ソードアート・オンライン ~少女のために~   作:*天邪鬼*

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ラブライブサンシャインがアニメ化しますね!
色々と批判が多いサンシャインですが、自分は楽しみです!!


95話 室内戦

 

 

男は軋む木製の床を歩いて階段を守っていた。

間口50メートル、奥行き15メートルと横に大きいログハウスだが、2階との繋がりは中央にあるここの階段だけ。

2階に上がればある意味袋の鼠なのである。

ただし、それはログハウス内に敵の侵入を許した場合だけであり、2階で四方に銃を構えていればそうそう侵入を許すことはない。

もし、侵入されそうになったとしてもすぐに降りて迎撃したり、罠を張って返り討ちにすることも可能。

今、2階では3人のプレイヤーが辺りを世話しなく鬼の瞳で睨み付けている。

よって、本来ならば1階の警戒など必要ない筈なのだ。

それでも、男が所属するチームPM4は油断しない。

万が一を考えて行動する。

男は階段を守りながら自分が大切な任務を任されているような見せ掛けの高揚感に浸っていた。

そんな時。

ふと、男の視界の傍らで白い物体が流星のように流れたような気がした。

小さな窓しかないログハウスは若干暗いものの何も見えない訳ではない。

男は咄嗟に愛銃の銃口を白い物体が流れた方に向けた。

しかし、そこには50メートルの半分の25メートルの廊下が続いているだけ。

音もプレイヤーの気配もないただの廊下。

 

「フゥ………」

 

男は張り詰めた糸を緩めるかのように息を吐いた。

そもそも、このログハウスに侵入者がいる筈ない。

いたら2階で辺りを警戒している奴らが侵入前、真っ先に知らせてくれる。

きっと、持っていた銃が僅かな光に反射したのを捉えたのだろう。

男はそう自分に言い聞かせた。

その刹那。

緊張の糸を緩ませた一瞬を見定めたように、背後から腕が伸ばされる。

そして、その腕は男の口を塞ぎ頸椎にナイフを差し込む。

 

「ッ!?」

 

男は突然のことに戸惑いながらも助けを呼ぼうとした。

しかし、頸椎から差し込まれたナイフが喉仏を後ろから貫いていて声が出せない。

加えて口も塞がれているので僅かな喘ぎ声もシャットアウトされてしまう。

男は必死でもがいた。

もがいて物音を立てれば2階の仲間が助けてくれるかもしれない。

だが、この思い付きも途絶える。

何故か体がうまく動かせないのだ。

銃を持っていた両手、床に付く脚も、何か小さな物に縛られているみたいだった。

声も出せず、体も動かせず、男は左上に表示される自身のHPが凄まじい勢いで減っていくのを見ていることしか出来なかった。

 

「!!!」

 

そして遂に男のHPは0となった。

謎の力で動けなかった体から力が抜けていき、意識も遠退いていく。

男は最後まで自分の身に何が起きたのか理解できなかった。

それはまるで、唐突に現れては人の命を奪い去っていく___

 

死神

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達は声を殺しながら音を立てずにハイタッチを交わした。

横には今殺したばっかりの男性プレイヤーが寝そべっている。

薄暗いログハウスの中を変にテンションを上げながら警備していたのでチャンスと思い暗殺したのだ。

まず、アイがポンチョのフードを外して銀髪を見せびらかしながら廊下を横切る。

光を反射しやすい銀髪に視線が集中した瞬間に背後に回り込む。

そして、男が気のせいだと思い気を抜いた瞬間に背後から襲う。

俺が声を出させないようにし、アイとレンが腕と脚を抑える。

後は男が死ぬまで待つ。

3人がかりの暗殺は見事成功した。

 

「これでPM4は侵入に気付くから今のうちに」

 

俺は小声でアイとレンに言った。

今、2階にいるPM4の残りメンバーは無音の状態でいきなり仲間が1人消えたように感じている筈。

慌てて様子を見に来たプレイヤーを瞬殺してやるつもりだ。

急いで配置に付こうと行動に出る。

すると、2階から荒々しい足音が駆け抜けた。

俺達にはすぐに敵が気付いたんだと分かった。

俺は急いで倒れている男を担いで階段の正面に仁王立ちになる。

そして、死んで動かない男を盾のようにして待ち構えた。

 

「何があった!?」

 

慌ただしく階段を駆け降りてきたのは長身の覆面だった。

手にはサブマシンガンのような銃が見える。

この距離でサブマシンガンを連射されていたら俺でも対処出来なかったかもしれない。

しかし、長身の男は死んだ筈の仲間が階段の前で立っているのを見た瞬間、動きを止めた。

その間およそ5秒。

そして、男は叫んだ。

 

「卑怯者が!!」

 

長身の男が死体を盾にしていると気付いて怒号をあげる。

俺は盾にしている男越しに長身の男を覗いた。

長身の男は階段の踊り場からジャンプして飛び掛かって来るのがよく見える。

 

「レンさん!」

 

「おう!」

 

俺は長身の男が空中にいると確認した時、レンの名を怒号の中呼んだ。

それに応えるように階段から上に向かって銃弾が飛翔していく。

木で作られた階段の一部が貫かれて粉々になっていき、階段の板を貫いた銃弾はジャンプで空中にいる長身の男をも貫いた。

ピーちゃんのマガジン50発をフルオートで全て吐き出す。

長身の男は真下からの弾丸の雨を浴びて体勢を後ろに崩した。

背中から階段に落ちていく。

その時、偶然にも1発の弾が長身の男の後頭部を駆け抜けたようで落下して階段に転がった時には既に赤いDeadのマークが浮かんでいた。

 

「くそが!!」

 

続いて降りてきたのは俺より少し大きいぐらいのこれまた覆面の男。

目の前で長身の男が死ぬのを見ていたらしく、悪態付けながら持っているショットガンの銃口は階段。

つまり、階段の下から撃っているレンに向けられていた。

俺はショットガンを持った男に向かって盾にしていた男を全力で投げた。

投げた男でショットガンの男が隠れて見えないがバンッ!!という銃声が飛んだ。

しかし、レンのHPは少しも削られていなかった。

恐らく死体が飛んできたので思わずその死体を撃ったのだろう。

しかし、死んだプレイヤーの体は破壊不能(イモータル)オブジェクトになって全てを防ぐ。

いかなる攻撃も通さない最強の盾となる。

 

「ちくしょう!!」

 

男はまた悪態付けて今度は俺にショットガンを向けてきた。

俺はその場でしゃがんだ。

 

「それで避けれる訳ねがッ!?」

 

男の顔が後ろに仰け反った。

それにつられて腰も沿って銃口が上を向く

バンッ!!とショットガンから銃声が鳴り弾が天井に発射された。

そして、男はそのまま膝を折って倒れる。

見事、階段には3人の覆面プレイヤーが重なることとなった。

俺は振り向いて親指を立てた。

そこではアイが床に伏せて"M16A4"のスコープから目を外すアイがいる。

俺が男を投げたのはわざと俺に銃口を向けさせてアイを隠すためだったのだ。

 

「これで残り2人か」

 

「うん、ピトさんと恋人のエムさん。どっちも異常な程強いよ」

 

階段の下から出てきたレンがマガジンを変えながら言った。

 

「だから、降りてこないのですね」

 

アイが"M16A4"を抱えながら顎に手を置いて頷いた。

俺もアイと同感で敵に感心する。

ピトフーイが降りてこないのは気絶しているからだとしても、レンが言う恋人のエムは冷静な判断が出来るようだ。

慌てて降りても返り討ちにされると理解している。

 

「つまり、俺達から行かないと駄目か」

 

耳を澄ませて敵の位置を探ろうにも待ち伏せで音を出していなければ無理だ。

とは言え、普通に階段を上っている最中にグレネードでも投げられては俺達にダメージがくる。

 

「挟み撃ちしよう」

 

突然、レンが意味不明なことを言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

心の中で数を数える。

気を沈めて無用なことは考えない。

深く、深く、深く、太陽の光さえ届かない深海に沈み混んでいく。

水面には一切の波紋も広がらない。

とても静かな場所。

体がふわふわ浮いているようだ。

とても気分がいい。

 

『今です!』

 

俺は深海から一気に上昇した。

水の抵抗など無視して水面から飛び上がり、辺りの水を巻き込んで竜巻を造り上げる。

俺は走り出した。

 

「おう!!」

 

俺は階段の1段1段を無視して一直線にジャンプした。

踊り場の壁の前で猫のように体を回転させて足から壁に当たる。

そこで反動を付けると壁を両足で蹴り階段を飛んでいく。

階段を上りきった時、目の前には無数の鉄球が飛んできた。

それが全てグレネードだと気付くのにそう時間は掛からなかった。

階段を引き返そうにもグレネードは落下してくるだろう。

俺は全力で後ろに飛んで2階の廊下に逃げた。

空中でバク宙を決めて足を滑らせながら着地する。

その時、階段が爆発した。

がらがらと木が焦げ落ちる音が聞こえてくる。

もう、あの階段は使えなさそうだ。

 

「これは予想外だ。まさか避けられるとはな」

 

そう言うのはSHINCのエヴァ級の巨大を持った男だった。

エヴァと違うのは顔の角張だろう。

腕や脚の太さは俺の何倍もあり、離れていても俺は首を少し上げなくてはならない。

天井が高いため上に頭は当たらないにしても威圧感抜群の迫力。

奴が持っているアサルトライフルがどうしても小さく見えて驚異に感じない。

彼がピトフーイの恋人であるエムのようだ。

 

「遅すぎるんだよ」

 

「成る程、AGI型………スピードには自信があるのか」

 

エムは鋭い目付きのまま、銃の引き金に指を掛けた。

俺も臨戦態勢に入る為、SAO時代のスタイル二刀流になる。

右手には表面にスパークを起こしているクリムゾンレッドの"オニマルクニツナ"。

左手には紫色をした"カゲミツG4"を逆手で構える。

 

「だが、銃弾より速くは動けまい」

 

「さぁ、どうだろうね!!」

 

エムが放った銃弾を俺は光剣で弾き飛ばした。

 

 




そろそろ、SJ2編も終わりますね。
つまり、この小説自体の終わりも近付いているということ………
今度の予定ですが、SJ2編が終わると最終章が始まります。
最終章はまとめという感じで数は比較的少なくなると思います。
ですが、皆様が驚く展開にしたいです!!

では、評価と感想お願いします!!

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