超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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やっと来たぜ、レース回。


第98話 ゲイムギョウ界横断特急 part1

 ゲイムギョウ界はプラネテューヌ首都の一角に存在するサーキット。

 例年なら、ここではデトイナサーキットNEPというカーレースが開催される。

 ルウィーのカーレースに比べればマイナーながら、国内外に熱狂的なファンがいて大いに盛り上がるのだ。

 しかし、今年は少し様子が異なるようだ。

 

  *  *  *

 

「皆さん、プラネテューヌからこんにちは! カーレースの歴史上かつてない大レースが始まろうとしています!! その名もゲイムギョウ界横断特急!!」

 

 サーキットの実況席に座った、薄茶の髪を長く伸ばしたメイド服の少女がマイク片手に声を上げる。

 

「このレースはゲイムギョウ界四ヵ国とオートボットの末永い友好を願って開催され、その名の通りプラネテューヌを出発しルウィーを経由してラステイション首都を目指す、一大レースとなります! 成績上位者には、それぞれ順位に見合った賞金が支払われ、優勝賞金は驚愕の3億クレジット!!」

 

 興奮した様子で捲し立てる少女。

 

「さらにこのレースには、各国の女神様たちがパートナーのオートボット戦士と共に出場しています!」

 

 その言葉と共にオートボットと女神がスタートラインに付くべく入場してきた。

 

「まずは何と言ってもこの二人! プラネテューヌの女神ネプテューヌ様と、オートボット総司令官オプティマス・プライム!」

「これはオートボットとゲイムギョウ界の友好のためでもある。全力を尽くそう」

「頑張ろうねオプっち! 最高速は不利でもオフロードならワンチャンあるよ!」

 

「続きまして同じくプラネテューヌの女神候補生、かわいいネプギア様とバンブルビー!」

「よ~し、一緒に頑張ろう、ビー!」

「『もちろんさ~』『バランスなら』『俺が、俺たちが』『一番だ!』」

 

「ラステイションからやって来たのは自称最優秀女神ノワール様と、アイアンハイドの親子コンビ!」

「自称ってなによ、自称って!!」

「落ち着けよノワール。ま、パワーなら自信があるぜ」

 

「憧れのあの人に追いつきたい! ユニ様とサイドスワイプ!」

「やるからには一番を目指すわよ。スワイプ!」

「ああ、ビークルモードのスペックなら俺たちが抜きんでてるからな!」

 

「ちっちゃいことはいいことだ! 我らがルウィーの誇る女神ブラン様と……オマケのミラージュです」

「うおい、ちっちゃい言うな!」

「俺はオマケ扱いか……」

 

「さらに双子のロム様ラム様と、同じく双子のスキッズとマッドフラップのヤンチャチームも参加です!!」

「わたしたちが優勝から参加賞まで総なめにしちゃうんだから! ね、ロムちゃん!」

「うん、スキッズとマッドフラップも頼りにしてるね(ワクワク!)」

「おうよ! レースで重要なのは小回りであることを知らしめてやるぜ!」

「それとチームワークもな! 他は二人だが、ここは四人だぜ!」

 

「リーンボックスからは彼女たちが来てくれた! 女神ベール様とオートボット副官ジャズ!」

「ふふふ、正々堂々と勝利させていただきますわ」

「俺の信条は、力よりもスピードなんでね。悪いがこのレース、いただきだ!」

 

 各員がやる気満々である一方、ミラージュはダルそうな雰囲気を滲ませていた。

 例えるならば、家族で遊園地に遊びに行った時のお父さんのようなアレである。

 つまり、凄くイヤそうだった。

 

「何で俺が……」

「いいじゃないの。遊びだとでも思いなさい」

「…………これじゃあ、まるで道化だ」

 

 ブランの声にも不承不承と言わんばかりのミラージュ。

 さらにブランの表情からもあまりやる気が感じられない。

 そもそも彼らはこういう催しは苦手なのである。

 

 それはともかくとして、メイド少女の選手紹介は続く。

 

「女を舐めると痛い目見るわよ! GDCを率いる女傑アイエフさんとアーシー!」

「まあ、私たちは賑やかしね」

「私のビークルモードだと、明らかに不利だしね」

 

「おっとり系ナースのコンパさんと、暴力系軍医ラチェット!」

「ラチェットさん、わたしたちは安全運転でいくですよ」

「そうだねえ。マイペースに行くとしよう」

 

「地味って言うな! ジョ……何とかさん!」

「ジョルトだっての!!」

 

「レースなら俺たちを忘れてもらっちゃ困る! オートボットの荒くれ技術班レッカーズ! 全員での参加です!」

「なあレッドフット、正直こういうレースは邪道だと思うんだがな」

「そう言うなってロードバスター! たまにゃ良いだろ?」

「……………」

 

 言い合うロードバスターとレッドフットに対し、トップスピンはやはり無言であった。

 当然ながら、彼らは武装を外している。

 平和的な催しだからと言うよりも、レースにおいてはデッドウェイトになるからと言うのが彼ららしい。

 

「さらに、多くのレーサーがプロアマ問わず出場しています! あ、申し遅れました、実況は(わたくし)、ルウィー教会でメイド長を務めますフィナンシェがお送りいたします。解説はラステイションで万能工房パッセを経営されているシアン女史です!」

「どうも、シアンだ。私は技術者だから、各車の性能やオートボットとしての能力を中心とした解説になると思う」

「はい、お願いしますね! では続きまして一般枠の紹介になります!」

 

 シアンが慣れてない調子で挨拶すると、フィナンシェは笑顔で司会進行する。

 

 ……その一般出場者枠の中に、黒塗りのバンが混ざっていた。

 乗っているのは、ネズミパーカーの少女である。

 

「リンダちゃん、今からでも遅くないからやめない? さすがにオートボット大集合の中にいんのは生きた心地がしないんだYO……」

「ビビンなよクランクケース! ネズミやクロウバーとハチェットにも手伝ってもらってんだし、いざと言う時の助っ人も用意してある! 絶対、優勝賞金をメガトロン様とレイの姐さんに献上すんだ!」

 

 息巻くリンダに、クランクケースは溜め息を吐く。

 

 何でディセプティコン所属の二人が混ざってんだよとかツッコんではいけない。

 ゲイムギョウ界はそこらへんアバウトである。

 

 出場者の中には、この二人以上に問題のある人物もいた。

 

「何で、何で……」

 

 黒いスポーツカーの中で、少女は慟哭する。

 

「何で姉さんやネプギアたちが参加してるのよ!?」

 

 鮮やかな金色の髪を肩まで伸ばし、垂れ目気味で青い瞳の少女だ。

 普段なら勝気そうな顔は、今は泣きそうに歪んでいた。

 

 彼女の名はアリス。

 元はディセプティコン諜報部隊の一員であり、リーンボックスに教祖補佐として潜入していたこともある。

 ワケあって、今はディセプティコンを抜けて流浪の身だ。

 

「まあいいじゃないか。賞金目当てに参加するって言い出したのはアリスだろ?」

 

 黒いスポーツカー……アリスと同じくハグレ者のディセプティコン、サイドウェイズが呑気に言う。

 

「そりゃあね! そろそろ貯蓄も少なくなってきたし、ディセプティコンに居場所かバレるリスクを考えると気軽にバイトも出来ないし、あんたは足だけは速いし? でも姉さんたちがいるなんて聞いてないし! ブレインズ、あんた私に黙ってたわね!」

 

 アリスは助手席に置かれたノートパソコン……やはりハグレ者のブレインズをキッと睨む。

 

「さあてね。まあ、そろそろお姉ちゃんとお話しするぐらい、いいんじゃないかと思いましてね」

「いいワケないでしょう!」

 

 飄々としたブレインズに、アリスは頭を抱える。

 

「あんな別れ方しといて、両軍裏切るような真似して、どの面下げて会えってのよ!」

 

 棄権して逃げようかとも考えるが、仲間たちはそんな気は無さそうだ。

 こうなったからには、何とか顔を合わせずに済むようにするしかない。

 

「そうと決まれば髪型変えて! 眼鏡して! 後それから……」

 

 いそいそと変装を始めるアリス。

 本来なら彼女は外見を自由に変えられるのだが、今は何故か変形機能が不調でこの姿に固定されていた。

 おかげで、こんな慣れない変装をするハメになっている。

 

 その他の参加者も、峠の野良レースで慣らした走り屋、企業がバックアップにつくプロレーサー、極限までチェーンアップした愛車に跨るバイカー、このゲイムギョウ界でも名うてのレーサーたちが自慢のマシンと共に参加していた。

 何と戦車(中古)で参加している物好きもいる。

 

「各車、スタートラインに付きました。そろそろスタートの時間のようです! ごらんください! 今、スタートシグナルが点灯しました!」

 

 参加者が出そろった頃合いを見て、フィナンシェは声を上げる。

 その言葉の通り三つ並んだシグナルに赤い光が灯る。

 各車のエンジンが回転し、選手の緊張感が高まっていく。

 

 シグナルが音と共に赤から緑へと変わり、同時に爆音を立てて全ての車が発進した。

 

「イィヤッハアアァァァ!!」

「オウイエエェェェ!!」

 

 まず先頭に出たのは、やはりレーシングカーをビークルモードとするレッカーズの面々だ。

 

「さあて、ショータイムだ!」

「俺らも負けてられないぜ!」

 

 それに続くはビークルモードのスペックの高いジャズとサイドスワイプ。

 

「『待てやゴラァァァ!!』」

「まだまだ、こっからだ!」

「応よ!」

 

 バンブルビーが追いすがり、さらに後ろにツインズが走っている。

 だがそこでミラージュが集団の中を縫って、三者の横に並んだ。

 

「ああ! ミラージュ、やる気なかったんじゃなかったのかよ!!」

「お姉ちゃんも、遊びって言ってたじゃない!」

「勝負事で負けるつもりはない」

「遊びは全力でやるから楽しいのよ」

 

 スキッズとラムが文句を言えば、ミラージュとブランは不敵に返しつつその横を抜き去る。

 

「むう! やっぱり正攻法じゃみんなの方が早いか!」

「慌てるなネプテューヌ。勝負はオフロードに入ってからだ」

「アイアンハイド、頑張りなさいよ!」

「へいへい、今はチャンスを待ってんのさ!」

 

 年若いオートボットたちが先頭争いをする中、オプティマスとアイアンハイドは後続集団にいた。

 

「さあて、足元すくっちゃうわよ」

 

 小回りを利かせて集団の中を縫うように走るのはアーシー。

 

「それじゃあ、私たちは安全運転で行こうかね」

 

 そして、最後尾でノンビリ走るのはラチェットである。

 

「みんな~、頑張って~!」

「ねぷてぬ、ねぷぎゃー、あいちゃん、こんぱ! がんばれー!」

「無理はしないでくださいねー!」

 

 サーキット脇の特設席ではプルルートとピーシェ、イストワール、そしてロディマスがネプテューヌたちを応援していた。

 ピーシェとロディマスはプラネテューヌの国旗を模した旗を持って一生懸命振っている。

 

「やはりレッカーズ速い! 速いです! ジャズとサイドスワイプ、加速するも追いつけないー!」

「やっぱりマシンパワーの差を埋めるのは簡単じゃないな。レース用とスポーツカーとはいえ一般車両じゃ馬力が違う」

 

 フィナンシェが興奮気味に実況し、シアンが冷静に解説する。

 プラネテューヌ市街地の車道を利用した特設コースを、色のついた影の如き車の影が爆走する。

 コースの周りに詰めかけた一般市民の声援を受けて、さらに白熱するレースであるが、そんな中でひたすら目立たないようにしている車両が約一台。

 

「ちょっとサイドウェイズ! 前に出過ぎよ! もっと速すぎず遅すぎない位置に行きなさい!」

「無茶言うなよ! これはレースだぞ!」

 

 さらに、クランクケースもバンの姿でひた走るが、その順位は高いとは言い難い。

 しかし、乗っているリンダは余裕の表情で何処かへ通信を飛ばす。

 

「あ~あ~、こちらリンダ。ネズミ、準備はいいか?」

『オイラはワレチューっちゅ! こっちはOKっちゅ!』

 

 通信の向こうからは、お馴染ワレチューの声が聞こえてきた。

 その返答に、リンダはニヤリと笑う。

 

「んじゃ、初めてくれ」

『ほいっちゅ!』

 

  *  *  *

 

 市街地を走り抜けるのは、オートボットばかりではない。

 オートボットに負けていられないとひた走る一般参加者だが、突然そのうちの一台、オーソドックスなレーシングカーがスリップしコースアウトして建物に突っ込んだ。

 巻き込まれた者もおらず選手もすぐさま脱出したものの、車の方はもう走れそうにない。

 乗り手であったモーブ・ソノタが悔し涙を流しながら路上を見れば、何故かバナナの皮がばらまかれていたのだった。

 

 モーブは己のいかにもモブ的な退場の仕方に泣いた。

 

  *  *  *

 

 旧式戦車で走っているのはルウィーからわざわざやってきたマークとテスラの親子だ。

 特にテスラは、軍服風の衣装に身を包み車長席でめっちゃ楽しそうにしていた。

 気分は将校だが、実際にはクマのぬいぐるみを抱えている幼子なので可愛いとしか言えない。

 ともかく父マークの趣味で購入し、前職で培った技術をつぎ込んだ三世代くらい前の戦車(砲は飾りです)で記念にと参加している親子は、軍人ゴッコも含めてレースを楽しんでいた。

 

 だが、いきなり頭上から四角い岩がドッスンと降ってきて、車体がへしゃげてしまう。

 中の親子に怪我はなかったが、テスラは目を回し、マークは娘の無事にホッとした直後に修理代を思って頭を抱えるのだった。

 

  *  *  *

 

 ネプテューヌのコスプレをしたネプテューヌFCの会長の車は、やはりネプテューヌの姿が車体にデカデカと描かれた、所謂痛車だった。

 車そのものは名車と言われる車種のスポーツカーであるのが、逆に痛々しい。

 

 しかし意外にも会長のドライビングテクニック自体は相当な物で、次々とライバルを追い抜いていく。

 

 だが、いきなりその姿が消えた。

 いや道路に前触れなく開いた穴に落ちたのだ。

 

 後からバイクに乗って追いかけてきた副会長は、穴の底で廃車確定となった痛車の運転席で気絶している会長を助け出そうとバイクを降りるのだった。

 

  *  *  *

 

「みんなー! 大丈夫ー?」

「待ってろ、今助ける!」

「ラチェットさん! わたしたちもですぅ!」

「ああ。医者として、見過ごしてはおけないね」

 

 ネプテューヌとオプティマス、コンパとラチェットはこれらの事故を放ってはおけず、救助活動にいそしむのだった。

 

  *  *  *

 

『ツルツルバナ~ナ作戦、大岩ドッスン作戦、落とし穴作戦、全部上手くいったっちゅよ。引っかかった連中はリタイアしたっちゅ』

「アーハッハッハ! やりぃ!」

 

 クランクケースの運転席でワレチューからの報告を受けて、リンダは高笑いする。

 レーサーに相次いで降りかかるアクシデント。

 それらは全てリンダがワレチューに実行させた妨害工作だった。

 

「しっかし、リンダちゃん。リタイアしたのは一般参加のレーサーばっかりで、肝心のオートボットは誰も脱落してないYO?」

「安心しろクランクケース! オートボットの連中には、別の罠を用意してあんだ!」

 

  *  *  *

 

 依然としてレッカーズの三人がトップを争い、その後ろにスポーツカー組という構図が崩れないまま、先頭集団はプラネテューヌ市街地を飛び出し草原の中の街道へと入った。

 

「お! 順路だ!」

 

 ロードバスターが分かれ道の間に立つ標識を見つけた。

 

 描かれている矢印は左向きだ。

 

「よし左だな!」

「待ちやがれロードバスター!」

「…………」

 

 レッカーズが次々と左の道へと入っていく。

 程なくしてジャズ、サイドスワイプ、ミラージュがやってきた。

 

「あら、左ですわね。ジャズ!」

「OK!」

「スワイプ! 今回は迷わないでよ!」

「ユニ! 俺だって標識ぐらい読めるぜ!」

「左よ、ミラージュ。遅れないようにね……」

「無論」

 

 参加者たちは、皆揃って左の道へと進む。

 その近くの茂みの中では、ワレチューが自らの仕事の成果を満足げに見ていた。

 

「ちゅっちゅっちゅ! 『標識回転作戦』上手くいったっちゅ!」

『よおし! よくやったぞネズミ!』

 

 そう、これはリンダの仕組んだ作戦!

 標識を反対にしてライバルを迷わせる恐ろしい罠なのだ!

 

 そうとは知らず、参加者たちは何処へ通じるとも知れぬ道へ我先にと飛び込んでいく。

 

  *  *  *

 

「上手くいったぜ! これでアタイらが一位だ!」

 

 勝利を確信し、リンダは笑みを大きくする。

 自身は、ビークルモードで空中にいるハチェットに誘導してもらいながら走るリンダinクランクケース。

 だが、そうは上手くいかないのが世の常だ。

 

「まったく笑いが止まらないぜ! ア~ハッハッハ……はあッ!?」

 

 目の前の光景に思わず素っ頓狂な声を上げリンダ。

 それもそのはず、しばらく進んだ先にある滝の中からオートボットが次々と飛び出し本来のコースに戻ってくるではないか。

 

『おーっと、選手たちは秘密のショートカットコースに入っていたようです! これはラッキーだ!』

 

 答えはフィナンシェの実況によってもたらされた、

 分かれ道の先は大幅にショートカットできる抜け道だったのだ。

 

「そ、そんな馬鹿な……!?」

 

 結局、順位がほとんど上がらなかったリンダは頭を抱える。

 

「リンダちゃん、そろそろ帰らないかYO? あんまり妨害し過ぎると、俺らのことがばれるし、メガトロン様には何も言わずに動いてんのはヤバいZE?」

「駄目だ!」

 

 冷静にリンダを諌めようとするクランクケースだが、リンダは拳を握り締めて叫ぶ。

 

「最近、ディセプティコンも頭数が増えた。ここらで何か手柄を立てないと、いい加減アタイはメガトロン様に見限られる!」

「そんなこと……」

「無いって言い切れるか!?」

 

 今まで裏切り常習犯(ニューリーダー)や敗戦を重ねる兵たちが罰せられなかったのは、彼らが貴重な戦力だったからだ。

 しかし、人造トランスフォーマーやクローン兵を引き込んだ今、メガトロンが役に立たない者を切り捨てない保障はないのだ。

 頭は良いとは言えないリンダだが、そのことは本能的に分かっていた。

 

「もし、そうでなくても、このままじゃアタイは雑用係で終わりだ! アタイはもっとメガトロン様や姐さんの役に立ちたいんだよ! 手柄がいるんだ。……絶対に!」

『ま、点数稼いでおきたいのは確かっちゅね』

 

 必死なリンダの言葉に、通信の向こうのワレチューも同意する。

 

「しかし、リンダちゃん……」

「……大丈夫だ。必ず勝ちゃいいんだ」

 

 不安げなクランクケースに、リンダは自らを鼓舞するように強気に笑いかける。

 

「まだ策はあるさ」

 

  *  *  *

 

 そのころ、ルウィーの某所。

 

「つまり、ここを通る奴らをぶっ潰しゃあ、良いんだな?」

「ああ、報酬なら払う」

 

 ドレッズの一員、クロウバーの目の前には異様な男が立っていた。

 顔を白く塗り、真っ赤な髪をモヒカンにして口の周りも赤く塗っている。

 

「報酬にもよるな。最近は俺らに薬まで飲ませて当て馬にした挙句、報酬はナシっていう嘘吐きもいてね」

 

 モヒカン男の言葉に、クロウバーは無言で手の中から金の延べ棒を数本落とす。

 重い音を立てて、延べ棒は地面に落ちた。

 

「これは前金だ。成功すれば、もっと出そう」

「………本物みてえだな。……しかし、話がうますぎる」

 

 延べ棒を拾い上げ、軽く噛んでみたモヒカン男はそれでもクロウバーを信用出来ないようだった。

 見た目によらず慎重派である。

 クロウバーは首を少し傾けた。

 

「そうそう、これは余談だが潰してもらいたい連中の中には……オプティマス・プライムがいる」

 

 その瞬間、モヒカン男の顔が凶暴に歪んだ。

 

「……なるほどな。そういうことなら、話は別だ。俺たちメダルマックスに任せるがいい!! ガガガー!!」

 

 モヒカン男は奇声を上げながら、両掌から炎を吹き出す。

 

「パワーアップした俺の火炎放射と秘密兵器で、今度こそ奴を黒焦げのペシャンコにしてやる!! ガガガー!!」

 




Q:何でリーンボックス、ハブなん?

A:やって車で海は越えられないし……。

かくて始まったレース編。
誰も覚えてないだろうサブキャラいっぱい。
真面目なレースを期待してた方はすいません。
自分の中でレースと言うと『チキ○キマ○ン猛レース』とか『マリオカート』とかなんです。
リンダが主役みたいだけど、妨害役を中心にすると話を展開しやすいんで……。

では。

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