超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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今回、内容がひどくキモイです。


第97話 下世話な話

 ゲイムギョウ界の侵略を狙い、謎の『E計画』を進めるディセプティコン。

 

 その一員であるレイは、今や実質的にメガトロンの副官とでも言うべき立場にいる。

 

 女神とはいえ有機生命体であり、ディセプティコンに男尊女卑の思想が根付いていることを考えれば、まさに異例と言える。

 

 それはともかくとして、会議に子育てにメガトロンのサポートと多忙を極めるレイであるが、そのスケジュールの一つに、『夜、雛たちが寝静まった後、10分ほどメガトロンの自室に立ち寄る』というものがあるのだが……。

 

 それが何を意味するか、勘付いている者は稀である。

 

  *  *  *

 

「ねえ、レイちゃん」

「何ですか、フレンジーさん?」

 

 夜、明日の予定をまとめていたレイに、手伝っていたフレンジーに問われ、レイは首を傾げる。

 

「いやさ、ちょっと突っ込んだこと聞いていい?」

「内容によります」

「だよね。……いやさ、最近レイちゃん、よくメガトロン様の部屋へ行くじゃん」

「行きますね」

「でさ……やっちゃってんの? ……精神直結」

 

 その言葉に、レイはキョトンとする。

 ああ、この反応は杞憂だったか……と思ったフレンジーだったが。

 

「はい、してますよ」

 

 アッサリとレイは答え、フレンジーは呆気に取られる。

 

「……マジで?」

「はい。……ええと? どうしたんです?」

「どうしたって……レイちゃん、精神接続の意味、分かってる?」

「ええ、メガトロン様がおっしゃるには、『お前が俺の物だということを魂に刻みつけるための作業だ!』とのことですが……」

 

 ――あの破壊大帝、説明端折ってやがる!

 

 やはりレイは、精神接続についてよく分かってないらしい。

 無知な女性を騙くらかして手籠めにするが如き男らしくない行為に、フレンジーは憤る。

 

「レイちゃん、レイちゃん! 精神接続ってのはね……」

 

 さしあたっては、この無防備な女からである。

 

  *  *  *

 

「は、はあ……」

 

 説明を受けたレイは、さすがに頬を赤くしていた。

 

「分かったかい、レイちゃん! イヤならイヤってハッキリ言いなよ!」

「はあ……そう言われましても」

 

 がなり立てるフレンジーに、レイは頬に手を当てて反論する。

 

「べ、別にイヤではないので……」

「…………ああ、そう」

 

 何とも言えない顔で(分かり辛いけど)大きく排気するフレンジー。

 だがレイはさらに予想斜め上のことを言い出した。

 

「でも……だったら、もっと若い娘を紹介とかしたほうがいいのかしら?」

「……は?」

「私はもう、かれこれ一万年近くも生きてるおばあちゃんですからね。若くて魅了的な女性のほうがメガトロン様も楽しめるんじゃないかなって」

「………………」

 

 絶妙にズレてるレイ。

 もう、何と言っていいか分からないフレンジーだった。

 

  *  *  *

 

「ってなことがあったんだよ!」

「ん~?」

 

 夜、ディセプティコン基地の一角で、フレンジーとバリケード、ボーンクラッシャーがオイルを飲んでいた。

 

「何なの、もう何なの!! レイちゃんの無自覚っぷり!」

 

 フレンジーの愚痴に、バリケードは呆れたように排気した。

 

「俺としては、メガトロン様が有機生命体と直結するような変態的な性癖だったことの方が驚きなんだが……」

「それもそうだが、説明してないってどういうことだよ! 先っちょだけ、先っちょだけってか!?」

「まあ……いいんじゃないか? それはそれで」

 

 ヒートアップしてるフレンジーをボーンクラッシャーがなだめる。

 

「レイが嫌がってないなら、別に構わないだろう」

「嫌がってるとか、そう言う問題じゃあねえんだよ!」

 

 オイル缶をドンと床に置き、フレンジーは吼える。

 

「そりゃあ、メガトロン様はスゲエお人だよ! でも、それと女を幸せに出来るかは別問題だろうが! あーいうタイプは、女が何も言わないことをいいことに家庭より仕事を優先するくせに、独占欲も強いから浮気とか許さねえっていう面倒くさいクチなんだよ! 子供にだって今は甘いけど、いずれはスパルタしちゃうだろうし、家庭崩壊待ったナシじゃねえか! だいたいレイちゃんもレイちゃんで、自分が『そこそこ』の美人だから魅力がないってどういう理屈だよ! 『そこそこ』ってことはだいたいの女より上っつうことだろうが! それに世の男ってのは抜群の美女より、そこそこの女の方が声かけやすいし手も出しやすいんだっての! 年増だからって言うけど29歳とか世の中では女として油が乗ってる時期なんだよ! お前、映画とか見てみりゃ、アラサーのヒロインなんて山ほどいるだろうが! アニメ漫画界隈だけで物を語ってんじゃないよ!」

「長い、長いぞフレンジー。それにどんどん関係なくなってる」

 

 一気に捲し立てるフレンジーに、バリケードは小さくツッコミを入れる。ボーンクラッシャーは呆気に取られていた。

 どうやら相当酔っているらしい。

 フレンジーがこういう酔いかたをするのは珍しいので、二人は面食らう。

 

「俺は、俺はよう、レイちゃんに幸せになってほしいだけなんだぁ……」

 

 最後には涙酒になり、フレンジーはバタリと倒れる。

 

「あ~あ、まったく。飲み過ぎだ」

「まあ、レイに幸せになってもらいたいってのは同感だけどな」

 

 酔いつぶれたフレンジーを横にして、バリケードとボーンクラッシャーはもう一度、オイルを煽るのだった。

 

  *  *  *

 

 翌日。

 『E計画』成就に向けて色々動いているディセプティコン。

 今日もメガトロンは、司令部の玉座に腰かけて部下たちからもたらされる情報を整理していた。

 脇にはレイとフレンジーが控えている。

 円卓の上のホログラム発生装置からは、ショックウェーブの立体映像がリアルタイムで映されている。

 

『メガトロン様、ショックウェーブよりご報告いたします。ご命令の通り、人造トランスフォーマーの増産を開始いたしました。加えて、これまでのモージャス・インダストリー製の兵器も改良を重ねております』

「うむ。頼んだぞ。これからの戦いでは物量がモノを言うからな。それが軌道に乗ったら、こちらに戻ってこい。お前には本部の防衛と『アレ』の最終調整を任せたい。代わりにサウンドウェーブをそちらに送る」

『御意。ではこちらにはトゥーヘッドを残してサポートさせます』

 

 そこでレイが口を開いた。

 

「メガトロン様、発言してもよろしいでしょうか?」

「申せ」

 

 メガトロンが頷くのを確認してから、レイはショックウェーブに向き合う。

 

「ショックウェーブさん。私がお願いした、人間用の装備の方はどうなっていますか?」

『ミス・レイ。そちらについても問題ない』

 

 ショックウェーブが答えると共に、新たな立体映像が投射される。

 それは人間が着込むアーマーのデータだった。

 アーマーは全体的にノッペリとしていて、成型色である白そのままだった。

 

『リーンボックスの特殊部隊が使用する機甲アーマーをベースに、ディセプティコンの技術を組み合わせて開発した。主な機能は身体の保護、筋力の強化、戦闘のサポート。私としては機密保持のための自爆装置を組み込みたかったが……ミス・レイは反対のようなので、オミットした』

「ありがとうございます。……しかしそうですね、デザインの方は、もう少し何とかなりませんか?」

『デザイン?』

「はい。もっとこう……敵を威圧するような」

 

 レイの反論に、ショックウェーブは無感情に反論で返す。

 

『それは論理的に考えて必要とは思えないのだが?』

「いえいえ、重要ですよ。『E計画』実行のあかつきには、クローン兵は人造トランスフォーマーと共に人々に広く知られる『顔』になります。……その顔は目立つ方がいいでしょう?」

 

 穏やかに諭すレイ。

 ハイドラ壊滅後、クローン兵たちはディセプティコンに併合された。

 いずれは戦力として動員されるだろう。

 ちなみに、非クローンの兵たちも併合され、現在はブラックアウトとグラインダーにクローン兵共々、鍛えられている。

 

「ショックウェーブ、デザインの方は部下にでも考えさせろ。お前はそこらへんが不得手だからな。出来上がったら俺に見せるように」

『御意』

 

 通信を切ってからメガトロンはレイを一瞥した。

 

「……お前もだいぶ、物を言うようになったな」

「これでも長生きしてますので。ま、多少は……。これでも、メガトロン様より年上なんですよ」

「ふん、ならばよい。下がれ」

「はい」

 

 一礼をしてから、レイはフレンジーを伴って司令部から退出しようとする。

 

「あ、レイちゃん。俺ちょっとメガトロン様と話があるから! 先に行っててよ!」

「? あっはい。分かりました。ではまた後で」

「うん、後でねー!」

 

 レイに手を振ったあとで、フレンジーは至極真面目な顔でメガトロンと向き合う。

 その姿をメガトロンは面白そうに睥睨した。

 

「それで? 話とはなんだ、フレンジー」

「…………レイちゃんのことについてです」

「ほう? しかし、あれの休暇なら後日改めて取らせることに決めたであろう? それとも子供を失った母に気を使えと?」

「精神直結のことです」

 

 メガトロンのオプティックが一瞬、不快そうに細くなった。

 フレンジーは挑戦的に破壊大帝を見上げる。

 

「してますよね。精神直結、レイちゃんと」

「それの何が悪い? あれは俺の物だ。故に、俺がどうしようが俺の自由よ」

 

 動揺したのも一瞬、メガトロンは傲岸な笑みを浮かべる。

 

「精神直結してること自体に文句はありませんよ。俺は、レイちゃんに精神直結がどういうことかを説明せずにいたことに腹を立ててるんです。嘘を並べて女を()るなんてのは、あんまりにも男らしくありません」

「なるほどな。しかし、レイに言ったことは嘘ではない。実際、あれに俺の物であるという認識を植え付けるためにしているのであって、それ以上の他意はない。……でなければ、俺が下等な有機生命体と直結するとでも?」

 

 嘲笑混じりの言葉に、フレンジーは呆れたように排気した後、部屋の中央の円卓の前までトコトコと歩いていく。

 手の先を鋭く尖ったプラグに変形させると、円卓の端のコンソールのソケットに刺す。

 

「……ここに、サイバトロンにいたころにメガトロン様の『お相手』をした女たちの感想をまとめたファイルがあります」

「……………………何だと?」

 

 ここで初めて、メガトロンの表情が凍りついた。

 その間にも映像が再生される。

 

『一回お相手をしたら、もうこなくていいと言われた。何が不満なのかと尋ねたら、何もないと答えられた』

『凄いタンパク。テクニックも体力もあるけど、情熱が致命的に足りない』

『なんか、そういう欲求が、ほとんど無い感じ。野望以外の欲望が欠落してるって言うか』

『直結してる時間があるなら、他のことしたいってのが凄い伝わってくる。多分、女と直結するのも周りへの見栄』

『次回、マグロ! ご期待ください』

 

 次々と再生される女性の声(映像と音声はプライベート保護と身の安全のため加工してあります)に、メガトロンは何とも言えない顔になる。

 

「ええい、止めろ止めろ!! 何だコレは!! 誰がこんな物を編集した!?」

「資料提供はサウンドウェーブです」

「ふぁっ!?」

「とにかく、こんな感じで、メガトロン様が女性への興味が薄いのは、周知の事実でして。一時期なんざ、同性愛者なんじゃないかという噂が立ったくらいでして……」

 

 まさかの情報提供者と、自分への有り得ない疑惑にメガトロンが頭を抱えそうになるのを堪えていると、フレンジーはさらに続ける。

 

「で、レイちゃんとはしてるんですよね、直結。それも毎日。随分と情熱的ですねえ。サイバトロニアンとは、どれだけ良い女でも、一回して終わりだったってのに」

 

 激情を抑えるようにワナワナと体を震わせていたメガトロンだが、やがて肩の力を抜いて深く排気した。

 

「それで、俺にどうしろと?」

「別に、これと言って。……でもそう、子供には父親と母親が必要らしいですよ」

「……レイを(めと)れと?」

「いえいえ、ただゲイムギョウ界では女に子供を作らせたら、責任とって妻にするもんだそうで」

「……………」

 

 頭痛を抑えるように額に指を当てるメガトロンに、フレンジーはブラブラと体を揺らす。

 

 ――まあ、外堀ぐらいは埋めといてあげるから、頑張んなよレイちゃん。

 

 ちょっとした戦果に勝ち誇るフレンジーだが、司令部の扉が開いた。

 誰かと思えば、話題の本人、レイである。

 

「あれ、レイちゃん? どうしたの?」

 

 苦虫を噛み潰したような顔になるメガトロンに対し、フレンジーはケロッとしてレイに声をかける。

 するとレイはゆったりと微笑んだ。

 

「いえ、ちょっと思い出して……作った資料をメガトロンに、お渡ししようかと」

「資料?」

「……何のだ?」

 

 心当たりがないので口々に聞いてくるフレンジーとメガトロンに、レイはホログラム発生装置にメモリを刺して操作することで答えとする。

 

 投射されたのは、一見履歴書のように見えた。

 女性の顔写真と名前、簡単な来歴がまとめられている。

 意味が分からないという顔のメガトロンに向かって、レイはニッコリと笑った。

 

「メガトロン様のため、『お相手』として相応しいと思われる女性をピックアップしました。各国でも高水準の容姿を持ち、なおかつ能力も高い、魅力的な女性たちです!」

 

 自信満々のレイ。

 フレンジーは驚愕のあまり口の牙を最大限開きながら、思い出す。

 

『でも……だったら、もっと若い娘を紹介とかしたほうがいいのかしら?』

 

『私はもう、かれこれ一万年近くも生きてるおばあちゃんですからね。若くて魅了的な女性のほうがメガトロン様も楽しめるんじゃないかなって』

 

 ――あれ本気だったんだ。

 

「この子なんかお勧めですよ。ラステイションの記者なんですけど、結構良い記事を書くので……それともこっちの方がいいですか? リーンボックス特命課のエージェントで、見ての通りスタイルがとてもよくて……」

 

 なかなか結婚しない親戚にお見合いを進めるお節介なオバチャンの如く、映っている女子を紹介するレイ。

 

 フレンジーが恐る恐る主君の顔を盗み見れば、メガトロンは説明不可能な何とも言えない顔をしていた。

 

「こちらはロボットに詳しい方です! GDCで働いてるけど、そこは何とか……でもちょっと若すぎたかなあ。それとこっちは魔法使いであり優れた科学者という素晴らしい人材です!」

「………………」

「胃が……痛いなあ……」

 

 まだまだ紹介を続けるレイと、かつてない表情で固まっているメガトロンに挟まれて、フレンジーは現実逃避気味に呟くことしか出来ないのだった。

 

 この後、何とかメガトロンとフレンジーが「そういうのいいから」とレイに納得させるのには、少々の時間を有したのだった。

 




Q:精神直結10分で済むの?

A:実際の時間は10分でも、体感的にはそりゃあもう、たっぷりじっくり……。

前回と対になる話。
両想いだけど中々進まないオプティマスとネプテューヌに対し、関係は進んでるけど何かズレてるメガトロンとレイと言う構図。
初期案では、レイが本当に若い娘掻っ攫ってきて、メガトロンとフレンジーが後始末に奔走する話になる予定だったけど、ギャグじゃすまなくなるのでこんな感じに。
ネプテューヌとは違う方向で愛が重いレイでした。

ちなみにレイが紹介した女性は、全員ネプテューヌシリーズの登場人物です。

次回こそはレース回。

……下手すりゃ、次回が最後の日常回。

では。

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