捻くれボッチの転生記   作:ジャージマン

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十二話 絶対方針

オニキスと会った日から俺は自分の行動方針を変えた。前までは極力人がいる場所に住み敵対するものが現れたら逃げることを最善策とする、だ。この考えは正しいと思っていた、オニキスの話を聞くまでは。だが俺はどこにいようとあいつら(悪魔)と会うのは避けられないらしい。そうして戦うことも避けられない、それなら人がいるところではいけない。常に一人でいる。それはなぜか? 邪魔だから、それだけだ。皆を傷つけたくないという綺麗な考えは持ってはいない。そして今の貧弱の体では一人で行動とは無理だ。トレーニング・・・・

 

「トレーニング、か。」

 

何だよ、自分からトレーニングとか思い浮かぶとか。俺、大丈夫? よし。ここは自分の自己紹介から始めてみよう。プリキュア大好き高校生(精神年齢)。はい終わり。まずこんな一人で自己紹介している時点でもう駄目だね。終わっているね! 

 

よし、もうめんどくさい。今日はもう遅いし寝るか、うん寝よう。 子供は早寝大事! 早起き? そんなものは俺の頭の辞書にはない。いろいろ放り出して俺は眠りにつこうとする。それほど俺は弱っていたのだ。あまりにも向き合い過ぎていたのだ、この世界という超ムリゲーに。普通なら中二乙で終わる話が実際で起こっているのだ。もう体と心は限界だった。

 

コクリコクリと頭が動きまぶたが重くなってくる。その流れに逆らわず俺は眠りに落ちた。

 

   ◇

 

『起きろ。』

 

「うぇいっ!?!?」

 

突然頭に衝撃を叩き込まれ起こされた。目を覚ますとオニキスがいた。キョロキョロと見渡すと前の真っ白な世界ではなく上は空、下は草原と果てしなく続く幻想的な空間になっていた。

 

「綺麗、だな。」

 

まさしくその一言だった。

 

『私が作った世界だ。当たり前だろう。』

 

オニキスがニヤリと顔を歪め言葉を返してきた。心を読まれたと思ったがつい口に出してしまっていたらしい。それが少し恥ずかしく平静を保ちつつ質問を口に出す。

 

「で。今日は何でここに呼んだんだ? 前、この世界を教えてくれたばかりなはずだろ。」

 

『ああ。この世界から生き残りたいって震えながら私に言った八幡にお知らせをしようと思ってね。』

 

ケラケラ笑いながら言葉を言ってきた。恥ずかしさから逃げるために話を変えたのだが違う俺の恥部分をついてきた。今その光景を思い出すととても恥ずかしくなる。顔は赤くなっていないだろうか。

 

「人の過去を笑うのはやめろ、鬱陶しい。さっさと本題を話してくれ。・・・色々しんどいんだ、察してくれ。」

 

『分かった分かった、話してやる。弱弱しいお前を私が直々に鍛えてやるために呼んだんだ。』

 

「・・・は? 鍛えるって・・・、修行させるために呼んだのか?」

 

この疲れてる時に? 

 

「・・・・拒否権は?」

 

『なしだ。』

 

     はちまんは逃げ出した!

 

                しかし まわりこまれてしまった!

 

「・・・分かった。分かりましたからその波動砲みたいのを止めてください!」

 

『それでいい。まぁ修行の内容だがまずメンタルを鍛えてもらう。』

 

何とか一命を取りとめたようだ。しかし、メンタル、精神力を鍛えろとはどういう事なのだろうか。もうとっくに成熟していると思うのだが。そんな疑問が顔に出ていたのかオニキスが説明を始めた。

 

『前会ったときお前はただの子供ではないとは分かった。精神はとうに成熟しているし頭の回転も速ければ現実の理不尽差も分かっており子供らしさなんてかけらも無い。』

 

それはそうだ。俺は元は高校生であり理不尽にもいやほどあってきた。なのに夢なんて持てるはずがないだろう。

 

「ならなぜ―――『だが人間だ』

 

言葉を遮ってきた。

 

『確かに子供の領域は、いや、大人以上に成長しているかもしれない。しかし所詮お前は人間だ。私の能力を使うとき力を使えば使うほど憎悪などの感情が流れて、大きな力になればなるほどそれは強くなっていく。お前も感じただろう。』

 

確かに感じた。力を増幅すればするほど、禁手の能力を最大限にすればするほどあの憎悪が強くなってきて、最終的には霧がかかった映像が見えてきた。その霧は何故か自分の精神を守ってくれている、そんな気がした。

 

『お前が使った力はまだ私の一部分。しかしお前には体験したことの無い憎悪だっただろう、それでは駄目だ。私の力を最大に使うときはあまりにも非現実で、吐き気がするようなものが見えてくる。それに耐えれなければお前はお前ではなくなるだろう。』

 

理解した。俺がどんな現実に遇っていたとしてもそれは殺人などほど遠い出来事だ。人間として生きてきた俺にはそれには耐えれないため鍛えるということか。

 

「分かった。自分じゃなくなるのは嫌だしな。しかしそれで俺に何をさせる気だ? 人殺しなど勘弁したいのだがね。」

 

口調こそ軽く言ったが本当にそれは嫌だった。あの時の人を殴りつけた時の相手の骨を折るような感触、斬りつけたときにジュブジュブと変な音がし、自分ではない血が自分に吹きかかる。そして内臓などの中の細胞が―――

 

「っ」

 

思い出すだけで吐き気がしてくる。

 

『それでもいいが流石に君が持たないだろう。』

 

良かった。流石にそれぐらいの配慮はしてくれるみたいだ。

 

『だがその関連の映像を見せる。君の大切な者達が死んでいく映像を、ね。』

 

―――は?

 

待て。待て待て待て待て待て待て。まさか雪ノ下が、由比ヶ浜が、小町が死んでいくものを見せられるのか。いや違う。こいつは俺の前世を知らないはずだ。なら俺の両親(仮)が殺されるはずだ。大丈夫、大丈夫だ。

 

『さて飛ばすぞ。』

 

「―――ああ。」

 

違うはずだ、それを自分に言い聞かせ相手に俺の了承を示す。そうしてこの空間が黒に染まっていき―――俺の意識は消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん、朝だよ起きて!」

 

――――――それは俺が一番見たいと願っていた光景

 

「学校に遅れちゃうから! 朝ごはんもできてるよ。」

 

――――――そして今一番見たくないと願ったものだった

 

「・・・・起きたから、先に降りてろ。すぐ行く。」

 

俺の口が勝手に動く。やめろ、止めてくれよ。こんなの結末が分かりきってるじゃないか。

 

「本当だね!? 絶対だよ、二度寝とかしちゃ駄目だよ!」

 

「本当だ、本当。ほら起きただろ、着替えるから外行け。」

 

そう言って小町が俺の部屋から出ていく。待て、待ってくれ。俺から離れないでくれ、お前を死なすわけにはいかないんだ。しかし口が動かない、体も動かせない。まるでこれから起こる現実を変えさせないと言わんばかりに。

 

そうして俺の意識に関係なく俺の体はノソノソと布団から這い出て着替えを始める。そうして学校へ行く準備が終わり鞄を持ち下に行く。

 

それまでに悲鳴は聞こえてきていない。よかった、まだ大丈夫なのか―――

 

        俺はいつの間にか希望を抱いていた

 

        俺はいつの間にか自分に嘘をついていた

 

        俺はいつの間にか否定をしていた

 

        俺はいつの間にか決めつけていた

 

 

 

 

     『   この世界に やつら はいないと   』

 

扉を開けリビングを見る。そうしたら小町は美味しそうな飯の前で座っていた。

 

「すまんな、小町。飯はもう冷めてるか?」

 

小町は返事をしない。

 

「・・・・小町?」

 

もう一度声をかけてもピクリとも動かない。

 

「小町! おい! 返事を―――」

 

テーブルを立ち上がり小町の肩をゆする。そうすると小町は力なく床に倒れた、赤い血を噴き出しながら。

 

「ああああああああぁぁあぁああぁぁぁ!!!!!!!!!」

 

涙があふれる。止まらない、止められない。この感情はなんだ、そう。憎しみだ。誰が小町を殺した。何故か殺されているのは分かったんだ。

 

誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ。

 

        コマチヲコロシタノハダレダ

 

そこで気配を感じ振り向く。何かがいた、人みたいなものが。笑いながら俺を見ている。なぜだ、なぜ笑っていられる。小町をこんなに無残な姿にして!!!!

 

「殺す」

 

そうして俺は一直線にそいつに走り出しそいつの顔面に拳を――――

 

            背景が変わった

 

ここはどこだ。あいつ、何かはどこだ。小町をあんなんにしたクソヤロウは。そこで気付いた。

 

奉仕部だ。そうして雪ノ下、由比ヶ浜が席に座っている。俺は思わず言葉を発した。

 

               瞬間

 

背景は血だらけな世界に変わった。部室にいるものは肉塊だけ。そうしてご丁寧に首から上だけがその上に置いてあった。

 

「あああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

二度目の大声を上げた。そうして椅子に座っている何かがまた存在していた。また笑っている。お前が、殺した。俺の生きる意味を、存在を。ならやることは一つ。相手に向かって―――

 

         また背景が変わった

 

そこには俺の恩師平塚先生がいた。そして後ろに何かが。

 

「やめろ」

 

「やめてくれ」

 

そんな俺の願いは虚しく散った。赤い血が俺に飛びついた。

 

叫び声をあげる暇なく背景が変わった。変わり変わり変わり俺の大切な人が殺され殺され殺され。憎しみも晴らせない。俺の感じたことの無い絶望だった。目の前で大切な者が死んでいく。それほど悲しいことはない。そして一番いやなのは俺が一つも傷がついていないこと、無傷なのだ。俺はどうなってもいいのに。なぜあいつらが死ななければいけないのだ。

 

この世界は理不尽で理不尽で理不尽でそれを跳ね返すために力がいる。

 

あぁ、決まった。俺の方針。

 

この世界、何もかも信じない。あぁ。それはなんて楽なことなんだろう。傷つく恐れもなくて人の関係も恐れなくて最強の人間になれる。あいつらに会うまでは絶対。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして戻ってきた。オニキスが口を開こうとするがそれを遮る。

 

「今すぐ俺を鍛えてくれ。」

 

『なぜ、そんな急にだ。』

 

分かっているだろうに。憎しみをこの胸にひそめる。あんな思いは一回だけでいい。

 

      「この残酷な世界の現実を覆すために」

 

          「力が必要だからだ」

 

 

ここから本当の一人劇が始まる

 

 

 

 

 

 

 

 


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