やだ!!自分はそんなの信じない!!!
あ、でも来期のアニメは楽しみ。
『どうしたの?』
家の中に複数設置されている仮想空間からでも現実の様子を見ることの出来るカメラ。
本来の用途は現実に実体がないアイの為に作った物だ。
それが今ではカーディナルとユイ、それに木綿季も加わったことでザ・シードで作った空間からこちら側が見れるようにバージョンが上がっている。
そんなカメラの1つから木綿季の声が聞こえてくる。
心から心配してくれているのだと声音で分かる。
俺は震える口を懸命に動かした。
「俺………」
が、続きの言葉が出てこない。
自分の言いたいことが言えず、何だか自分でもまどろっこしくなる。
早く口に出したいのに喉でつっかえてしまう。
悔しかった。
ただ"会いたい"って言いたいだけなのに………
『和人。
木綿季が普通なら意味の分からないことを言った。
だが、仮想空間を知っている人なら誰もが分かる言葉だった。
木綿季側、それは仮想世界側ということだ。
『えっと、ボク、上手に言えないんだけど。仮想空間だったら楽というか………正直になれる?………違うな。んー、………何て言えばいいんだろう?』
カメラ越しでも唸り声が聞こえてくる。
木綿季は直感的な考えが多いから頭で浮かんだことを伝えるのが苦手だ。
だから、こんな感じでアバウトなことも多々ある。
けど同時にちゃんとした芯も存在する。
「今から行く」
唸りながら必死で自分の考えを伝えようとしてくれる木綿季の声が良い薬なったのか、大分心が楽になった。
かといって辛くない訳でもない。
殴ったときの痛みでか精神的なものか、手の震えは未だにある。
俺はその震えに抗いながらベッドの向かいの棚に置いてあるナーブギアを取りにベッドから降りた。
足に力が入らなくて大きくよろめいた。
SAOから戻ってきた直後に逆戻りした気分だった。
しかし、無理矢理にでも体を動かした。
体中がだるい。
病は気からとは言うが本当にそうだと思う。
ナーブギアを持って家の仮想空間に行く準備だけで額から汗が滲み出る。
俺は額の汗を手の甲で拭い、ナーブギアを被った。
ベッドの上で脱力状態になってダイブの姿勢になる。
そして、言葉を詰まらせないように深呼吸をしてから言った。
「………リンクスタート」
我が家の仮想空間は現実の家と全く同じ設計になっている。
家の構造から家具まで何もかもが現実と同じ。
水も出るし火も起こせる。
暖かいお風呂も入れるし料理だって出来る。
これらの図を書いたのは母さんだ。
絵が上手いの知っていたがここまでとは思わなかった。
パソコンの情報誌の編集者だとこういう3D画像の作成知識も身に付くらしい。
ここでアイとユイは文字通りの
木綿季は普段治療があるので病院の方に居て、カーディナルは自分の図書館みたいなのを作っているのでアイとユイ専用になってしまっているのだ。
玄関に転移した俺はゆっくりとした足取りで自分の部屋に向かった。
埃やちょっとした傷もなく仮想と現実の違いが明確に判断できる。
そして、俺はドアを開いた。
「木綿季………!!」
「わぁっと!?」
仮想空間での俺のベッドに紺のワンピースで座っていた木綿季を見つけた瞬間、俺は木綿季の側まで急ぎ抱き締めた。
木綿季は驚いた様子だったが、それも一瞬ですぐに抱き締め返してくれた。
抱き締めていると木綿季の暖かさが伝わってくる。
木綿季がここに居ると実感が湧いてくる。
その気持ちが却って俺の抱き締める力を強くした。
「く、苦しいよ!」
「あ!ご、ごめん!」
つい力を強めすぎてしまい木綿季が背中をタップした。
木綿季に叩かれるまで全然気づかなかった俺は咄嗟に木綿季は離した。
すると、木綿季は若干朱色に染まっている頬をパンパンに膨らましてジーっと俺を睨んできた。
「それで?」
「え?」
「和人に何があったの?」
木綿季が頬に溜めた空気を溜め息に変えながら俺に訊いてきた。
俺は全てを話そうとした。
事件のことも、死銃のことも全てを話そうとした。
しかし、話せば木綿季も協力すると言い出すだろう。
もし、死銃が本当に不思議な力を持っていたとしたら、アイだけじゃなく木綿季まで危険が迫ってしまう。
俺の体は1つ。
庇えるのは1人だけ。
2人も守れない。
「また深く考えてるでしょ?」
「………はい」
木綿季が見透かしたようにジト目で俺の顔を見てきた。
俺と木綿季は現在顔1個分近くの身長差がある。
必然的に木綿季が俺の顔を除くと上目遣いになるのでドキッとしてしまう。
少し心臓に悪い………
「和人は深く考えすぎなんだよ。まぁ、そこが和人らしいしボクが好きな所でもあるんだけど」
「別に___」
「でもね、たまには考えないで気持ちを優先するのも大事だと思うよ」
木綿季は反論しようとする俺の言葉を遮り、自分の言葉を重ねた。
俺の手を握って微笑みかけてくる。
そんな木綿季を見ていると俺のことはどうでもよくなり木綿季が正しいと思えてくる。
"和人様は理論的過ぎます。心の中はメルヘンなのに何でそれを表に出そうとしないんですか?"
一度アイに言われたことがある。
その時は"俺はメルヘンじゃない"とか"それはただの不思議ちゃんだろ"とか言って誤魔化した。
けど、木綿季の前でなら正直になっても良いのかもしれない。
アイ達の前ではどうしても強く魅せようとしてしまうが、木綿季の前でなら………
「俺………!!」
「うん………」
涙ながらに俺は語り始めた。
涙と嗚咽が混じって木綿季にちゃんと伝わっているかも分からない。
だけど、伝わっていると信じて続けた。
木綿季は俺の手をずっと握ってくれていた。
正直言って何を話したのかは自分でも曖昧だ。
話終わるのも凄く唐突だった気がする。
それに、隣の木綿季だって苦笑いだし。
全然伝わっていなかったみたいだ………
「大丈夫!ちゃんと伝わっているから!!」
取って付けたような木綿季のフォローが痛い。
俺は肩を落とした。
泣きながら必死で話したのに理解してもらえなかった。
結構、精神的にガツンっと来るものがある。
「和人は悪い所ばっかり見ちゃうんだね」
「………悪い所?」
「うん。和人が話したことの内容は正直分からなかったけど………」
なんと木綿季が追い討ちを仕掛けてきた。
肩を落とすどころか木綿季と繋がっている手の逆の手で顔を覆った。
恥ずかしすぎて恥ずか死んでしまう………
あれ、目から汗が………?
「気持ちは分かった」
俺は体を少し震わせた。
恐怖とかじゃなく木綿季が言ったことに反応したのだ。
俺は手のひらを退かして木綿季見た。
肩を落とした状態なので真横に木綿季の顔が見える。
「SAOが生んだのは悪い事ばかりじゃない。良い事だって沢山ある。そうでしょ?ボクだってそうだもん」
「良い事………」
確かにある。
大分人と話せるようにもなったし、何よりも友達が出来た。
個人的に得たものは沢山ある。
だが、それ以上に奪ったものが多すぎる。
俺は顔をしかめてしまう。
「和人が抱えている問題は凄く大きくて和人にしか解決できない。ううん、解決すら出来ないのかもしれない。ボクなんかが一緒に抱えるのは無理なんだと思う」
木綿季は最後の方を悔しそうに言った。
手の力が強くなる。
それでも、木綿季は明るく笑顔で続けた。
「けど!抱えている和人を支える事は出来ると思ってる!」
弾けるような笑顔だった。
白い歯をイーっとしていて、とても可愛らしい。
俺には勿体無いぐらいの女の子。
何て子を俺は好きになって、そして好きになってもらったのだろう。
こんな小さな体に溢れ出す大きな勇気。
俺はその勇気を隣で沢山貰っている。
気付いた時にはもう、木綿季を抱き寄せていた。
「俺を支えてくれるか?」
「勿論!」
「ずっと………ずっとか?」
「約束でしょ?1人にしないって」
俺は木綿季の肩に手を当てて力を入れた。
ベッドが少しだけ軋む音がした。
そこにあるのは紺色のワンピースを倒れた拍子に乱してしまった木綿季を黒のロングティーシャツと黒のジーパン姿の俺が押し倒している状況。
「か、和人!?これはどういう………!?」
顔の隅々まで真っ赤な木綿季がまだ慎ましい胸を隠しながら困惑している。
俺は木綿季の顔に自分の顔を近付けた。
「んっ………!!」
木綿季の唇に自分の唇を押し当てる。
強引だったのか木綿季から短い吐息が漏れる。
「ぷはぁ………!!ちょ、待って和人!!ボクまだ心の準備が………」
木綿季も察したのか手で俺の胸を押して弱い抵抗をした。
けど、いくら仮想空間だろうと男と女。
力の差が出る。
俺は木綿季の手を抑えた。
「………木綿季」
「か、和人………!!」
俺は今一度、木綿季の唇を奪いにかかった。
体全体で覆い被さるようにして木綿季と密着する。
長い夜が始まる。
俺はこの日、愛する女性と1つになった………
あ………うん、久し振りなんですけど。
なんだこれ?
いや、自分が書いたんですけどね。
やっぱり読み返すとなんだこれ?ってなりますね。
うん、なんだこれ?
なんだこれ?
なんだこれ?
なんだこれ?
えっと、では。
評価と感想お願いします!!
なんだこれ?