黄色の機体がズラリと並ぶ。

 

 桜色の機体に乗った隊長のブロッサ・愛染を初めてして全員が劇団員とパイロットを兼業していると言う異色の集団、人呼んで『プラネテューヌ華撃団』である。

 

 エディン軍のかけた橋を逆に渡ってこちら側に来たのだ。

 

『我ら、プラネテューヌ華撃団! ここに見参!!』

「雑魚が!! すっこんでろ!!」

「私たちは一歩も引きません! それがプラネテューヌ華撃団なのです!!」

 

 芝居がかった口上に構わず突撃するボーンクラッシャーに黒い機体が銃撃を浴びせ、続いて緑の機体のミサイルが襲い掛かる。

 腕を交差させて防御したが突撃の勢いを殺され失速したボーンクラッシャーを、黄色い機体の不思議な力で強化された赤い機体が正面から受け止める。

 

「ぐおおお! こなクソ!!」

 

 それでも押し切ろうとするボーンクラッシャーに、左右から桜色の機体と菫色の機体がそれぞれの得物で斬りかかる。

 だが、どこからか空気を切り裂いて刃だらけの殺人独楽のようなブレードホイール・アームズが飛来し菫色の機体はそれを防がねばならず、さらにその後方からバリケードがレッキングクローで桜井色の機体を攻撃する。

 

「おお、バリケード! すまん!」

「何を手こずってる、ボーンクラッシャー」

 

 飛び交う砲弾とミサイル。轟く砲声と怒号。

 有機も、金属も、命有る者は等しく傷つく。

 大地が揺れ、天が焦げる。

 それでも、戦いは続く。

 

  *  *  *

 

 渓谷で手間取るエディン軍の後方からゆっくりと空中戦艦グラディウスが迫っていた。

 単純な火力もさることながら、大量の兵器と兵士を輸送するキャリアーでありさらには戦場にいる人造トランスフォーマーの意思を統一する司令船も兼ねるこの艦は、渓谷と戦場を悠々と飛び越えて兵士たちを投下する予定であった。

 

 プラネテューヌ軍の戦闘機も出撃しているが、スタースクリーム率いる航空部隊に落とされ、さらにグラディウス自体の対空砲火の前に近づくことが出来ない。

 

 しかし、対空砲火の中をサイバトロン式の降下船が潜り抜けようとしていた。

 その降下船を護衛しているのはネプギアだ。

 

「よし! このまま乗り込みます! 降下船は敵艦下部のハッチに突入してください! 少しくらいの被弾には構わないで!」

『おい待て! この降下船は元々俺らのだぞ!! 壊すんじゃない!!』

 

 突入を指示するネプギアだが、当の降下船に乗っているロックダウンの手下が文句を付ける。

 

『『残念でしたぁ!』『拒否権は無い』『レッツ&ゴー!!』』

 

 しかしやはり中に乗っているバンブルビーが無理やり操縦桿を奪って降下船をグラディウスのハッチに突っ込ませる。

 

『ちくしょおおお!! オートボットの性悪小僧があああ!! この船の修理代も報酬に上乗せだからな!!』

「あ、あはは……よ~し、私も!」

 

 聞こえてくる通信に苦笑するネプギアだが、自身も下部ハッチに侵入するのだった。

 

 ……それをある程度離れた所からスタースクリームが捉えていた。

 どうやら、プラネテューヌの連中はワザと防空網に穴を開けておいたことに気が付いてくれたようだ。

 この艦が渓谷の向こうに到達すれば、プラネテューヌに勝ち目は無くなる。そうなる前に、何としても墜としてもらわねばならない。

 

 自分はまだ動けないのだから。

 

 リーンボックスが予想外に早く解放されたことを受けてメガトロンは進軍を早め、そのせいで予想より早く戦いが始まってしまった。

 

 おかげでまだ行動を起こす準備が出来ていない。

 本来の予定なら、開戦する前にカタを着けるはずだったのだ。

 

「まだかホィーリー……早くしないと取り返しが付かなくなるぞ……それとなく手を抜くのも楽じゃねえんだ」

 

  *  *  *

 

 艦内に敵が侵入したのを察知したトゥーヘッドは、すぐさまその映像を映しだす。

 

「来たか……」

 

 そこには、ロックダウンの手下たちに交じってバンブルビーとネプギアが映っていた。

 

「オートボットは排除する。それが私にマスターが課したプログラムだ」

 

 自分の中で眠っているスティンガーに……あるいは自分自身に言い聞かせるように、全ての防御機構を作動させるのだった……。

 

 




戦法が古い? 戦術が悪い?
作者の戦術やら戦略の知恵と知識は、中世ヨーロッパレベルにも満たないんだ!!

プラネテューヌ華撃団のネタをしたくてパワードスーツ出しました!
サクラ大戦ネタとか、分かる人いるのか?

……と言うのはおいといて、先週はトランスフォーマー関連で色々ありすぎました。

TFADV
スタスク来たーーー!!
あのヒョロナガが、随分とたくましくなって……。
しかし、今やD軍もスチールジョーやグラウストライクが頭目を張れる程度の烏合の衆。
支配者になりたいなら今の力でも十分だろうに、打倒メガトロンに拘るあたり、やっぱりスタースクリームにとってもメガトロンは大きな存在なんですね……。

Forged to Fight
G1系列と実写系列がクロスオーバーする新作スマホゲー。
また動く実写アイアンハイドやブラックアウトが見れるだけで嬉しいです。

最後の騎士王
……ああ、この予告篇を見た時、衝撃が凄かったです。
オプティマス、オプティマス……。
顔面破壊大帝とか言われるけども、種族と故郷を再興する機会をフイにして、何人もの仲間を失って。
兄弟弟子にも、師匠にも、守ってきた人間たちにも裏切られて。
それでも人間を守るために戦ってくれた彼があんな……。
洗脳なのか? 偽物なのか? ……まさか悪堕ちじゃない……ない、ですよね?

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