<雪ノ下side>
―――――比企谷君が亡くなって一週間がたった。
死因はトラックに轢かれた時の頭の強打らしいけどそんなことはどうでもよかった。その死因の前に比企谷君は私たちを庇って死んだのだ。なのに、なのに彼は笑顔だった、誰も見たことのないようなとびきりの笑顔。恨みごとを言ってくれれば少しは楽になったかもしれないのに彼は最後に
『ありがとう』
確かにそういったのだ。何で、何であなたがお礼を言うの?お礼を言いたいのはこっちなのに、またあなたは一人でいつも傷つこうとするの?私たちを少しは頼りなさいと思ってた。けど今回は違った。助け『られた』のだ、一人だけいち早く危険に気付き一切の躊躇もなく。
そんな彼の優しさが嬉しくて悲しかった。彼に、比企谷君に文句を言いたい、お礼を言いたい、
―――――どうしていつもあなたは一人で傷つくの?もっと私を、私たちを頼りなさい!
そして助けてくれてありがとう、と言いたかった。
―――――だから、だから無理なのはわかってる、それでも!
「・・・・彼を、比企谷君を返してくださいっ!私はどうなっても構いません!だから、だから神様・・・ひきがやくんを・・・ぅぅぅ」
顔を両手で覆い、声を出さずに肩を細かく震わせて静かに泣いた。自分が泣いていることを、世界中の誰にも気取られたくないという様子で。・・・これで何回目だろう、神様なんて実在しない者に頼んで自分の無力差を実感したのは。
『奉仕部に行け』
突然頭の中にそんな声が聞こえてきた。いつもなら空耳として扱っていただろう。しかし今の私には何故かそこに行けば、奉仕部にいけば何かある。この声を聴いた瞬間私は涙を服で拭い髪もまともに手入れしてない状態だったがどうでもよかった。
急いで私は靴を履き替え奉仕部へ向かった。
<雪ノ下side out> <由比ヶ浜side>
ヒッキーが亡くなって一週間、私には何もする気力がなかった。ご飯も喉に通らないし自分の部屋からも出る気はなかった。親が心配してくれたが大丈夫、と言ったら気を利かせてくれたのか、短く何かを言って出ていった。
『ありがとう』
ヒッキーがあの時言った言葉が脳裏から焼き付いて離れなかった。あのときのヒッキーはこちらを憎んでる様子は一切なかった、それどころか初めてみる見惚れるほどの笑顔で。
――――ヒッキーがいなくなった日から私はヒッキーに初めて会ったときのことを思い出していった。
最初は・・・車に轢かれそうになったサブレを身を挺して守ってくれたんだっけ。あの時のヒッキーは王子様に見えた、かっこよかったな・・・、他にも文化祭、体育祭、修学旅行、いろはちゃんの依頼とか色々あったなぁ。・・・楽しかったな。
「いろいろあったけどやっぱりヒッキーがいたから・・・だろうな、楽しかったのは。」
そう思ったらまた涙がでできた。・・・駄目だ、せっかくヒッキーが助けてくれたのに、こんなに情けない姿見られたらあきれられちゃうよ。
「駄目・・・なのに、なみ、だが止まらないよぉ・・・っ。」
いったん涙がこぼれ始めると歯止めがきかなくなる、分かってるから泣かないように堪えてたのに弱虫だな、私は。
何分、いや何時間泣いただろう。泣くのは昨日で最後と決めてたのに少し前までのことを思うと涙があふれてくる。
「だめだめ、もう泣かないってきめたんだから・・・」
そんなのは無理だ、わかってる。けどあと一回でいい、あの人の、ヒッキーの声が聴きたい。そう、無理とわかってるけど私のわがままがもし神様に届くなら、
―――――ヒッキーを、また奉仕部の三人で歩める人生をください
その時、
『奉仕部に行け』
この時私は自分の願いが神様に届いたとでも思ったのかもしれない。この声を聴いた瞬間私は奉仕部へと走り出していた。<由比ヶ浜side out>
<雪ノ下side>
ずっと走り続けて奉仕部についた、よく体力が持ったほうだと思った。けど今はどうでもいい、あの声の真実を知りたかった。
ガラッ
「・・・ゆき、のん?」
そこには奉仕部のメンバー由比ヶ浜さんがいた。
「由比ヶ浜さん・・・、なんでここに?」
ふと見るとここには他にも人がいた。小町さん、平塚先生がいた。
「みんな・・・、なんでここに・・・?」
「それは小町も疑問に思ってるんですけど・・・、雪乃さんはどうして?」
突然頭の中に声が響いてきた、だから急いできた。そんな馬鹿みたいな言い方だが他にいいようがなかった。
「声が・・・、声が聞こえてきたのよ。奉仕部に行けってね・・・。」
「っ!?小町も一緒です。・・・みなさんは?」
皆首を縦に振る、みんな同じ理由だった。ならただの偶然じゃない・・・?そんなことを考えてたら突然声が響いてきた。今もっとも聞きたい声でもう聴けないと思ってた、
「・・・えー、みなさんこんにちは?でいいかな。」
―――――――― 比企谷 八幡の声 ――――――――
「「「「!!??!??」」」」
一斉に奉仕部の中がうるさくなった
「・・・あぁーーー、これを聞いてる奴らに言うけど俺はもう・・・死んでる。お前らもよくわかってんだろ?」
そしてその言葉ですぐ皆静かになった・・・、現実を、必死に目を背けていた現実を本人から告げられたのだ。しかし小町さんが最初に疑問をぶつけた。
「お兄ちゃん・・・だよね?これどこから声が聞こえてるの?」
「最初に言っておくが、そっちの声は俺には届かない。だから淡々と俺のことを言わせてもらうぞ。」
これを聞いて今度こそ皆静かになった、比企谷君の一言一言を聞き逃さないためだ。・・・小町さんはスマホで録音しているみたいね。あとでもらいましょうか。
「まずもう一度言うが俺は死んだ。それは変わらない事実だ、だかこっちには死亡後の世界ってのがある。・・・信じられないかもしれないが事実だ、そこから俺はしゃべっている。」
そうして今、彼が身に起こっていることをすべて話してくれた。とある神にであったこと、自分がイレギュラーのおかげでその世界にいること、そして、
「俺は転生っていうものをするらしい。死ぬかもしれない危険な場所らしい。」
それを聞いて耳を疑った、なぜそんな世界に転生するのか?彼ならそんなことはしないはず・・・、その疑問はすぐ解けた。
「そして生き残ることができたら、俺は生き返ることができるらしい。」
信じられない内容に、さらに信じられない話が出てきた。比企谷君が生き返る・・・?
「だから、俺は絶対生き延びる。どんな生き恥をかいてもお前らに会うために。・・・だから雪ノ下、由比ヶ浜。俺が死んだことはお前らの所為じゃない。俺がしたいからそうしたんだ。勝手に俺が傷ついただけ、それだけだ。」
そんなの無理だ、気にするななんて無理に決まってる。勝手に傷ついただけ?そんなわけない!、そう叫ぼうかとでも思った。けど、
「え~・・・、その場にいるやつは神に教えてもらったからそいつらだけに言いたいこと言わせてもらうわ。」
次の人たちのばんだ
「雪ノ下と由比ヶ浜言ったから・・・、次小町だな」
それを聞いたとき小町さんの肩がビクッと動いた
「お前には小さいときから世話になってたな。・・・少し困らされるときもあったがお前は俺の可愛い妹だ、なのに飯つくってもらったり兄の相談事にのってくれたりと借りばっかで何も返せてねぇな。・・・すまんな。生き返って絶対に返す、なんだってお前は世界一愛する俺の妹だからな!今の小町的にポイント高いか?」
「高いよ、高すぎるよ。お兄ちゃん!だから絶対帰ってきてね!」
小町さんは涙をながしながらも笑顔をつくっていた・・・、とてもきれいな笑顔だった。
「次は平塚先生ですね・・・・。本当に先生には迷惑をかけましたね。最初は作文で始まりましたね、こんな俺が不安だから奉仕部に入れると今思うととてもありがたいことでした。俺たちが、奉仕部が危機のとき、選択肢をだしてくれましたね、そのときだけでなく最初からずっと。先生のおかげで奉仕部は元通りになりました、ありがとうございます!こんな素敵な先生なら絶対結婚できますよ、あせらなくても。」
「・・・余計なお世話だ。比企谷め帰ってきたら覚えてろよ。」
そんなことをいいつつも先生は笑顔を浮かべていた
「最後に、みんなで俺の部屋にいってくれ。ちょっとしたプレゼントがある。そして俺は必ず戻ってくる、約束だ!」
そういって比企谷君は笑顔を浮かべた。誰もが見惚れるような素敵な笑顔で
「これがお兄ちゃんが言ってた・・・」
そこには小さなプレゼントボックスがあった。丁寧に名前がきで今この場にいる四人と川崎さん、一色さん、戸塚くん、材木座さんのがあった。
後者はともかく川崎さんのと一色さんのは事情を聞かせてもらわないといけないわね・・・
「これは、比企谷君が帰ってきてから開けないかしら?直接比企谷君に渡してもらわないと気がすまないわ。」
「「「賛成!!!」」」
アハハハハハハハハ!!!
久しぶりに笑った気がする。・・・比企谷君あなたが生き返る可能性があるだけでも私たちはこんな風に笑えるの、だから必ず帰ってきてね。
―――そうして笑い終わったときには、もう悲しみの影はなかった
この後、四人にプレゼントと渡したところとても喜んでしましたっと。
今のところ
①八幡、一誠に憑依する
②八幡、一誠友人などの関係(憑依なし)
③八幡、一誠敵対(憑依なし)
④八幡、一誠家族関係(憑依なし)
などです。
他にも、コメントなどしてくれるとうれしいです。