捻くれボッチの転生記   作:ジャージマン

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二十一話 堕ちた者

――――夢を見る

 

それは少年時代のころ。勘違いに勘違いを重ねた前世のころではなく、血と暴力を重ねた記憶。俺はある一人の武の師に出会った。

 

その師は自分にそっくりだった。外見は目は腐っていなく一見大人しい様に見える人物。しかし何故だろうか。俺にはその目どころか大事な何かまでもが腐り落ちているような、

 

―――まるで自分のように

 

同じ者だから分かるというものなのかもしれない。だから俺はその者に近づいた。

 

・・・全く一緒というわけでは無かったがやはり根本的な思考回路は一緒だった。だから俺は少なからずその師を信用した。この世界で技術をたった一人だけに学ぶというのも不味いし何より心のどこかに信用できる誰か、人と話したいと思う自分がいた。

 

あれだけ人を信じるのを苦手だと思っていたのに俺がそんなことを無意識にでも思ってしまっていた自分、本当にどうかしていたのだと思う。

 

そう、信じてはいけないのだ。この世界では誰一人たりとも。

 

・・・だからこそ最悪の結末を招いた。

 

その瞬間目の前のふわふわとして心地よい空間は切り替わった。

 

――――返り血を浴びた俺が

               

              自分の足元にある血塗れな『何か』を黙って見下ろす姿が――――

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

―――――――――――――――――

 

――――――――――       

 

 

 

 

「ッ!!!!!!」

 

その場から飛び起きる。

 

「・・・夢、か」

 

それはいくつも重ねたうちの大きな部類に入る俺が犯した『罪』の一つ。思い出したくもないと思って居る筈なのに気分が悪いときに睡眠をとるとどうしても見てしまう。・・・久しぶりに見てしまったせいか背中に冷や汗を大量に掻いている。

 

「うへぇ・・・・。気持ちわりぃ」

 

これもどこぞのリア充の所為だ。許すまじ木場。こうして自分自身に茶々を入れる。・・・そうでもしないとこの言い表せない感情が溢れてしまいそうで。

 

「・・・というかやべぇ! もう夕方かよ!!?」

 

・・・ちなみに今夕焼けが綺麗な時間帯である。寝ぼけていてお空が綺麗だなぁ~、と思っていたが体が無意識に現実逃避をしていたようだ。

 

流石逃げることに関しては天才の俺。自分でも意識しないうちに現実というものから逃げていたようだ。すぐに現実君に追いつかれているが。この俺が逃げられないとは・・・、まぁいつものことなんだがな。

 

二年生になり初日早速授業をサボってしまうとは・・・。今日は大した授業とかなくて安心した。

 

フェンスにもたれ空を見上げる。程よく暗くオレンジに染まった世界。

 

俺は夕暮れ時が一番好きだ。綺麗だしこんな俺を覆い隠してくれるから。朝の一面に広がる青空は嫌いだ。俺の心の内を暴かれているようで。

 夜の月が出ている時は嫌いだ。俺一人だけが照らされているように錯覚してしまうから。だから夕暮れのうっすら前が見える程度、遠くに居れば物はオレンジに染まりよくわからなくなる。

 

それは人との距離と同じ様で、いくら近づいても人の本性は見えないのだと教えてくれているような気がしてとても落ち着くのだ。

 

「・・・なに恥ずかしい事考えてるのだか」

 

俺はその一人の世界から名残惜しくも立ち去った。

 

 

「そういえば時計、直しとかないとな・・・」

 

今度こそ学校に早く着かないようにするために俺はそう強く思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「比企谷・・・。やっと見つけた」

 

 

その時比企谷には『罪』が近づいてきていた――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・いってきます」

 

今度こそ時間をしっかり確認して鍛錬を済まして家を出た。イヤホンを耳に突っ込み音楽を鳴らす。ゆっくり歩きながら考え事をする。それも大事な事、今一番俺が困っていることかもしれない。

 

 

 

―――――それは

 

 

 

 

 

 

小町の料理が食べられないことだ!!!

 

大した問題じゃないって? いやいや俺の死活問題に関わってくることだ。毎日コンビニ弁当やら自分で作るのはとてもめんどくさいことでもあるし小町の愛が籠った料理が食べられないせいで発狂しそうだ。

 

「・・ひ・・・せ・・・・い」

 

大げさだと言われるかもしれないがお前らには分からないだろう。起きてきたら世界一可愛い妹(俺主観で)が起きたら笑顔でお兄ちゃんご飯できてるよー、だぞ! これだけで俺が人に復讐(笑)すると思っていた思いが消えていくのだ・・・。

 

「ひき・・・・や・・・せ・・ぱ・・・」

 

まぁ絶対許さないノートには書くのだがな。書いちゃうのかよ!? と思った奴、当たり前だろう許せないんだから。

 

「比企谷先輩!!!!」

 

後ろの方に急に引かれる。・・・なんだよアブねぇな。俺は小町のこと考えてたんだぞ、そう思いジト目で後ろを向くと涙目のジト目でこちらを見てきている一年生の塔城 小猫、駒王学園のマスコット的な存在だ。

 

「え、なに。何でそんな不機嫌なの」

 

「・・・先輩がさっきから呼んでも無視するからじゃないですか」

 

そう言ってまたジト目で見てくる。・・・いや、俺音楽聞いてたし聞こえてなかっただけなんですが。

 

と、言っても無視してしまっていたことなので一応謝る。

 

「あー、すまん、な?」

 

「・・・許しません」

 

許してくれないみたいです。気まずいのでその場から退散しようと思う。別に俺はもう謝ったし? 女子の気持ちなんてわかる訳もないのでね。・・・周りの視線も痛いし。主に女子からの。

 

聞き耳たてると何かまた兄妹のじゃれ合いよーー!! とか何か言ってるがどういう意味だこの野郎。と思い歩き出そうとすると足が動かない、だと? その動かない理由は塔城が俺の服を掴んでるからだ。

 

「あの、服伸びるんですけど」

 

「知りません。というかどこに行こうとしたんですか・・・!」

 

俺はまた選択肢を間違えたようです。小町、お兄ちゃんどうすればいいの・・? というか体が全く動かない。その小さいロリ体系のどこにそんな力があるんだよ。主にどこが小さいとは言わないが。

 

・・・あれ。なんか力が強くなってる気がする。心でも読めるんですか塔城さん。というか本当に泣きそうなのでちょっと俺も真面目に対応する。

 

「きゃあ・・・・!!」

 

「はーい。高いたかーい」

 

真面目にすると言ったな、あれは嘘だ。子供をあやすような感じで抱っこする。さっきの涙目から一変赤面に変化しました。普通の女子にするとヤバイ光景にしか見えなくなるがコイツは違う。・・・小さいからだ。何か周りの声が超うるさいがしらん。

 

「降ろしてくださいっ・・・!」

 

「ん~? 聞こえんなー」

 

・・・やべぇ。何か楽しくなってきた。俺のキャラ崩壊がヤバイ気がするがそんなもんしらねぇな。今はこの目の前の奴で遊ぶ・・・! 小町には到底及ばないがこれで妹成分を補充させてもらおう。

 

「よしよし」

 

そして頭をなでる。抱っこしながら頭をなでる・・・、昔小さい頃小町にもやったなぁ。今ではしたら嫌われちゃうかも。

 

「ふにゃあ♪ ・・・・じゃないです、やめてください」

 

今の反応で分かった、こいつの弱点が!!

 

「ここか? ここがいいんだな?」

 

「にゃぁあぁぁあぁああ!!!」

 

・・・その茶番はチャイムが鳴るまで続いた。周りの女子たちが笑顔で倒れていたがどうしてだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、ハチ! 朝のやつなんだよ!」

 

授業が終わり昼休憩となる。その瞬間兵藤は俺に襲い掛かってきた。それを軽くかわす。鬱陶しいので気絶させて立ち去るのもいいけど一目がありすぎる。

 

「遊んでいただけだ。それ以外に他意はない」

 

「嘘つけ! 実は抱っこして子猫ちゃんの小さなおっぱいを堪能していたんだろ!」

 

「・・・お前言葉を選んだ方が良いと思うぞ」

 

兵藤がそう言った瞬間女子からの凄まじい目線、殺気が飛んできた。俺はコイツとは一緒にされたくないので連れが迷惑かけてすまんなと言っといた。

 

こうすると大抵『俺への』殺気は消える。まぁ最初から全部兵藤に向けられていたものなんだがな。

 

「何でおまえばっかりこんないい思いしてんだよ!!」

 

「知るかよ」

 

・・・根はいい奴なはずなんだが。顔もいい方なのに性格だけでこんな理不尽を受けるとは。やはりこのご時世は怖いな。

 

そして俺はいつも通り屋上へ向かった。・・・この時女子が近づいてくるのは勘弁してほしい。

 

屋上に着き軽くジャンプをして屋根みたいな所に飛び乗る。ここが俺の特等席だ。・・・ただ今日は先客がいるみたいなのでプロのボッチだけが習得ができる自分の存在をゼロにする。

 

・・・僕は影だ。

 

冗談を抜いてそこにいる人達は二大お姉様と呼ばれている内の一人、リアスグレモリー先輩と今朝会った塔城だ。話をしているようだが流石に盗み聞きする趣味をあいにく持ち合わせてないのでパンをムシャムシャしながら音楽を聴く。そしてパンも食べ終わりここにはいる理由もないのでここから立ち去ろうとする。

 

「・・・八幡の様子はどうかしら」

 

そんな言葉が俺の耳に不意に届いた。盗み聞きは望まないことだが俺に関わることなのなら聞いた方が良いのかもしれない。・・・女子の会話になるのなら早急に立ち去るが。

 

「・・・今日私は汚されました」

 

「ぶっ!!??」

 

・・・やば。あまりにも突然なことなので声が出てしまった。いわゆるステルスが消えてしまったわけで。

 

「八幡・・・!?」

 

「いつからここにいたんですか!」

 

「いや、さっき来たばっかりですだから俺なにも聞いてませんので!!」

 

そして俺は全力でその場から姿を消すことにした。・・・あれ? 俺別に悪い事したわけではないのに何故逃げたのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

そして学校を終え家に帰る準備をする。もう夕暮れ、早めに帰ろうとしよう。そうしようとしたときふとこの場にいてよろしくない気配を感じ取る。・・・普段なら無視するがそれを対応している相手も相手だ、すこし見に行ってやろうか。

 

そうして物陰を利用してその場を覗くとそこは告白現場だった。

 

「私・・・、兵藤一誠君のことがずっと前から好きでした! 付き合ってください」」

 

「・・・え、俺? ・・・俺の方こそよろしくお願いします!」

 

大半は聞き逃していたがとある女子高校生に告白されている幼馴染がいた。今の俺には嫉妬という感情は無い。・・・ただ兵藤が危険だな。

 

そしてその場から俺は立ち去った。・・・さて、と。明日からどうするかな。

 

今日はめんどいからいいや。告白した初日から厄介ごとはしないだろうしな、・・・あの堕天使。

 

そうして帰っている途中兵藤が後ろから全力ダッシュでこちらに向かってきた。

 

「ハチィィィィィィイ!!!」

 

ちょっとぶつかりそうだったので足を引っ掛け体制を崩しそこからまた立たせる。

 

「どした」

 

「・・・俺いつの間にダッシュを無効化されたんだ・・・? いや、そんなことより! 俺にもついに彼女が出来たんだぞ!」

 

「おう、よかったじゃねぇか」

 

「あれ・・? 反応薄いな・・・。それでな明日デートするんだけどよ。どうしても楽しませたいんだ。だからハチ、アドバイスくれねぇかな?」

 

「お前なんでその性格を普段振る舞わねぇかな・・・。まっ、お前が初めてできた彼女だ。相談に乗ってやるよ」

 

「ありがとな」

 

そこで兵藤は本当に嬉しそうに笑った。だから俺は胸が痛んだ。・・・今俺が相談に乗ってやるのは明日の堕天使の行動を予測するため。そして過去の自分、騙されている中学時代に重なって見えたから。・・・やめよう、こんなことを考えるのは。

 

家も近いため俺の家に招き相談に乗る。手料理を振る舞い兵藤があまりにも美味いといってくれたのでつい本気を出してしまった。

 

デートプランも決まり兵藤は帰って行った。その帰り際にお前って本当兄みたいだな! と茶化してきたので少し成敗しといた。

 

 

 

 

 

 

 

デート翌日俺は兵藤の後をこっそりつけていった。・・・兵藤は本当に楽しそうだ、隣の女を除いては、だが。あいつの笑みはどう見ても作り笑顔。吐き気がする、あんな気持ち悪い作り笑顔は初めて見たかもしれない。だが俺の考えと違い時間は過ぎていきついに公園に来た。これは俺達二人で練り合わせたデートの行先ではなくあの女が誘ってきた所だった。

 

兵藤の顔は緩んでいた。過去の俺と同じように勘違いしているのだろう。そして偽りの愛で包まれていたデートはいま火蓋を切られた。

 

「ねぇ一誠君」

 

「な、何かなっ?」

 

「死んでくれるかな?」

 

そう笑顔で言い放った。光の槍を持ち彼女は振りかぶった。兵藤は動けない。まさかこんな結果がくるとは思わなかったのだろうな。好きな恋人に殺されるなんて俺だって思いたくないなそんなこと。どうせ女の頭の中では兵藤を殺すことしか考えていなかったのだろう。・・・はぁ。俺はその場から一瞬で彼女の前に立つ。そして軽く力を入れて吹き飛ばす。

 

「は、ち・・?」

 

「よう兵藤。初めてのデートは失敗だったな。まぁ最初はそういうもんだめげんなよ」

 

まだ現実に戻れて来れてない兵藤。・・・今日は兵藤のある意味忘れない記憶になるだろう。どこの誰かみたいに罰ゲームで告白されそれを了承したら虐められた馬鹿な男と同じように。

 

・・・こういう女がいるから男は騙されんだよなぁ。騙される方も悪いけど。

 

『まぁ今日は眠っとけ』

 

その言葉で兵藤は眠りにつく。・・・さて。

 

「少しばかり絶望を見せてやるよ。堕ちた天使さん?」

 

「このクソガキィィィィ!!!」

 

―――――こういう奴がいるから俺は他を信じることが出来ない

 

改めて目の前の者を見ると人とは何だろうかと思ってしまう。自分自身のことすらも分からない俺が何を人というものを見定めようとしているのだろうかと少し嘲笑を浮かべてしまう。それでも、いやそれだからこそ俺は本物を求め続けてしまう。

 

――――しかしふと心の中から出てきた一つの疑問

 

       「本物って本当にあるんだろうか」

 

       その言葉は爆音によってかき消された

 

 

       

 

 

 

 

 

 

 




今回は早めに出せました・・・
更新不定期ですみません。
これからも見ていただけると嬉しいです!
誤字などあればコメントよろしくお願いします!

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