ソードアート・オンライン ~少女のために~   作:*天邪鬼*

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お金がないよ~。
夏休みに短期バイトでもしようかな~?



52話 走れキリト

 

 

俺は走っていた。

風のようにひゅ~るり~らら~と音さえ立てずにフィールドの草原を疾走する。

モンスターと出くわしても俺に気が付くモンスターは1体も存在しない。

それもその筈、俺が端正込めてかき集めたガラクタアイテムをお金に変えて装備は万全。

流石は最前線第75層主街区コリニアの裏道に開店していた名無しのお店。

黒のポンチョに黒色の隠蔽効果上昇の手袋に靴、隠蔽スキルを多様する俺にとって最高のお店だった。

更に、更に!!エリュシデータやダークリパルサーには遠く及ばないものの、中々の黒い剣が1本売られていた。

もっと重い方が俺好みで良かったがこの層でも充分以上に闘える性能を保持していたので買った。

それでもって、俺の財布はすっからかん。

現在の所持金0、所持品1本の黒い剣”ダークネビュラ”、今着ている服やポンチョ、そして回復アイテムが少し。

もし今日中に茅場さんを見付ける事が出来なければアスナにお金貸してと言わなければならないかもしれない。

モンスターを倒せばいいのだが、それよりも茅場さん捜索に力を入れるので狩る時間がない。

男子が女子にお金を媚びるなんて………

死ぬ気で捜さないとな、男の威厳に関わる。

思わず口が微妙につり上がる。

苦笑いを顔に浮かべながら、俺はまた1歩地面を蹴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

迷宮区には思った程モンスターは出現しなかった。

出現してもスルーしているので関係無いけど奇妙であることには変わりはない。

この異様なモンスター出現率は何を意味するのだろうか。

多分、ボスが強すぎるのだ。

ボスの力は大、雑魚は小。

ゲームバランスを調整しているんだと思う。

 

「ほっと………ってあれか」

 

骸骨鎧の中世兵士の頭上を軽く飛び越えると、ボス部屋の入り口らしき扉が開かれているのを見付けた。

道を間違わずに来れたなんて運が強い!!

すると、ボス部屋発見と同時にキンッやカンッと音が飛び交っているのが聞こえてきた。

まだボスと戦闘中なのだろうか?

しかし、俺は音の質と響きですぐに違うと分かった。

 

「プレイヤー同士が闘っているのか?」

 

ボスの叫び声は聞こえないし、聞こえてくるのは1つの細い金属音。

細く硬い棒が鉄の壁を打ち付け続けているような音。

まぁ、色々考えても残り数メートルを走りきれば音の正体が分かる。

俺はコツを使い、1秒足らずで数メートルの距離を一気に0にした。

一応人形のボスである可能性を考え、迂闊に飛び入りしないよう扉の前でブレーキを踏む。

右足を地面に擦らせた後に上に少し跳んで力を逃がす。

そして俺は、空中で恐ろしい光景を目撃してしまった。

自分の中に流れる時間が恐ろしくゆっくりになった。

 

「なんっ………!!」

 

最初に目にしたのは、地面に倒れ込みながら、ボス部屋の中心に向けて必死に叫んでいた、ほぼ全てのプレイヤー。

次にプレイヤー達の視線の先で行われていた男女2人の闘い。

綺麗な栗色の髪の毛を持った女性と灰色の髪を簡単に纏めただけの赤い鎧姿の男性。

俺は自分の目を疑った。

大切な友達のアスナが捨て身でSAO最強のプレイヤー、ヒースクリフに細剣ソードスキル”リニアー”を超至近距離から顔面に撃ち出しているのだから。

だが、避けられる。

まだアスナが放ったリニアーの剣先すらヒースクリフには当たっていない状況でも、俺が今居る濃密な時間の流れの中ではヒースクリフがほんの少しずつ首を捻っていくのがはっきりと見えている。

顔は………笑っていた。

 

「あ………」

 

只でさえゆっくりな時間の中、俺の頭は更に加速した。

………茅場さんだ。

現実での茅場さんと全く同じ笑い方。

憧れを抱いていた俺には考えなくても直感で分かった。

まるで、ヒースクリフは茅場さんだと最初から知っていたかのような気分だった。

そして、アスナはヒースクリフを茅場さんだと見破った。

茅場さんを倒せばSAOが終わると思い、決闘に挑んだ。

何で、アスナが茅場さんの正体に気付いたのか。

ボス戦を経てなんらかの根拠を掴み取ったのだろう。

しかし、このままでは成果は得られずアスナは負けてしまう。

リニアーを無傷とはいかなくても避けた茅場さんがカウンターでアスナを斬る。

単発で短いながらも生じてしまうスキル硬直で動けないアスナへの急所ピンポイント攻撃。

スピード重視のアスナの装備は防御力は低い。

そのうえ、茅場さんのスキルはゲームバランスの崩壊すれすれのユニークスキル。

アスナは確実に死ぬ。

 

(殺らせるものか………!!!)

 

遂に、俺の時間の流れが通常へ戻っていく。

足が地面に着くまでに、右足の親指に神経を集中させる。

剣を抜く時間さえもどかしく、両腕を曲げ指は立たせる。

虎のように、獅子のように、猛獣のように、上半身を低く保つ。

地面に足が………触れた。

俺は突風を巻き起こしながら突進した。

 

「ふっ!!」

 

短い呼吸とは裏腹にとんでもない速さ。

周りのプレイヤーやボス部屋内の、というか洞窟内の模様が霞んでいる。

が、それでもタイミングは危うい。

俺の想像は当たってしまい、茅場さんの剣が赤い光を放ってアスナに向かう。

俺は茅場さんではなく、その剣に狙いを定めた。

両腕から真っ白なオーラが生み出される。

決して、気や波動のようなものではない。

見栄えを良くする為にあるただのエフェクト。

だが、この技の成功時のスキル効果は凄い。

足でのブレーキをすっ飛ばし、技の成功だけを考える。

 

ガンッ!!

 

茅場さんとアスナの間に入った瞬間、茅場さんの剣を白いオーラが宿った両手で挟み込む。

体術スキル”砕牙”

牙を砕く、相手の武器(キバ)を砕く技。

完全に武器を砕く可能性は10%程で低いが、成功すると相手のソードスキルの種類、強さ、関係無く強制的にキャンセルさせる事が出来る。

俺は茅場さんの剣を止める事ができた。

 

「まさか、アスナが先に闘っていたなんてな」

 

俺は不敵に笑いながら後ろに居るアスナを見た。

当然、驚いた様子でアスナは俺を見ていた。

 




今回は短いし話も進みませんでしたね。
しかし、次回!!遂に、天才VS天才!!!
雑な文ですが、お楽しみに!!

それでは、評価と感想お願いします!!

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