超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION 作:投稿参謀
ネプテューヌの携帯機移植シリーズでお馴染み。
意味は再生、復活など。
転じて生まれ変わる、生まれなおす。
ハイドラ地下基地。
荒れ果てたここに、踵のジェット噴射でゆっくりと降りて来たメガトロン。
地面に着地するや否や、ブラックアウトが縋りつかんばかりの勢いで足元に跪いた。
「メェェガトォロォォン様ぁぁ!! 先ほどのお言葉、スパークに染み渡りました!! このブラックアウト、改めて我が君に永遠絶対の忠誠を誓いまするぅううう!!」
「お、おう……、期待しておるぞ」
「勿体なきお言葉、恐悦至極にございますぅぅ!! かくなる上は、粉骨砕身、働きますぞぉおおぉおお!!」
オプティックからウォッシャー液をまき散らすブラックアウトに、当のメガトロンは面食らう。
見回してみれば、オプティックを輝かせる者、バツが悪そうな者、考え込んでいる者、様々だがどの部下も何だかおかしかった。
そしてハタと思い当たる。
「さてはレイよ! 貴様、俺の話を通信で流したな!?」
すると、一体化しているレイが不敵に笑んだ気配を感じた。
「ええ。せっかくのメガトロンの大演説、みんなにも聞いてもらおうと思って。いいじゃないの、別に」
「こういう言葉がある、『言わぬが花』! ディセプティコンではグダグダと語ったりせず無言実行が美徳なのだ!!」
「こういう言葉もある、『言葉にしなければ伝わらない』。 組織としての思想は、ハッキリさせておかないとね」
見えているワケではないのに、レイが澄ました顔をしているのが分かり、メガトロンはムウッと唸る。
「……とにかく元に戻るぞ。
排気してから呟くと、メガトロンからアーマーが離れ、戦車の姿に再合体すると、光に包まれて人の姿へと戻る。
女神態を飛び越して、人間のレイへと。
その姿形は以前と全く変わっていない。
にも拘らず、眩しい笑みを浮かべてメガトロンを見上げる姿からは一種の神々しさが感じられた。
女神としての力と記憶を取り戻したことで、神性を獲得したとでも言うのだろうか?
「レイちゃ~ん!! 大丈夫だったのかい!?」
「姐さぁん! 心配したんですよぉ!!」
フレンジーとリンダが駆け寄り、レイに抱きつく。
「フレンジーさん、リンダさん、ご心配をおかけしました。私は大丈夫です」
レイは優しく二人を抱き返し、ポンポンと二人の背中を叩いた。
バリケードとボーンクラッシャーが三人に近づく。
「まったく、お前は面倒ばかりかけるな」
「俺は気にしてないぜ!」
「バリケードさん、ボーンクラッシャーさん、いつもご足労おかけします」
丁寧に感謝の意を示すレイに、バリケードはワザとらしくフンと排気し、ボーンクラッシャーは照れたように頭を掻く。
「グスッ……そうだレイちゃん! 今日は特別ゲストがいるんだぜ!!」
「特別ゲスト?」
泣き止んでレイから離れたフレンジーの言葉に、レイは首を傾げる。
フレンジーは頷いた。
「おう! 爺さん、連れてきてくれ!」
「ほいほい」
すると、ディセプティコンの人垣を割って、ジェットファイアがゆったりと歩いて来た。
その腕には、ガルヴァ、サイクロナス、スカージの三人の雛が抱かれていた。
「ほら、餓鬼ども。母ちゃんのトコへ行きな」
優しく地面に降ろされた雛たちは、一目散に母の下へと駆けていく。
リンダとフレンジーは空気を読んで道を開けた。
雛たちは母の胸に飛び込み、支えきれず後ろに倒れたレイの顔に、自分の顔を擦り付ける。
「ガルヴァちゃん……サーちゃん、スーちゃん……」
レイは自らの因子を継ぐ子らをギュッと抱きしめる。
少し離れた所で、マジェコンヌが一連の流れを見守っていた。
憮然とした顔で佇むマジェコンヌだったが、やがてフッと笑み踵を返す。
「あ、待ってください!」
一人去ろうとしているマジェコンヌに気が付いたレイが、ガルヴァを抱っこしたままそれを呼び止めた。
「行っちゃうんですか?」
マジェコンヌは振り返らずに、皮肉っぽい笑みを浮かべた。
「私は女神の敵。ディセプティコンが女神と組むのなら、去るのみだ。借金も無くなったことだしな」
「そうですか……」
「止めはしないのだな」
「ええ、止めても無駄でしょうから。……ただ、お礼を言わせてください。今までありがとうございました」
「ふん!」
鼻を鳴らしたマジェコンヌは、何を思ったのかガルヴァを撫でる。
ガルヴァは首を傾げた後でマジェコンヌの手を舐める。
「この子は、あなたのこと、結構気に入ってたんですよ」
「はん。……なら、別れの挨拶代わりに餞別だ」
言うや、マジェコンヌの姿がぼやけ、別の姿へと変わる。
それは美しい銀色の髪を長く伸ばした、知的で優しげな大人の女性だ。
「ま、マジェコンヌさん?」
「これが私の本当の姿。普段の姿は魔法で作った物だ。……この姿だと、女神の敵にして迫力不足だろう?」
声音も優しく穏やかになっているマジェコンヌは、唖然とするレイを置いておいて、ガルヴァの額に軽くキスしてやる。
「さらばだ。ママと仲良くな」
それだけ言って、マジェコンヌは姿を元に戻して歩き出す。
闇の中に。あるいは明日に。……もしくはナス畑に向かって。
レイは不器用なマジェコンヌに、苦笑混じりに微笑み、ガルヴァはボーッとマジェコンヌの背中を見ていたが、やがて母を見上げ頑張って発声回路を起動させる。
「マ……マ……」
「………………え? ガルヴァちゃん?」
耳を疑うレイ。
「マ…マ…、ママ」
「が、ガルヴァちゃん」
たどたどしくも、言葉を発する我が子にレイは感極まる。
――ああ、そうだ。この子たちが、私の生きる意味だ。この子たちのために、そして意味をくれたあの人のために、私は生きていこう……。
レイは決意も新たにする。
無為な生涯だったけれど、この子たちと、メガトロンと出会うことが出来た。
それだけでも、永い永い放浪にも意味はあった。
レイにはそう思えるのだった。
「
何処か遠い目をするメガトロンだが、ガルヴァはそんなメガトロンを見上げる。
「パ…パ…」
「ん? ……ああ、俺のことか」
たどたどしいガルヴァの言葉の意味を理解し、メガトロンは我知らず微笑む。
思わず自分とレイ、雛たちの関係をぶちまけてしまったが、結果オーライ。良しとしておこう。
世にパパとママが夫婦と言う概念で括られていることは、この際無視しておく。
「あ、そうだ! すいませんリンダさん、この子をちょっと頼みます。フレンジーさん。箱を貸してくれません?」
「へい、姐さん!」
「おう! それで何なんだいコレ?」
リンダにガルヴァを預けたレイに言われて、フレンジーは進み出ると恭しく箱を差し出す。
「ありがとうございます。……いい物ですよ。今開けますね」
レイは悪戯っぽく微笑むと、メガトロンと向き合った。
「メガトロン様、まずはこの度の非礼をお詫びいたします。つきましては、お詫びの印にこちらを献上いたします」
「ほう、それは何だ?」
急に畏まった口調になったレイに、メガトロンは若干柔らかい表情で問う。
答えに代えて、レイはゆっくりと箱の蓋を開けた。
「ッ! これは!」
箱の中に入っていたのは、小さな結晶だった。
丸と直線を組み合わせた図形……女神の瞳に浮かび上がる紋章と同じ形をしている。
つまり……。
「シェアクリスタル!! この国の物か!」
「はい。タリでは結婚式の時にこれに祈りを捧げるのが習慣でした。もう使うこともないので、どうぞお役に立ててください。……きゃ!」
瞬間、メガトロンはレイを掴んで、反対側の掌に乗せると、その手を高く掲げる。
「でかした! でかしたぞレイ! これで段階を進められるぞ! お前は勝利の女神だ!!」
「もう、大袈裟ですよ」
メガトロンの手の上に立ち、レイは笑う。
輝くような、笑みだった。
「お前たちも、レイを称えるのだ!」
「もう、メガトロン様ったら……」
上機嫌なメガトロンに、レイの笑みが照れたものに変わる。
最初に頭を下げたのは、フレンジー、ボーンクラッシャー、バリケードだった。
フレンジーは何となく、ボーンクラッシャーは当然と言う顔で、バリケードは面白そうに。
直属部隊も次々と膝を折る。
続いてリンダが敬愛を込めた眼差しを向けつつ。ドレッズもまた。
コンストラクティコンは迷っていたようだが、ミックスマスターが決意した顔で跪くと、他の者もそれに倣う。
クローン兵たちも、自分たちの女神に跪く。
雛たちは、大人の真似をしてキュイキュイと鳴く。
スタースクリームだけは首を垂れることは無かった。
ディセプティコンが、金属の巨人たちが、一人の女神に、有機生命体に傅いている。
ついにレイは、欺瞞の民からの敬愛を獲得したのだ。
ニコニコと笑っている本人は、よく分かっていないが。
「そう言えば、メガトロン様。一つお願いが」
「何だ?」
「はい。……実は、私のキセイジョウ・レイって名前の『キセイジョウ』の部分、記憶が無い時に結構適当に付けた名前なんですよ。この際だから、キセイジョウ・レイの名は捨てようと思いまして」
意味のない脱女神運動を繰り返す、同じ所をグルグル回るばかりだった、『キセイジョウ・レイ』はもういない。
「ほう? では何と名乗る?」
「ただの『レイ』でいいですよ」
傲慢なタリの女神も、逆恨みの市民運動家も、ここに捨てていこう。
「それでは、レイからメガトロン様に改めて忠誠の証を捧げます」
「ほほう、殊勝なことだな……む?」
フワリと浮かび上がったレイは、メガトロンの唇に自分の唇を当てる。
最初は啄むように触れるだけ、次はしっかりと唇を押し当て、最後に舌を少し出して舐めるように。
サイズ差ゆえ、キスと言うには色気に欠けるし、金属の味が口の中に広がるが、レイにとってはその全てが愛おしかった。
呆気に取られた顔のメガトロンから唇を離し、レイは幸福そうに笑む。
「愛しています、メガトロン様。……例え、あなたが愛してくれなくても、私はあなたを愛しています」
「………………」
メガトロンは答えない。
どう答えても、ディセプティコンの長としての沽券に係わる。
それを分かっているからこそ、レイもそれ以上何も言わない。
伝えられただけで、今は満足だった。
まさか破壊大帝メガトロンが冷凍されたように完全に硬直して答えられなかったとは、思いもよらなかった。
こうして、『キセイジョウ・レイ』は死に、『レイ』が生まれたのだ。
『あの~……色々と盛り上がってるところ、大変申し訳ないのですが……』
と、母艦にいるドクターからオープンチャンネルで通信が入った。
メガトロンは怪訝そうな……そして微妙に残念そうな……顔で通信に出る。
「……ドクターか。何だ?」
『いえ、大変言い難いことなのですが……』
「ええい! ハッキリ言えい!!」
『は、はいぃぃ!! 卵が一つ足りないんですぅうう!! 不時着した時に外に放り出されたみたいなんですぅうう!!』
泣き声混じりのドクターの叫びに、メガトロンは愚か全てのディセプティコンが固まる。
『な、何だってぇえええぇぇえええッッ!?』
次の瞬間、声を揃えて絶叫した。
「何をしておったのだ、この愚か者めが!!」
『申し訳ございませぇぇぇんん!!』
「ええい、サウンドウェーブ! 貴様が付いていながら、どうなっておる!!」
『面目次第モナイ……』
かなり慌てているメガトロンに、珍しくサウンドウェーブも意気消沈している。
「ななな、何なのだこれは!? どどど、どうすればいいのだ!?」
「おちけつ兄者」
「カーッペッ! こういう時は落ちついてタイムマシンを探すんでえ!!」
「お前が一番落ち着けぇえええ!!」
大混乱に陥るディセプティコン。
メガトロンはサウンドウェーブとドクターを怒鳴りつけている。
そんな惨状を目にして、未だメガトロンの手の中にいるレイはスーッと息を吸った。
そして。
「静まりな、アンタたち!!」
再び、一同が固まる。
その視線が自然とレイに注がれた。
構わず、レイは吼えた。
「大の男が揃いも揃って情けの無い! ここでウダウダ言ってる暇があるなら、とっとと卵を探しに行きな!!」
「……おい、いい加減にしろよ貴様。有機生命体如きが調子に乗ってんじゃあ……」
スタースクリームがディセプティコン的価値観に従い顔をしかめて口を開くが、メガトロンが手振りで制した。
「いや、レイの言う通りだ。早く卵を探すぞ。各自散開!」
『おおー!』
メガトロンの号令の下、兵士たちは雛を回収するべく散らばっていくのだった。
「ふむ……。やはり、俺の知るディセプティコンとは違うな」
喧騒から離れ、ジェットファイアは一人、髭パーツを撫でていた。
「……もう少し、付き合ってみるか」
その小さな呟きを聞く者はいなかった。
はい! 章タイトル回収!
まあ、順当なオチだと思ってます。
マジェコンヌの真の姿。
Re;Birth1の真エンドで見せた姿。
いわゆる綺麗なマジェコンヌ。……本当に、あらゆる意味で綺麗なので必見。
シェアクリスタル
アニメ見る限り、レイは複数持ってるんですよね、シェアクリスタル。
では。