いい夢が見られるかな、なんて思っていたけれど。実際にはそうそう夢なんか見ない訳で。まあ、夢を見ると何故か寝起きがスッキリしないことも多い気がするし、これはこれで快眠を得られたということで良い事だと思っておこう。
ベッドから身を起こして、水差しから温くなった水を飲む。それなりに暑い夜だったみたいで結構汗をかいてしまっているけれど、総じていい朝だと言えた。
空は快晴、雲ひとつ無い碧空。ミンミンと蝉が夏を謳っている。うん、いい朝だ。大きく伸びを一つ。
――――さて、そろそろ桜さんも目を覚ましていることだろう。
色々と気になるし、話し合いたいこともある。……いや、実際のところは私が話し合うべきことなんか無いわけだけど。やはり事の発端における当事者としては、事の顛末は気になるとことだ。平たく言えば、野次馬根性というヤツだ。
洗面所で顔を洗っていると、丁度遠坂さんもやってきた。朝に弱いようで、普段の瀟洒な雰囲気など部屋に忘れてきたらしい。
人類の固有スキル、アイコンタクト。遠坂さんは軽く頷く。
どうやら桜さんは目を覚ましているらしい。微かに漂ってくる味噌汁の香りは、もしかしたら桜さんが朝餉を用意しているのかも知れなかった。
歯ブラシを口に突っ込み、洗面台を遠坂さんに譲る。私は朝食前に歯を磨くタイプだ。寝起きの口の中は雑菌だらけという話を聞いてからは、これが習慣になっている。歯を丁寧に磨きつつ、歯磨き粉の泡を飛ばさないように、かつ聞き取りやすいように口を動かす。
「――――藤村さんが出たら、桜さんと話し合うべきかと」
「勿論よ。桜もそのつもりみたいだしね」
遠坂さんは顔を洗顔料で洗い、化粧水で肌を整える。さすが遠坂さん、高そうなものを使っている。ラベルを見る限りは外国製らしい。私も一応気にかけてはいるけれど、その辺りの薬局で売っている安物だ。
続いて髪を乾かしてブラシで梳く。桜さんといい、遠坂さんといい、この姉妹の髪の毛は綺麗すぎるような気がしてならない。
「昨日は一日中桜さんの看病……というか、付き添いを?」
ジェスチャーで洗面台を一度貸せと伝える。口を濯いでブラシに付いた泡を流す。鏡の前でにっと口を開いて歯を確認。食べかすが歯に挟まっていないことを確認して、満足する。
「そうね、部屋には戻らなかったわ。さすがに睡眠は取らせてもらったけれど」
つまり、ドラマとか漫画でよくあるように、ベッドに寄りかかるようにして寝たということだろうか。……なんか絵になるなあ、なんて下らないことを考えてみたり。一体どんな遺伝子が混ざればこんな美人姉妹が生まれるのだろう。
でもそれって体の疲れは取れていない気がするけれど、大丈夫なのだろうか。昨日もかなりハードな一日だった筈なんだけれど。
という疑問が顔に出ていたようで、彼女が肩を竦めて言うには。
「大丈夫よ。長い間旅をしているとね、睡眠さえとれればどんな体勢や場所でも休めるようになるものなのよ」
ということである。
なるほど。確かに長時間の電車やバスでの移動は、慣れないうちはただ座っているのも疲れるものだけれど、慣れてくるとその中で体を休める方法が身についていく。そういうものなのかも知れない。
それに、話を聞く限りでは相当にバイオレンスな旅だったようで、そういうスキルも必要だったのだろう。私は中東なんかに放り込まれたら、数日で殺されるかテロ組織かなにかの人質になっている自信がある。……まあ、一応魔術師だから一般人よりかは強いんだけれど、精神的に参ってしまいそうで。
居間に移動すると、セイバーと藤村さんが歓談していた。厨房を見れば、やはり朝食を作っていたのは桜さんだった。士郎さんも一緒になって作っているが、どうもぎこちない。無理して平常を装おうとしているようにも見えた。ブリキ人形のような動きの悪さで、見ていて危なっかしさを覚える。とは言っても殆ど作り終えたようで、私が手伝えることはなかった。
さて、本日の朝食もまた和風であったわけである。私は和食党であり、新参の私の好みに合わせてくれているらしい。遠坂さんが不満そうだったのはこの際捨て置こう。
塩鮭、味噌汁、出汁巻き卵にホウレン草の御浸し、そして納豆。どこかの旅館でお目にかかるような食事メニューはしかし、なんとも言いがたい空気の悪さによって味が殆どしなかった。どうも他のメンバーも同じようなものらしく、どうにも会話にキレが無い。ただしセイバーと藤村さんは除く。
いや、セイバーも藤村さんも分かってはいるのだと思う。分かっていて、それを打開しようと無理して明るく振舞ってくれているのだが、どうにもそれが空回りしていて、雰囲気はいよいよ悪くなる。
だが雰囲気が悪いといっても、単に居心地が悪いというだけである。互いに言いたいことがあるのに言い出せない時の、時間の流れが停滞しているような感覚だ。決して剣呑な空気ではないことが救いだが、やはり和気藹々とは程遠い。
カチャカチャと、いつもより食器が立てる音が大きく聞こえる。セイバーと藤村さんだけで会話が永遠に続くわけもなく、会話のちょっとした切れ目には一層雰囲気の悪さを自覚させられる。腫れ物に触るように、という表現は実に的を射ていると実感した。
いつもより幾分か早く食事を終え、片付ける。その間も空気には腫れ物が存在していて、士郎さん、桜さん、遠坂さんの間で会話は在るものの、非常に当たり障りの無く、世間話にもならないような事ばかり喋っている。今は、今日の天気についての会話。洗濯物がどうとか、暇を持て余した主婦でももう少し面白い会話を提供できるだろうに。
ややあって、藤村さんがいつもよりほんの少し早めに家を出た。気を遣ったのか、雰囲気の悪さに耐えかねたのかはさて置いて、正直ありがたい行動だった。
これで魔術師同士の、藤村さんにはまだ伝えるわけにはいかないような込み入った話が出来るというものだ。
全員の手が空いたあたりを見計らったのか、遠坂さんが集合をかける。私は席を外して置こうと思ったが、この件に一枚噛んでいるためか留められた。士郎さんが手早くお茶を用意する。
おずおずと、所在なさそうに、あるいは不安げに桜さんが定位置に腰を下ろした。
「…………」
だがどう切り出したものか考えあぐねているようで、どうにも居心地の悪い沈黙が流れる。時計の音がやたらと大きく聞こえた。
だが意を決したように、遠坂さんが顔を上げる。僅かな逡巡のあと、ようやく言葉が舌に乗った。
「――――…………桜」
「……はい」
「その……体のほうは、何か問題あるかしら」
さすがに単刀直入に、という訳にもいかなかったのか、かなり婉曲した問いを出す。
だが、確かに聞いておかなければならない問題なのは間違いなかった。もしも蟲を摘出する際に、どこかの神経や魔術回路を傷つけていたら大事になってしまう。
だがその心配は必要ないというように薄く笑い、頭を振って否定した。
「いいえ、何も問題ありません。……お爺様も居なくなって、本当に何も問題ないようになりました。
……遠坂先輩からは、何も心配いらないとしか聞いていません。詳しく聞かせて……くれますよね」
桜さんは、とても不安そうだった。それはそうだろう。昨日までガチガチに縛られていたのに、急に開放されたら不安を覚える。
言い方は悪いが、刑期を終えた囚人の心理だろう。今まで規則や規律に縛られていたのに、急にそれが無くなったら、喜びを謳歌する前に戸惑いや不安が押し寄せる。
いつも監視されていたのに、急にそれが無くなると、窓の外から誰かが覗いているような錯覚を覚える。厳しい校則の高校を卒業して、大学で一人暮らしを始めたときに、何もかも自由であることに戸惑いを覚える。人間とは、そういうものなのだ。
しかも桜さんは、その覚悟すらできていない。急にサバンナの平原に放り出されたようなものだ。右も左も、自分が今どこに居るかさえ分からない。
その不安を少しでも和らげようと、言葉を選びつつ説明をする。主に士郎さんと遠坂さんが至極丁寧に説明し、時々私がそれを補足する。
まあ、私が“桜さんの過去を知る人格の記憶”に触れたのは秘密だ。おぼろげながら、その人の名も思い出せてきた。間桐雁夜といったらしい。きっと、この人は桜さんの為に命を賭けたのだろう。
やや省きつつ、それでいて丁寧に説明をする。全ての説明が終わる頃には、湯飲みのお茶は温くなっていた。それを一口啜る。
「そう……ですか……」
次は桜さんの番だった。今まで隠していたこと、打ち明けられなかったこと。中にはショッキングな話もあったけれど、遠坂から間桐へ名が変わってからのことを話してくれた。
蟲蔵で、教育を騙った虐待を受け続けていたこと。前回の聖杯戦争では、兄にマスター権を譲っていたこと。他にも、辛かったであろう色々な過去。
部外者が言うのはおこがましいかも知れないけれど、それは辛かっただろうと思う。
ずっと一人で、救いもなくて。
桜さんはじっと湯飲みの水面を眺めている。どうすれば良いのか分からないという気持ちが、その表情からは伺え知れた。
語るうちに、桜さんの目には涙が溜まった。桜さんはそれを堪えようとして、だけど堪えようとすればするほど涙は溢れてきて。
ぽとりと、一滴の宝石が落ちる。堰を切ったように、止め処無く涙が溢れる。
わんわんと、子供のように。だけれどそれを笑うものは居らず、遠坂さんと士郎さんは泣きじゃくる桜さんの肩を抱く。
――――姉さん、姉さん。
泣き声は、遠坂さんのことを姉と呼んでいた。それに答えるように、遠坂さんはその肩を強く抱きしめる。遠坂さんの目にも、涙が溢れていた。
――ああ、きっと。ずっとこう呼びたかったに違いない。ずっと苦痛を訴えたかったに違いない。だからきっと、この涙は喜びに満ちているに違いない。だからこそこんなにも温かいのだ。
――――姉さん、先輩、私辛かった。
慰めるように、身を寄り添わせる。
ああ、良かった。本当に、良かった。桜さんはやはり、遠坂さんと姉妹となることを選んだのだ。
きっと、遅すぎた和解なのだろう。これから、普通の姉妹になっていくには、想像以上に時間が掛かることだろう。
だけどきっと、この二人の前にはそんなものは苦難にならない。何故なら、彼女らは紛れも無く、最高の姉妹なのだから。
どれほど泣いていたか、にわかには分からない。だけれど決して短くない時間泣き続けて、涙が枯れる頃になると、全員冷静さを取り戻していた。
遠坂さんが向き直り、こほんと咳払い一つ。
「……だからね、桜。貴方はもう自由なの。貴方を縛るものは何もなく、貴方を脅かすものは何もない。
……これからは、好きなように生きていいの」
「桜さん、とりあえず身近なことから決めましょう。まず、聖杯戦争中どうするかという問題から」
桜さんは、もはや何にも縛られない。裏を返せば桜さんを守るものは無いのだ。実質、間桐は滅んだに等しい。例えば、聖杯を欲する者で、間桐を快く思わないものが存在したとすると、桜さんに危害が及ぶ可能性は大いにあるのだった。
だからこそ、どこかに身を寄せなければならないだろう。
此処、衛宮邸も一つの選択肢だ。だが……此処は紛れも無く戦地である。いつ戦火に巻き込まれてもおかしくない。例えばサーヴァントを全員引き連れて外を巡回したときに、敵サーヴァントの侵入を許せば桜さんの命は大いに危ぶまれるのだった。
同様の理由で間桐邸、遠坂邸もアウト。今あそこは無人だ。そこに身を寄せるくらいならば、そこらのホテルに泊まったほうが数段安全である。
「教会に保護して貰ったらどうだ? 桜はマスターじゃないけど、あの監督役代行なら融通利かせてくれると思う」
「…………なるほど、確かにそれが安全かもね」
私も遠坂さんと同じ意見だ。絶対中立で、如何なる勢力の介入を禁じている教会が一番安全な場所だ。
冬原さんは、驚くほどに義理深い。そして、メンツというものを必至に守ろうとする。過去は良く知らないけれど、ヤクザに近い性質を持った人だ。本当に元ヤクザかも知れない。
だからこそ、自分の責務を果たそうとするだろう。何か裏で暗躍しようとも、保護した人物を最優先で守るに違いない。保護した人に何か在れば、教会の名が汚れる。キャスターと共闘したときに、教会のメンツを立てようと一時的にとはいえ単身で戦ったことからもそれは伺い知れる。
それに、この屋敷にいるよりは随分と安全なはずだ。少なくとも不可侵の掟を進んで破ろうとする事情が無い限り、誰も教会に手を出そうとは考えない。
「……はい。教会に保護を申し出ようと思います。…………あの、お暇なときで良いので、会いに来てください」
「当然だろ。来るなって言われても行くさ」
「士郎に同じ。…………せっかく姉妹に戻れたのに、また離れるなんて寂しいしね」
「……はい!」
日本晴れのような笑顔だった。
涙で泣きはらした顔なのに、今まで見たどんな笑顔よりも素敵に思えた。
そうだ、どんなに離れようと、二人は姉妹だ。数日間会えないぐらい、何でもないさ。だって、これから二人で過ごせる時間は山のように用意されている。そのための必要経費だと思えば、異論など出る筈も無かった。
さて、いい方向に話が進んでいるところで、嫌な話もしておかなければならない。遠坂さんや士郎さんでは言い出しにくいだろうから、私から切り出すのが最も良いだろう。
「さて、これもいつかは話し合わなきゃいけないことだから言うけれど、桜さんは今後、どうするつもりなの? 魔術師として生きるか、それとも一般人として生きるか」
これはもう、避けては通れない問題だ。今すぐではなくとも、いつかは結論を出さなければならない。
これは自分の将来を大きく決定してしまう。別に、身を守れる程度の魔術を会得して、あとは一般人のように暮らすことも十分可能だ。聞けば桜さんの魔術特性はかなり希少なものらしいけれど、無理してそれを活かす必要もない。
逆に、魔術師として生きていくのも十分可能なのだ。今は間桐寄りになってしまっているけれど、確証こそないが時間をかければ元の遠坂の血に戻れるだろう。間桐の魔術を習うか、遠坂の魔術を習うか、ここでも選択の余地がある。
これについては、桜さんの意思を尊重するべきだ。話し合ってそう決めたわけでは無いけれど、ここで強制すればそれこそ間桐臓硯と一緒だ。それは全員望むところではないだろうから、暗黙のうちにそのように意見が纏まっている。
「…………まだ決められません。少し、考えてみたいと思います」
そして決定の延長もまた、尊重されるべき意見の一つだ。
まだ戸惑いのほうが多いだろう。だが桜さんには、これから自由な時間が多く与えられるのだ。じっくり考えるといい。考えて、考えて、自分にとって最良の選択をすれば良いのだ。
……まあ。士郎さんと同じように、私も桜さんには魔術師としての道を歩んで欲しくはない。聖杯戦争を体験して、やはり魔術とは日の当たらない世界だと実感できた。
かといって……全く無縁でもいられないだろう、というのもまた事実だ。やはり異能は異能を呼び寄せてしまう。ある程度の処世術は、やはり必要だろう。
そういうわけで、私は私達よりももっと日に近く、しかし完全に日の下ではない、夕暮れのような道を歩んで欲しいと願うわけだ。そのぐらいの明るさのほうが、桜さんも居心地が良いだろうと思うのだ。
きっと、桜さんには表の世界は眩しすぎると思う。きっと、桜さんには裏の世界は暗すぎると思う。だから、夕暮れ――あるいは朝焼けのような場所が、最も良いと思うわけである。
「そう。桜の選択に任せるわ。その……師匠が欲しいときは、言って頂戴。……お姉さんらしいことをしてあげたいのよ」
魔術の師匠が、世間的にお姉さんらしいかどうかは議論の余地があろう。だが、お姉さんが妹の宿題を教えてあげているようなものを想像すれば、微笑ましくはあった。
「ふふ、分かりました。その時はお願いしますね、……姉さん」
ちょっとだけ、頬を赤らめて。桜さんは遠坂さんをそう呼んだ。さっきは連呼していたが、冷静になってから改めて言うとなると、やや恥ずかしさみたいなものがあるらしい。
ああ、いいなあ。私も妹が欲しいなあ。あんなに豊満な妹は、妹らしくなくてアレかも知れないけれど。もっと、こう……小動物のようなのがいいなあ。
……昨日のアルコールがまだ残っているのか、真剣に考える必要がありそうだ……。
さて、そうと決まったからには行動は早いほうが良い。あまり私物は無いようで、少しばかりの荷物を纏める。藤村さんにも説明する必要があるが、こちらは私達でフォローしよう。……いや、いっそ藤村さんも暫く寄り付かないほうが良いだろう。どうにか言い含めて、暫くは遠慮するように言うか。いっそ一緒に教会に預けたほうがいいかも知れない。
ということを士郎さんに言うと。
「猛獣は教会の管轄外だと思う」
ひどいものである。
まあ、藤村さんは仕事があるのだから、教会に閉じこもっている訳にはいかないだろう。確か夜歩きの言い訳に、天体観測をしているという話をでっちあげていた筈だ。彗星が近々観測できるという嘘八百も一緒に言っていた気がする。だったら暫くはキャンプ生活するからとでも言っておけば、この家には近付くまい。家の様子を身に来る、とか言うかも知れないけれど……その辺りのフォローは遠坂さんが得意だろう。お任せすることにする。
考えてみれば今までが異常だったのだ。この家は間違いなく魔術師の本拠地である。そこに一般人が気安く出入りしているなど、人質に取ってくれと言っているようなものだ。アサシンが見たら喜んで食いつきそうな餌である。
しかし、この家から桜さんと藤村さんが居なくなったら、寂しくなってしまうなというのも正直な感想である。まだこの家に身を寄せて数日ではあるけれど、やはりこの衛宮邸の一員であることは間違いないのだ。
……ま、それも命あっての物種だ。桜さんや藤村さんに何かあってからでは遅い。
と自分に言い聞かせつつ。自分もまた死ぬわけにはいかないな、と決意を新たにするのであった。
◆◇◆◇◆
今日も日は流れ、太陽が落ちようとしている。安息の時間は瞬く間に過ぎて、まもなく闘争の時間が訪れる。
アーチャーは、いつものように一日中アリシアの面倒を見ていた。もはや、妹のようにさえ思える。マスターとサーヴァントの枠組みを越えた、親愛の情が芽生えていた。
いや、そもそも主従関係にあるとも言い難かった。ただ、呼び出された当初は単なる“保護対象”であったものが、“守りたいもの”に変わっただけだ。だからこそ、アーチャーはこの少女を命がけで守ろうとする。この少女が望み、自分が叶えうることは全霊を以って達しようとする。
少女は今、ベッドから身を起こして本を読んでいる。それは世に有り触れた騎士道の物語で、しかし今もなお色褪せぬ物語。
タイトルは、『アーサー王物語』。
――――別に、気付かれたとしても問題は無いとも思う。だがやはり、御伽噺の人物が目の前に居るという事態は受け入れがたいものもあるだろう。よって先ほどから少女の傍らに侍り、細々と身の回りの世話をするのだった。
不意にねえと声をかけられる。本に栞を挟み、傍らのサイドテーブルに置いた。
喉が渇いたのか、汗をかいたのか。それとも具合が悪いのかと思い、次の言葉を慎重に待つ。だが放たれたのは、今更とも思える言葉だった。
「アーチャーは、騎士の幽霊なんだよね?」
やはり気取られていたのかと思ったが、絵本に近いその本から何か分かるとも思えない。実際のところは絵本というほど幼稚でもなく、挿絵こそ多いものの小学生相当の児童が読むにはやや難しいであろう本なのだが、それでもやはり真実を語っているとは思えなかったのだ。
よって変に言い訳をせずに、一部を隠しながらも真実を口にした。少女が知りたいのであろう事を先んじて言う。
「ああ、そうだよ。王様に仕えていた」
それを聞いたアリシアの顔が瞬く間に明るくなった。まるで大輪の花のような笑顔であった。
飛び上がりそうな気配のまま、次の言葉を紡ぐ。
「すごい! ねえねえ、アーチャーが生きていた時のことをお話してよ!」
さて、どうしたものかと考える。つい今しがた自分にまつわる物語を読んでいたのだ。あまり普遍的なことを言えば、おそらく気付かれるだろう。かといってその申し出を断るのは忍びない。
少し迷った挙句、アーサー王の物語には記載されていないであろうことを話すことにした。その本はあくまで騎士王の物語であり、
アーチャーは自分の正体を悟られないように言葉を選びながら、自分の物語を語った。
――――完璧な騎士、サー・ランスロットに並ぶ武勲を立てた人物を挙げろといわれれば、おそらく彼の名が挙がるであろう。
悲しみの子と名づけられた、サー・トリスタンである。イゾルデ、あるいはイズーと呼ばれる女性との悲恋を綴った物語の騎士だ。
マルク王の治めるコーンウォールに彼は生を受けた。彼は七歳の頃に、賢明にして壮士であるゴルヴナルのもとに預けられた。そこでゴルヴナルの指導のもと、トリスタンは気高く、美しく、立派な少年に成長した。だがあるとき、生まれの地であるコーンウォールから離れることになる。商人がトリスタンを攫ってしまったのだ。確かに、このように美しい少年であれば、好事家に高く売れることであろう。
だが彼を乗せた船は、瞬く間に大嵐に見舞われた。トリスタンを乗せていることで、神の怒りを買ったのだと思った商人は、トリスタンを海に放り捨てた。すると、船からは嵐が遠のいたのだという。
かくして見知らぬ地に流されたトリスタンだが、三年以上に月日を隔ててコーンウォールに戻る。その三年間は騎士としてアーサーとは別の王に仕えていたのだが、その王への忠義を果たせたことからコーンウォールに戻る決意をしたのだ。
コーンウォールに戻った後の彼は、多くの武勲を立てる。
例えば、アイルランドの軍使モルオルトを打ち破る。これが、トリスタンが愛することになるイゾルデとの、馴れ初めともいえる出来事であった。
さらに例を挙げれば、ドラゴンをも倒したことがある。これがイゾルデと恋仲に落ちるきっかけともいえる出来事であった。
恋に落ちた二人はしかし、イゾルデの父であるマルク王とその周囲からの姦計によって裁きを受けることになる。イズーはそのときには既にらい病集団の妃となる運命であり、それを嘆いたトリスタンが彼女と共に逃げたからである。
その裁きの席に、アーサー王が出席していたのである。傍らにはサー・ガウェイン、サー・ガラハッド、そしてアーサー王の義理の兄ケイを伴い、厳かにそれを見守っていた。
裁きの結果は無罪。確実に裁かれるであろう二人であったが、二人の機転により裁きを潜り抜けることに成功したのだ。
しかしながら、イゾルデは罪を免れたものの、トリスタンは追放を免れ得なかった。
そこでトリスタンはイゾルデを残して旅立ち、その行く先々で武勲を立てる。最終的に行き着いたのは、アーサー王の下であった。
そこで至高の弓であるフェイルノートを手に入れ、さらにその武勲には磨きがかかった。
完璧な騎士と称されるランスロットと双璧を成す程度には、トリスタンは素晴らしい騎士であったのだ。
また、ランスロットとも交友が深かった。ランスロットと交友の深かった、兜の騎士サー・モルドレッドとも交友があったが、こちらはさほど深く付き合いをしたわけでも無かった。やはり、トリスタンの友といえばランスロットであったのだ。
完璧な騎士と並ぶ武勇と、完璧な騎士との深い交友をもつトリスタン。そんな彼だからこそアーサー王も彼を重用し、また交友を深めた。
完璧な王と、完璧な騎士と、そしてトリスタン。見目麗しいこの三人衆は、全ての騎士の憧れであり、全ての女を蕩けさせるに足るものであった。
およそ二年間、トリスタンはアーサー王の下で仕えた。その間トリスタンは誠実な騎士であったし、誰もが壮士といって憚らない実力の持ち主でもあった。
ここでランスロットとトリスタンの交友の深さと、トリスタンのイゾルデへの愛が証明され、そしてトリスタンの死を招く出来事が起こる。
アーサー王に仕えている間、トリスタンは一度妻を娶った。それは確かに美しい婦人であったのだが、実のところトリスタンはあまりその婚姻を歓迎していなかった。
一度色に惑えば、遠い地に残してきたイゾルデが思い出されるのは目に見えていたからである。いっそ剣のみを追い求めて生きていたほうがよほど気楽であったことだろう。
ついにトリスタンはアーサー王の下を離れ、その妻と縁を分かち、イゾルデの居るコーンウォールに戻る。
戻るや否や、イゾルデに会い、駆け落ちを持ちかけたのだ。イゾルデは自分のために遠方より舞い戻ったトリスタンの愛の深さに心打たれ、一緒にマルク王の元を離れる。
このときにランスロットが二人のための住まいとして、「喜びの城」と呼ばれるものを提供したのだ。ここで二人は幸せな生活を享受することとなった。
しばらくして、二人はマルク王と和解する。喜びの城を一度離れ、マルク王の下に身を寄せることとなる。
マルク王自身、二人のことは許したものと思っていた。そこには姦計も何も無い、本心からの好意によるものである。
だが――――イゾルデの前で竪琴を弾いているトリスタンの背中を見たとき、拒みがたい衝動に襲われた。マルク王からすれば、娘を攫った張本人である。一度は許したとしても、娘と仲睦まじく戯れる姿を見て殺意が沸いてきたのだった。
一瞬であった。
帯びていた剣を抜き、背中から心臓を一突き。
瀟洒な竪琴が血に濡れる。いかな壮士の騎士といえど、死ぬときは実に呆気無いものであった。
薄れいく意識のなかで見たものは、泣き叫ぶ
――――かようにして、美しく、気高く、そして愛に生きたトリスタンの物語は一度幕を閉じたのだ。
勿論正体に繋がる部分は伏せてはいたが、自分の生涯を正直に語った。かなり割愛した部分も多いが、紛れもない真実の物語であった。
ただ、アーサー王との日々を詳しく語るわけにもいかないのが残念ではある。当然ながらアーサーの名を出すわけにもいかず、アルテュール王というアイルランドでの呼び名を用いるほかなかったのも残念だ。
それが功を奏したのか、アリシアはアーチャーの正体に気付いた様子もなかった。やはりアーサー王物語にトリスタンの生まれなどが詳しく記載されてはいなかったらしい。幸いなことであった。
「じゃあ……アーチャーはドラゴンを倒したことがあるの?」
「ああ。だがきっと、私の友達もドラゴンくらい倒してしまうよ。もしかしたら、私が知らないだけでとうの昔に倒しているかもね。
あ、いや……もしかしたら、ドラゴン退治には行かないかも知れないな」
トリスタンの言う友とはサー・ロンスロットを指すのだが、彼もまたアーサー王に仕える存在だ。アーサー王には竜の因子が含まれており、ドラゴンを退治するというのは些か気後れするかも知れない。少なくとも、トリスタンにはそう思えた。
だがアリシアにはそのような細かい事情は興味がないらしく、竜退治やトリスタンの恋愛について興味津々のようだった。
「ねえねえ。なんでドラゴン退治に行ったの? やっぱり、囚われのお姫様を助けるため?」
なるほど、やはりそのような発想になるか。もしそうであったら、年頃の少女らしいメルヘンなお話になっていたことであろう。
アーチャーは苦笑まじりで返答した。
「いや、ドラゴンを退治したものには王女を妻として与えるといわれていたんだ。私は叔父に王女を与えるべく、ドラゴンに挑んだのだ」
「えー、それじゃあ王女様がかわいそうだよ。そんな風に景品にされて、好きでもない人と結婚するなんて。
やっぱり、お姫様が悪いドラゴンに攫われちゃうほうが素敵だと思うな」
ちなみにここでいう王女とは、イゾルデのことである。だが彼女はトリスタンのことを愛してしまったのだ。思えば、既にここから悲劇は始まっていたのだろう。
「そうだね。だけど、色々あって私はその王女様と結ばれることとなった。王女様も私のことを愛してくれていたようだし、幸せだったと思うよ」
アリシアは、それを聞いてやや頬を赤らめる。まだ幼い少女には、愛だとか幸せという言葉は少々気恥ずかしいものらしい。
生まれてからずっとこの病院で過ごしているアリシアは、きっと恋愛など手の届かないもののように思うだろう。まだ十にも満たない少女が恋愛を経験するものなのかは、アーチャーにもアリシアにも分からない。だが、初恋ぐらいは経験していてもおかしくない年齢であるとは思う。
だがきっと、恋に落ちるという当然の権利さえも、きっとアリシアは放棄していることだろうと思う。なぜなら彼女自身が、普通の恋愛など出来るわけがないと認めているからだ。
出会いなどあるわけもない。ずっと病院暮らしなのだから。よしんば在ったとしても、治らない病気であるアリシアはここから何処かへ行くことは出来ない。相手は十中八九、治る病気を癒すために病院に居るのだ。ずっと会えるわけではなく、近いうちに別れが来る。
だからそれが、トリスタンには堪らなく悲しいのだ。
愛に生きた彼だからこそ、自分の病によって恋愛を放棄するその様が、痛々しくて仕方がない。
勿論、それだけが彼の原動力ではない。成人は迎えられないだろうという運命を覆したいという想いも、彼の中で多くを占めている。
だがやはり。愛があるからこそ、人は生きていけるのだと思うのだ。愛があるからこそ、人は美しく、人生は輝くのだと思うのだ。それを知らず、知ろうともしない少女のあり方が、悲しくて、悲しくて。
「ね、アーチャー。もしも私が、悪いドラゴンに攫われたら―――――助けに来てくれる?」
彼女は欲しているのだ。自分を日の光から守ってくれる、暖かい存在を。
そこに恋愛の情など、おそらくないのだろう。ただ彼女は、泡のように現れたアーチャーがその存在なのか確かめたいだけだ。その証が欲しくて、この問いを投げている。
アーチャーはそれでいいと思った。自分は、アリシアを守る鎧でいい。アリシアの恋がそこから始まることができるなら、それでいい。
もしも愛が自分に向けられるのなら、それはそれで受け入れようと思った。見た目の年齢が倍以上離れているが、きっとそれは、家族への親愛と勘違いしているだけなのだ。家族の温かみすら知らない彼女には、きっと恋との違いが分からないに違いない。その時は、彼女がその違いに気付くまで、暖かく見守るだけだ。
つまり何にせよ。アーチャーはアリシアを守り通すつもりなのだ。
きっと、イゾルデも笑って許してくれるだろう。
「もちろんさ。君は、私のお姫様だ」
アーチャーはその場に膝を付き、アリシアの手を取って恭しく宣言した。何があっても守るという、騎士の誓いを。
以前より心に誓っていたことであったが、言霊に乗せると確たる信念へと変わった。
アリシアは、その答えが嬉しかったのか恥ずかしかったのか。顔を赤くして、思い出したかのように、慌てて読書を再開した。
――――外を見れば、既に日は落ちている。あと数時間もすれば約束の刻限だ。それからは、アリシアを守るために闘争に身を投じなければならない。
それでいいのだ。私は一本の矢。誰かを守るために、戦場を駆けることしか出来ないのだ。その矢こそが、自分の中の芯だ。それを誇りに思う。
アリシアが眠ったら、戦場を駆けよう。
最後に日の光を浴びているのは――――自分とアリシアなのだ。
◆◇◆◇◆
結局、桜さんが教会に行くのは日が落ちてからとなった。日が落ちたどころか、日付すら変わろうとしている。
間桐邸は暫く無人ということになる。広い屋敷で、さらに地下室で妖しいことを行っていたということもあり、それらの処理にかなり時間を割いてしまった。
だが、なるべく別れを先延ばしにしたいという気持ちも働いていたことは認めるべきだろう。遠坂さんと桜さんはようやく姉妹になったばかりで、それなのにいきなり離れるというのはやはり後ろ髪を引かれる。
教会へは既に連絡してあり、桜さんの受け入れを認めるということであった。事実上、教会へ保護を申し出た人物は二人目ということになる。聖杯戦争始まって以来始めての人物は、間桐慎二――桜さんの義理の兄にあたる人物ということだった。
遠坂さんは、二度と教会には寄り付かないと啖呵を切った矢先に用事が出来たことが不満なようだった。だがいくら愚痴を零したところで、これが最良であろうことは間違いない。
向こうからすれば、やはり私達には借りがあることになるのだろう。渋々という様子もなく快諾してくれた。この辺りは冬原さんの人の良さともいえる。
……そういえば、桜さんに冬原さんのことを話していなかった。事前に、彼のことはある程度伝えておくべきなのだろう。だが、今は姉妹仲良く歓談に興じているところである。話の腰を折ってまで説明できるタイミングがつかめないでいた。
そろそろ教会が見えてくる。名残惜しいが、暫くの間はお別れだ。
とは行っても、聖杯戦争中全く会えないわけではなかろう。面会の機会くらいはあるはずだ。
坂に差し掛かったあたりで、冬原さんが出迎えてくれた。数人のお供を連れて、こちらが来るのを待っていたらしい。こちらに気付くと、恭しく礼をした。こちらの礼を返す。
「今晩は、待っていたわ。監督役の殉職により、その役目の代行を任されております、冬原春巳という者よ。よろしくね、間桐桜さん」
冬原さんがにこやかに笑い、軽く会釈をする。外国生活が長そうではあるが、初対面の挨拶が握手ではないことに、ささやかながらも日本人だということを思い出させた。
桜さんは、彼の風貌と言葉遣いにやや驚いたようだったが、同じくにこりと笑って会釈を返した。大したものだ。私は初対面の折には数秒ほど
「――――…………遠坂桜です。この度、間桐から遠坂に復縁することになりました。セカンドオーナー、遠坂凛の妹にあたります」
たっぷりと間をとってから、桜さんはそう宣言した。
何も聞いていなかったため、そこに居合わせたほぼ全員が驚いていた。向こうのある程度の事情は分かっているらしく、こちらほどではないが驚きを露わにしている。
だが、冷静になって考えてみれば。それは良い選択だったのだろうと思えてきた。
――――名は体を現す。姉妹に戻ろうというのならば、まずは名からだ。形式にすぎないけれど、やはり姉妹という気はするだろう。
それに、忌まわしき過去から決別するという意味でも良いだろう。決してこれは逃げではない。前に進むための選択だ。過去と向き合い、それでいてそれに囚われないためにも必要な儀式だ。
今の桜さんは、この選択ができるのだ。色々としがらみが未だに在るだろう。だがしかし、桜さんを縛り付けていた大きな枷は既に無いのだ。わずかに残ったしがらみが、どうして桜さんを止められようか。
それに、実質的な事情を鑑みても、それが最良の選択であると思う。
すでに間桐家は壊滅している。間桐の名を冠しているのは桜さんだけで、しかしながら桜さんは正当な跡継ぎという訳ではない。ある程度間桐寄りになっているとはいえ、魔術刻印を受け継ぐのは難しいだろう。そればかりか、魔術師として正常な教育すら受けていない。このような状態の彼女が、頼れるものが無い今の状況で、間桐の名を関し続けるのは重荷にしかならない。
それならば、姉である遠坂の庇護下にあるほうがデメリットは一切ない。しかもメリットは溢れている。
「――――ええ、貴方は名実共に、私の妹よ」
噛み締めるように遠坂さんが答える。当然、役所などで養子縁組などの手続きをしていないため、まだ間桐桜のままである。だが、遠坂さんがここでそれを認めた以上――彼女は、遠坂桜なのだ。
「……分かったわ、遠坂桜さん。貴女をこれより、監督役代行の権限において正式に保護対象に認定します。以降は我らの指示に従ってもらいますが、貴女には状況が許す限りの自由を認めます。
……また、面会も限定させていただきます。肉親以外のものとは一切の連絡を絶つことになり、肉親であっても面会の際には私の許可が必要となります。一同、それで構いませんか」
桜さん、遠坂さん、士郎さん、最後に私の順番で意志の確認をとる。異論を挟むものなど居なかった。
肉親ということは、遠坂さん以外は面会できないということだろう。というか、ここで復縁の宣言をしなければ遠坂さんであっても面会できなかったらしい。まあ、その時は保護者ということで強引に捻じ込んだのだろうけれど。
「では、これより遠坂桜を教会へお連れします。こちらへ」
桜さんは、一歩前に出て教会の面々の中に加わる。屈強な男達に守られるようにして、教会へと向かっていく。
だが不意に振り向き、遠坂さんをしっかりと見据えてこう言った。
「姉さん! 何もかも終わったら、海に行きましょう! もちろん先輩と、八海山さんも一緒に!」
「いいわね、そうしましょう! 一緒に水着を買いに行きましょう!」
「遠坂に同じ! しばらくの間、我慢してくれよ!」
遠坂さんと士郎さんが、遠ざかる桜さんに聞こえるように声を大にして叫ぶ。私も誘ってくれるとは嬉しいことだが、そのときになったら辞退しようかと思った。この三人の邪魔をするのは、なんとなく気が引ける。
桜さんの姿が見えなくなるまで、ずっとその場に留まっていたが、姿が見えなくなって暫くすると誰からというわけでもなく歩きだしていた。教会を背にして、衛宮邸に戻ろうとする。本当ならこのままの足で、敵サーヴァントを探すべく練り歩くべきなのだろう。
だが、今日だけは家で歓談しているのも悪くない。きっと誰も文句は言わないだろうと思った。