超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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ザ・ラストナイトも色々情報が出てきました。

とりあえず、メガトロンとバリケードがかなりイメチェンしてる件。
というか、バリケード生きとったんかワレェ!?
そりゃDOTMの奴が本人だと明言されてませんでしたけど!


第102話 ピーシェと航空参謀 

 この世で信じられることは、ただ一つ。

 信じられる奴なんかいない。

 これだけは信じてもいい。

 

 ……誰の言葉かって?

 決まってるだろ。

 

 ディセプティコン航空参謀スタースクリーム。

 

 つまり、この俺さ。

 

  *  *  *

 

 眼下にゲイムギョウ界を見下ろす暗黒の宇宙空間。

 スタースクリームは、ルウィーの人工衛星に最後の細工を施していた。

 

『スタースクリーム! 応答せよ!』

 

 と、遥か地上にいるメガトロンから通信が飛んで来た。

 

「はいはい、こちらスタースクリーム! そんな怒鳴らんでも、聞こえていますよ」

『細工は終わったのだろうな?』

「調度、今しがた終わりました」

『よし! では、次の仕事だ……』

 

 通信の向こうでメガトロンがニヤリとしているのが見えた気がして、スタースクリームは我知らず顔をしかめる。

 

『迎えに行ってこい。……例のピーシェとやらをな』

「………………分かりました」

 

 分かり切った答えを絞り出すのに、僅かながら時間を有したことはスタースクリーム自身にとっても意外であった。

 

「ではピーシェを回収したら例の場所で落ち合いましょう」

『うむ。期待しておるぞ。通信終わり』

 

 事務的なやり取りの後、メガトロンは一方的に通信を切った。

 メガトロン、気に食わない野郎だ。

 いつでも、『俺が一番』って面をして君臨してやがる。

 

 ――……しかし、奴が俺の中で大きい存在であることは認めてもいい。いつかぶち破る壁として、だが。

 

「……見てやがれ、いつか、俺の前に傅かせてやる!」

 

 一人で呟いたスタースクリームは、眼下に星に向けて降下を開始するのだった。

 

  *  *  *

 

 仲間、友人、兄弟、師弟……。

 

 そんな関係は、クソみたいなもんだ。

 損得と恐怖による上下関係の方が、ずっとシンプルで信用出来るってもんだ。

 

 信じれば、裏切られる。

 だったら、俺が先に裏切ればいい。

 

 そうすれば、裏切られないで済む。

 

  *  *  *

 

 プラネテューヌの教会。女神の部屋。

 ピーシェは自分とネプテューヌのヌイグルミを抱えて佇んでいた。

 プルルートから自分のヌイグルミをもらって機嫌が少し回復したピーシェだが、まだヘソを曲げていた。

 

 ……素直になれないとも言う。

 

「お、ここにいたか?」

 

 そこへ、何処にいたのやら青いモンスタートラックのラジコン……ホィーリーがやってきて、ギゴガゴとロボットモードに変形する。

 

「いい加減に機嫌治したらどうだ? ネプテューヌだって、思わず言っちまっただけだろう」

「……やだ。ねぷてぬ、ぴぃのこときらいっていった」

「正確にゃ、『ごめんなさい出来ない』ピーシェは嫌い、って感じみたいだな。素直に謝っちまえよ」

「…………や」

 

 そっぽを向くピーシェに、ホィーリーはハアと息を吐く。

 

「何で俺、こんな子守りみたいなことやってんだろ……」

 

 一応は、ディセプティコンの一員だったのに。

 喧嘩した疑似親子の仲裁なんて、全然ディセプティコンらしくない。

 

 ――まあいいか。元々、ディセプティコンらしさとは無縁の身だ。

 

 そう、思考を纏めて改めて目の前の幼子を説得にかかる。

 

「あのな、ピーシェ。ネプテューヌに謝るのは後でもいいけどな。とりあえずロディマスには謝ろうぜ……。プリンぶつかって痛かっただろうからな。お姉ちゃんだろ?」

「…………」

 

 ロディマスの名が出たら、らしくもなく少しだけ複雑そうな顔になるピーシェに、ホィーリーは「ははぁ」と彼女の思いを理解した。

 

「なるほどね。……なあ、ピーシェはネプテューヌにほっとかれてさみしいんだろ?」

「……うん」

「じゃあさ、ロディマスもピーシェにほっとかれて、さみしいと思うんだわ。……あとででいいから、ごめんなさいして、仲直りしよう。な?」

「……うん。あやまる」

 

 ホィーリーの説得に、ヌイグルミをギュッと抱きしめながら、ピーシェは頷く

 フッとホィーリーは相好を崩した。

 ネプテューヌとも、時間を置けば仲直り出来るだろう。

 元来、優しいのだ。この子は。

 

「よっしゃ! じゃあさ、ネプギアたちがビニールプールで泳ぐって言うから行こうぜ!」

「うん」

 

 短く返事をして踵を返すピーシェの後ろに付いていこうとするホィーリーだが、その時どこからか通信が飛んできた。

 

『おい、ホィーリー。今、いいか?』

「スタースクリームか? どうしたんだ?」

「すたすく?」

 

 ホィーリーの口から出たスタースクリームの名に、ピーシェも立ち止まる。

 

『……少し話がある。ピーシェといっしょに例の倉庫まで来てほしい』

「今コンパちゃんの巨乳を見るので……もとい、ピーシェの面倒で忙しいんだけど」

『…………そうか、なら仕方ないな』

 

 嫌にアッサリと引き下がるスタースクリームに、ホィーリーはハテと首を傾げる。もっと、怒鳴ってでも来させようとすると思ったのに。

 まあいいかと通信を切ろうとするが、そこでピーシェが割り込んできた。

 

「うぃりー、すたすくがどうしたの?」

「ああ、何かすぐに来てほしいって。でもプールに入るしまた今度に……」

「いこう! すたすくんとこ!」

「ええ!? プールは?」

「こんど!」

 

 何やら気合いを入れているピーシェに、ホィーリーは文句を言うが、当然聞いてもらえない。

 これは止められないと、ホィーリーはヤレヤレと首を振る。

 

「ってなワケで、今からいくぜ」

『……………………分かった。通信切るぞ』

 

 随分と間を置いてから、スタースクリームは通信を切った。

 まあ、アレはアレでピーシェを気に入っているようだし、悪いことにはならないだろう。

 

「ヤレヤレ、じゃあ行くか。……あ、メモ書きかナンか残してこうぜ」

「うん! かくね!」

 

 言うや、ピーシェは机の上に置いてあったメモ用紙とペンを取り、たどたどしい手つきでネプテューヌたちへの伝言を書いたのだった。

 

『ねぷてぬへ! うぃりーと、ともだちのとこへいくね! ばいばい! ぴぃより』

 

  *  *  *

 

 トランスフォーマーも、人間も、女神も、この世には三種類いる。

 

 一つ目は、俺が利用できる道具。

 馬鹿な奴、鈍間な奴、思い上がった糞ども。

 全部、使い潰して、捨ててやればいい。

 

 二つ目は、俺に楯突く敵。

 俺を見下す奴、俺の邪魔をする奴、俺を出し抜こうとする奴。

 敵は排除するだけだ。どんな手段を使っても。

 

 最後に、毒にも薬にもならないゴミ。

 敵と言うほど手強くもなく、利用するほどの価値もない。

 いてもいなくても同じ……なら、いない方がいい。目障りだ。

 

 断っとくが、これは俺だけが異常な考えを持ってるってワケじゃないぜ。

 ディセプティコンじゃ、こんな考え珍しくもない。

 

 ピーシェとか言う、あのチビガキも俺の野望のために利用してやる。

 馬鹿な餓鬼を言いくるめるなんざ、インセクティコンを潰すより楽だぜ。

 

 俺がスーパーヒーローだ?

 ありえねえ!

 

  *  *  *

 

 プラネテューヌの無人区画。

 

 ここをピーシェがホィーリーを連れ立って走っていた。

 

 廃墟の一角にある、古びた倉庫。

 固く閉じたシャッターの脇にある穴に入り込むと、そこにはディセプティコン式の機材が並んでいた。

 スタースクリームが基地を抜け出して作ったアジトだ。

 

 そして、アジトの奥には当然スタースクリームが入口に背を向けて佇んでいた。

 

「すたすく、きたよー!」

「まったく、おかげで巨乳の水着を見そこねちまったぜ!」

 

 ピーシェはスタースクリームに向かって手を振り、ホィーリーは頭の後ろで手を組みながらブー垂れる。

 スタースクリームはゆっくりと顔だけをピーシェたちに向けた。いやに真面目くさった顔だ。

 

「……来ちまったか」

「うん! それでそれで、おはなしってなに?」

 

 全幅の信頼を示すが如く、キラキラと青い瞳を輝かせるピーシェ。

 彼女にとって、スタースクリームはスーパーヒーローなのだ。

 しかしスタースクリームは、顔を戻して幼い少女から視線を外す。

 

「……今日はホィーリーに話がある」

 

 そう言って、スタースクリームはホィーリーとの間に通信回線を繋いだ。

 

『……なあ、ホィーリーよ。お前、サウンドウェーブの部下だったよな』

『ん? ああ、まあ一応は諜報部隊に所属してたから、そうなるな。最底辺の下っ端だったけど』

 

 振り向かないままのスタースクリームの言葉に、ホィーリーは素直に答える。

 しかし何故、今更そんな分かりきったことを聞くのか?

 

『じゃあよ、分からないのか? アイツがどんな奴か……』

『え? う~ん、ほとんど話したことないしなあ』

『……アイツは、サウンドウェーブは、とんでもねえ陰険野郎だ』

『はあ?』

 

 突然、同格の幹部の悪口を言い出す航空参謀に、ホィーリーはオプティックを丸くする。

 

『……ははん。さては、何かヘマやらかしてサウンドウェーブに出し抜かれ……』

『黙って聞け! アイツの仕事は敵の情報を探ることだけじゃねえ! 味方の弱みを握ることも含まれてんだよ!!』

『ついでにプロパガンダにも口を出してる、と。そんなんディセプティコンなら誰でも知ってるぜ』

 

 何を今更と呆れるホィーリー。

 あの情報参謀が、それこそ『情報』に関わる仕事を一手に引き受けているのことは知れ渡っている。

 ここで、初めてスタースクリームは振り向いてホィーリーを見た。

 

 らしくもない、酷く苦しそうな顔だった。

 

『そんな奴が部下に何も仕込まないとでも思ってたのか?』

「…………へ?」

 

 思わず、肉声が出た。

 ピーシェが不思議そうに、航空参謀と小ディセプティコンを交互に見ている。

 

『あいつは、部下に秘密の発信機を仕掛けてやがるんだ。……さすがに盗聴器はないみたいだが、レーザービークあたりにでも探らせたんだろう。……ここまで言えば分かるな?』

「ねえ、すたすく、うぃりー、ずっとだまってどうしたの?」

 

 ハッとホィーリーはセンサーの感度を最高に上げて辺りを探る。

 

「……逃げろ! ピーシェ!!」

「ふえ?」

 

 ホィーリーが叫んだ瞬間、シャッターが開いて何人かの男たちが雪崩れ込んできた。

 

  *  *  *

 

「レイ様、捕まえました。……抵抗が激しく5人ほど無力化されましたが」

「御苦労さま。……こんにちは。ピーシェちゃん」

 

 信じれば、裏切られる。

 こいつは、俺が自分の経験で得た答えだ。

 

「おばちゃん……?」

「ピーシェ! そいつもこいつらの仲間なんだ!!」

「ええ、そうよ。……ごめんなさいね。ピーシェちゃん」

「……ッ! たすけて! すたすく!」

 

 だったら、誰も信じなきゃいい。

 自分が先に裏切っちまえばいい。

 

 それが、皆が望む『ディセプティコン航空参謀スタースクリーム』ってもんだろ?

 俺はこういう奴なんてことは、皆とっくに知ってることじゃねえか。

 

「すたすく! おねがい!」

 

 ああ、全く馬鹿な餓鬼だ。

 俺はヒーローなんかじゃねえ。

 

 だから。

 

 だから……。

 

「すたすくー! すたすくーーー!!」

 

 そんな目で、俺を見るなよ。

 

 




Q:こんな短いのに一週間掛かったの?

A:リアルが忙しい&暑さでダウンしてまして……。

そんなワケで、やっと始まったピーシェとスタースクリームの物語。
いや、他のメンバーも活躍するんですけどね。

では、ご意見ご感想、お待ちしております。

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