超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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いや、やっと実写TF新作の情報が来ましたね。

ザ・ラストナイトですか。

公開までにこの小説、完結できるかな……。

※最後の方のショックウェーブやなくてサウンドウェーブでした。



第88話 宴の始まり

 バンッ!と大きな音を立てて子供部屋に兵士たちが雪崩れ込んできた。

 

 そろそろ寝ようかと考えていたネプテューヌと、一人黙考を重ねていたレイは何事かと驚いた。

 

「ワッ! 何さいきなり!」

「黙れ! そのパーカーをこっちに寄越せ!」

「ちょッ!? ホントに何!? ハッ、まさかわたしに酷いことするつもりでしょう! エロ同人みたいに! エロ同人みたいに!」

「いいから! ……マジでエロ同人みたいな目には遭いたくないでしょう?」

 

 兵士の一人……顔を隠した兵士だが、なぜか声が普通のクローンとは違う気がした……は無理やりネプテューヌのパーカーを脱がすと、兵士たちの人垣を割って現れたマルヴァに恭しく渡す。

 マルヴァは怒りに満ちた顔でパーカーを撫でたり裏返したりしていたが、背中部分に豆粒程の機械が吸着しているのを見つけるや、ワナワナと震えだした。

 

「この……虚仮にしやがって……」

 

 激情のままに、機械……発信機をもぎ取るや地面に叩きつけ、何度も何度も足で踏みつける。

 やがて発信機が完全に壊れると、大きく息を吐いてから、視線をレイに向ける。

 

「まあ、この女神には後で思い知らせるとして……まずはあなたよねぇ」

 

 ツカツカと歩いていくとレイの顎を掴んで自分の方に向ける。

 

「気に食わないわねぇ、その目。たかが料理人だが市民運動家だがの癖に、やけに肝が据わってる。……それに、良く見れば中々綺麗な顔してるじゃない?」

 

 マルヴァはニヤリと笑ってから、何処からかナイフを取り出すとレイの体の上に這わせる。

 

「ああ、ますますあなたの泣いてる顔が見たくなったわ」

「それなら簡単です。私、泣き虫なもので」

「ふ~ん、じゃあまずはこうしましょう」

 

 マルヴァはレイの頬をナイフで薄く切る。

 痛みに眉をひそめるレイを見て、マルヴァは狂気的な薄笑いを浮かべながらナイフに付いた血を舐める。

 

「タリの女神は、美しさを保つために若い女性の血を絞って、その血を浴びていたそうだけど、私もそれに倣おうかしら?」

「……デタラメですよ、それ? 長い歴史の中で別の人と混同されたそうです」

「あらそう」

 

 強がるレイを見てニヤニヤと笑うマルヴァに、ネプテューヌは我慢の限界と掴みかかろうとするが、隣に立つ兵士が肩を掴んで止める。

 

「やめなさい! ……今、逆らったら他の子たちにも危害が及ぶわ」

「う~……!」

 

 何故かオカマ口調の兵士の言葉に、ネプテューヌは黙り込む。

 

「じゃあ、連れてけ。実験区画だ」

 

 放たれた言葉に、周囲の兵士たちがざわつく。

 クローン兵が進み出た。

 それも一人だけではなく、何人もだ。

 

「お言葉ですが、それは……」

「なに? また上位コードで命令されたい? ……それとも、この場で殺されたい?」

「しかし……」

 

 兵士たちはなおも言い募ろうとするが、他ならぬレイがそれを制した。

 

「いいんですよ。あなた方は下がって」

 

 優しく微笑むレイに、兵士たちは戸惑いながらも下がる。

 マルヴァはレイから感じる強い意思に怯む。

 

「さあ、行きましょう。……あ、そうそう、ネプテューヌさん」

 

 それから、兵士たちに捕まっているネプテューヌに顔を向けた。

 

「あの子たちには、上手く説明しといてください。……怖がらせるといけないので。それと」

 

 一拍置いてから、レイは笑む。

 それは、まさしく『女神』の如き優しい笑みだった。

 

「あなたが『子供たち』を傷つけないって、信じてもいいですよ。とりあえず、ですけどね」

「……レイさん。……うん、ありがとう」

 

 ネプテューヌも微笑み返した。

 マルヴァは二人の会話の意味が分からないようで……当たり前だが……顔をしかめるが、すぐにレイの腕を掴んで引っ張っていく。

 

「安心なさい。殺しはしないわよ。……殺しはね」

 

  *  *  *

 

 逆さ吊りのまま、捕らえられているオプティマスは時を待っていた。

 

 動くことはできないが、勝算はある。

 

 武器庫を総司令官権限で開けば、履歴が残る。

 ラチェットやジャズなら、すぐにそれと自分の失踪を結びつけるはずだ。

 その理由も、連絡が取れなくなっているネプテューヌ絡みのことだと分かるだろう。

 そうなれば、教会はブルーウッド大樹界に捜索隊を出す。

 先頭はアイエフやコンパ、ネプギアにバンブルビーもきっと参加するだろう。

 彼ら、彼女らは優秀だ。注意していれば、この基地の場所もすぐに探し当てる。

 

 その時こそ、反撃の時だ。

 

 今はただ、ネプテューヌの様子をうかがいながらジッと自己回復に努める。

 

 しかし、急にネプテューヌに付けた発信機からの反応が途絶えた。

 

 すわ、ネプテューヌに何かあったのかと思い、無理やり檻を破ろうかと考えたが、その必要はなかった。

 ロックダウンが部屋に入って来たかと思うと、オプティマスの視界に入るように、壊れた発信機を投げ捨てた。

 

「まったく、油断も隙もない奴だ。……何か? 恋人は監視してないと気が済まんのか?」

「ああ、これでも独占欲が強くてね。……ネプテューヌに傷一つ付けてみろ。私は貴様らを決して許さん」

 

 オプティマスから放たれた静かだが激烈な殺気に、一瞬だけ気圧されたロックダウンだが、不機嫌そうに鼻を鳴らすような音を出す。

 

「国を相手にするのに一番価値が高いのは、あの女神だ。そう簡単には殺さん」

 

 ホッと排気するオプティマス。

 だがロックダウンは、さらに眉根を吊り上げた。

 

「はんッ! あの女神に危険に晒されてる、そもそもの原因は、お前だろうが」

「…………」

「お前らが、この世界に戦争を持ち込んだ。お前らの戦争をな。この世界の連中が死ねば、それはお前の責任だ」

「…………」

「最初はサイバトロン、次はゲイムギョウ界。どれだけ巻きこめば気が済む? 偉大なプライムが聞いて呆れる。ただの虐殺者だよ、お前は」

「だからこそ、この世界を護る。ネプテューヌを守る。それが戦いをこの世界に持ち込んだ、私なりの責任の果たし方だ」

 

 辛辣なロックダウンの言葉にも、オプティマスは冷静に返す。

 ロックダウンは侮蔑的な笑みを浮かべた。

 

「笑わせてくれる。預言してやるよ、お偉いプライム様。お前は何も守れない。事実、サイバトロンを守れなかったようにな」

「……ならば、お前には悲劇を回避する方法が分かると言うのか? 恒久的な平和と自由を作り出せると? ならば私に教えてくれ。頭を下げろと言うなら、いくらでも下げよう。地位や金が欲しいなら、好きなだけくれてやる。お願いだから、その魔法のような方法を私に伝授してくれないか?」

 

 思わぬ言葉に、ロックダウンもまたグッと言葉に詰まると、オプティマスは薄く笑う。

 

「ああ、笑わせてくれる、ロックダウン。お前もまた、争いを止める方法など知らないのだ。それでも、誰かが何とかしてくれることを期待して、現実にひたすら文句を言い続ける。識者を気取り、自身は他と違うと嘯きながらな。……孤高の賞金稼ぎが聞いて呆れる。ただの『トランスフォーマー』だよ、お前は」

「ッ! 黙れ!!」

 

 檻を蹴り飛ばし、ロックダウンは踵を返す。

 

「お前は他の場所に移送して、そこで分解されるだろうよ! それまでゆっくり休みな!」

 

 ロックダウンが部屋から出て行った後、オプティマスは自己回復を再開した。

 

  *  *  *

 

 特別に設えられた独房の中で、ハイドラヘッドは一人自問していた。

 

 どうしてこうなってしまったのだろうか?

 自分はただ、作られた役目を果たして死にたかっただけなのに。

 

 オプティマス・プライム。

 

 戦いに生き、戦いに死ぬのだろう、自分の理想像。

 彼の手にかかって死ぬのなら本望なのに、相手は自分を戦争の相手すら見ていなかった。

 

 いったい、何が足りないと言うのか。

 

 ――教えてやろう。

 

「…………?」

 

 声が、聞こえた気がした。

 幻聴だろうか?

 自分もいよいよオカシクなったようだ。

 

 ――いいや、幻聴ではない。

 

 やはり、聞こえた。

 顔を上げると、そこに禍々しい紫の光を放つ、ダークスパークが浮かんでいた。

 

「ッ!? これはいったい」

 

 ――教えてやろう。お前に足りない物、それは憎悪だ。

 

「憎悪……」

 

 ――そうだ、身を裂くような怨嗟、魂さえ燃え尽きるような憤怒。それこそがお前に足りない物だ。……さあ、手を伸ばせ。我がそれを与えてやろう。

 

 ハイドラヘッドは、ゆっくりと手を挙げ、そして……。

 

  *  *  *

 

 マルヴァはレイと兵士たちを伴って、研究棟の地下深くへと向かう。

 そこは、ハイドラの基準で見てもなお忌まわしい研究が行われていた。

 

 並ぶのは、『C』『B』『K』『S』の文字がそれぞれ刻印された人間大のカプセル。

 

 それらを通り過ぎ、一番奥の小部屋の中に入る。

 するとそこには無数の機材に囲まれて、人一人が入る大きさの機械仕掛けのカプセルが置かれていた。

 マルヴァがパチリと指を鳴らすと、周囲の研究者たちが機材を操作して、カプセルの蓋を開ける。

 

「これは?」

「この機械はね。人間に体に因子を注入するのに使うの。一度に大量の因子を注入された人間は、生きながらにして、醜いモンスターになってしまうのよ」

 

 何をされるのか理解して、さしもに青ざめるレイ。

 その顔を見て、マルヴァは満足げに嗤いながら、兵士に指示を出して、レイをカプセルの内側に拘束させる。

 

「ッ!」

「じゃあ、人間としての人生にさよならを言いなさい。大丈夫、モンスターとしての人生も悪くないわ。私はごめんだけど」

 

 残酷に言い捨てたマルヴァは、カプセルの蓋を閉めさせて科学者が差し出したスイッチを押そうとする。

 

 その瞬間、マルヴァの頭上の換気ダクトの蓋を破壊して、金属製の何かが落ちてきた。

 青い四つの目と複数の節足、一見すると虫の一種のように見える。

 

「テメエ! もう勘弁ならねえ!!」

 

 いや、それはディセプティコンのフレンジーだ。

 レイを影ながら守ろうとしていたようだが、痺れを切らして飛び出してきたのだ。

 

「ななな、何なのこの金属の虫は!?」

「黙れ! レイちゃんを苛めやがって!!」

 

 マルヴァの頭部に取りつこうとするフレンジーだったが、マルヴァは咄嗟にそれを払いのける。

 フレンジーはすぐさま近くの非クローン兵士に組み付き、その首筋に爪を当てる。

 

「フレンジーさん!」

「さあ! こいつの首を掻っ切られたくなかったら、そのカプセルを開けな!」

「ひ、ひぃいい……」

 

 情けない声を上げる非クローン兵。

 

「早くしな! ディセプティコンの気は短いんだ!」

「ま、マルヴァ様……」

 

 フレンジーはギチギチと歯を鳴らすような音を出して、周囲を威嚇する。

 だが、マルヴァは大きく笑うと、スイッチを押した。

 愕然とするフレンジーと兵士。

 

「て、テメエ! こいつがどうなっても……」

「好きにすれば? 代わりはいくらでもいるのだし」

 

 兵士は絶望した顔になるが、フレンジーはそれどころではない。

 

 装置の中に青い光の帯……視覚化された因子が出現し、レイの体へと吸い込まれていく。

 

 中で拘束されているレイの体がビクビクと痙攣し、白目を剥く。

 

 因子とは、記憶、すなわち情報である。

 

 途方もない情報の洪水がレイの中に流れ込み、体の隅々に至るまで浸透していく。

 

「が……っは……」

「れ、レイちゃぁあああん!!」

 

 フレンジーが「俺を見捨てやがった……」と自失茫然で呟く兵士を捨ててカプセルに張り付いて叫ぶが、レイは 悲鳴を上げることさえ出来ず、意識は情報の海へと消えた。

 

「レイちゃん! レイちゃぁああん!!」

 

 フレンジーは叫びながらも、何とか思考を働かせてカプセルを開けようとハッキングを試みるが、兵士たちが飛びかかってきた。

 殺到する兵士を躱しながらも、何とか機械に接続しようとするも、ついに捕まってしまった。

 兵士たちは暴れるフレンジーを、頑丈そうな箱に押し込め蓋を閉じて施錠する。

 

「レイちゃぁぁああん!!」

 

 それでも、中で暴れているようでガタガタと箱が揺れ、叫び声が聞こえる。

 

 マルヴァは安全な場所に退避しながら、それを見ていた。

 顔には醜悪極まる笑みが浮かんでいる。

 

 周囲の兵士は、クローン、非クローン問わず、マルヴァに好意的ではない視線を向けている。

 すなわち、悪臭を放つ汚物を見るような嫌悪と、得体の知れない物に対するような恐怖。

 

 しかしそれらを一切気にせず、マルヴァは金属生命体が喚いていることに全能感を感じ、それに浸っていた。

 

 だが、突如鳴り出した、けたたましい音によってそれどころではなくなる。

 敵襲を知らせる警報だ。

 

「何事!?」

「お、お待ちを……こちら、実験室。管制室応答せよ。おい、何が起こって……はあ!?」

 

 素っ頓狂な声を上げる兵士に、注目が集まる。

 

「き、緊急事態です! 当基地の上空に、ディセプティコンの戦艦が現れました!!」

「なんですって!? どうして接近に気付かなかったの!!」

「お、おそらく、単純に向こうのステルス性能が、こちらの索敵技術を上回っているからでは……そ、それよりご命令を! どうしますか!?」

 

 今は責任の所在を問うている場合ではなく、事態にどう対処するかだ。

 マルヴァは髪を掻きむしる。

 

「決まってるでしょ! 対空砲台を撃ちまくって連中を地上に降ろすな! それと戦闘機を出して、叩き落とせ!!」

「り、了解!!」

 

  *  *  *

 

 レルネーの埋まっているフージ火山の麓。

 鬱蒼とした木々に覆われた樹海から、岩や樹木に偽装されていた対空砲塔が、真の姿を現す。

 さらに、地面が大きく開いたと思うと、内部のカタパルトが戦闘機を次々と発進させる。

 

 その遥か上空にいつの間にか現れたディセプティコンの空中戦艦、その艦橋でメガトロンは腕を組んでモニターに映る情報を読み取っていた。

 

「ほうほう、対空砲台に戦闘機、地下には戦車や無人兵器もいるな。豪華なことだ」

 

 一人ごちるメガトロンの背後には、スタースクリームとサウンドウェーブ、ディセプティコンの三大参謀のうち二名までもが控えている。

 

「テロ屋の分際で大層な基地ではないか。破壊し甲斐がある。……さて」

 

 外の様子を映しているモニターとは別のモニターに、艦内で待機している各部隊が映し出された。

 

「各員、報告せよ」

 

『直属部隊! 総員、出撃準備、完了しております!』

 

『コンストラクティコン! いつでもいけますぜ!』

 

『ドレッズ。命令を心待ちにしております。……リンダちゃんも』

 

 出撃を今か今かと待つ部下たちに、メガトロンはニヤリと笑い号令をかけた。

 

「ディセプティコン軍団、攻撃を開始せよ! 蛇狩りだ!!」

 

『おおおぉぉおおおッッ!!』

 

 ディセプティコンたちは鬨の声を上げる。

 

 破壊の宴が始まった。

 




もはや人望がストップ安のマルヴァさん。

オプティマスの勝算
そりゃ、女神と総司令官がそろっていなくなれば、探すだろうと。

ハイドラヘッド「だから基地から離れた所におびき寄せたのに……」
ロックダウン「俺は依頼の通りに動いただけ」
マジェコンヌ「気付いてたけど、言う義理はないね」
マルヴァ「チックショオメエオオ!!」

ただの『トランスフォーマー』
オプティマス「ネプテューヌ浚うわ、ストーカーだわ、逆さ吊りだわ、さすがに嫌味の一つも言いたくなる」

『C』『B』『K』『S』
いつか、この伏線回収できたらいいなあ……。

次回、お待たせしました。
祭りです。

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