超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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予想以上に長くなったんで分割したら、予想以上に短くなった件。


第116話 リーンボックス ヘッドマスター

 突如乱入したヘッドマスターの攻撃により、雨に降られる収容所は混沌と化していた。

 人造トランスフォーマーと無人兵器からなるエディン軍の猛攻にも、ヘッドマスターはビクともしない。

 それどころか、損傷すれば人造トランスフォーマーたちを取り込み、修復してしまう。

 

「人造トランスフォーマー ハ、退避セヨ」

 

 サウンドウェーブがこのままでは埒が明かないと人造トランスフォーマーを下がらせるが、そうすると単調な動きしか出来ない無人兵器だけでは戦力が足りない。

 信用ならないとクローン兵を街から退去させた、サウンドウェーブ痛恨のミスである。

 

『ヒャーッハッハッハ!! 無駄無駄無駄ァ!!』

 

 右腕のガトリング砲を乱射し、破壊の限りを尽くすヘッドマスター。

 それを躱しながら振動ブラスターを撃ちこむサウンドウェーブだが、ヘッドマスターの左腕が突如伸びて、その身体を弾き飛ばす。

 

「グ、オ……!」

『ヒヒヒ! 不様なもんだな! そのまま死ね!』

 

 地面に仰向きに倒れるサウンドウェーブに、ヘッドマスターはガトリング砲を向ける。

 衝撃でバイザーが割れて露出したサウンドウェーブのオプティックに、回転を始めるガトリング砲の銃口が映っていた。

 

「レイニーラトナピュラ!」

『ぐお!?』

 

 だが、ヘッドマスターの背に鋭い連続突きが命中する。

 上半身だけをグルリと回転させると、雨の中でなおも美しく輝く緑の女神がいた。

 

「ゴルドノ・モージャス! リーンボックスの女神、グリーンハートが命じますわ! すぐに戦闘をやめなさい!!」

『ほざけ! こうなった以上、女神もへったくれもあるか!!』

 

 ヘッドマスターは右腕のガトリング砲をベールに向けて撃とうとする。

 その瞬間、ヘッドマスターの後頭部にアンカーが引っ掛かり、それを勢い良く巻き取ってジャズがヘッドマスターの背部に取りついた。

 

『な、な!?』

「お気になさらず! 壊れるまで弾をごちそうするだけだ!」

 

 背中のミサイルランチャーにゼロ距離でクレッセントキャノンを撃ち込んで破壊するジャズ。

 振り払おうともがくヘッドマスターだが、ジャズは離れようとしない。

 

『ええい! このムシケラが!!』

 

 頭部に元々備え付けられた機銃とミサイル砲を撃とうとするヘッドマスターだが、その時にはすでにジャズは自ら飛び降りていた。

 

 突然戦いに割って入ってきた女神とオートボットに驚いているのか、無言でヘッドマスターを見上げるサウンドウェーブ。

 その横にアリスが並ぶ。

 

「サウンドウェーブ、一時休戦を提案するわ。敵の敵は味方ってワケじゃないけど、まずは、アイツを片付けましょう」

「……何故戦ウ? コノ混乱ニ乗ジ、撤退スルノガ定石ノハズ」

「ベール姉さんはリーンボックスの民を守ることを最優先するの。それこそ、こんな状況でもね。で、ここにいるのは私を含めてそんなお人よしの女神様に付き合っちゃう、お馬鹿さんばっかりなのよ。」

 

 逃げ遂せる絶好の機会を不意にしてまでヘッドマスターと戦うことを疑問に思うサウンドウェーブに、アリスは当然とばかりに笑って答えた。

 少し考える素振りを見せたサウンドウェーブだが、いつのまにか自身の分身であるラヴィッジがヘッドマスターを銃撃していることに気付いた。

 

「仕方ガナイ。休戦ニ応ジヨウ」

「感謝するわ」

 

 言うや、アリスは弓の弦を引いてエネルギーの矢を発生させる。

 ヘッドマスターはミサイル砲を発射しようとしていたが、それより早くアリスの放った光の矢が命中し、その動きを止める。

 

「クロックラビット! 強制的に遅刻してもらうわ!」

 

 さらに、サイドウェイズがスナイパーライフルでヘッドマスターの頭部を狙い撃つ。

 

「そんな見え見えの弱点、狙ってくださいって言ってるようなもんだぜ!」

 

 怯んだヘッドマスターに向け、ベールが渾身の技を繰り出す。

 

「これで止めですわ! キネストラダンス!!」

『舐めるなぁあああ!!』

 

 槍の穂先が届く寸前、ゴルドノが叫ぶとヘッドマスターの頭部の周りにバリアが現れ攻撃を防いだ。

 しかし、サウンドウェーブが両手を突き出して超音波を発生させ、それをヘッドマスターの頭部に向けて集束させる。

 すると、バリアが掻き消された。

 

「ソノ タイプ ノ、バリア発生装置ハ、特定ノ周波数ノ音波デ自壊サセルコトガ、出来ル」

『な、何だとぉおお!?』

 

 絶叫するゴルドノ。その隙を、オートボットも女神も見逃さなかった。

 

「サイドウェイズ! 私を投げて!」

「合点!」

 

 サイドウェイズがアリスの体を持ち上げ、ヘッドマスターの頭部に向けて勢いよく投擲する。

 

「接近戦だってこなせるのよ! ヴォーパルソード!」

 

 手に持った弓に光の矢を発生させると、弓その物を剣の鍔に、矢を柄に見立ててそれを握る。

 すると弓矢が変形して、大きな剣になった。

 

「はあぁぁッ!!」

 

 そして気合い一閃。

 横に振り抜かれた刃がヘッドマスターを胴体から斬り飛ばす。

 制御を失った胴体は、形を保てず砂のように崩れていく。

 

『ま、まだだぁあああ!!』

 

 それでも諦めず、ヘッドマスターはジェット噴射して逃げようとする。

 

 しかしそうは問屋が卸さない。

 光と共にアリスの脇をベールがすり抜けた。

 アリスと同じように、ジャズに投げてもらって飛んで来たのだ。

 

「いいえ、これでおしまいです! スパイラルブレイク!!」

『ごわああああ!!』

 

 エネルギーを纏った槍の凄まじい連撃が、四方八方からヘッドマスターを容赦なく破壊していく。

 ボロボロに破壊されたヘッドマスターは、遂に飛行することも出来なくなり地面に墜落した。

 

『ぐ、ぐうう……畜生!』

「観念しな。罪の帳消しの話しが帳消しだな」

 

 地面に落ちた機械の生首に近づいたジャズは、無理やりその上部装甲を開く。

 だが、その中にゴルドノの姿はなく、代わりに通信装置が入っていた。

 

「これは!?」

『クソが! このヘッドマスターにどれだけの金をつぎ込んだと思ってるんだ!! 金は大切なんだぞ!! ……だが俺の勝ちだ!!』

 

 通信装置の向こうにいるのだろうゴルドノは下卑た笑い声を漏らした。

 周りに他の皆が集まってくる。

 

『暴力での勝利は貴様らにくれてやる。だが、最終的な勝利は俺の物だ!!』

「どういうことだ!!」

 

 その言葉に応えるように、エディン軍の基地の方向から黒雲に向かって一筋の光が伸びた。

 

「あれはいったい?」

「信号ダ。洗脳電波発生装置ガ、エディン領ノ人間ニ新タナ信号ヲ発信シテイル」

 

 ジャズの疑問にサウンドウェーブが答え、さらにゴルドノの勝ち誇った声が通信機から聞こえる。

 

『ハハハ! 貴様らが戦っている間に、俺は洗脳電波の発信装置に細工して新たな命令を出させたのだ! 『汝、隣人と殺しあえ』ってなあ!! その上で命令の書き換えが出来ないように装置は破壊させてもらった!!』

「な、なんだと……!?」

 

 エディンの洗脳、特にリーンボックス内の占領地への洗脳は極めて強く、そのような理不尽な命令でも逆らうことが出来ない。

 待ち受ける最悪の事態に、ベールの顔が真っ青になる。

 

「あなたは……何てことを!!」

『ハハハハ!! 俺が金を失ってるのに、俺が不幸のどん底にいるのに、他の奴らがヌクヌクと生きているなんて許せねえ!! どいつもこいつも、殺し合って破滅しろ! 正気に戻ってから、家族や恋人の死体の前で絶望するがいい!! ハハハ、ハハハハ、ギャーッハッハ……』

 

 機械が壊れたのかゴルドノの笑い声が途絶える。

 

「クソが!! こんなの、ディセプティコンでもやらない手だぞ!!」

「なんてことなの……」

 

 サイドウェイズがヘッドマスターの残骸を蹴りつけ、アリスは濡れた地面にへたり込む。

 ベールとジャズも必死に思考を回すが、この状況を打破する手段は思いつかない。

 

 街の方から怒号や破壊音が聞こえる。

 すでにこの街の人間が暴徒化し始めている。

 

 空に広がる雨雲のように、暗澹とした空気が場を満たす。

 だが、そんな中でなおも冷静に打開策を練っている男がいた。

 

「手ハ、有ル」

 

 抑揚なく放たれた言葉に、一斉に視線が情報参謀に注がれる。

 

「強固ナ意思ヤ、深イ信心ヲ持ッタ者ガ、洗脳ヲ無効化シタヨウニ、強力ナ正ノ、感情デ洗脳ヲ解除可能ダ」

「ッ! それは本当ですの!」

「コノ状況デ嘘ハ吐カナイ。私ノ使命ハ、エディン ノ防衛ダ」

 

 ベールの問いにサウンドウェーブはシレッと答える。

 しかし、ジャズは腕を組んで難しい顔をする。

 

「しかしだな。すでにエディンに洗脳されてる国民は相当な数だぞ。どうやって、その全員に強烈な愛とか勇気とか希望とかを感じさせる?」

 

 サウンドウェーブは露出したオプティックを自身あり気に笑いの形にした。

 

「ソノタメニハ、彼女ノ……5pb.ノ協力ガ必要ダ」




やっと出たぜ、トランスフォーマーアドベンチャー!
オメガ・ワン……何もかも懐かしい……。
バズストライクは(玩具展開的な意味で)今後仲間になりそう。

今回の小ネタ。

ヴォーパルソード
元々はルイス・キャロル作のジャバウォッキーと言う詩(?)に登場する剣。
作者つながりに不思議の国のアリス関連の創作に出てくることが多い。

いや、弓と矢を重ねて剣に見立てるってやってみたかったんですわ。

ヘッドマスター戦はもっと苦戦する予定だったけど、この面子で苦戦はしないよなあってことであっさりと終わりました。

次回でリーンボックス編はおしまい。

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