超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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短く、物語の上での意味もなく、しかし、とても重要な話。


第100話 風の色が変わる

 ある日のプラネテューヌ。

 ネプテューヌたちは、プラネテューヌ首都を一望できる丘の上にピクニックに来ていた。

 

「は~いロディ、ご飯だよー」

 

 ネプテューヌはエネルゴン溶液に顆粒状になるまで細かく砕いた金属を混ぜた物を、容器からスプーンですくってロディマスに与える。

 キュルキュルと喉を鳴らし、ロディマスはエネルゴンを啜る。

 

「よしよし、好き嫌いせずに食べれて、偉かったねー」

 

 ニッコリと笑顔で雛の頭を撫でるネプテューヌ。

 そんな二人を、アイエフとコンパ、ネプギアとプルルートが眺めていた。

 

「ねぷねぷは、ロディ君が大好きですね」

「そうだね~。何だか~本当にお母さんみたい~」

「仕事もあれくらい張り切ってくれると……いや、それはさすがに酷ね」

 

 ホッコリしている二人だが、ピーシェは何故かムウッと頬を膨らませていた。

 

「あれ~、ピーシェちゃん、どうしたの~?」

「なんでもない……」

 

 プルルートが顔を覗き込むと、ピーシェは顔を背ける。

 目を丸くするプルルートに、アイエフが苦笑する。

 

「フフフ、ネプ子が最近ロディマスに掛り切りで、ちょっと拗ねてるのよ」

「あ~、なるほど~」

「むー、すねてないもん! ぴぃおねえちゃんだもん!」

 

 温かい笑みになるプルルートたちに、ピーシェは腕を振り上げて抗議する。

 その姿がまた可愛らしくて、一同は頬を緩める。

 

 一方でネプギアはバンブルビーのために花を摘んで花輪を作ってあげていた。

 

「どうかな、ビー?」

「『最高さ!』『さすが!』『洒落てるぜ!』」

 

 花輪はさすがに指輪サイズであったものの、バンブルビーは気に入ったようだ。

 

「あれ、ロディマス? どうしたの?」

 

 と、食事を終えたロディマスがある方向を見つめながらキュイキュイと鳴いていた。

 ネプテューヌがそちらに視線を向ければ、オプティマスが適当な岩に腰かけて、どこかを眺めていた。

 

「ああ、オプっちのとこに行きたいんだね」

 

 察したネプテューヌは、ロディマスを抱っこして立ち上がり、恋人の方へと歩いていく。

 

「オプっちー! 何してるのー?」

「……ん? ああ、ネプテューヌか」

 

 脇にやってきたネプテューヌに気付き、オプティマスはそちらに顔を向けて微笑む。

 

「プラネテューヌを眺めていたんだ。あそこでは、多くの人々が生活している。生命が有り、文化が有り、自由が有り、平和が有る。……私の護るべき、全てが存在しているのだ」

 

 そう言って遠い目をするオプティマスに、ネプテューヌは少しだけ悲しそうな笑みを浮かべる。

 

「そうだね。守っていこう。わたしたち、みんなでね」

「ああ」

 

 力強く答えたオプティマスはネプテューヌからロディマスを受け取り、優しく持ち上げて自分の膝に乗せてやる。

 

「ロディマス、よく見ておいてほしい。これが平和で自由な世界だ」

 

 オプティマスは、再びプラネテューヌの首都を見た。

 

 数え切れない人々が仕事や学業に勤しみ、あるいは趣味や娯楽に興じていた。

 笑い合い、支え合い、時にぶつかり、そして仲直りしていた。

 喜び、怒り、悲しみ、楽しんでいた。

 

「このゲイムギョウ界は、全霊を懸けて守るに足る、素晴らしい世界なんだ」

 

 この世界に来てから、色々な人間と出会った。

 マジェコンヌやハイドラのような自分勝手で非道な連中もいた。

 しかしそれ以上に、アイエフやコンパ、トレイン教授やネプ子様FCの面々のような個性的ながら善良で勇敢な人々がたくさんいた。

 

「ここで生きる人々を、愛する者を守るためなら、ヒトはどれだけでも強くなれる」

 

 女神たちと共にいると、心が安らぐ。

 アイアンハイドやジャズは心からの笑顔を浮かべることが多くなったし、バンブルビーら若い戦士たちは大きく成長した。

 ミラージュやレッカーズも口で言おうとはしないが、女神を大切に思っているのを感じる。

 

 オプティマスは膝の上のロディマスの顔を覗き込んだ。

 

「そして君だ、ロディマス。君やピーシェたち、新しい命のために、私はこの世界を護る。『自由は全ての生命が持つ権利である』。生命の自由を守ること、それが遥か昔から受け継がれてきた、オートボットの使命であり、私自身の願いなんだ」

 

 オプティマスの言葉の意味を幼いブレインが理解できているのかは分からない。

 それでも、静かに語るオプティマスの青い目を、ロディマスはジッと見上げていた。

 

 ネプテューヌは、少しだけ寂しげに二人を見ているのだった。

 

  *  *  *

 

 皆の下へ戻ったネプテューヌだが、ロディマスがお眠であるらしく、子守唄を歌い出した。

 

「なんか、最近よくあの歌を歌ってるわね」

「ある人が子供を寝かし付ける時に歌うんだって~。仕事しながら三人の赤ん坊を育ててる凄い人~」

「確かに、凄い鉄腕ママですね」

 

 そんなアイエフたちの会話の中、ピーシェはトテトテと歩いていって、ネプテューヌの隣に座ると、自分の存在を主張するようにネプテューヌに抱きついた。

 ネプテューヌは歌いながら、ロディマスを撫でているのとは反対の手でピーシェを撫でると、ようやくピーシェは笑顔を見せた。

 プルルートもピーシェと反対に座り、アイエフとコンパ、ネプギアも思い思いの場所に腰かけ、近くにバンブルビーも座り込む。

 

 風と陽光は心地よく、歌は優しく皆の耳を癒すのだった。

 

  *  *  *

 

 ……しばらくして。

 

「おーい、ネプテューヌ! 皆もそろそろ帰る時間だぞ……おや?」

 

 オプティマスがネプテューヌたちの様子を見に来てみれば、みんなしてお昼寝をしていた。

 

 アイエフとコンパは並んで手を繋いだ姿勢のまま横になっている。

 バンブルビーは腕を枕にうたた寝し、ネプギアがその体に寄りかかって眠っていた。

 そしてネプテューヌ、プルルート、ピーシェ、ロディマスはお互いに寄り添って寝息を立てていた。

 

「おやおや……」

 

 その光景に、オプティマスは穏やかな笑みを浮かべるのだった。

 

  *  *  *

 

 こんな日々がずっと続けばいい……。

 ゲイムギョウ界で暮らしていると、そう思ってしまうことがある。

 ここでの生活の素晴らしさを考えれば、それも無理ならかぬことだ。

 

 ……しかし、我々は忘れていたのだ。

 

 恐るべき策略がその輪を狭め、我々の喉元に迫っていることを。

 我々が持ち込んだ戦いが、どれだけ恐ろしい物であるかを。

 それが、どれだけ女神や人々を傷つけるだろうかということを。

 

 私の名はオプティマス・プライム。

 

 風の色が変わろうとしている。

 穏やかな日々は終わり、嵐がすぐそこに近づいていた。

 

 

~Artificial wars~

 

 了

 




何てことない、でもロディマスの人格形成に大きな影響がありそうな話でした。

ちょっと解説。

風の色が変わる
2010の主題歌、TRANSFORMER 2010 ~トランスフォーマー2010~の出だしより。
ロディマスの話であることを踏まえて、話が佳境に入る(だといいなあ……)から。

次回はようやっとR-18アイランドの話です!
いや、ここまで長かった……。
来週はお盆で祖父の家に顔を出したりする予定なので、ゆっくりお待ちください。

ご意見、ご感想お待ちしております。
では。

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