ごちうさ、終わセラ、ワンパンマン。
個人的にはこの3つが大好きです!!
「私は闇風を仕留める。死銃はあなた達にお願いするわ」
シノンはそう言って自らの身長に迫る大きな対物ライフルを肩にかけた。
情報ではサーバー内に10丁程しかない対物ライフル。
そんな数少ない稀少価値である物の中の1つがシノンのPGMヘカートII。
現実では全長138センチだというのにゲームの中では大分大きく再現されている気がする。
多分、俺が現実より背が小さい男の娘アバターだからだろう。
「本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫だって言ってるでしょ。恐怖は正直に言うとあるけど、私はキリトを信じる。同類の貴方と1度現実で会って話しをしたいし」
シノンは俺とアイにそれだけを言い残して洞窟の後ろに見える2棟の廃ビルへと走り去って行った。
走って行くシノンの後ろ姿には強い意思を感じる。
友達が犯人の可能性や死銃の仲間がすぐ近くにいる可能性。
普通なら戦意を削がれてもおかしくない不安要素。
それでも尚、生きるために戦おうとする意思がシノンにはあった。
ヘカート、古代ギリシャ語ではヘカテー。
冥界の女神の名前でもあるがその意味は"意思"。
シノンは大きな"意思"を持って戦っているのだ。
「私達も行きますよ」
「ああ、何があっても死銃を倒す」
「私も………何があっても和人様を護ります」
360度砂だらけ。
それは砂漠のほぼ中心にいるから当たり前なのだが、そこに1人でいると強烈な孤独感に襲われる。
後ろにはうっすらと砂漠に埋もれているような洞窟の入り口が見えて、その後ろの廃ビルは靄がかかったようになっていた。
何処を見ても地平線。
北海道に地球が丸く見える展望台があると言うがこんな感じなのだろうか?
「すぅ………」
俺は瞳を閉じて1呼吸分の息を吸うと口も閉じて意識を耳に集中させる。
眼で見て捜すよりも遥かに索敵効果のある
頭の中では砂嵐のせいで多少荒々しくも確実に辺りの地形などが構築されていく。
すると、遠くの方で闇風とおぼしき高速で動くプレイヤーを捉えた。
一定の速度で蛇行運転という不規則な動きによりこちらを撹乱させようとしている。
バサバサと音が鳴っているのでマントを着ているのだろう。
まぁ、闇風はシノンが仕留めてくれるので無視だ。
アイの存在も確認出来たし準備は万端だった。
後は死銃を見付けるだけ。
いくら透明マントを持っていようが足音がなる時点で俺の
問題は遠距離からの狙撃だろう。
音速を越える場合の狙撃だと音よりも弾の方が速いので
その場合はもう1つのシステム外スキルである超感覚で乗り切るしかない。
限界まで索敵範囲を広げた俺は待ち続けた。
いつでも臨戦態勢に入れるように精神に波紋を一切立たせない。
周りは砂嵐で時折轟音のような音が広大な砂漠に響くが心の中では静かな時が過ぎていく。
そんな時だった。
俺は無意識に体を回転させた。
「ふっ!」
そして、俺が回転する向きとスピードに合わせたような弾丸が頬を掠めていった。
長い髪の一部が弾丸の勢いで切断されて砂の上にパサリと落ちる。
だが、俺はその髪の毛が落ちる前にはすでに弾丸が発射された方向へと走り出していた。
走りにくい不安定な砂場をコツで強引に蹴り飛ばす。
一歩進むごとに後ろから砂が弾け飛ぶ音が当たり前のように聞こえてくる。
「弾道予測線!」
向かう方向から赤いレーザーのような一直線の光りが伸びてきた。
ご丁寧に眉間ジャストミートで狙っている。
しかし、これは敵の居場所を教えているようなものだ。
俺は首を横に倒すだけで弾道予測線に沿って飛んでくる弾丸を紙一重でかわした。
そして、マントで隠れていたベルトから通常バージョンのグレネードを鷲掴む。
「そい!!」
俺はグレネードを弓矢のように引き絞った右手で全力で前方へと放り投げてやる。
数秒後、ドッゴンという砂を弾き飛ばす鈍く重い音が爆風と共にやって来た。
悶々と砂煙が立ち上がり辺りの視界が悪くなる。
そこで、俺はマントから円盤のような灰色のフリスビーを用意した。
これをまた放り投げるのだが、今度は前方へとではなく砂煙が立ち上がっていないただの砂地に投げるのだ。
振り払うように右真横に投げた灰色のフリスビーは砂煙を外れて開けた場所に向かう。
その瞬間、フリスビーの灰色をした表面が破れて黒い風船が膨らんでくる。
微妙に気味の悪い光景だ。
だが、あの黒い風船はデコイ。
市販で売っているような安物ではなく、軍事用の高級ゴムで出来ているのだろうか?
瞬時に黒いゴム人形となって遠目から見たら俺にそっくりな人形と化す。
そんなゴム人形が砂煙から飛び出していった。
「あ………」
元気に生まれて元気に飛び出ていったゴム人形は砂煙から外れたと同時に弾道予測線のレーザーを受けて後に続く弾丸により木っ端微塵に吹き飛んでしまった。
黒いゴム人形の残骸が虚しく砂漠に花吹雪のような散り方を見せる。
何故だろう?
別に単なるデコイで囮の筈なのに胸がほんの少しだけチクリと痛む。
囮であっても少しだけ情が移ってしまったようだ。
そっくりな人形の為にも勝たねば!!
俺はこれまでに無いほどの踏み込みで、大地を蹴り割るつもりで、何よりも誰よりも速く、砂煙の中に突っ込んでいく。
そっくりな人形が撃たれた時の弾道予測線から死銃の位置を割り出して微塵の迷いなく突進する。
砂煙から抜ける直前になり、俺は懐から黒のコンバットナイフを抜いて逆手に構えた。
「………よぉ、久し振りだな」
「クソ………」
砂煙を抜けた時には俺のコンバットナイフは腹這いになっている死銃に右上から左下へと殴り付けるように襲い掛かっていた。
人が1人なんとか入れる程の小さな洞窟………穴と言ってもいい。
そこにスナイパーライフルを構えたぼろマントを着込んだ仮面の男。
仮面でアバターの顔が拝めないが、声で焦っているのが感じ取れる。
だからなのか、死銃は持っていた銃の発射口部分を掴んでを大剣のように振ってきたのだ。
本来の意図とは全く別物の攻撃方法。
かわす事など出来ず、仕方無くそのままコンバットナイフのスピードを腕をしならせ加速させる。
スナイパーライフルのボディーとコンバットナイフの刃がぶつかり合って小さな火花を散らす。
「クソ!」
今度は俺が吐き捨てるように呟いた。
遠距離狙撃用に巨大化したスナイパーライフルとコンバットナイフでは大きさに違いがありすぎる。
俺自身のスピードで多少コンバットナイフも重くなっているとはいえ、この均衡は崩れるはずだ。
そう考えていた矢先だった。
コンバットナイフがスナイパーライフルに押し返され始めたのだ。
咄嗟に俺は後ろに飛んで棍棒のような使い方のスナイパーライフルをいなした。
数メートル後退させられた俺はこれ以上の後退を阻止すべく膝を曲げて踵で踏ん張る。
列車の線路のような2つの線がこの砂漠に刻まれた。
そして、踏み止まった俺は腰を落として追撃に備える。
しかし、死銃はスナイパーライフルを振り切った状態で止まったままの状態だった。
「そんな使い方するなよな」
「黙れ………」
「はっ、いい的なんだよ」
「何………?」
俺は不敵に短く笑うと構えを解いて死銃のスナイパーライフルを見据える。
そこには赤いレーザーが放射されており、これから破壊するという合図でもあった。
しかし、狙撃主の居場所を知らない死銃には何も見えていない。
死銃は俺の視線で気付いたのか急いで自分には見えない弾道予測線から逃れようとする。
だが、遅い。
ガシャン!!
音速を越えた弾丸が一寸の狂いも見せずに死銃のスナイパーライフルのボディーを直撃した。
GGOでの銃には部分部分にちゃんと耐久力があるのだがど真ん中を的確に撃ち抜かれたスナイパーライフルはバラバラに砕けていく。
もはや、鉄屑の廃銃となってしまった死銃のスナイパーライフル。
部品すら残さぬまま死銃の手の内から赤いガラスのようなエフェクトとなって砕け散る。
「………従者か?」
「生憎違う。初心者がこの距離を当てられると思ってるのか?」
俺は親指で後ろにある2棟ある廃ビルを指した。
見立てではここから2キロも離れているあのビルから正確極まりない狙撃を可能とするプレイヤーは現在BoBに………いや、GGOに1人しかいない。
「シノンか………お前には………何故見えていた?この距離でも………見えるのか?」
死銃はゾンビのようにゆっくりと体を起こした。
血よりも濃くておぞましい赤色の瞳が俺に向けられる。
緊張感を切らせばその瞳による圧迫感で立っていることさえ難しいだろう。
俺はあくまでも不敵な笑みを浮かべたまま語る。
「グレネードで巻き起こした砂煙でお前は見えなかっただろうがな。その時後ろでは1発の銃弾が1人のプレイヤーを貫いていたんだよ」
「シノンが………闇風を………」
「苦労したよ。闇風がどのコースをどのタイミングで走るか。そのタイミングでグレネードの爆音を引き起こせるか。それによってどう思い何処に隠れるか。そして隠れた場所に向けて単眼鏡を写し、シノンの弾丸を見逃さないか。1つでも間違えたらお前の武器を壊せないからな」
正直言ってこの計算は頭がパンクしかけるぐらい厳しいものだった。
NPCならまだしも人間という感情、自我、知能などがある存在の行動パターンを予測するのはコンピューターでも難しいのではないか?
我ながら誇ってもいいと思う作戦だった。
今頃シノンは俺のことを見直しているであろうな。
「………何故だ。何故それで………終わらせなかった?」
心なしか、死銃の瞳の色が強く更に濃くなった気がした。
それと確実に殺気に怒気という負の感情が宿されている。
もしかしたら、その負の感情が瞳の色を変化させてるのかもしれない。
当たってるかどうか分からないが、面白い仕掛けだ。
「質問が多いな。余裕が無くなっているのか?」
俺は不敵な笑みから挑発するような笑みへと表情を変えた。
薄ら笑いを浮かべながら白い歯を見せ、顎を引いた状態で死銃を上目遣いのように睨む。
右手に持つコンバットナイフを器用に回転させてから元の逆手に持ち直す。
「お前を倒すのはただのプレイヤーじゃ駄目だ。不意討ち何て尚更だ」
勿論、シノンが普通のプレイヤーだとは言わない。
仮想空間を仮想空間だと理解しながらも現実として見ている節がある。
狙撃技術など関係無く強いプレイヤー。
心が強いプレイヤーだ。
しかし、死銃と戦うにはとある経験がたりない。
「お前を止めるにはSAOプレイヤーに負けたという事実が必要だ。そうだろ?未だSAOから抜け出せられない弱虫が」
「殺す………」
GGOも遂に最終局面!!
次回で決着なるか!?
それは自分の気分次第!!!
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