捻くれボッチの転生記   作:ジャージマン

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二十四話 謎

走って、走って、走り続ける。風をも越すほどの速さで全力で、だが頭で考える事も辞めない。走りながらも考えが常に止むことはないが今、最も気になる事はただ一つ。

 

「・・・何故ラム、もしくはラムとレムが助けを求める状況になっている?」

 

さっきまでの事を思うとグレモリー先輩たちが犯人のように思うが冷静に今考えてみると彼女たちがこのような行動をとろうとした場合、自惚れの様に聞こえるかもしれないが俺は絶対に気付くはずだ。しかも会話しているときにグレモリー先輩の顔の表情の変化を一時も目を離さなかったが、その時の顔の表情を思い出すとまたもや疑問に思い当たる。

 

俺はメールを見て動揺をわざと顔に出してみたが、その時のグレモリー先輩はもちろん、他の部員たちも俺がその動揺を表した理由に思い当たったような顔はしていなかった。俺との交渉決裂がハッキリしたために犯行に至ったのならば俺が戸惑う理由をわからない筈がない。

 

―――だが、彼女たちは演技でもなく本気で分かっていなかった

 

それならば彼女たちのレムたちを人質にしているというのはブラフというのが分かった、だがブラフと分かったからこそ厄介だ。

 

レムとラムは、とある理由により一般人に後れをとることはまずない。例えそれが自殺願望者の思い切りがあるやつでも、快楽殺人者だったとしても、だ。

 

いつも俺に甘えてくるラムだが、俺とレム以外の他人にとてつもなく冷たい。だから暴漢などによく絡まれるのだが容赦なく、そして簡単に対処する。

 

故にラムがメールで助けを求める理由が全く分からない。

 

「・・・まぁ、それは一般人としての俺の意見だが」

 

自嘲を浮かべながらそう呟く。そうだ、今の俺に敵意を持ってるものは自分でも把握できないほどいる。そしてラムが助けを求めなければいけない程の相手。

 

―――そんなの俺と同じ、人外しかいねぇだろ

 

あれほど彼女らが巻き込まれるのを忌避したのにこれかと己への失望で足を止めてしまいそうになるが今はそんな時間さえ惜しい。

 

自責の念に陥りそうなのを頭を振って阻止をし、今彼女らがいそうな場所を予想する。

 

といっても、もう既に予想している場所に来ているのだがな。

 

俺は予想した場所、自分の家に立ち思う。

 

こんなに考え事をして時間がかなり経っているように見えるがメールを見てから俺は一分もかからずここに到着している。相手が俺の親しいものを殺して、嘆くのをみたいというような相手ならこの一分で十分だ。そのようなことがないようにすこし願いながら家に入る。

 

そして音を立てずに家に侵入すれば今、まさにレムとラムを捕縛して立ち去ろうとしている一人の姿が―――

 

俺はそれを見た瞬間、一気に能力で身体能力を高め背後から首に蹴りを放った。

 

しかし、その攻撃を相手はこちらを見る事も無く片手で受け止めた。そして何か機械を使っているような声でこちらに話しかけてきた。

 

「対話をしようとしない、相手が誰なのかの確認をもしようとしない。・・・君は獣みたいだな」

 

そう言い俺の足を折ろうとしたがそれを読み、もう片方の足で蹴りを入れる牽制をして拘束から逃れる。

 

「自分の家に不法侵入をしている犯罪者と会話なんてしたいと思うか普通? 随分とあんたは心が広いやつだな」

 

皮肉に皮肉で返し、目線をレムとラムに向ける。どうやら気絶させられているようだ。失礼だが今は気絶してくれていて助かる。彼女らがもし今の現状を見てしまえば間違いなく今の世界に戻れなくなる。俺がいつレムとラムが目を覚ますかわからない状況で焦っているのが分かっているのか相手は相対的に落ち着いており、余裕の態度だ。

 

そして相手はチラリと俺に視線を向け口を開いた。

 

「・・・ふん、この状況で妹ではなく己の力が見られることへの心配をするとは貴様の人間性がしれるものだな」

 

「勝手に言ってろ、女の子を誘拐しようとしている犯罪者さんよ」

 

そう言いつつ、俺は頭を働かせる。目の前のにいるのは体格的に多分男であろう、そして先ほど奴はレムとラムを妹と言った。確かに状況的に見れば妹に見えなくはないが断言しているところを見ると確信していることが分かる。

 

とうとう俺の周りの人を狙いだす連中が現れたか・・・。そのことにあまり苛立ちはしない、俺だってターゲットをいち早く抹殺しようとするならばその手を取る。故に同じことをされるかもしれないという事でレムとラムには秘密にとある護衛を付けていたが今、目に映るところにその姿は見えない。

 

そこまで考えがいくと必然的に答えに至る。そしてそれは正解だと言わんばかりに相手は飛び掛かって来て口を開く。

 

「貴様が保険につけていたであろう護衛は既にこの世にはいない、故に安心しろ。すぐに護衛たちの元に逝かせてやる」

 

相手がどこからか取り出した剣を俺の首元に振るう。それを最小の動きでしゃがんで躱し、言霊の力を使い手っ取り早く終わらせようとするがやめてこちらも剣を取り出し斬撃を繰り出す。

 

その斬撃は相手が突然空中で制止したことにより外れ、相手は魔力球を近距離で繰り出すが自分も同じ魔力球を生成して相殺する。その相殺した衝撃から逃れるためにお互い背後に飛びのく。

 

「その程度か? だとしたら早々に殺されることをお勧めしよう」

 

「さぁ? もしかしたら手を抜いて戦ってやっているかもしれないし、もう今が全力かもしれないな」

 

そう軽口を言うが今の現状は非常に不味い。確かに俺は全力ではないが余裕をもって戦えている訳では無い。そして焦れば焦る程相手の思うつぼだろう。そう思いいち早くこの場を打開するために少し力を解放する。

 

「―――我、本物を求めるものなり」

 

その言葉と同時に背中から勢いよく黒龍の翼が生える。それと同時に相手の間合いに踏み込んでいきローキックを放つと同時にこれを回避された場合の回転斬りの二段構えを行う。

 

相手は軽く飛んで蹴りを躱し、回転斬りを軽く流してさらに俺に上段構えの斬撃を放ってくる。躱しきれないと思った俺は同じく剣を振るい鍔迫り合いになる。

 

その時に気付いた。

 

「―――貴様」

 

相手の目を見るとそれはこちらの背中を底冷えさせるほどの殺気。

 

「まだ、本物なんてものを夢見ているのか―――」

 

と同時に聞き逃すことが出来ない言葉。

 

「・・・なんでお前、そのことを」

 

聞き逃しそうになった言葉、だが決して聞き逃してはならない言葉。そのことに呆気にとられた瞬間に鍔迫り合いに負け、肩から腰にかけて深く斬られる。

 

血が噴き出すが、そのことには気が回らなかった。

 

何故何故何故、何故相手が俺の中にしかない思いを、誰にも話したことの無い思いを知っている―――!?

 

だが相手はその俺の心の叫びには答えず、致命傷を負った俺に背を向け言葉を放つ。

 

「・・・今貴様の命は奪わないでおく。だが忘れるな」

 

―――必ず貴様を殺しにくる。

 

呆然としている俺を一瞥し、レムとラムを抱えて霧の様に消えていった。その様子に俺は未だ呆然としたままで追いかける気力が出なかった。ただ、今頭にあることは奴の言葉。

 

本物なんてものをまだ夢見ているのか、そう言っていた。奴が心を読める神器を持っていたとしても、『まだ』という表現はおかしい。

 

その斬られた傷をそのままに、俺はずっとそのことを考えていた。

 

 

 

 

 

 

――――今さっき攫われた妹たちのことは頭の片隅にもなくただそのことを

 

 

 

 




いつもいつも更新おそくて申し訳ないです。
と、同時にこんな更新が遅い作品を読んでくれる読者さんには感謝の念が尽きません。
今回は短いですが次回は長く書くつもりです、スランプに陥ってしまいました・・・

また次回の更新がリアルのことで遅くなりそうですがそれでも待っていただけると嬉しいです!

次回もよろしくお願いします!

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