超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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今週のTFADVは!

何だあの神父、聖人か…………聖人だ。
グリムロックはだんだん成長してますね。
そして次回、ついにアイツが来たーーー!!
嫌ってる人もいるようだけど、自分は大好きです!!



第119話 決戦前に語るべきいくつかのこと side『D』

① 嵐の子は航空参謀を見上げる

 

 決戦近づくエディン。

 旧R-18アイランドの上空では、二機のジェット機が超音速で飛び回っていた。

 一機は、鋭角的な機体が特徴的なリーンボックス軍で正式採用されているステルス戦闘機。

 もう一機は、まるで剣を思わせるシルエットを持つ、『黒い鳥』とも呼ばれる半世紀ほど前の高高度偵察機である。

 

 二機は競い合うように雲を切り裂き、青空を舞う。

 音速を超える速さもさることながら、宙返りや急停止、急加速、さらにはバレルロールまで、あらゆる飛行技術も他の追随を許さぬ華麗さだ。

 

 その姿はあたかも舞踏の如し。

 

 ブラックアウトとグラインダー、そしてサイクロナスがそれを地上から見上げていた。

 この幼体は、こうしてスタースクリームの飛行訓練を眺めるのが日課だった。

 

「ふん! スタースクリームの奴め! 戦いも近いのに遊びよって!」

 

 サイクロナスは航空参謀と老兵のダンスに見入っているが、ブラックアウトは例によってスタースクリームに文句を付け、グラインダーは黙って義兄の言葉を聞いていた。

 と、そこへ一台の戦車が進んできた。

 ゴテゴテと武装していて緑を基調とした迷彩柄の、第三世代主力戦車だ。

 チラリと、グラインダーがそちらを見た。

 

「ブロウルか」

「あいつら、またやってるのか。しかし、あのスタースクリームに付いてくたあ、ジェットファイアの爺さんもやるもんじゃねえか」

 

 素直に感心した声を漏らすブロウル。

 実際、彼らの知る中に真にスタースクリームと並べるだけの飛行能力を持った者はいないのだ。

 サイバトロンに残っている直属の部下であり同型のスカイワープやサンダークラッカーでさえ、純粋な飛び方では一歩も二歩も劣る。

 部下を率いる時は、スタースクリームの方が彼らに合わせているに過ぎない。

 故にそれを可能とするジェットファイアの、伝説の戦士と言う評は、なるほどと納得させられる。

 

「ふん! ……それよりもブロウル。何だそのマークは!」

 

 不機嫌そうに排気したブラックアウトは、ブロウルの砲塔を見てさらに顔をしかめる。

 ブロウルの砲塔の脇には、可愛らしいクマの顔が描かれていた。

 

「ああ、これか? パーソナルマークだよ、ちょっとしたオシャレさ」

「弛んどるぞ! そのマークに、戦術的優位性(タクティカルアドバンテージ)は一切無い!」

「そりゃ無いけどな。願掛けみたいなもんさ。俺の幸運のクマちゃんってワケだ」

 

 厳しい声のブラックアウトに、ブロウルは呑気に答える。

 そんな大人たちに構わず、サイクロナスは、スタースクリームとジェットファイアの描く軌跡を見上げ続けていた。

 

 

~~~~~

 

 

② 下っ端は気合いを入れる

 

「ハンカチとティッシュ、それにブラシと歯ブラシ……あ、手鏡は……私のを使えばいいか」

 

 雛たちのための生活スペースでは、レイがピーシェの荷物を纏めていた。

 ついに、イエローハートが実戦に出る時が来たのだ。

 

「これで良し。それではリンダさん、私が留守の間、ガルヴァちゃんたちを頼みますね」

「はい、任せてください!!」

 

 レイの後ろに控えたリンダは姿勢を正して威勢よく返事をする。

 彼女と仲間のドレッズ、そして科学参謀ショックウェーブは本拠地の護りを任されたのだ。

 

「でも、アタイも出撃したかったです……そうすりゃ、憎き女神どもに一発かましてやるってのに!」

「リンダさん」

 

 血気に逸るリンダに、レイは静かに言い含める。

 

「帰る場所を守ることも、立派な仕事です。リンダさんたちがここを守ってくれるから、メガトロン様は気兼ねなく戦えるんですよ」

「う、ういっす! このリンダ、全力でメガトロン様や姐さんの留守を守ります!!」

 

 目を輝かせて拳を握るリンダに、レイは優しく微笑む。

 そんなレイの服を、引っ張る者がいた。

 雛の一体であるガルヴァだ。

 

「ははうえー、ぼくもえんそく、いきたい」

「……ガルヴァちゃん、ごめんなさいね」

 

 たどたどしいながらも大分喋れるようになったガルヴァは、メガトロンのことを本人に教え込まれて父上と呼ぶようになり、自然とレイのことを母上と呼ぶようになっていた。

 レイは、ガルヴァに視線を合わせてその頭を撫でる。

 

「ガルヴァちゃんは、お兄ちゃんだから皆を守ってあげてね」

「はい、がんばるです」

「フフフ、ガルヴァちゃんは良い子ね。……もっとワガママを言ってもいいのよ?」

「ちちうえから、『おとこはしんぼうがかんじん』とおそわりました」

 

 因子を継いだ我が子の言葉に、レイは微笑む。

 そして、スカージに齧りつかれてる丸い魚のようなひよこ虫と呼ばれる小モンスター……かつてマルヴァと呼ばれていた女の成れの果てにも声を懸けた。

 

「あなたもお願いしますね、マルヴァさん」

「あいよー」

 

 呑気に答えるマルヴァに、その脇にいたワレチューが呆れた声を出す。

 彼も留守番だ。

 

「お前、すっかりモンスターの生活をエンジョイしてるっちゅね……」

「ん~? 何か今の方が人間だったころより気楽だしー? 化粧とスキンケアしなくていいし、ジジイどものセクハラ三昧に悩まなくていいしー」

「そ、そうっちゅか……」

 

 アッケラカンとしているマルヴァに、ワレチューは何とも言えない顔になる。

 それから、気合を入れているリンダに視線を向けた。

 

「下っ端の奴も張り切ってるっちゅけど、正直不安っちゅねえ……」

 

 誰にともなく漏れた呟きを、聞く者はいなかった。

 

 

~~~~~

 

 

③ 人造トランスフォーマーたちは口論する

 

 洋上を、飛行戦艦が行く。

 かつてハイドラによって建造された飛行戦艦ハイバード級の二番艦を、ディセプティコンが接収した、その名を『グラディウス』である。

 しかしこの艦はディセプティコンの技術によって、メガトロンに墜とされた一番艦とは別物と言っていい程に改修されている。

 

 翼は大きく力強い物になり、主砲は実弾からビーム砲に換装され、フォースバリアも追加されていた。

 何と言っても目立つのは艦首像だ。蛇頭を模していたそれは、ディセプティコンのエンブレムを模した物に変更され、凄まじい存在感を放っている。

 

 今、この艦はプラネテューヌを攻撃するエディン軍と合流すべく洋上を移動していた。

 

 その艦橋で全身にコードを繋ぎ艦と一体化する形で操船しているのは、人造トランスフォーマーのトゥーヘッドだ。

 

 しかし彼は今、ある問題と直面していた。

 

「トゥーヘッド。どうしても考え直してはくれませんか?」

「スティンガー、それは出来ない。どうしてもだ」

 

 色々あって体を共有しているスティンガーは、母と慕うネプギアや兄弟と呼ぶバンブルビーのいるプラネテューヌへの攻撃に反対していた。

 当然と言えば当然だが、ディセプティコンの一員であるトゥーヘッドが、その言葉を聞き入れるワケにはいかないのも、また当然。

 

「聞いてください。このまま戦い続けて、何になるって言うんです? スティンガーはずっと考えていましたが、答えはでませんでした!」

「我々が考えて答えを出せるほど、簡単な問題じゃあないだろう」

「ではもっと簡単な問題から言いましょう。このまま戦えば、ネプギアたちも、あなたのマスターも確実に傷つきます! 私はそれは嫌です!」

 

 焦りと怒りを感じさせるスティンガーの声に、トゥーヘッドも内心で同意する。

 

「しかし、これはマスターからの命令だ。命令に逆らうことは、プログラムに反する」

「トゥーヘッド、我ら人造トランスフォーマーは、『考える』力を持って生み出されました。そのことの論理的、あるいは実利的な是非は、今は置いておくとして、我々には意思が、心があるんです! 我々にとって書き込まれたプログラムとは本質ではなく規範に過ぎません! ましてあなたは、元々はドローンじゃないですか!」

 

 何としてでもトゥーヘッドを止めようとするスティンガー。

 だが、トゥーヘッドは受け入れない。

 

「だとしても、出来ない……スティンガー、少し眠れ」

「トゥーヘッド! 話しを聞いてください、トゥーヘッ……」

 

 他のシステムからコアクリスタルが切り離され、スティンガーが沈黙する。

 

「すまんな、しかし私がマスターを裏切ることは出来ない。そんなことをしたら、あのヒトは本当に独りぼっちになってしまう」

 

 返事がないことに、少し寂しさを感じながらも、トゥーヘッドは操船に集中するのだった。

 

 

~~~~~

 

 

④ 科学参謀、感情に揺らぐ

 

 ダークマウントの中枢部。

 

 破壊大帝メガトロンはそこに佇んでいた。

 その目の前には、奇妙な機械が置かれていた。

 

 台座状の機械本体から伸びる、六本の昆虫の節足のようなパーツに囲まれて、女神の瞳に浮かぶ紋章と同じ形をした結晶……シェアクリスタルが光り輝いていた。

 機械はシェアクリスタルに向かってエネルギーを送り続けている。

 

 メガトロンは満足げに頷いた後、視線を機械から逸らさずに、傍らに控えたショックウェーブに声を懸ける。

 

「問題なく機能しているようだな。この、シェアアブソーバーは」

「ハッ。ラステイションの真光炉から得たデータを基に改良を重ね、旧タリで得たシェアクリスタルを組み込むことで完成した、この装置。これにより、他国のシェアエナジーを強制的に奪うことが可能となりました」

 

 冷静に答えるショックウェーブ。

 これこそが、建国間もないエディンが大量のシェアエナジーを集められたカラクリである。

 シェアアブソーバーはまさに、この国の心臓と言えた。

 

「ところで、我が君。此度のプラネテューヌへの攻撃に、私も加わりたく存じます。どうか……」

「馬鹿を言うな。お前には、この地を守ってもらわねばならん」

「…………御意」

 

 ショックウェーブの進言を、メガトロンは一刀に伏す。

 

 本拠地ダークマウントを科学参謀ショックウェーブに、要地であるリーンボックスのエディン領を情報参謀サウンドウェーブに任せた。

 その上で、プラネテューヌ攻撃のために総力を尽くす。

 

 準備は万端、まさに必勝を期しての万全の布陣。

 

――オプティマス、今度こそ終わりだ。……覆しようもなくな!

 

 一方でショックウェーブは、内心で残念に思っていた。

 プラネテューヌ攻撃に参加出来なければ、プルルートと決着を付ける機会が無くなるからだ。

 

「…………メガトロン様、お一つお耳に入れたいことが」

「何だ?」

「ミス・レイのことです。彼女の指示で、武装親衛隊が反逆者を国外へ逃亡させていました。彼女を処罰すべきです」

 

 だからと言うワケではないが、レイの不義を主君に洩らす。

 サウンドウェーブは決戦前にメガトロンの心を乱したくないと言って内密にしておこうとしたが、ショックウェーブからすれば、許されざる背信行為を断罪するのは当然のことだった。

 これでレイを見限るだろうと、そう考えていたのだが、メガトロンの答えはショックウェーブの予想を裏切るものだった。

 

「ああ、そのことか。別に構わん」

「………………は?」

 

 らしくもなく、ショックウェーブは愕然とした。

 

「知っておいでだったのですか?」

「あれの傍には、常にフレンジーがいるのだぞ。怪しい動きをすればすぐに分かる。一皮剥けたと思っていたのだが、そこらへんを考慮していないあたり、あれもまだまだ甘い」

「何故、彼女を咎めないのです?」

「一時、反逆者を逃がしたとて、エディンがこの世界を征すれば結局は同じこと。早いか遅いかの違いに過ぎぬ。その程度、見過ごしてやるくらいの貢献はしているからな」

 

 当然のように、軽い調子で言うメガトロンだが、ショックウェーブの胸の内では激しい感情が渦巻いていた。

 メガトロンの言うことが、論理的には一応の筋が通っているにも関わらず、受け入れがたい。

 そしてその理由は説明不能だった。何だか分からないが気に食わない。

 

 人はそれを嫉妬と言う。

 

――何てことだ! この私がこのような感情に振り回されるなど……それもプルルートのせいだ! 奴のせいで、私の論理的思考はズタズタに引き裂かれてしまった!!

 

 ショックウェーブは、グツグツと感情を煮えたぎらせるのだった。

 

 

~~~~~

 

 

④ 航空参謀は決意をその身に刻む

 

 ダークマウントに戻ったスタースクリームは、ジェットファイアと別れ、一人通路を歩いていた。

 途中、何人かの兵士と出くわした。

 

「スタースクリーム参謀! 訓練、お疲れさまです!」

「おう」

 

 敬礼する彼らはクローン兵ではない、かつてハイドラに所属していた航空部隊だ。

 ハイドラの基地が壊滅したおり、スタースクリームに苦も無く撃墜された彼らである。

 彼らは、エディンに組み込まれた後はスタースクリームの部下になったが、そこで航空参謀の文字通り人間離れした飛行技術を目にするうち、すっかり心酔してしまったのである。

 

 スタースクリームの方は、意外と面倒見よく、彼らに自らの技術を伝授していた。

 ものに出来たかどうかは別だが。

 

「もうじき、決戦だ。気ぃ抜くなよ」

「はい!」

 

 適当に相手をしてからスタースクリームは思考を回しながら歩き出す。

 

――ラステイション、ルウィーは上手くいった。リーンボックスはこれからだが、最悪上手くいかなくてもいい。後はホィーリーの奴が上手くやることを期待するしかないな……。

 

 黙考しながら歩くスタースクリームは、やがてある部屋の前に立った。

 扉を開けて中に入ると、そこでは円柱状の容器がある。

 容器は透明な素材でできていて、中が透けて見える。

 そこでは、黄と黒の子供服を着て、明るい金髪の幼い少女が無数のチューブに繋がれた状態で浮かんでいた。

 頭、首、腰、両手首と両足首に、それぞれ金属製の輪を着け、目は閉じている。

 

 名目上とは言えこの国の女神であるイエローハートことピーシェだった。

 

 全身を拘束されたその姿は、エディンという国に囚われた彼女の現状そのものだ。

 

 スタースクリームは強く拳を握ると、胸のキャノピーを開けて一枚の紙を取り出す。

 その画用紙には、スタースクリームと思しいトランスフォーマーと、幼い女の子……ピーシェが手を繋いでいる絵がクレヨンで描かれていた。

 最初にピーシェと出会った時、彼女がスタースクリームに贈った物だ。

 

 小さな画用紙を掲げたスタースクリームは、絵の中の大きな笑顔の少女と、容器の中で目を瞑る少女を重ね合わせる。

 

「…………」

 

 そのまま何も言わず、キャノピーを開けて胸の奥深くに画用紙をしまったスタースクリームは、踵を返して振り返ることなく去っていった。

 

  *  *  *

 

「若いの、そろそろ出陣だ」

「ああ……分かってる」

 

 翌日、ついにプラネテューヌへの攻撃を敢行する時が来た。

 自室にいたスタースクリームは、ジェットファイアに呼ばれて立ち上がる。

 

 その身体には、全身に幾何学的な刺青(タトゥー)が入っていた。

 

「ほう、昔そんなタトゥーを入れてる奴がいたな。名は忘れたが……で? どうしたってんだそれは。そんなじゃ、擬態(ディスガイズ)の意味がないだろう」

「別に、ただの願掛けさ。この後に及んでコソコソと隠れる意味も無いしな」

 

 顎を撫でるジェットファイアの問いに、スタースクリームは素っ気なく答える。

 このタトゥーは不退転の決意の表れだ。

 策は張った、行動もした、知恵は巡らした、力はこれから尽くす。

 

――オールスパークよ、古代のプライムたちよ、俺はアンタらに祈ったことなんぞないが、もしアンタらに不可思議な力があるってんなら、あのチッポケな娘のために、少しだけ後押ししてくれよ。

 

 声に出さずに呟くスタースクリームをジェットファイアは何処か嬉しそうに見ていた。

 

「カッカッカ! 良い顔をするようになってきたな、若いの! 男の顔だ!」

「……行くぞ」

 

 ジェットファイアを伴って、スタースクリームは歩き出した。

 

 

 

 エディンの港から、兵士や兵器を満載した空母が出発し、ダークマウントからはディセプティコンが以前から乗り回していた古代の深海魚のような空中戦艦『キングフォシル』が発進した。

 この後、リーンボックスを飛び立ったグラディウスや、プラネテューヌ南方に展開している自軍と合流し、しかる後にプラネテューヌ首都に向け進軍するのだ。

 

 女神、人間、オートボット、ディセプティコン。

 各々の思いを飲み込んで、風雲は急を告げる。

 

 ついに決戦が始まる。

 

 




次回からいよいよエディン戦争決戦編。

今回のネタ解説

グラディウス
名前の意味は剣闘士が使う剣だけど、ここではPCエンジンの名作STG、グラディウスより。
二隻戦艦がいる以上、区別をつけるために命名。

キングフォシル
こちらもPCエンジンの名作STG、ダライアスシリーズの看板ボス、キングフォシルより。
意味は化石の王と言ったところ。

シェアアブソーバー
原作アニメでも出てきたアレ。
ようするにシェアエナジーを無理やり吸い取る機械。

レイの暗躍を知ってたメガトロン
そりゃ、気づくだろうと。
ショックウェーブが嫉妬してるのは、メガトロンがレイに対して凄く甘いからというのもあったり。

エイリアン・タトゥー
スタースクリームをどこでリベンジ以降の仕様にするか、いっそしないで行くか考えてましたけど、ここでタトゥーを入れることに。


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