超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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アドベンチャーは11月までお休み。

オプティマス、ラチェット、ウインドブレードはいったんサイバトロン星へ。
隠居してるメガトロンと共闘する展開とかないですかね?


第110話 ルウィー ミラージュの裏切り part2

 アズナ・ルブ所有の古城。

 

 その地下に向けて、ブラックアウト、グラインダー、ミラージュは歩いていた。

 

「まだか? その、洗脳電波発生装置の場所は?」

「この先だそうだ。まあ、落ち着け」

 

 ミラージュが問うと、グラインダーがはぐらかす。

 エディンに寝返る証としてブランを差し出したミラージュは、ヘリ兄弟に洗脳装置の下へと案内してもらっていた。

 なお、通路の広さとか考慮してはいけない。

 

「城の上部のアンテナはあくまで発信装置に過ぎず、電波を発生させる本体は石と土に囲まれた地下に……上手い手だ」

「はん! ……それよりも貴様! あの双子が不出来な弟子だと?」

 

 感心していたミラージュは、ブラックアウトの言葉に軽く首を傾げる。

 

「ああ。それが何か?」

「見る目のない奴め! もしあいつらがディセプティコンだったなら、俺が一人前の兵士に鍛えてやったものを!」

「今からでも、弟子にするか?」

 

 飄々としたミラージュの声にブラックアウトは顔をしかめる。

 今にも武器を抜かんばかりの表情だが、グラインダーが声を出した。

 

「二人とも、着いたぞ」

 

 辿り着いたのは、この城の地下牢として使われていた場所だ。

 円形の外壁に沿って牢がある。

 

「ここは……? 発信装置が見当たらないが?」

「いいから、ちょっとそこに立ってくれ」

 

 グラインダーに促され、ミラージュは牢獄の中央に立つ。

 

 すると、周囲にビームの檻が現れ、ミラージュを閉じ込めた。

 

「ッ! これは!」

「馬鹿め! 誰が貴様なぞ信用するか!!」

「仮に貴様が本当に人間に愛想を尽かしたとして、それがオートボットを裏切る理由にはなるまい? そんな簡単な連中なら、もっと早くに戦争は終わっていた」

 

 せせら笑うブラックアウトとグラインダー。

 

「この場で殺してやりたい所だが、貴様には情報を吐いてもらう。オートボット、女神、教会、その全てのな!」

「俺が吐くとでも?」

「吐きたくなるさ。それも『情報を言うから助けてくれ』ではなく、『情報を言うから死なせてくれ』と懇願するようになるのだ!」

 

 檻に顔を寄せたブラックアウトはニヤリと顔を歪めると、義弟と共にミラージュに背を向ける。

 

「その前に、あの女神からだ。貴様に裏切られたと知ったら、どんな顔をするかな?」

 

 ブラックアウトたちが去ったあと、ミラージュは慌てた様子もなくその場に胡坐をかくと目を閉じるのだった。

 

  *  *  *

 

 意識を取り戻したブランは、ゆっくりと目を開けた。

 眼をこすり辺りを見回すと、自分が鳥籠のような檻に入れられているのが分かった。

 その外は、中々に高価そうな調度品の置かれた部屋だ。

 さらに部屋の窓の外には、ルウィーでは珍しくない雪に覆われた森が見えた。

 

「ここは……?」

「フッフッフ。お目覚めかな、麗しい女神様」

 

 籠の外の椅子に一人の男が座っていた。

 30歳くらいの美形だがいけ好かない感じの男。

 

「アズナ・ルブ?」

「そう、私だ。ルウィーに革命を起こす男、アズナ・ルブだ」

「……ああそう。それで? 何でわたしをここに連れて来たのかしら?」

「ふふふ! あなたの最後の記憶を辿れば答えは明らかだ」

「ああ……ミラージュったら、人に相談もなしにまったく……」

 

 再度溜め息を吐くブランに、アズナ・ルブは首を傾げる。

 

 ――何か、落ち着いてないか? もっと慌てると思ったのに。

 

「あなたはあのオートボットに裏切られたのですよ。……彼はディセプティコンにあなたを売ったのです」

「で、あなたはディセプティコンに通じていたというワケね。……お父上が聞いたら泣くでしょうね」

 

 父と言う単語が出た瞬間、アズナ・ルブの顔が歪むが、すぐに澄ました顔に取り繕う。

 

「父は軍人としては優秀でした。英雄的と言ってもいい。しかし知っていますか? 英雄とは大量殺戮者の別名なのですよ」

「少なくとも、わたしは自国を守るために戦った人間を殺戮者とは言わないわ。それよりも、自国を裏切って敵と通じるような奴は薄汚い裏切り者と言うのよ。知っているかしら?」

 

 自国の吹雪のように冷たい視線と共に吐き捨てたブランに、アズナ・ルブは今度こそ紳士の仮面を脱ぎ捨てた。

 

「ふん! 父は英雄だったかもしれないが、所詮は一軍人! 国に使われるだけの負け犬だった!! 飛行機に乗るのが上手くて、役にも立たない勲章をジャラジャラ鳴らすだけのな! 私は違う! 有能で選ばれた存在である私は、愚民どもを導くのだ!!」

「……まあいいわ。どうでも」

 

 熱くなっているアズナ・ルブと対照的に冷め切った態度のブラン。

 アズナ・ルブが激昂しかけた時、突然警報が鳴り響いた。

 

「何だ!?」

『敵襲です! 東にルウィー軍、先頭は女神候補生とオートボットです!』

「ッ! なぜこの場所が……」

 

 部下からの報告に動揺するアズナ・ルブの脇に、ブラックアウトとグラインダーのホログラムが現れた。

 

『そんなことも分からんのか? 大方、ミラージュが知らせたのだろう』

「な!?」

『失態だな。……まあいい。一網打尽にしてくれる!! 行くぞ、グラインダー!!』

『了解』

「ま、待て! 敵が来たのなら、私を脱出させてくれ!」

 

 義弟を伴って出撃しようとするブラックアウトに、アズナ・ルブが懇願する。

 だがブラックアウトは通信越しでも分かるほど冷たい目をしていた。

 

『フン! 馬鹿を言え! 貴様は手勢と共にそこで発信装置を守るのだ!! エディンの一員としてな!!』

『無論、そこで敵前逃亡するようなら、貴様に用は無い。……そして我々は、用の無い者を生かしておくほど優しくは無い。……この意味が分かるな?』

「ッ……!」

 

 逃げれば殺す。

 

 そう言われていることに気付き、無残に青ざめるアズナ・ルブに、ブラックアウトは嘲笑混じりに声をかける。

 

『安心しろ、用心棒を残しておいてやる。……スコルポノック、こいつらのお守りを頼むぞ』

 

 通信越しに、スコルポノックがシャーッと好戦的に鳴くのが聞こえたのを最後に、通信が切れる。

 ワナワナと手を震わせるアズナ・ルブに、ブランが呑気に声を懸けた。

 

「それで? 誰が誰を裏切ったって?」

 

  *  *  *

 

 地下牢のビーム檻の中にあって、ミラージュは只々瞑目していた。

 

 と、突然ビームの檻が消失する。

 

 当然と言う顔で、ミラージュは虚空を見上げた。

 

「やっとか。遅いぞ」

 

 それだけ言うと、両腕のブレードを回転させ、ミラージュは歩き出した。

 

  *  *  *

 

 ブラックアウトとグラインダーは古城のある丘の麓の廃村に降り立った。

 いつの間にか、雪が強くなり吹雪になっている。

 

「兄者。トラックスたちからの通信があった。ルウィー国軍と交戦中。足止めは出来ているが……」

「オートボットと女神に突破された、と言うワケか」

 

 言うや、ブラックアウトは腕の機銃を村の廃屋の影に向けて撃つ。

 古く手入れもされていない廃屋は容易く穴だらけになる。

 その影から緑のオートボット、スキッズと、ルウィーの女神候補生の片割れホワイトシスターこと女神化したラムがひょっこりと顔を見せた。

 

「あちゃー、見つかったか!」

「呑気にしてる場合じゃないよ! 隠れなきゃ!」

 

 すぐさま顔を引っ込める二人にブラックアウトは首をゴキリと鳴らす。

 

「フン! 小僧どもが! 臆したか!!」

「誰が臆したかっつうの!!」

 

 突然、ブラックアウトが後ろから砲撃された。

 さしたるダメージも無く振り向けば、双子の残る片割れ、マッドフラップとロムが建物の影からこちらを狙っている。

 

「建物の影に隠れて銃撃……定石だが、この場合はさしたる効果はないぞ!!」

「兄者、早く終わらせよう。奴らにはいつか言ったはずだ。戦場で出会ったら容赦しないと」

「むう……それもそうだな。悪く思うなよ餓鬼ども! これも戦争の常だ!!」

 

 グラインダーの冷静な言葉に頷き、プラズマキャノンを展開するブラックアウト。

 ヘリ型兄弟は、プラズマキャノンをフルパワーで発射して、廃村その物を薙ぎ払おうとする。

 が、屋根の上に現れたスキッズが何かを投げてきた。

 

「ほらよ、オッサンたち! おあがりな!」

「ぐ!? ……これは?」

「水風船?」

 

 水風船はヘリ型ディセプティコンたちのトゲトゲとした体に当たって割れる。

 二人は何だこんな物と、構わずプラズマキャノン

 だが、何処からか幼い声と共に、強力な冷気が二人を包んだ。

 

「エターナルフォースブリザード!!」

「相手は死ぬ……とはいかんぞ! 寒いこの地での戦いに備え、我々は不凍液を体内で循環させているのだ!!」

「いや待て兄者! これは……!」

 

 グラインダーの言葉にハッと自分たちの体を見れば、凍りつき始めている。

 水が冷気で凍結したのだ。

 

「この程度! プラズマの熱で溶かしてくれる!!」

 

 だがブラックアウトは無理やりプラズマキャノンを発射。

 プラズマ波が廃屋を薙ぎ倒す。

 

「遅いぜ、おっさん! こっちこっち!」

「当たらないよーだ!」

 

 だがプラズマの嵐が廃村を破壊していく中、双子たちはあちらの路地、こちらの影と素早く移動し顔を出しながら戦いを続ける。

 

  *  *  *

 

 再び古城の一室。

 

 鳥籠は特別製らしく、ブランの力を持ってしても壊せない。

 なので、チョコンと座りこむ。

 一方でアズナ・ルブはブツブツと呟きながら歩き回っていた。

 

「何故だ……何故こうなった……」

「分からないのかしら? 見通しが甘かったようね」

 

 ブランがフッと微笑むと、アズナ・ルブはギラリと彼女を睨みつけた。

 

「ふん! 私とミラージュの裏切りを見抜けなかった女神がよくも言う!」

「あなたはともかく、ミラージュは裏切ってないでしょう。……そもそもね」

 

 そこまで言って、ブランの目つきが鋭くなり語気が強まる。

 

「ミラージュって奴はな。ええカッコしいの、いけ好かないスカし野郎だがな。人間に馬鹿にされたからとか、んなつまんねえ理由で仲間を裏切るようなことは天地がひっくり返っても有り得ねえんだよ」

 

 その瞬間、部屋の扉が四つに切り裂かれ赤い金属の巨人が部屋に突入してくるや、そのままブランの捕らえられている檻とアズナ・ルブの間に立った。

 

「無事か? ブラン」

「遅えぞ! ミラージュ!!」

 

 ミラージュはブランと短く声をかけあった後、檻の扉を開ける。

 

「馬鹿な、その檻は電子ロックで……?」

 

 コンピューター制御のはずの檻があっさりと開いたことに驚くアズナ・ルブだったが、その時、天井を突き破ってスコルポノックが奇襲を仕掛けてきた。

 ミラージュは機械サソリの体当たりを避け、さらに尻尾の一突きをブレードでいなして、そのまま壁を破って城の外へと飛び出していった。

 ブラン、スコルポノックもそれを追う。

 

 残されたアズナ・ルブは、ヨロヨロと歩き出した。

 

 やがて、城の中心部。

 ある部屋に入ったアズナ・ルブは、その部屋に飾られた肖像画の前に立つ。

 立派な額縁に嵌められた、その肖像画には金髪と青い目で赤い軍服を着た男性が描かれている。

 胸に立派な勲章をいくつも下げた男性の顔立ちは、アズナ・ルブによく似ていた。

 

「僕を馬鹿にするのかい、パパン? 僕はアンタの功績が小さく見えるくらいのデッカイことをやってみせる。もう、ママンにもみんなにも、僕をパパンと比較して馬鹿にはさせない」

 

 誰にともなく呟き、アズナ・ルブは肖像画をずらし、その裏に隠されていた機械を操作する。

 

 パスワード入力。

 指紋認証。

 網膜認証。

 

「ルブ家に栄光あれ」

 

 そして声紋認証。

 

 石壁に偽装された隠し扉が開き、その奥の部屋にはパラボラをいくつも重ね合わせたような洗脳電波発信装置が安置されていた。

 ここに来たのは、ここが一番安全だと判断したからだ。

 

 内側から扉を閉め、ホッと息を吐いた時。

 

「な~るほどな。こんなトコに隠してたのか」

 

 拍子抜けするほど、呑気な声が聞こえた。

 

  *  *  *

 

 廃村では、未だ戦いが続いていた。

 プラズマキャノンの起こす破壊により、廃村のほとんどの建物が薙ぎ倒されている。

 

「ええい! ちょこまかと!」

「落ち着け兄者。もう、隠れられる所も少ない」

 

 それでも、ブラックアウトとグラインダーは双子たちを倒せないでいた。

 しかしそれは双子たちも同じだ。

 

 膠着状態に陥っているように見えるが、体力や防御力の面から見ればディセプティコンたちの方が圧倒的に有利だ。

 

「諦めろ……と言って諦める連中でもないか。グラインダー、一気に決めるぞ! お前は飛び上がっていろ!」

「了解」

 

 義兄の意図をすぐに察し、グラインダーは変形して上空に逃れる。

 ブラックアウトはプラズマキャノンを最大出力で全方位に発射するべくエネルギーを溜める。

 だが、プラズマ波が放たれるより早く、背後に赤い影が現れた。

 

「ッ! 貴様!」

 

 ミラージュの攻撃をローターブレードで受け止めるブラックアウト。

 そのまま弾き飛ばされたミラージュが綺麗に着地すると、隣にブランが飛んでくる。

 遅れてスコルポノックもブラックアウトの傍に地下から現れる。

 ブラックアウトは新たに現れた敵に鋭い視線を向ける。

 

「フン! どうやってか知らんが抜け出してきたか。だが、それは下策だぞ!」

「先に洗脳電波発生装置を破壊すれば良かったものを」

 

 グラインダーも降りてきてロボットモードに変形するや、武装を向ける。

 だが、ミラージュはフッと笑んだ。

 

「ああ、それなら問題ない」

 

 次の瞬間、丘の上の古城が轟音と共に爆発した。

 炎を上げる古城からアズナ・ルブの部下たちが飛び出してくる。

 唖然として、ブラックアウトとグラインダーが見上げると、古城の屋上の何もない場所にオレンジ色の影が空気の揺らぎと共に姿を現した。

 

 ステルスクロークを解除して現れたのは、誰あろうマッドフラップだ。

 右腕に気絶したアズナ・ルブを抱えている。

 

「おーい! ミラージュ、こっちは片付いたぜー!」

 

 その姿を確認したブラックアウトは愕然とする。

 

「ば、馬鹿な……あの小僧がステルスクロークだと? い、いや、それ以前にあの小僧は俺たちと戦っていたはず!」

「ああ、それなら……」

 

 物陰から『マッドフラップ』が出て来た。

 いよいよもっと、ブラックアウトは混乱する。

 

「な、な、な?」

「へへへ、さあて種明かしのお時間です、ってな!」

 

 マッドフラップの姿が揺らぎ、双子の片割れであるスキッズへと変わる。

 

「ミラージュみたく精巧なホログラムを作ることは出来ないけど、自分の体にはっつけるくらいは出来るのさ! 俺とマッドフラップは双子で元々の姿や反応も似てるからな! ロムとラムが魔法で吹雪を起こして視界を悪くしてくれたおかげで、気付かれなかったぜ!」

「ふっふっふ! そういうことよ! ピース!」

「ピース……!」

 

 いつの間にか吹雪が止み、上空ではロムとラムが揃ってVサインを作っていた。

 そうして、スキッズが一人二役を演じつつロムとラムの援護を受けて敵を引きつけている間に、マッドフラップが城に潜入して洗脳電波発信装置を破壊する……少しやり過ぎたが……と言うのがこの作戦の全貌だ。

 ミラージュとブランの拘束を解いたのもマッドフラップである。

 スキッズはカッコを付けて忍者のような印を結ぶ。

 

「双子の入れ替わりトリックは定番だろ? これぞ、ミラージュ流忍法、雪隠れの術! なんつって!」

「そんな流派を開いた憶えはないぞ。まったく不出来な弟子どもだ。…………あれだけ鍛えてやって、ステルスクロークとホログラム、一方ずつしか習得出来なかったんだからな」

 

 そう言いつつも、ミラージュの顔は満足げだった。

 そうしている間にブランの傍に、ロムとラムが降りてきた。

 

「お姉ちゃーん!」

「大丈夫だった……?」

「ロム、ラム、また心配かけちまったな。……いい加減、わたしも反省しないとな」

 

 可愛い妹たちを優しく抱きしめてからブランは表情を引き締める。

 

「さてと、まだやるつもりか?」

「ふ……ふはは! はーっはっはっはっは!!」

 

 ブランに睨まれたブラックアウトは急に大声で笑いだした。

 ミラージュたちは元より、グラインダーまでもが呆気に取られた。

 

「あ、兄者?」

「はっはっは……まったく、男子三日合わざるば、とは言うが子供とは少しの間に見違えるものだ。……いいだろう、ここは勝ちを譲ってやる」

 

 表情を厳しくして、ブラックアウトは敵を見回す。

 

「ミラージュ、前言を撤回するぞ! 貴様の弟子の鍛え方は見事だ! ……行くぞ、グラインダー!」

「了解」

 

 スコルポノックを回収したブラックアウトとグラインダーは一瞬にして大型ヘリに変形して飛び立つ。

 深追いは危険と、ブランたちはそれを見送るのだった。

 

  *  *  *

 

 エディン軍が撤退し、平穏を取り戻した廃村。

 しかし、これで終わりとはいかない。

 廃村の雪の積もった地面に正座させたアズナ・ルブの眼前で、ブランが仁王立ちして見下ろす。

 

「それで、アズナ・ルブ? 申し開きはあるかしら?」

「ふ、ふふふ、私を捕らえた所で事態は沈静化しないぞ。すでにあちこちでデモと言う名の暴徒化が起こっているはずだ」

「………確かに。そのようね」

 

 先程、教祖ミナからの報告があり、暴徒化したデモ隊が暴れているらしい。

 

「ならば仕方ないわ。操られているならいざ知らず、自らの意思で国を荒らすと言うのなら、受けて立つだけ。逮捕して、それでお終いよ」

「…………一つ教えてくれないか? 貴様たちは何故人間のために戦う? 私に同調して貴様らを裏切るような奴らだぞ?」

「それをあなたが言う? ……だがいいや、特別に答えてやる」

 

 ブランは声にドスを利かせ、アズナ・ルブに不敵な笑みを向けた。

 

「国に自分と違う意見の奴がいるなんてなあ、当たり前のことなんだよ。んなことはとっくの昔に受け入れてんだ。いちいちそれくらいで国民を見捨ててられっか」

「グッ……ミラージュ! 貴様は戦っても文句ばかりと言っていたではないか!!」

 

 矛先を向けられたミラージュは、こちらは表情を変えないまま当然とばかりに答える。

 

「何だ、そんなことは当たり前だろう。隣で戦っていれば、誰だって文句の一つくらいでる。むしろ俺は、感心しているんだ」

「感心……だと?」

「ああ、何をされても声を上げぬ輩なんぞ、それこそ守る気にならん。だが、あいつらは皆、『ブランのために』俺に文句を付けてくるのだからな。その姿勢に感心こそすれ否定はしない」

 

 ミラージュの言葉を聞いてブランは少し頬を染めたが、アズナ・ルブは顔を青くしていた。

 前提から間違っていたのだ。

 彼らには、迫害されていると言う意識すらな無く、あるのは女神として国民の有り用を受け入れる姿勢と、戦士として形はどうあれ戦おうとする者に対する敬意だけ。

 

「お、おのれ……だが子供たちはどうかな? 幼くピュアな女神候補生は人間がイヤになったんじゃないかな?」

「確かにムカつくけどね! でも、わたしはルウィーが大好きだもん! それくらいで嫌いになったりしないよ!」

 

 アズナ・ルブの負け犬の遠吠えに答えたのは、ブランの隣に立つラムだ。

 

「女神は、絶対に自分の国の人たちを見捨てないんだよ!」

「わたしたちは、みんなのおかげで女神でいられるから……!」

 

 ロムも妹の言葉に力強く頷く。

 

「く、クソ! そっちの双子オートボット! 貴様らはどうだ! お前らは人間に馬鹿にされて悔しくないのか!」

「って言われてもなー」

「ロムたちが頑張ってんのに俺らがウダウダ言うのも何か違うだろ」

 

 どこまでもアッケラカンとしたスキッズとマッドフラップ。

 そんなことは考えてもいなかったと言う顔だ。

 

 もはや彼女たちの心を折るのは自分では不可能と悟り、アズナ・ルブはガックリと頭を垂れる。

 

「さてと、まだまだ仕事は終わってないわ。暴徒化したデモ隊の鎮圧に、その背後関係の洗い出し……あなたたちにも手伝ってもらうわよ」

「うん! 任せてよ!」

「任せて……!」

 

 改めて、力を合わせることを誓い合う女神の姉妹たち。

 

 そんな女神たちをオートボットたちは満足げに眺めているのだった

 




そげなワケで、ルウィー編も終わり。

何かあっさり解決しちゃったなあ。

次回は、リーンボックス編。


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