ソードアート・オンライン ~少女のために~   作:*天邪鬼*

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子供は風の子とよく言います。
ですが、これに"大人は火の子"という続きがあるのを初めて知りました。
子供は風の子大人は火の子
子供は寒くても大丈夫だけど、大人は寒いのが駄目で暖かい場所で過ごす、という意味らしいです。



87話 私が殺る!!

 

 

親友からの連絡をパソコンのメールで受け取った私はその内容を読んで石像の如く固まってしまいました。

その内容とは、

"ALOから助っ人呼んどいたぜ!!ありがたく思いな!"

でした。

 

「はいっ?!」

 

親友からのメール内容が頭に届くまで数秒も要してしまいました。

パソコンの画面に顔が当たりそうになるぐらい近づいて目を開きます。

しかし、何度目を擦っても何度見直しても残念ながらパソコンに表示される文字は一語足りとも変わることはありませんでした。

 

「あのゲーマー!!」

 

私は高校からの親友、そして私をゲームの世界へと導いてくれたゲーム歴でいえば先輩であり師匠。

篠原美優に向けて届かないと分かっていながらも怒りを籠めて叫びました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は灰色のポンチョを被った愛しのチビキャラであるレンとなってGGOにいました。

現実での高身長をコンプレックスとして何がなんでもチビになろうと思ったのがVRゲームを始めた切っ掛け。

ALOでそこそこ有名らしい美優ことフカ次郎に大雑把なレクチャーを受けてから巡り巡ってGGO。

今ではこのチビキャラを我が子のように溺愛しています。

 

「本当に来てくれるの?」

 

「心配しなくても来てくれるさ。………多分」

 

「多分!?」

 

巨大なドーム状の建物の前、私とフカは並んでとある3人組を待っていました。

3人組とはフカが頼んだ助っ人の皆さんのことです。

フカがいうにはその3人組の内1人はALO最強のプレイヤーとのこと。

ALOはVRゲームでも特出して人気のあるファンタジーかつスリリングなゲーム。

その世界の頂点ともなればある程度の強さは保証されるでしょう。

しかし、GGOはファンタジーとかけ離れたSF世界。

"少し不思議だなぁ"のSFではなくサイエンス・フィクションのSFです。

ALO最強でもGGOでは初心者。

何処まで通用するか不安です。

それにフカは私が話したピトさんのことも話したと言ってました。

来てくれたとしても後日それを種によからぬことの頼みをしてきたりするかもしれません。

フカは信頼しているようですが、私の頭は申し訳ないですが気掛かりなことでいっぱいです。

 

「ほら!!」

 

疑心暗鬼に陥っている私の前に光の粒子が現れます。

青白い光の粒子は空中を縦横無尽に駆け回ると3つの人形を作り出していきました。

そして、光の粒子が完璧に人形を保つと青白い色は抜けていきプレイヤー本来の色が浮き出てきます。

 

「わぁ………」

 

私は無意識の内に感嘆の声を漏らしていました。

私とフカの前に現れたのが街中を歩けば10人中10人が振り返りそうなぐらい美しい少女達だったからです。

さらに言えば、彼女達を知らないと"GGO本当にプレーしてるの?"と愚弄されてしまうかもしれません。

それ程の有名人だったのです。

黒髪のロング、銀髪のロング、水色のショート。

間違いありません。

第3回BoB優勝者、"死神"、"灰色狼"、"冥界の女神"の異名を持つGGO最強のプレイヤーです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

BoB………SJなどとは比べ物にならない運営側が開催するGGOの頂点を決める大会。

腕自慢、好奇心、暇潰し、出場者は皆それぞれの目的を持っています。

しかし、そのような目的を持っているほとんどのプレイヤーはBoB本選まで辿り着けず予選落ちとなることが至極当然となっています。

何故ならプロがいるからです。

プロと言うゲームを稼ぎ口としているプレイヤーが強すぎて通常プレイヤーの行く手を阻むことになってしまっているのです。

それ故、BoB優勝者は曲者揃いのプロの中を勝ち抜いた廃人ゲーマー。

………と言うのが、私のイメージでした。

それが今、隣に立っている少女のような男の子………俗に言う男の娘が塗り替えてくれました。

 

「あ、あの?」

 

「ああ、ごめんなさい!」

 

知らず知らずに彼、キリト君の顔をガン見してしまっていました。

私は慌てて両手を前で振って謝ります。

キリト君は不思議そうに首を傾けていました。

端から見たら飄々としているように感じますが、キリト君の左手は常に私と反対側の隣にいるアイちゃんの右手をしっかり握っています。

シノンさん曰く"人見知りの照れ隠し"だそうです。

つまり、初対面の私に緊張しているようです。

フカのミスによって現実が分かっているので年齢だけは知っている私達。

キリト君、アイちゃん、シノンさん。

皆、私より年下だからでしょうか?

年上の私に何処か一定の距離を感じます。

まぁ、良く言えば礼儀正しいのですがこれからは共に戦う仲間。

信頼関係が大切なのは前回のエムさんのことで嫌な程身に染みています。

どうにかして、距離を縮めないといけません。

 

「登録完了!!」

 

私が唸っているとフカが元気よく大声を出してきました。

その声に私達がいるのがSJ2参加登録の為の酒場だったことを思い出します。

SJ2当日はここからフィールドに転移することにもなっています。

そんな酒場を迷彩柄のポンチョを被ったフカが走って酒場の入り口横にいた私達の所へと走ってきました。

 

「チーム名もバッチリだよ!!」

 

「へぇー、どんなの?」

 

私は自信満々に親指を立てているフカに訊きました。

すると、フカはあまり無い胸を張って答えます。

 

「フカ次郎のF!レンのL!アイのA!シノンのS!キリトのK!その名は………」

 

フカはこれでもかと深く長い溜めを置いてから言いました。

 

「チームFLASK(フラスコ)!!」

 

「バカ~!!」

 

私は自慢気にどや顔を決めているフカの首元を鷲掴みにして前後左右に揺らしました。

これでもかとこれでもかと全力で振り回し続けました。

けれども、フカは何故怒られているのか分かっていないようで反論してきます。

 

「何でさ!?皆の頭文字を先頭にしてるし良いじゃん!」

 

「だからって、何で理科の実験で使う物なの!?」

 

ここから私達の取っ組み合いが始まりました。

キリト君達の前で親友の失態。

心の距離が更に開いてしまうかもしれません。

 

「………仲良いな」

 

「流石、親友です」

 

「私とキリトは絶対しないだろうけどね」

 

3人の生暖かい眼差しが私の背中に届きます。

どうやら、心の距離を縮めることと引き換えに年上の威厳が失われたようです。

この恥ずかしさを絡めて私はフカに取っ組み合いました。

勿論、勝ちました。

SJ2もこれくらい楽なら良いなと思った今日この頃です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SJ2開始直後、キリト君がとある提案を私達にしてきました。

それは私達が最初に転移したゴーストタウンにいる他のチームへの奇襲です。

地図によればこのゴーストタウンは1辺数キロに及ぶ正方形のフィールド全体の4分の1を占める大都市。

ここに私達だけが転移するとは思えないということらしいです。

そして、少し頭を使うチームがいるならこの古びた建物を使って罠を仕掛ける可能性が高いとキリト君は予測したみたいです。

私はキリト君の不敵な笑みに魅せられてしまいその提案に乗っかることにしました。

 

「幸いここはゴーストタウンの端。一直線に進んでいけば何処かしらのチームと当たると思います」

 

そう言ってキリト君はダボッとしたマントの内側から手のひらサイズの黒い機械を私達の人数分取り出しました。

インカムです。

キリト君は小型化されたインカムを私達に配りました。

これこそSF映画などで見掛ける仲間と連携するためのメジャーアイテムです。

小さい頃から少し憧れてもいた機器なので口がにんまりとしてしまいます。

おっといけない。

いくら女性のスパイに憧れを持っていようともここでは真面目な顔をしないといけません。

私は緩む口を引き締め直してインカムを耳に装着しました。

 

「俺達は今から一旦散らばって敵の捜索をする。全体に見つからないように慎重に。そんで、誰かが敵を見つけたらインカムで場所を伝える。後は隙を見て討つだけ」

 

キリト君は今一度不敵な笑みを浮かべます。

本来なら1回目のスキャンを待つべきで恐らくSJ2参加チームのほとんどがそうするでしょう。

転移した地形によってキリト君が予測した通り罠を仕掛けるチームも存在する可能性は大いにあります。

しかし、キリト君はそんな常識に囚われていません。

先手必勝。

常識など関係無く見向きもしないで勝つ為に策を講じる。

まさに策士です。

この頭の回転力を使ってBoB史上初の弾丸を1発も撃たずに優勝という伝説を残したのでしょう。

味方でいてくれることが本当に良かったです。

ついでにフカにも感謝です。

 

「それじゃ、作戦開始だよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作戦は見事なまでに成功しました。

私が忍者のように壁に背中を押し付けては走りまた壁に背中を押し付けては走りを繰り返していた時に偶然敵の談笑を拾ったのでインカムで皆に報告します。

報告を受けたシノンさんが高台に登って私の伝えた場所を観察して敵の人数と位置を把握。

その情報を元にキリト君が私達の配置場所を決めて作戦実行です。

まず、シノンさんの狙撃銃、あの財力で無数の銃を所持しているピトさんでさえ持っていない対物ライフルの一丁"ウルティマラティオ・ヘカートII"の弾丸によって敵が仕掛けていた爆弾トラップを誘発さて、その爆発で敵が怯み意識を爆煙に集中したところで間髪入れずに後ろからナイフで襲う。

 

「まずは、1チーム」

 

キリト君が無邪気な笑顔を向けてきました。

まるでイタズラに成功した子供のようです。

ですが、この完璧なる殲滅作戦を考えたのは無邪気な笑顔を浮かべているキリト君なのです。

感心を通り越して僅かな畏怖すら覚えます。

そして、同時に不思議と胸の奥に対抗心が浮かんでくるのです。

全く違う感情が心の中で入り乱れています。

 

「レン様、スキャンが始まる時間ですよ?」

 

「あ、本当だ」

 

爆発で小さなクレーターが出来た家と家の間にシノンさんを除いた皆が集まります。

その時に人を呼ぶ際様を付けるちょっと不思議な子のアイちゃんがスキャンの時間を教えてくれました。

私は急いで端末を取り出してマップを広げます。

すると、端末から放射される青い光がマップを浮かび上がらせて皆が見れるようになります。

直後、マップの上からマップを横断する電波の波が現れました。

その波はフィールド全体を数秒で通り過ぎていき、跡にはSJ2参加チームの居場所を伝える黄色い光が残っています。

 

「ああ………!!」

 

「………ピト様のチームは真逆ですね」

 

私達がいるのは左上辺り。

対してピトさんがいるのは左下の岩山でした。

私は端末を落として膝を折ります。

アイちゃんの冷静な判断が現実を突きつけられているようで痛いです。

 

「ま、取り敢えずはこの駅に向かってる敵を討つか」

 

「立て籠りなんて卑怯ものめ!!シノンさん殺っちゃって下せぇ!!」

 

『生憎ここからじゃ射程外よ』

 

私は立ち上がりました。

 

「私が殺る!!」

 

 




さて、テストも終わって更新スタートです!!
皆さんお待たせしました!!
次回レンちゃん無双ですよ!!

では、評価と感想お願いします!!

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