だが俺はそれは自分の為だと、こんなやり方でも何かは救える、事実救えたから俺は自分を誇らしく思っていた。
そして
―――そんな自分に酔っていた
こんな昔のことばかり、古傷をあさりたいわけでもない。しかし今の自分のことを思うとどうしても後悔ばかりしてしまう。そうでもしないと自責に心が耐えられないのだ。
だから
自分がこれ以上過去を過ちと判断しないため行動が必要だ
拳と拳がぶつかり合う。それは青春の喧嘩みたいな微笑ましいものではなく相手の命を奪おうと、目の前の相手を消し去るための血が飛び交う喧嘩、いや<殺し合い>だった。
「・・・オラッ!!!」
相手の右ストレートが飛んできた。俺は何とか受け止めたりしているがその一撃はとても重く、体内まで響いてくるような威力。先ほどの能力頼りのほうがまだ楽だったかもしれない。ひたすら攻撃のラッシュを躱しつつ相手の行動を読み続ける。
「君は何で、僕に攻撃をしてこないっ・・・!」
五感をフルで回している中に声をかけてきた。しかし俺はそれには答えない。しかし話を止める気はないようで、物理の攻撃も止める気はないようだ。
「さっきは僕のメンバーを躊躇いも無く殺しただろう!」
躊躇いもなく、その言葉に胸に突っかかりを感じるが躱す、そして相手の挑発であろうものにも乗らない。
「今この間、僕の攻撃を躱す君にはまだ余裕が見える。なのに攻撃をしてこない。今更怖気着いたか、人を殴るのに、殺すのに!」
・・・違う。俺は無言を貫く。言葉を吐き出すこいつの目には先ほどとうって変ったような怒りがあった。
「僕の大切なメンバーを殺しやがって・・・!」
「・・・ッ!?」
突然の言葉と相手の気迫に気圧され左フックを一発受けてしまった。少し遠くの林まで飛ばされ相手が更に追撃をしようとしてきた。空中で体制を整え地面に着いた瞬間右へ大きく回避し俺は口を開く。
「さっきから矛盾してることばかり言いやがって。何なの、俺の動揺を誘ってんの?」
そう。コイツの話から読み取ると昔のことの記憶は曖昧で仲間とかそういうものの絆の深さ(笑)は無いと思うのだが。
「・・・やっと口を開いたね。確かに矛盾してるよ、僕の言っていること、は!」
喋りつつ襲い掛かってきた。こいつの話すことは俺の心を揺さぶる話ばかりでできれば会話をしたくなかったのだが仕方がない。
「僕の能力の代償は脳への負担、だか、ら使い過ぎると過去みたいに何かしらの判断が出来なくなる。・・・さっきの話は多少ぼかしていた、君への揺さぶりも兼ねて本当の、ことを話してみるよ!」
ッチ! やっぱそういう目的もあるか。この世界での話は俺に様々な傷を生んでくる。だから会話など、特に今はコイツとは話したくなかった。
「僕の能力は解除すれば今みたいに自分に戻れるし、毎時血が上っているわけじゃない」
だから皆と楽しくしていた記憶もちゃんとある、絆を深め合った日々が。そう付け加えてきた。
「そしてこの能力は使った相手の少しだけ過去を見ることが出来る!」
「だから驚いたよ、君のその過去」
「才能の差は違うし、種も違う。けど」
「―――大切な人を殺されたのは一緒」
・・・見られた過去はこの世界に来て親が殺された時の事を言っているらしい。そしてコイツの口振りから見てこいつも―――
「僕も親を殺された、無残にね」
その言葉を繰り出されると同時にこいつは打撃を繰り出すのを止めた。
「だからそれらを含めてさっき聞いたんだ。君は本当に人間なのかと。親を殺されたのに僕、悪魔という種を見ても激しい殺人衝動に駆られずいたって冷淡。どうみても子供、ましてや人間の域を超えている」
「僕は最初殺した人物を狂うほど殺したいと思った。けどそれを変えてくれたのが、―――さっきまでいた僕のメンバー」
「だから殺したい、憎い、そんな感情は変わり、このメンバーを守りたいそんな考えになった」
「なのに」
「君に殺された!」
そう言うや同時にまた襲ってきた。
「君はなんだ、人を傷つけるのに躊躇いがあったと思えば迷いなく殺しにくる」
「迷いは演技にしか今の僕にはそうにしか見えない、だから言わせてもらうよ」
「君 は 人 間 じ ゃ な い」
・・・俺はコイツの事は最初は逝かれ狂った殺人大好き野郎とでも思っていた。急に襲い掛かって来て人が殴られているのを見てずっと嘲笑していて人の大切な物を迷いなく武器に使って。そんな奴だったから俺はまた間違って楽な方に考えがいってしまっていたのだろう。
―――こいつは殺しても大丈夫
これは正当防衛だ、いつだってそう思い殺人の罪から逃げていた。しかし正気にもどったこいつは黒とは呼べないもので正論を振りかざし俺を否定してきた。・・・そう。全て正論、俺は世間的に否定される人間なのだ。今まではどんな俺だろうと誇れていた。・・・しかし今の俺は酷い有様だ。人を殺してもそれは仕方なかったことだと言い訳して逃げ身内が死んでもこれは他人だと振り切り、こんな行動は何の為にしていたのだろうか?
飛んでくる打撃を躱しつつ思考の海に沈む。
導き出される答えは一つ。昔の、前世の俺ならこうしたのだろうという決めつけ、そしてそれを達成できたときの俺は変わっていないという自己満足の為だ。もう俺はとっくに変わってしまっているというのに。今コイツの言葉で目が覚めた。俺はこの世界に来てから何一つ自分の行動をとれてなかった。全ての判断は過去の俺なら―――というもので今の自分を全否定している。それもそうだろう。いくら自分大好き人間でも殺人を殺した自分を好きになるなんて無茶な話だ。
だから俺はきっと。
憧れていたのだろう、奉仕部にいたころの自分を。俺は確かに今まで自分を否定していなかった。過去の自分だけを、な。今、俺は自分の罪を許容し今まで通り自分に誇りを持つ比企谷八幡に戻れるのだろうか―――
駄目だ、また俺は過去の道を戻り始めている。人はそう簡単に変わりはしない、俺だってそうだ。こんな言い訳タラタラな俺を変えたいなんて思った矢先に言い訳を始めている。
だから、必要なのだろう。変化を認める必要が。矛盾しているだって? いやしていない。俺はあの時転生したときから既に変わり始めていた。だから俺はそれを認めるしかない。だから新しい考えに変えていこう。一人は変えるつもりはない、それは貫く。だから。俺は俺に甘くするのをやめよう。現実も、他人も、自分も厳しく、過去を肯定し今を否定する俺。
・・・認めよう。いや、諦めよう。言い訳して昔の自分だと自己満足するのは。
だから―――
「・・・ありがとうな」
相手が目を丸くした。そりゃそうだよな。
「あぁ、俺は人間じゃない。だから俺は俺が大嫌いだ」
―――初めて思う自分に対しての険悪感
「それを気付かせてくれたのはお前だ。・・・俺は人間じゃない、それを否定するのはもう疲れたんだ・・・」
―――そして俺はまた一歩踏み出す
「どうせ俺は今の自分なんて認めることはできない。・・・まあひとまず」
「この戦いを、終わらそう」
そういって俺は相手の目の前に近づきアッパーと見せかけ蹴りを後ろに回り背中に繰り出す。
「・・・それが君の答え?」
俺の蹴りを軽く止めて言う。
「ならその答えを否定させてから僕の仲間の仇討ちをする!」
そう言ってカウンターとばかりに蹴りが飛んできた。が俺はそれを掴み投げ飛ばした。腕の力を倍加したためかなりの速さで飛んでいった。それを追いかけ追撃するために追う。
この時思う。俺はまた人を殺してしまうときがあるかもしれない。だがそれが弱みとならないようこの大嫌いな自分で受け止めていこう。
「さてと、第二ラウンドと行こうか」
もう既に立ち上がっている相手に言い放つ。
「・・・君の名前は? 僕はリアだ」
「比企谷八幡だ」
相手は剣を持って構えをとる。必然的に俺も剣を構える。俺は俺の為に。相手、リアは仲間の仇の為に。相手の理由はかっこよく俺はなんとも情けない理由。だが、負ける理由にはならない。
一撃で終わらそう
お互いがその場の地を蹴る―――
遂に俺ガイル二期のアニメが来ましたね。見た時ついテンションが高くなってしまう作者でした。やはり原作は面白い!
えー、話は変わりますが読んでくださってありがとうございます!
コメントなどくれたら嬉しいです! これからもよろしくお願いします!