ソードアート・オンライン ~少女のために~   作:*天邪鬼*

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夏休みは何にもすることが無いので投稿スピードアップと思っていたのですが夏バテでそうでもないです………
自分の活動時期は冬のようです。


65話 予選前のちょっとした事件

「ご、ごめんください………」

 

真っ白いドアに付けられた銀色の取っ手に手を掛けた。

細長い銀色の取っ手にはうにょーんと縦に歪んでいる奇妙な世界が映っている。

そんな世界を横にやり、恐る恐る声を出しながら忍者のように足を踏み入れた。

ドアを開くとそこには大きなベッドに見知らぬ機械。

そして、その機械を弄くる薄いブロンドの女性。

長い髪を後ろで1つの3つ編みにして看護服を若干着崩している眼鏡姿。

女性は入ってきた俺に気付きにんまりと笑う。

 

「おぅ、和人君久し振りだね!」

 

「ど、どうもです」

 

俺と木綿季がトラックに轢かれた時の事故。

その後の入院生活で大変お世話になった安岐ナツキだ。

”お姉さんって呼んで!”としつこく言ってくるアルゴこと安岐アオイの実の姉でもある。

何故そんなしつこく頼むのかアルゴに訊いたことがあるが”姉や兄がいる人は妹や弟が欲しいもんなんだゼ!!”と自分の願望を全ての姉や兄がいる人の願望のようにいっていた。

あの時からチノの気持ちが理解出来るようになった。

あれだけ言われると悪い気はしないけど、イラッとくるものがある。

 

「よろしくお願いします………」

 

俺は控えめに頭を下げた。

すると、ナツキさんは突如俺の二の腕をがっしりと掴んできた。

不意討ちで体を強張らせ息を飲んでしまった。

それでも我関せずとナツキさんは二の腕以外にも俺の体を弄んだ。

 

「ア、アノ!?何をしてるんですか!?」

 

遂に耐えかねた俺はバックステップでナツキさんの手から逃れた。

声が裏返ってしまい恥ずかしい思いもさせられた………

 

「も~、和人君筋肉無さすぎ。引き込もってばっかりなんでしょ?たまには運動もしないと駄目だよ」

 

両手の甲を腰に当てて不満そうに溜め息を吐きながら髪を交互に揺らす。

いきなり体をコネコネされたことで此方に不満があるのだが、言われていることが最もなので反論も出来ない。

 

「あ、そうだ。これあの人から預かってきてるよ」

 

「………手紙?」

 

あの人とは勿論腹黒眼鏡だ。

今日は例の死銃事件の調査に出る日。

もしもの時の為にちゃんとした設備のある東京の病院に来ているのだ。

因みにアイは現在既にGGOにログインして俺の到着を待っている筈。

 

『ごめんねー!!突然大事な会議が入っちゃって顔を出せなくなってしまったんだ。まぁ、和人君なら許してくれると信じてるよ!それじゃ、死なない程度に頑張ってね!!

PS,美人看護師と二人きりだからって若い衝動を暴走させないように』

 

名前を書かなかったのは敢えてなのかうっかりなのか。

ここがALOなら奴の所まで飛んで行き、俺の剣で切り裂いているだろう。

俺は代わりとしてこのふざけた手紙を切り裂いてやった。

何度も破り粉々になった紙切れをゴミ箱にボッシュート。

 

「早速ですがログインします」

 

俺は病室に置かれているダブルベッドじゃないかと思うくらい大きなベッドに歩み寄り腰を下ろした。

手紙の内容を知ってか知らずか、ナツキさんは面白がりながら準備を始めてくれた。

 

「はい、脱いで」

 

「………は?」

 

毎度のことだが、ナツキさんは唐突過ぎる。

病室に入ったらコネコネされて、ベッドに腰を下ろしたら脱げといわれ、入院中でも意味不明なほど急でクレイジーだった。

今回も説明無しで意味が分からず、俺は首を捻って理由を求めた。

 

「心電図を測る為の電極を付けるだけだから上だけで良いよ。それに入院中に全部見ちゃったんだし恥ずかしいとか無いでしょ?」

 

「………」

 

どうやら、俺の首捻りは”上半身だけか?それとも全部か?”という質問として受け入れられたらしい。

それでも、理由は分かったので気にせずに上半身のいつも通りの黒服を脱ごうとした。

が、ナツキさんの後半部分の言葉で動きが僅かに止まってしまった。

 

「大丈夫、当然見ただけでなにもしてないし。それに初めての()()()()()()は木綿季ちゃんとが良いのは分かってるわよ」

 

「そ、そういうッ!?………早く付けてください!」

 

「うーん………その様子じゃ仮想世界でも()()()ないね?」

 

「ヤってッ!?」

 

「成る程………キスぐらいまでか」

 

次々と繰り出される猛攻撃が全弾クリーンヒットを決める。

一歩のデンプシーロール並みの破壊力と連打力に為す術がない。

ここは逃げるしかない!!

俺は無視を選んだ。

そうすると、つまらなくなったのかナツキさんがちょっと乱暴に俺の胸に電極を付けていった。

付け終わるのを確認したら完備されていたアミュスフィアを被る。

視界が暗くなって右上の白いデジタル時計が存在感を出す。

 

「当分何もないとは思いますけどよろしくお願いします!!」

 

俺は背中をベッドに預けて体が一番楽な姿勢になる。

ベッドの上部が少しだけ上に上がっているので大分楽だ。

 

「はいはい、任されましたよ。ただし、眠ってる間に私が何をしてもいいよね?」

 

「リンクスタート!!」

 

手をワキワキしているナツキさんは凄く怖かったです。

漫画みたいに眼鏡も光っていたし………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり現在、和人様の体はある意味危ないんですね」

 

「ああ、ある意味な」

 

GGOにログインして俺の男の娘アバターが出現した場所はBoB予選受付が行われている総督府と目と鼻の先にある宿。

荒れ果てた世界観でも宿屋はなんとか宿屋の形を成していた。

部屋全体も一見ボロい感じだがそれはそれで味がある。

その部屋にある1つだけのベッドに座り俺とアイは少しの時間話をしていた。

 

「まぁ、それに関しては人間である和人様の問題でAIの私には関係ない話ですけどね」

 

「そりゃそうだけど」

 

「それに、男性には興味ありません」

 

アイはツンとした表情と声音で言った。

”男性には興味ありません”

父親としてはとても嬉しい限りだが、父親の俺にも興味がないような気もしてしまい不安になる。

それに男性にはということは女性に興味があるのかと色々考えてしまう。

親は皆こんな感じなのだろうか?

子育ては難しい………

 

「さて、そろそろ行きましょうか」

 

「ん、そうだな」

 

装備を整えて真っ黒マントと灰色マントにお互い身を包む。

マントの裏には買い込んだ暗殺道具がわんさかある。

俺の戦闘スタイルでは見られたら終わり。

それが理由でこんなマントにしているのだ。

アイは暗殺スタイルではないけど、武器を出来るだけ見せないのは基本なのでマントの裏に隠している。

こんなに早く準備する必要も無いがいつでも戦闘が出来る状態にするのはSAOを経験しているからこその癖。

 

「先ずは本選出場だな」

 

「はい」

 

俺とアイは宿屋から足を出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわ、広い………」

 

「ここだけ科学が進歩してますね」

 

数分歩いたらすぐに総督府に着く。

これまで幾度か総督府の前を通ったりしたが、中に入るのは初めてだった。

入るとまず広がるのはだだっ広いエントランス。

中心には大きなホログラムでBoBの予告を大々的に行っている。

そのBoBに参加するためか、応援または観戦なのかプレイヤーが数多く行き交っていた。

そして、そのプレイヤーの中にいる参加する派のプレイヤーがなんか銀行のATMのような機械の前に立ち並んでいる。

 

「あれが参加するための機械みたいだな」

 

「機械で参加受付とは凝ってるのかめんどくさがってるのか………」

 

「何処に考え込んでるんだよ………行くぞ」

 

変な所に思考を巡らそうとしたアイのマントの中に手を入れて手を握る。

そのままATM前に連行した。

運良くATM前のプレイヤーが晴れてくれたことにより簡単に登録まで辿り着けた。

アイを隣のATMにやり自分の登録をしようとした。

名前をローマ字で”Kirito”と入れて右下の確定を押した。

すると、次の画面では現実での住所などの個人情報だった。

戸惑っていると画面の上に説明が書いてあった。

どうやら景品の受け渡しの際に使う情報らしい。

ゲーマーとしては是非ともその景品とやらを手にしたいものだ。

そういうことで、俺は住所を入力しようとした。

その時だった。

 

「………!!」

 

俺は全力で振り返った。

が、誰も後ろには居らず、ごく自然に歩くプレイヤーが沢山居るだけだった。

”視線”

殺気ではなく純粋な視線を感じた。

SAO時代、トッププレイヤーのみが習得していたシステム外スキル。

謂わば”第六感”が己に向けられていた視線に反応した。

 

「和人様………」

 

「分かってる」

 

住所欄をスキップさせて受付を終わらせる。

アイも先程の”視線”を感じ取ったのか鋭く厳しい目をしている。

多分、俺も似たような目になっているだろう。

俺とアイはATMから離れて奥のエレベーターに急いだ。

エレベーターに乗って扉が閉まる際、もう一度”視線”の先を確かめたが、やはり誰も居なかった。

 

「和人様、今のは?」

 

「死銃………の可能性が高いな。目的は分からないけど何かを企んでる」

 

「何か………」

 

錆が所々にある古びたエレベーターの中でアイが尋ねてきた。

あの”視線”、正確には俺ではなく俺が操作する画面に向けられたもののような気がした。

この勘が当たっていたら”視線”を感じた時の画面、つまり、住所を見ようとしたことになる。

だが、現実での個人情報などは本人しか見れないようにシステムの保護が掛かる筈。

本当に何が目的かが分からない………

 

「とにかくだ。向こうも俺達が”視線”に気付いたことに気付いただろうし。順調に勝ち進んでいけば何らかの接触があるだろうな」

 

「一先ず待ちですね」

 

そこでエレベーターが目的の階に辿り着いた。

エレベーターのドアが開き、地下空間が広る。

エントランスと遜色ない広さ、だけど遥かにここの方が暗い。

そして何より武器を見せたがっているむさ苦しいプレイヤー達。

所々に居る武器を見せずに黙ってる奴らが”プロ”なのだろう。

 

「準備は万端ですがどうします?」

 

「そうだな。………一応最終確認しとくか。アイテムの数とか」

 

「了解です」

 

俺とアイは円状の地下空間の端を歩いていき取り敢えず着替えも出来る更衣室的な場所を探した。

その更衣室的な場所はそう遠くない場所にあった。

これなら確認を済ましても大分時間を余らせそうだ。

 

「それではすぐに戻ると思いますけど」

 

「分かってる」

 

男性、女性と別れた部屋。

アイが女性用の部屋に入るのを見送った所で俺も男性用の部屋に入ろうとした。

 

「そっちは男用よ」

 

後ろから声をかけられてしまった。

丁度アイと離れてしまったタイミングだったので俺の中にアイパワーなるものが残っていた。

お陰で何の躊躇いも無く振り向いてしまた。

 

「あ、あの自分は………」

 

見覚えがあった。

BoBの広告と一緒に添付されていた大会のダイジェスト映像に映っていたスナイパーの女の子だったのだ。

戦闘服というよりか私服に見えるラフな格好。

そしてやはり注目するのは水色の髪に美しく深い青の瞳。

驚いて言葉を詰まらせてしまった。

 

「女の子はこっちよ」

 

「え、ちょっと?えぁ、あ、あの!?」

 

スナイパーの女の子はマントの上から腕を掴んできた。

そして、強引に俺を引っ張っていく。

男子には禁断の女性エリアへと………

スナイパーの女の子の方から触っているのでハラスメントコードは発生せず最後の頼みだった女性エリアへ男性が入ろうとすると現れる障壁もこれまたスナイパーの女の子が触っている影響なのか効果がなかった。

そもそもフードを被っていたのに何故俺を女の子だと思ったのかが分からない。

 

「女の子が男の更衣室に入ろうとするなんて気を付けなさい」

 

「い、いや、あの自分は………」

 

と個人的には必死になって抵抗しているのだがスナイパーの女の子は聞く耳を持たずにすたすたと進んでいく。

そして………………

 

「ここで着替えるのよ」

 

「「あ………」」

 

スナイパーの女の子が親切に教えてくれた場所には先客がいた。

銀髪のポニーテール、スナイパーの女の子と同レベルの青い瞳。

その少女は下着姿だった………

純白の白。

胸の方は中々育っておらずブラではなくシャツのような布だった。

そして、手元にはブラ。

ブラデビューでも考えていたのだろうか?

………………………じゃなくて!!!!!!

 

「パ、パパパパパパパパ………!!!!!」

 

「落ち着け!!落ち着いてくれ!!!」

 

しかし、少女アイは落ち着いてくれはしなかった………

 

「ドン引きです!!」

 

「ガハッ!!」

 

見事な正拳突きを腹の真ん中に喰らってしまい、痛みが無いにしろ衝撃によって膝をおった。

”ドン引きです!!”とは………ゴッドイーターになれそうだな………

ガクッ………

 




ちょっとした?事件が最後にありましたね!!
シノンさんの勘違いナイス!!
そして、遂に次回は戦闘開始です!!
戦闘シーンの方が書くスピードが遥かに速い自分だと確信してるので次回の投稿は割りと早めだと思います!!

では、評価と感想お願いします!!

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