超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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すうっっっ………ごく! 久しぶりの原作有り回。

やぁっっっ………と! ここまで来ました。

思えば迷走してたもんだ……。


Rise of the Eden(エディンの勃興)
第101話 R-18アイランド


 プラネテューヌ教会のバルコニー。

 ネプテューヌは、今日もロディマスの面倒を見ていた。

 

 背中を撫でながら、子守唄を歌う。

 寝ついたロディマスを撫でてから、さて自分も一休みして脇に置いたプリンを食べようとするのだが……。

 

「あー!!」

 

 バルコニーに出てきたピーシェが目ざとくそれを見つけた。

 

「ねぷてぬ、ずるーい! それぴぃの! ぴぃのねぷのぷりん!」

「いやそれおかしいから、ほらここに『ねぷの』って書いてあるでしょう」

 

 そう言ってプリン容器の蓋を見せるネプテューヌ。

 蓋には確かに『ねぷの』と書いてあった。

 だがそれで納得するピーシェではない。

 

「ずるいー! ずーるーいー!!」

 

 ネプテューヌに飛びかかり、プリンを奪い取ろうとする。

 

「ちょ、ちょっと! あんまり騒ぐとロディが起きちゃうでしょ!」

「……むー!」

 

 ロディマスの名前が出た瞬間、ネプテューヌの腹に向かってピーシェが飛び付いた。

 

「きゃあ!」

 

 その拍子にネプテューヌの手からプリンが離れる。

 

 ……そしてロディマスの上に落ちた。

 

 頭に容器が当たり、中身が体にこぼれる。

 凍りついた二人の目の前で、ロディマスはゆっくりと目を開け、キョトンとした後、大きな声で泣き出した。

 

「ろ、ロディ! ロディマス! 大丈夫!?」

 

 正気に戻ったネプテューヌは、すぐにロディマスの体を拭う。

 

「痛かったよねロディ! こらぴーこ! ロディにごめんなさいしなさい!」

 

 眉をハの字にして怒るネプテューヌに、ピーシェはビクリと体を震わせるも、すぐに顔をしかめる。

 

「やだ! ぴぃわるくないもん!」

「な……! ぴーこ、いつからそんな聞き分けのない子になったの! 謝りなさい!」

「やーだー! ねぷてぬ、ろでぃのことばっかり!!」

「しょうがないでしょ! ロディマスは小さいんだから!!」

 

 腕を振り上げるピーシェに、ネプテューヌは怒気を緩めない。

 

「ごめんなさい出来ない、そんなぴーこは嫌い!!」

 

 その瞬間、ピーシェの顔が信じられないといった表情で固まる。

 目じりに涙が溜まり、やがて溢れだす。

 

「…………ねぷてぬのバカー!! バカー!! うわぁあああん!!」

 

 涙を流しながら、ピーシェは建物の中へ走って行った。

 

「もう! 馬鹿って言った方が馬鹿なんだからねー! ……ロディ、大丈夫?」

 

 ひとしきり怒った所で、ネプテューヌはロディマスに視線を落とす。

 幼いトランスフォーマーはすでに泣き止んでいたが、代わりに不安げな表情でネプテューヌを見上げていた。

 

「大丈夫だよ。……ピーシェが悪いんだもん」

「なーに、子供相手にムキになってるのよ」

 

 ロディマスの背を撫でながら呟くネプテューヌに声をかける者がいた。

 振り返れば、ノワールが三白眼を向けてきていた。

 周りにはブラン、ベール、ユニ、ロム、ラムらもいる。

 

「あ、あれ、何時来たの?」

「……あなたがプリンを落としたあたり」

 

 誤魔化すようにたずねてみれば、ブランからは呆れた声が返ってきた。

 

「ネプテューヌさん、言い過ぎ!」

「ピーシェ、可哀そう……!」

「まあ、今のはあの子も悪いと思うけど……確かに言い過ぎよ。子供はああ言うのに敏感なんだから……」

 

 頬を膨らませる妹たちの後を継いで、ブランは大きく溜め息を吐く。

 

「な、なにさ! わたしが悪いの!?」

「そうは言っていませんが……大人気ないのは事実ですわ。最近、あなたがロディマスちゃんに掛り切りだから、ヤキモチを焼いて捻くれた態度を取っているのですから」

 

 反論すれば、ベールもネプテューヌを諌める。

 

「うッ、……そ、それでも謝れないピーシェの方が悪いんだから! ……そ、それよりもみんなして何の用なの?」

 

 あからさまに誤魔化そうとしているネプテューヌに一同は渋い顔をするのだった。

 

  *  *  *

 

 R-18アイランド。

 そこは日夜ア~ンなことやコ~ンなことが繰り広げられる、名前の通り18歳以下お断りな南海に浮かぶテーマパークである。

 四か国の統治下にない、一種の治外法権と言っていい土地だ。

 

  *  *  *

 

「で、その島に大きな砲台が設置されているのを、昨日うちの衛星が見つけたの」

 

 オートボットを積んだ輸送機の女神用客室。

 ブランが、ことの概要を説明していた。

 

『うむ。それで、念の為調査することになったんだ。ディセプティコンの基地の可能性もある』

「なるほど」

 

 立体映像のオプティマスが説明を引き継ぐと、ネプテューヌは頷く。

 

「でもさ、R-18アイランドって……まあ、その名の通りなんでしょ? この小説の警告タグR-15だけど、大丈夫なの、色々と」

「まあ、そこらへんは直接的な描写が無ければ大丈夫でしょう」

 

 メタいネプテューヌの疑問に、ノワールが答えた。

 ユニ、ロム、ラムはさすがに色々アウトと言うことでお留守番である。

 

 しかし、ネプテューヌはさらに首を傾げる。

 

「でもさ、わたしたちはともかく、ビーは結構アウトっぽい気が……」

『『なんでさ』『オイラは』『大人だい!』』

「子供はみんなそう言うんだよ」

 

 少年的なバンブルビーから漂う、ある意味ネプギア以上のアウト感に、ネプテューヌは困った顔をする。

 

「まあ、年齢的には18どころか20オーバーだから……それを言ったら、お姉ちゃんやプルルートさんも……」

 

 ネプギアの言葉に、一同は微妙な顔をする。

 女神には見た目がコンパクトな者が多く、パッと見はほとんどが18歳未満にしか見えないのだから。

 

  *  *  *

 

 そんなワケで、サクッとR-18アイランドにやってきた女神一同。

 飛行場に輸送機を着陸させ、入島審査となったのだが……。

 

「いやまさか、ドレスコードが水着か全裸とは……」

「俺らは、いつも全裸……って言うと語弊があるけど、女神たちが全裸は……困るよなあ……」

 

 オプティマスとジャズは男性用の入島審査をパスし空港の外で女神たちを待っていた。

 

「裸だと! 裸だとう!! テメエ、うちのノワールに裸になれってのか!!」

「い、いえ、ここはそういう島なので……」

 

 アイアンハイドは係員に詰め寄っていた。

 まあ、当然である。

 一方、バンブルビーは審査に手間取っていた。

 

『あなたは18歳以上ですか?』

「『そうだって、言ってるだろうが!!』」

『本当に18歳以上ですか?』

「『本当だよ!』『もう1000歳』『越えてるっての!』」

『本当に?』

「『ホントのホント!』」

『本当は幼児でしょ?』

「『しつけーぞ!』『大人だよ!!』」

『……そのあふれ出るショタ感で?』

 

 甲高いノイズ音を上げて、バンブルビーが中空に浮かんだ立体映像を殴りつける。

 

「バンブルビー、やめなさい!」

「『だって!』」

 

 オプティマスに諌められて、バンブルビーはブー垂れる。

 そしてミラージュは、興味なさげに佇んでいた。

 

 と、空港の出口から、女神たちが出て来た。

 

 今更、言う間でもないだろう。

 プルルート以外女神化した彼女たちは、全員水着である!!

 

 ネプテューヌは藍と白の二色のビキニ。

 

 ネプギアは清楚な純白のビキニ。

 

 ノワールは赤と白の横縞模様の大胆な三角ビキニ。

 

 ブランはフリルの付いた青と白の縦縞のチューブトップ。

 

 プルルートは薄桃のセパレート。

 

 そしてベールは、なんと貝殻ビキニで腰にパレオを巻いている。

 

「へえ、こりゃ眼福だ」

「の、ノワール……なんつう恰好を……」

 

 それぞれが魅力に溢れた女神たちに、ジャズはヒュウと口笛を鳴らし、アイアンハイドは大口を開けて固まっている。

 

 そしてオプティマスはと言うと。

 

「ネプテューヌ……」

「お、オプっち、ど、どうかしら、この水着……」

「ネプテューヌ。………………君はやっぱり、とても美しい」

「ふ、ふええ!?」

 

 いきなり褒められて、ネプテューヌは面食らう。

 

「も、もう、オプっちたら……変身を解くわね」

 

 照れ隠しなのか、女神化を解くネプテューヌ。

 人間態の彼女は、水着も変化しておりオレンジのビキニになっている。

 

「どうかなオプっち!」

「ああ、ネプテューヌ…………やはり美しい」

「ふええええ!?」

 

 何せ、オプティマスである。

 お世辞とかではなく本心からそう思っているのだろう。

 いかな人間態ネプテューヌでも、『美しい』と面と向かって言われれば照れる。

 他のメンバーも女神化を解くと、ネプギアはフリルで下半身を隠したワンピース、ノワールとブランは普段着の意趣を取り込んだワンピース、ベールは緑色のビキニを着ていた。

 

「それで、どうかしらミラージュ?」

「……どう、とは?」

「……いいわ、別に期待してなかったし」

 

 そっけない反応のミラージュに、ブランはプイとそっぽを向く。

 

「いやいや、君と付き合っていると飽きないな。いくらでも新しい魅力が見つかる」

「お上手ですわね。……同じ言葉を、他に方にも囁くのではなくて?」

「まさか、君だけさ」

「ビー、似合うかな?」

「『グッジョブベリーナイス!』」

 

 ジャズとバンブルビーはそつなくベールとネプギアを褒めていた。

 

「ノワール、ノワールよう、その恰好はどうかと……」

「はいはい、普段とそんなに変わらないでしょう。……それで、砲台が何処にあるか、誰かに聞ければいいんだけど……」

 

 心配性のアイアンハイドをあしらいつつ、ノワールがキョロキョロと見回せば、何処からか何かが森の中から飛び出してきた。

 

「アックックック! お呼びかな? この公認ガイドのトリック様に任せておくがいい! 安くしとくぞ!」

 

 黄色くて中型トランスフォーマーほどもある、太ったカメレオンのようなモンスターだ。

 その特徴的過ぎる見た目を忘れようはずもなく、ネプギアが指を刺して声を上げる。

 

「ああー! ロムちゃんたちを誘拐した変態!!」

 

 このモンスター、名をトリックはかつてルウィーで、ロムとラムを誘拐したことがあるのだ。

 その時はブランに星にされたが、ここに潜んでいたのだろう。

 

「ゲエ! 貴様らは!!」

「テメエ。この変態が、どの面下げて現れやがった……!」

 

 眼を剥くトリックに、ブランは殺気立つ。

 この変態は可愛い妹たちを拉致した挙句、下劣な欲望の餌食にしようとしたのだから当然だ。

 トリックは後ずさりしながら、土下座へと姿勢を移行する。

 

「ま、待ってくれ! 俺様は心を入れ替えて、ここで真面目に働いているのだ!!」

「信用出来るか!」

 

 ハンマーを取り出し、語気を荒げるブラン。

 ミラージュもブレードを剣呑に光らせる。

 

「ほ、本当だ! でなければ、誰がこんな幼女の全くいない地獄のような島で働くか!!」

 

 幼女をこよなく愛する、所謂ロリコンのトリックにとって、18才以上でないと入れないこの島は耐えがたい場所らしい。

 

「……まあ、いいじゃないか。本人が改心したと言っているんだ」

 

 不信そうな目でトリックを見る一同だったが、そこで意外にもオプティマスがトリックを許容する発言をした。

 意外そうに一同がオプティマスを見れば、彼は厳かに頷いた。

 

「オプティマス、さすがにそれはどうかと思うが?」

「更生した者を、いつまでも咎めるのも、どうかと私は思う」

「まあ、オプティマスがそう言うなら……」

 

 ミラージュが不承不承と言う顔でブレードを降ろすと、ブランもチッと舌打ちしつつもおハンマーを粒子に分解した。

 一同は顔を見合わせつつも、トリックの先導に従って歩き出す。

 

「ではトリック、我々はこの島に設置された砲台を探しているのだが……」

「アックック、分かった。案内しよう」

「助かる」

 

 調子を取り戻したトリックに、素直に感謝の意を示すオプティマス。

 

「まったく、オプっちはお人よしだねー。じゃあさ、せっかくだから、この島の楽しいとことかにも行きたいな」

「ちょっと、遊びじゃないのよ!」

 

 しかしそこで、ネプテューヌがこんなことを言い出した。

 もちろん、ノワールがツッコミを入れる。

 オプティマスも、さすがに仕事が先だと言おうとしたが……。

 

「アックック! 任せておけ! とっておきの場所に案内してやる!」

 

 トリックがそう言って手で示したのは、ジャングルの向こうに広がる白い砂浜だった……。

 

「R-18アイランド一番の景勝地、ヒワイキキビーチだ!!」

「な……!?」

「こ、これは……!?」

 

 そこに広がっていた光景は、白い砂浜に椰子の木、紺碧の海と空。そして……。

 

「な、な、何でみんなは、はだ……」

「みんな裸だー!」

 

 愕然とするノワールと、何故か笑顔のネプギア。

 

 そう、ここで遊んでいる人々は、皆全裸なのである!

 

「おおー、だいたーん! ……あッ!」

「まあ! 開放的……ハッ!」

 

 はしゃぎ懸けるネプテューヌとベールだが、隣に立つそれぞれのパートナーを慌てて見上げる。

 

「オプっち、見ちゃだめー!」

「ジャズ、鼻の下を伸ばしていませんわよね?」

 

 ネプテューヌがブンブンと手を振り、ベールが低い声を出すが、当の二人はキョトンとした顔だ。

 

「いや、我々は別に何とも思わんが……」

「むー、本当?」

「本当だとも。……ふむ、不思議な話だ。ネプテューヌのことは、とても魅力的に見えるのに」

「ううう……ズルい、その言い方はラフプレイだよ……」

 

 オプティマスが嘘など言っていないのが分かるので、ネプテューヌとしても黙るしかない。

 

「俺としては綺麗なお嬢さんたちの柔肌なら大歓迎……あ、冗談だよ! だから槍をしまってくれ!」

 

 ジャズはふざけてみせるが、ベールが光の消えた目で槍を召喚するのを見てすぐに取り繕う。

 

「それでトリック? 我々は砲台を探していたはずだが?」

「まあまあ、そう言わずに! 後で案内するから、まずは楽しんでくれ!」

 

 当然、オプティマスが訝しげに問えば、トリックは調子良く答える。

 

「……いいだろう。少し休憩としよう」

「来たばっかりだけどね……」

 

 これから先が不安になり、ノワールは嘆息するのだった。

 

  *  *  *

 

 そんなワケで、ビーチで遊ぶことになったネプテューヌ一行。

 泳いだり(オートボット勢は沈没)、あるいは異常に大きな砂のお城を作ったり(ミラージュが異様にディティールに拘ってた)して、各々楽しんでいる。

 

「『ボールを相手のコートにシュゥゥゥーッ! 超エキサイティン!』」

「ボールは友達! 怖くない! アイアンハイド、アタックだ!」

「おうよ、ジャズ! 喰らえ、男の魂完全燃焼! キャノンボールアタアァァック!!」

「左手は、添えるだけ……」

 

 結局、オートボットたちは(危険なので)少し離れた所でビーチバレー勝負をしている。

 色々混ざってるが、気にしてはいけない。

 

 ……ええ、さしもに全裸になるような真似はしませんでしたよ。男性陣(オートボット)の前ですし。

 

 本当にすまないと思っている。

 

「何か今、地の文がメタすぎることを言ってた気がするけど……ま、いっか!」

「アックック! 喉が渇かんか? 冷たい麦茶を持ってきたぞ!」

 

 ノワールとビーチバレーをしていたネプテューヌが例によってよく分からいことを言っていると、トリックが麦茶の入ったグラスを乗せたトレーを器用に持ってきた。

 

「お! ごっつあんでーす!」

 

 ネプテューヌはすかさずグラスを受け取り、麦茶を一気に飲み干す。

 

「プハー! たまんないねー!」

「さあ、みんなも飲むといい!」

 

 女神たちは、促されるままにトリックの差し出した麦茶を飲もうとするが……。

 

「う!」

 

 急にネプテューヌが喉を押さえて苦しげに蹲った。

 

「お姉ちゃん!?」

「ネプテューヌ、ちょっと大丈夫?」

「いったいどうしたんですの?」

 

 皆が心配して周りに集まってくるが、ネプテューヌはおもむろに立ち上がった。

 

「お、お姉ちゃん……?」

「……いや! わたし、恥ずかしい!」

『ええー!?』

 

 突然、両腕で自分の肩を抱き身もだえしだすネプテューヌに、一同は面食らう。

 何せ、ネプテューヌは羞恥心とか『ある人物』の前以外では控えめなのだ。

 

「こんな恰好……はしたないわ……お願い、見ないで……」

 

 顔を赤らめ、クネクネと身をくねらせるネプテューヌ。

 

「な、なにこのキモいネプテューヌ?」

「こ、こんなのお姉ちゃんじゃない……」

 

 中々に酷いことを言うノワールとネプギア。

 普段のキャラと違い過ぎるからしょうがない。

 この小説も原作剥離が酷いからしょうがない。

 

「そう言えば聞いたことがありますわ。このR-18アイランドでも最大のタブーとされている羞恥心を、倍増させてしまう薬があると……」

「随分、都合のいい薬ね……」

「アニメだからね~」

 

 真面目な顔で解説するベールに、ブランが呆れ気味に、プルルートがノンビリとツッコミを入れる。

 と、ノワールがハッとした様子で口を押さえる。

 

「羞恥心が倍に……ッ! まずいわ!!」

「皆、どうしたんだ?」

 

 ビーチバレーをしていたオートボットたち……オプティマスが騒ぎを察知してこちらにやってきた。

 

「ネプテューヌ? どうしたんだ?」

「オプっち……」

 

 心配げにネプテューヌの顔を覗き込むオプティマス。

 だがネプテューヌは凍りついたように動かなくなった。

 

「? ネプテュ……」

「や、……いやああああああ!!」

 

 突然、絹を裂くような悲鳴を上げ、ネプテューヌは自分の肩を抱いて座り込む。

 

「いやああああ!! 見ないで、見ないでぇええええ!! あっち行ってぇええええ!!」

「ああ、やっぱり……。そりゃあ、素の状態でも恥ずかしがる相手に、羞恥心倍増状態で見られたらこうもなるわよね……」

 

 すすり泣くネプテューヌの背を撫でながら、嘆息するノワール。

 一方、オプティマスは頭上に『ドギャァアアアン!!』と言う巨大な効果音を発生させてショックを受けていた。

 

「で、こんなふざけたことをするのは……」

 

 ブランを始め女神一同は得物を取り出してトリックを睨みつける。

 しかし、当のトリックは何故か地団太を踏んで悔しがっていた。

 

「くそう! どうせならルウィーのブランちゃんに飲んで欲しかったのに!」

「……よし、ぶっ飛ばされたいみてえだな。全然反省してなかったみたいだし」

「うふふ~、そうだね~、悪い子にはお仕置きだね~」

 

 全く懲りていなかったブランが殺気を漲らせ、プルルートもゾッとするような笑みを浮かべる。

 トリックはそんな女神たちを見ても余裕そうだ。

 

「アックック! やれるものならやってみろ! ジャングルに入ってしまえば……」

 

 その瞬間、何者かがトリックの頭をガシッと掴んだ。

 

「あ、アク?」

「トリック……お前は改心したのではなかったのか?」

 

 感情を一切感じさせない声色で問うのは、いつの間にか立ち直ったオプティマスだった。

 オプティマスは無理やりトリックに自分の方を向かせる。……しっかりと両手でトリックの頭を掴んだまま。

 

「ぐ!? お、おい! 痛いぞ、この馬鹿力め!」

「質問に答えろ。改心したというのは、嘘だったのか?」

「あ、当たり前だ!! そう簡単に心を入れ替えることなど出来るか!!」

 

 逆切れするトリックに、女神とオートボットは『あ~あ』とでも言わんばかりの表情を向ける。

 オプティマスの両の手に力が込められ、少しずつトリックの頭に指が食い込んでいく。

 

「そうか……嘘か。しかもネプテューヌを傷つけるとは……」

「あ、あの、頭がミシミシ言ってるんですが……ちょ!? 痛い痛い! 頭蓋が! 頭蓋骨が割れる!!」

「ならば、私が貴様に送る言葉はこれだけだ」

 

 

「そ の 顔 を 剥 い で や る !!」

 

 

  *  *  *

 

「と、いうワケで、トリックが顔面破壊されそうになったけど、みんなで止めました」

「さすがにR-18Gはねえ……」

 

 帰りの輸送機の客室で、誰にともなくネプテューヌとノワールがごちる。

 

 あの後、ネプテューヌの薬の効き目が切れると、『何故か』極めて低姿勢になったトリックに『快く』砲台の場所に案内してもらったのだが……。

 

「まさか、砲台がタダのシャボン玉発生装置とはね……」

「ジャズたちがスキャンしてみましたが、偽物と見せかけた本物、ということもないようですわね」

 

 ブランとベールが嘆息する。

 砲台は単なるイミテーションで、無害な物だった。

 

「骨折り損の何とやらか……」

 

 大騒ぎして、このオチである。

 

 女神たちはそろって大きく息を吐くのだった。

 

  *  *  *

 

 そうしてプラネテューヌの教会に帰り着いた女神たち。

 すっかり日が暮れ、辺りは暗くなっていた。

 

「たっだいまー! 見て見てー、お土産!」

 

 ネプテューヌは元気よく出迎えてくれた一同に笑顔で挨拶するが、アイエフとコンパ、イストワールの顔は暗い。

 それに気付かず、ネプテューヌは大量のプリンの入った袋を見せる。

 

「全部に名前書いちゃった! これで全部ねぷのプリン! もう喧嘩しないで済むね、ぴーこ♪」

 

 しかし、当のピーシェからの返事はない。

 ここでようやく、ネプテューヌはピーシェの姿がないことに気が付いた。

 コンパに抱かれたロディマスが不安げに一つ鳴く。

 

「あれ……? ぴーこは?」

「ネプテューヌさん、こちらを……」

 

 そう言ってイストワールが差し出したのは、小さなメモ用紙だった。

 メモ用紙にはこう書かれていた。

 

『ねぷてぬへ! うぃりーと、ともだちのとこへいくね! ばいばい! ぴぃより』

 

  *  *  *

 

 ……ネプテューヌは、夜通しピーシェを探して自分の国の首都を駆けずり回った。

 オートボットたちも、女神たちも、アイエフやコンパも、ピーシェを探した。

 

「はあ、はあ……」

 

 無人区画で、ネプテューヌは荒く息を吐く。

 眼前の地面には、プルルートが作ったピーシェを模したヌイグルミが落ちていた。

 

「……馬鹿」

 

 ヌイグルミを拾い上げ、ネプテューヌは小さく呟く。

 

「ぴーこのバカァアアア!!」

 

 どうして、心配を懸けるのか。

 どうして、無断で出ていったのか。

 どうして、どうして、どうして……。

 

 どうして、仲直りも出来ていないのに、消えてしまうのか……。

 

「馬鹿って言う方が、馬鹿だ……」

 

 

 

 結局、夜が明けてなお、ピーシェの行方は知れなかった。

 

 

 

 




この小説だとリンダは明確に敵陣営なので、代わりにトリックに出てもらいました。

サービスを期待してた方、ごめんなさい。

次回はこの話の別視点の予定です。

ピーシェとホィーリーと、そして『彼』の話です。

では、ご意見ご感想、お待ちしております。

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