捻くれボッチの転生記   作:ジャージマン

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こんな気持ちは何度目、いや初めてだろうか―――

こんなにも自分の考えに信頼をおけず、自分の存在の在り処に迷い、<今>を見ず過去を振り返ってばかり

あぁ、馬鹿馬鹿しい

迷ってばかりで行動に進まず考えるだけで満足し、自分はやはり間違ってはいないんだと、自分は自分のままだと言い聞かせている

これを馬鹿と言わずしてなんといえるだろうか


確かに、確かにだ

この考えは別に間違いではないと思う

自分の能力不足に嘆き、過去を見てそれを誤魔化し自分自身を偽っていく

人間は皆、そうだろう

だれだって自分の醜い所など見たいわけがない

それは俺だって例外じゃない

しかし、しかしだ

人は皆、汚いところを理解し、それを受け入れる、または諦めている

だが俺はそれすらも出来ない

俺の心の中にいる理性の化け物が醜い自分を認めず過去の輝かしいものを肯定する

だから俺は今の俺を受け入れないし、許容も出来なければ諦めもしない

なんて無様だろう

人に当然ある感情は俺にはなくそれに俺は気づいている

気付いているのに認められない

そんなヘタレで何もに行動が移せない自分が、俺は






        『どうしようもなく嫌いだ』


十八話 過去の自分に別れのバトンを

            ドサッ

 

お互いが一閃、それを制したのは―――

 

「・・・やった、か」

 

八幡の敵、リアであった。

 

「手強いものだったな・・・。こんな子供にここまで苦戦するなんて」

 

リアは悪事だけを働いてはいなかった。心のどこかにヒーローというものを忘れずにおり情けで人を助けてはいつも危険な状況に堕ちいり、悪党からは実力はあるがその馬鹿な行動で全てを台無しにしている。そうしてこう呼ばれていた。

 

         『偽善者リア』

 

リア自身もそれに気づいていた。悪の道を進むのを決めたはずが心の片隅にヒーローになりたい、人から感謝の言葉をもらいたい―――

 

そんな感情のせいか困っている人を見ると体が勝手に動いてしまうのだ。

 

「―――なんて自分を正当化しすぎか」

 

確かな実力はあったものの自分が殺した人物はまだ小さな子供だ。これほどの力があれば、これほどの頭があれば将来この子は何にでもなれたのではなかろうか。そんなことを思うと自分の心の中に罪悪感というものが芽生えてきた。この感情こそが偽善と言われる一つだと分かっているはずなのに。

 

「けど。それも今日で最後にしよう」

 

正の感情を消し、悪の感情に統一する。だからその見切りにこの子の弔いをしよう―――

 

そうして比企谷八幡の生気を失った体を持ち上げようとした時、後ろからとても濃い殺気を感じた。

 

「ッッ!!」

 

すぐさまその場所から飛び退き回避行動をとった。その殺気の正体を確かめるため目を向けた。そこには驚愕な人物がいた。

 

「何で、何でいるんだ・・・・!」

 

「・・・・・」

 

「今さっき殺したはずの人物がッ!」

 

―――そこには比企谷八幡が立っていた

 

 

 

 

リアは目の前の存在に驚きを隠せなかった。その姿を見た時は神器の能力によって幻覚を見せられていたのかと思ったがそれは彼、比企谷のボロボロの状態を見てその類の考えを除外した。なら仕留めきれていなかった? そう思い先の死体を見たがそこには確かに同一人物比企谷八幡の死体が転がっていた。なぜなぜなぜ。なら目の前の存在は何だ・・・? しかしそれを考える間もなく八幡が斬りかかってきた。考えに浸かるのを放棄し、向かい討つ。向かってきた斬撃を弾き、がら空きになった腹を一閃する。彼の実力だとこれは避けられる、それの追撃のため第二始動を始めようとする―――

 

しかし予想外なことが起きた。避けないのだ、ピクリとも。そのまま自分の剣は彼の腹に吸い込まれていった。それに応じるように彼は倒れた。あまりにもあっけない結果に拍子抜けしてしまった。しかし先の殺したはずの彼が分身し生きていたことには謎だらけなのでまた増えてくるかもしれないため二体目の死体から目を背け警戒する―――

 

グサッと何かが貫通した音が聞こえた。肉がえぐれているような音が。その音の正体は何だろうかと回りを見回す。しかし何もない。疲れたせいか幻聴だろうか。そう思い自分の身体を見る。そこには、

 

 

 

        自分の腹を貫通した剣があった

 

 

 

それを意識したとたん凄まじい痛みとともに視界が暗くなってくる。それに抗うことはできないと、頭のどこかから命令が下されている。なら視界が無くなるうちにこの正体を見ようとしたが踏ん張れずそのまま倒れてしまう。その直後。

 

―――苦痛にあふれる彼、比企谷八幡の顔と目があった

 

あぁ、僕はやられたのか。そう自覚すると同時に五感全てがシャットアウトされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勝った、か」

 

俺の前にはリア、先ほど殺し合ったていた敵の倒れた姿がある。

 強かった―――、その一言に尽きる。今まで俺が経験したもの、人間として、せめて人間であろうとした俺の攻撃は全て見切られ反撃を食らった。今を含めてやはり俺はオニキスの技を、人外の技を使わないと勝てないと改めて実感した、してしまった。これまではオニキスが使った―――、というのはいい訳、か。しかしそれを覚えていなかったら自分は今頃死んでいたのだろう。もう一人の自分の死体を見てそう思った。あの時教えてもらっていて良かったと――――――

 

 

 

 

   =========================

 

『八幡よ。突然だが私の能力、八幡の神器の優れているところは分かるか?』

 

「本当に、突然だな・・・ッ!」

 

突然聞かれた質問、ちなみに今オニキスと戦闘中である。

 

『そう言うな。自分の能力の優れた所をいざという場面に活用できないのも可笑しなものだろう?』

 

迫ってくる波動を何とか躱し、息切れをかみ殺し頭を動かす。まぁ確かにオニキスの言っていることは正しい。危機的場面で自分にあった攻撃をせずに敗北だなんて笑えない話だ。

 

―――しかし

 

「そういう話をいまするべきじゃねぇだろッ!」

 

『いいから答えろ。波動のペースを早くするぞ?』

 

・・・酷くないですかね? いつもは休憩時間にこういう話をしているのに何で突然。しかしウダウダ言っていると本当に俺がアレになってアーなってしまうので答える。

 

「火力の高さ、か?」

 

最初に思いついたのはこれだった。オニキスの能力、いわば俺の神器は一瞬で全てをも破壊できるほどの力が出せる。当然デメリットもあるのだが―――

 

『確かにそれもある。だが今のお前にはその力は十分に使えないだろう? 少し力加減を間違えるとお前の身体が持たないからな』

 

そう、この問題点があるのだ。この能力の力の底上げは脳のリミッター解除みたいなものだ。本来人間が出せる力を軽く凌駕できる代わりにそれに身体がついてこないのだ。

 

『もどかしいものだな・・・。お前がもう少し頑丈なら力が十分に使えるのだがな』

 

「悪かったな、ひ弱で」

 

だが俺は少し安心している。アニメみたいに人間離れなど俺は望んでなどいないのだ。もし俺がこの能力を身体一つ傷がなく使うなどなったら身体だけでなく心のほうもどうにかなりそうだから。

 

「だが、火力の高さじゃなかったら何があるんだ? それしか俺は思いつかない、というか使ったことが無いんだが」

 

これまでの戦いを振り返ると力を倍加して殴り、剣を持って力を倍加して斬ったりと、見事に物理ばかりだ。

 

『確かに教えてもいなかったからな・・・。まぁ先ほどの答えを言うと技の多さ、隠密で、相手の予測できないようなことが多々できる』

 

「・・・しかしそれは神器を持ってるやつによってはあまり変わらなくないか?」

 

俺の神器がこんなにも現実離れしているのだ。他にも透明になれたりだとか分身だとか使えそうなものだが―――

 

『他の者の能力と私を比べるなよ? 確かに似たようなものがあるかもしれないが―――、質が違う。それを今から教えてやろう』

 

その言葉から俺は修行を厳しくされた―――

 

    

    =========================

 

 

その時の様子を思い出すとつい苦笑が出てきてしまう。しかし体がそれすらも許さないようで激しい痛みが体を襲う。さっきまでアドレナリンが大量にでていたせいか痛みを感じなかったが勝負が終わり緊張から解放されるとドッときた。つい眠気に体を任せてしまいそうだが頭をふってそれを制す。

 しかし起きていても現実というものに悩まされる。俺がリアに斬られたはず―――、なのに生きていた。それは俺がミラーイメージングを使ったからだ。ミラーイメージングはもう一人の自分、いわくクローンを作り出せる能力。ここまでなら自分が二人いて戦いに有利に立てると思うがそうは上手くはいってはくれないようだ。この技は<本当>にもう一人の自分なのだ。斬られたら二人とも痛いし、もう一人が気絶するならもう一人も多分気絶するだろう。しかしこの技、痛みを押し付ける、傷を押し付けるとのこともできる。出来るのはどちらか片方だけだが例えば俺が斬られても俺の皮膚には傷ができず痛みだけでもう一人に傷が出来る。今回は俺はそれを利用した。痛みだけをもう一人に押し付け俺は俺を<殺した>

 それで相手を油断させ倒した、という訳だ。

 

―――――ついに俺は自分まで

 

俺は、俺を殺した。紛れもない自分の意志で。つい前まで自分を大好きと言ってたのに、それすらもその考えさえも俺は殺したのだ。しかし。それは、その考えは昔のことなのだ。今の俺はもう自分なんて大嫌いだ。こんな屑で、自分のことでさえ口にできなくて、そんな自分を好きだと言っていた自分がどうにかしていたと思う。―――なのに。この心に渦巻いている感情は何なのだろうか。俺の死体の前に立ち冷たくなった頬を触る。この俺の心の感情は何だと、お前を殺した俺をどう思っているのか、そんなことは口には出せないけど、そんなことは聞けないけど俺の心に伝えてくれないか、そんな馬鹿なことを俺は思っている。しかし既にボロボロな自分の頬を叩き目を覚ます。そして自分の死体を炎で埋葬する。さぁ、これでお別れだ。こんな過去の自分と、今の俺なんかと違う輝かしい<俺>とはもう、お別れだ。

 

 

       過去の自分に別れのバトンを渡そう

 

     

         これ以上惨めをさらさないために

 

 

       

       そしてバトンを受け取ろう

 

          新しい『道化』の自分になるために

 

 

 

              だから

 

             本当に最後

 

           心の叫びを言わしてもらうよ

 

 

         「こんな世界なんて、大嫌いだ」

 

           




更新遅れてすみません!!!

勉強が忙しくて・・・、これからも頑張りますのでお付き合いよろしくお願いします

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