超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION 作:投稿参謀
アドベンチャーにプライムラチェット登場だぜー!
まーた、サイバトロン星の上層部は腐ってんのかい。
これ、第2、第3のメガトロン出現の日も近いんじゃあ……。
『皆さんの愛したルウィーは変わった! 何故だ!!』
ルウィーのとある広場。
小雪の降る中、広場の奥にあるステージの上で一人の男が熱弁を振るっていた。
30歳くらいの男で、中々の美丈夫だ。
広場一杯に詰めかけた聴衆は、男の声に聞き入っている。
『先のゲイムギョウ界に置ける全面戦争。それを回避した時に我々は誓ったはずです! もう二度とこんな過ちは犯さないと! しかし、戦争は起ころうとしている! 理由は明白です! ……彼らが現れたからだ! あの、オートボットたちが!!』
その言葉と共に、男の背後に巨大なオートボットのエンブレムの立体映像が投射された。
『彼らが現れてから、砲声の鳴り止む日は無く、安らかに眠れる夜は無い!!』
「そうだー!」
「オートボットはいらなーい!」
「奴らを追い出せー!!」
聴衆は拳を振り上げ、声を上げる。
その手に持ったプラカードには、オートボットのエンブレムに大きく×を重ねたマークが描かれている。
『私、アズナ・ルブはルウィー教会に一人の国民として要求します! ルウィーの平和のために、国民の明日のために! オートボットの永久追放を!!』
男……アズナ・ルブの言葉と共に、背後のオートボットのエンブレムに大きな×が入り、エンブレムは四つに切り裂かれて消滅する。
すなわち、オートボットは不要だという意思表示として。
ワッと聴衆が歓声を上げ、アズナ・ルブは笑顔で人々に手を振るのだった。
* * *
「……ったく。この非常時に戦力手放してどうすんだってえの」
自らの執務室で、反オートボットを訴える集会の中継映像が映ったモニターを消し、ブランは呟く。
ルウィーは北の国であり、直線距離で言えばエディンから離れている。
それだけにエディンからの直接の攻撃は、今のところは無い。
だが、それでも国民の間には不安が広がり、いつしかその捌け口として反オートボットの気運が高まることとなった。
「とは言っても、それはあくまで極一部。……声がやたら大きくて、自分たちが多数派だと思い込んでいるのは問題だけど」
フィナンシェの淹れたお茶を一口含み、ブランは心を落ち着ける。
「とはいえ、少数とはいえそういう意見があるのも事実。あまりよくない傾向かと。アズナ・ルブは名家出身の著名な資産家で、マスコミにも顔が利くみたいですから」
「さっきも言ったでしょう? アイツらの言ってることはナンセンスよ」
脇に立つ自国の教祖ミナの言葉を聞きながら、ブランは声を低くする。
エディンは、いやさメガトロンは間違いなくこのルウィーにも本格的な攻撃を仕掛けてくる。
その時、オートボット無しで国を守り切るのは困難だ。
さらに『影のオートボット』なる情報提供者のもたらした情報により、ルウィーの人口衛星がディセプティコンに乗っ取られていたことが発覚した。
「衛星からの情報に頼れない今、少しでも戦力は必要よ……ところで、ロムとラムは? このことについて何か言っていたかしら?」
「少し堪えているようです。……幼い二人には、少しキツイでしょう」
悲しげに目を伏せるミナにブランも息を吐く。
女神をしていれば、自国民の良い面ばかりではなく、悪い面も見ることになる。
しかし、それを受け入れなければ本当の意味で守護女神になることは出来ない。
「それと、ミラージュは?」
「近くの森で、オートボットの方の双子を訓練しているみたいです。……あの、ブラン様。彼は、この状況をどう思っているんでしょう?」
何処か不安げにミナがブランに問う。
オートボットの中でも、ミラージュはゲイムギョウ界の人々に対して一線を引いている。
ほとんど内心を語らず、それを読ませようともしない。
一応、ブランのことを憎からず思っているのは分かるのだが……。
「大丈夫よ……わたしは、これでも彼を信頼してるの」
対するブランは、余裕のある態度でお茶を含むのだった。
* * *
『……今こそ、教会は声なき声を聴く時です! オートボットは不要です! オートボットがルウィーに争いを呼び込んで……』
「まったくもう、失礼しちゃうわよね!」
「うん、失礼……!」
ルウィー担当のオートボットたちが基地にしている廃礼拝堂。
古びたテレビに映るアズナ・ルブなる資産家の演説を見ながら、ラムとロムは相方の帰りを待っていた。
正直、彼女たちにアズナ・ルブの言はほとんど分からない。
分かるのは、彼らが自分たちの大切な友達に酷いことを言っていることだけだ。
そして、彼女たちにはそれで十分だった。
「スキッズ、頑張ってるのにヒドイと思わない? ロムちゃん」
「うん。思う。……マッドフラップもね、ラムちゃん」
と、礼拝堂の扉が開き、当のスキッズとマッドフラップが帰ってきた。
「あうう、疲れたぁ……」
「俺、もうダメ……」
しかし、そのまま前のめりにバッタリと倒れる。
驚いたロムとラムは、折り重なっているオートボットの双子に駆け寄る。
「二人とも、どうしたの!?」
「大丈夫……?」
「ああ、ちょっと新装備の訓練が厳しくて……」
「実戦さながらの模擬戦は、さすがに堪えたぜ……」
フラフラとしながら立ち上がる二人の後ろには、ミラージュが険しい顔で腕を組んで立っていた。
「……二人とも、今回の訓練は何だ?」
いつも以上に冷たい声に、双子たちは揃ってビクリと体を震わせた。
「スキッズは集中力が足りない。マッドフラップは身のこなしが遅すぎる。あんなでは、これからの戦闘で生き残れんぞ」
『す、すんません……』
「謝罪はいらない。結果で示せ」
『は、はい……』
「ちょっと! 二人とも頑張ってるのに、そんな言い方はないんじゃないの!」
「ラム、いいから!」
厳しい物言いのミラージュに食って掛かるラムを、スキッズが制する。
ロムも、困ったような顔をしている。
ミラージュはそんな双子たちを一瞥すると、身を翻す。
「もうすぐ、例の作戦を決行する。体と装備の点検整備を怠るなよ」
『うい~っす』
ミラージュが扉を閉めると、ラムはあからさまに顔をしかめた。
「むう~、前から言おうと思ってたんだけど、ミラージュちょっと意地悪じゃない?」
「そうかな……? 優しいトコもあると思うよ」
一方、ロムはちょっと困った顔ながらもフォローを入れる。
「ああ……優しいってのとは、ちょっと違うけど、基本的に間違ったことは言わないな」
「ま、厳しく鍛えてもらわんと、生き残れないのも事実だしな」
棚から工具を引っ張り出して自身の体の整備を始めるスキッズと、武装を外して弄りだすマッドフラップも、ミラージュのことを肯定的に見ているらしい。
「ええー? そうかなー?」
「やれやれ、お子ちゃまなラムには分かんないよな」
「むー!」
からかうようなスキッズの声に、ラムは改めて頬を膨らませるのだった。
* * *
数日後、ラステイションで要塞都市への攻略作戦が成功し、ノワールが『次』の準備をしている頃のこと。
雪の降るルウィーの街を、ミラージュがビークルモードで走る。
その運転席には、ブランが乗り込んでいた。
「……それで、どういう風の吹き回し? いっしょにパトロールに行こうだなんて」
「別に。たまにはと思っただけだ」
素っ気ないミラージュに、ブランは我知らず苦笑していた。
「ルウィーの平和のために、オートボットを追い出せー!」
「奴らは心まで機械仕掛けの怪物だー!」
「ブラン様は、奴らに騙されているんだー!」
街中では、×の付けられたオートボットのエンブレムを描いたプラカードを持った一団が声を張り上げていた。
通行人は、足早に一団の前を通り過ぎる者もいれば、立ち止まって話を聞く者もいる。
その光景に顔をしかめていたブランだが、ミラージュがふと声をかけた。
「ブラン、一つ聞きたい」
「何かしら?」
「ああいう連中を取り締まらなくていいのか?」
その問いの意図を測りかねたブランだが、自分なりの考えを口にする。
「そういうことはしないわ。あれもまた国民の意見の一部。それを無理やり押さえつけるなら、独裁者と変わらない。意見の違う者を弾圧するなんて、それこそ有ってはならないことよ」
「………………そうか」
長い沈黙の後、納得したのかしないのか、短く返しただけだった。
「それにしても、そろそろ大分街から離れてきたけど、どこへ行くのかしら? ……ミラージュ?」
ブランの声に一切構わずミラージュは走り続け、やがて山間部へと入っていく。
「ミラージュ! おい、無視すんじゃねえ!!」
一向に反応のないミラージュに業を煮やし、眉を八の字にするブラン。
だが、ミラージュは答えない。
「もういい! わたしは降りるからな!!」
ドアを開けようとするブランだが、ドアロックが外れない。
車内のエアコンからガスが噴き出したかと思うと、あっという間に車内に満ちる。
「!? 何だ、これ……」
最後まで言い終わるより早く、ブランの意識は途切れた。
* * *
雪深い森の上を、黒と灰の軍用の大型輸送ヘリが飛んでいく。
ディセプティコンのブラックアウトとグラインダーだ。
二機のヘリは、森の奥の廃村へと降りていく。
村にはそれなりに近代的な建物が並んでいて奥には小山があり、その上に村よりも古い時代に築かれそして捨てられた古城が建っていた。
だが、小山の周辺には雪上迷彩のトラックスとエディン兵たちがうろついている。
古城の中庭に降り立ったブラックアウトとグラインダーは、ギゴガゴと異音を立ててロボットモードへと変形した。
それを出迎えたのは、誰あろう資産家のアズナ・ルブだった。
「やあやあ、ようこそ我が城へ。と言っても別荘のような物だが」
「ふん! 前置きはいい! 例の物は用意出来ているだろうな?」
鼻を鳴らすような音を出すブラックアウトに、アズナ・ルブは肩をすくめる。
「もちろん、洗脳電波発生装置はセットしておいた」
「よし! ではさっそく、適当な街を襲撃してエディン領を増やすぞ!」
「まあ、お待ちを」
好戦的な言動のブラックアウトに対し、アズナ・ルブは落ち着いた態度で制そうとする。
ブラックアウトは顔をあからさまにしかめた。
「私はルウィーの民にオートボットと女神への不信をばら撒きました。演説だけでなく、マスコミやネットにも反オートボット思想を浸透させています。じきに大規模なデモ行進を行う予定ですので、襲撃はその混乱に乗じた方が得策でしょう」
「理には適っているな。……しかしそう上手くいくか?」
「フッ、大衆など豚のような物。情報に踊らされる愚民どもを操るなど雑作もない」
端正な顔を傲慢そうな笑みで歪めるアズナ・ルブに、ブラックアウトは内心でこの男を信用しないことに決めた。
そもそもこの男は、あのハイドラの出資者の一員。
他の出資者がディセプティコンに資産を奪われる中、いち早くディセプティコンに忠誠を誓い協力者としての自分の立場を確保したのだ。
「まあいい。それで、ここの警備は完璧なのだろうな?」
「もちろん。蟻の子一匹通れません。城全体をバリアフィールドで覆っている上、装置の場所は私しか知りません」
不機嫌ながらも確認するブラックアウトにアズナ・ルブは笑みを張り付けて答える。
「どうだかな……この国のオートボット、ミラージュはコソコソするのが得意だからな」
「そのことだが……おい、姿を見せてくれ」
アズナ・ルブが何も無い空間に声を懸けると、そこに袋を脇に抱えた赤いオートボットが姿を現した。
「貴様!」
「ミラージュ!」
突然現れたミラージュに、ブラックアウトとグラインダーが武装を展開する。
しかし、アズナ・ルブが声を出してそれを止めた。
「お待ちください。彼は我々に協力してくれるのですよ」
「何? 馬鹿なことを言うな!」
もちろん、ブラックアウトは信じずプラズマキャノンを発射しようとするが、その肩をグラインダーが掴んだ。
「落ち着け兄者。……ここは俺が」
少しの間、無言で義弟を睨むブラックアウトだったが、やがて鼻を鳴らすような音を出して武器を下ろす。
いつでも発射出来るようにしたままだが。
グラインダーは軽く頭を下げてから、ミラージュに視線を向ける。
「それで? 貴様は我々に寝返ると?」
「ああ。いい加減、人間どもには愛想が尽きてな。戦っても文句ばかりだし、不出来な弟子どもにもウンザリだ」
『不出来な弟子ども』の言葉が出た時、ブラックアウトは不機嫌そうに眉を吊り上げる。
グラインダーはさらに質問を投げかける。
「ほう? しかし信用してほしければ、それ相応の誠意を見せてもらわねばな」
「無論、そのつもりだ」
グラインダーのオプティックが鋭く細める。
「ほう? では、忠誠の証に、何を差し出す?」
「……これを」
するとミラージュは、小脇に抱えた袋を地面に置き、袋を開ける。
「ッ!」
「貴様……本気で!?」
中に入っている者を見て、さすがにブラックアウトたちも驚愕したのだった。
袋に入っていたのは、意識を失った白の女神……ブランだった。
そんなワケで、ミラージュがいるんだからやんなきゃいけないネタな今回。
果たして、ミラージュは本当に裏切ってしまったのか?(棒)
今回の解説。
アズナ・ルブ
ネプテューヌVⅱから、う○めやゴー○ド○ァドを差し置いてフライング登場。
その名の通り、赤い彗星ことシャア・アズナブルのパロディキャラだけど、実態はシャアの悪い所だけを抽出、凝縮して、さらにリボンズ・アルマークの自己中心性と傲慢さを加味したような、つまりどうしようもない屑であり卑劣漢。
反オートボット論と、ブランの見解。
言論の自由と言う物は近代国家における最低限の権利の一つでして、他人を傷つない限りは言わせときゃいいんじゃないかなと。
暴力で押さえつけるのは、それこそ弾圧の始まりですし。
だからこそ、各女神がシェア獲得に四苦八苦してるワケですし。
では。