ソードアート・オンライン ~少女のために~   作:*天邪鬼*

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あー、最近暇です。
暇すぎて1日で4つのボールでジャグリング出来るようになった。


49話 遂に

 

「……………ここ何処?」

 

俺は畳に敷かれたフカフカな布団の上で目を覚ました。

まだ、全身が痛くて起き上がる事さえ出来ない。

それでも、なんとか動く首を使い、周りの様子を伺う。

誰もいない昔ながらの畳部屋、つまり和室。

天井にぶら下がってる白熱電球は思ったより眩しかった。

今はLEDが主流なので白熱電球を見たのは初めてだ。

 

「………電球が光ってる?」

 

そうだ、俺は何分寝ていた?もしくは何時間?

俺は気を失う前の最後の記憶を脳内から探しだした。

………結果、何故かトマトを思い出した。

え、何でトマト?

 

『___』

 

「は?え?」

 

すると突然、枕元から声が聞こえた。

まるで、寝ていた俺を呪う為に発せられたかのような囁き声に、俺は一瞬本物の幽霊が現れたのかと思ってしまった。

しかし、よくよく考えると聞き慣れた声だったので俺は安心した。

左手を曲げて枕元に置いてあったスマホを掴み、イヤホンを耳に装着する。

 

「幽霊かよ」

 

『こっちの方が気づいてもらえると思ったので』

 

予想通り、囁き声を出したのはスマホの中のアイだった。

スマホとイヤホンは繋がったままだったので、音量を上げて俺に聞こえるようにしたらしい。

 

「普通に起こしてくれよ。一瞬、マジで幽霊かと思ったんだけど」

 

『それでは、いつかテレビから這い出てみましょう』

 

「残念だが、這い出て来るのがアイの場合。怖がる所か逆に引っ張り出して抱き締めるぞ。おまけに頬っぺたにチューだ」

 

本心を交えながらも冗談を言ってみた。

口喧嘩で俺がアイに勝てないのは分かっているから、後の事を考えずに済む。

負けるのが確定してるから………それって俺は自ら傷つきにいってないか?

どうしよう、俺はMの道を歩み始めてしまったのか………

 

『………冗談はともかく。何処かに神代様がいる筈ですので呼んでみたらどうでしょう?』

 

「………それだけ?」

 

いつものアイとは違う返しがきた。

反撃もせず、はぐらかすように話を変えた。

それに声が少し揺れている。

俺は思わずアイに聞き返してしまった。

 

『それだけって………何を求めてたんですか?』

 

「いや、何でもない。そう言えば神代さんはアイの事知ってるのか?」

 

アイは素っ気なく答えたので俺は違和感を感じながらも話を神代さんの事に戻す。

 

『知りませんよ。なので、神代さんがいる前では和人様は歯の音で会話しましょう。1回噛めばYES。2回噛めばNOです』

 

「”コツッ”」

 

俺は早速1回歯を鳴らしてYESの合図をする。

マイクが高性能で助かった。

そして、遠慮がちに声を出した。

 

「あ、あのー!すいませーん!」

 

『和人様は木綿季様とクライン様を愛している』

 

勿論、合図は出さなかった。

酷すぎるだろその質問。

YESでもNOでも最悪の結果じゃねーか………

苦笑いになると同時に普段のアイに戻ったなと思った。

 

「ちょっと、待ってねー」

 

障子の向こう側から返事が来た。

俺は思ったより親しみやすそうな声に安堵する。

この調子だと色々聞けそうだ。

早速、茅場さんの事を質問しよう。

俺は神代さんが来るまでひたすら質問内容を考え続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「改めてまして、私は神代凛子です」

 

「じ、自分は桐ヶ谷和人です………」

 

招かれたのは、俺が寝ていた部屋の隣にあるリビングのような場所だった。

障子は和室と廊下を繋ぐ扉だと思っていたけど、実際は大きな部屋を仕切る為の物だったらしい。

あまり広くは無いけど、ソファーにテーブル、テレビも完備されていた。

俺は神代さんにそのリビングにある緑色のソファーまで運んでもらい腰を降ろした。

神代さんは俺の右隣に静かに座った。

耳のイヤホンは左耳だけにして、補聴器と言ってある。

携帯と同期している物は珍しいねと不思議がられたが、愛想笑いで誤魔化した。

神代さんは俺の愛想笑いを気にせずに自己紹介を始めてくれたのだ。

俺も名前だけを言い、すぐに質問に入る。

 

「あの………茅場さんの事でお話があります」

 

「………うん」

 

神代さんは驚いた様子もなく、微笑みながら俺を見た。

神代さんの微笑みを見ていると俺が何をする為にここへ来たのか、俺が何を訊きたいのか、全てを見透かされている気分になる。

しかも、それは気分ではなく文字通り見透かされていた。

 

「茅場先輩はこの家の地下にいるわ。今はSAOにログイン中よ。たまにご飯を食べに戻る時もあるけど、殆どはSAOに居るわね」

 

「………簡単に教えますね」

 

実にあっさりと茅場さんの居場所を告白した神代さんの考えが俺には分からなかった。

そもそも何故、神代さんは茅場さんに協力しているのか。

茅場さんと神代さんはどんな関係なのか。

疑問は絶えない。

俺が神代さんに警戒心を抱き始めると、彼女は語りだした。

 

「本当はね。私も茅場先輩を止める為にここに来たの。茅場先輩を殺して私も死んでやろうとしたわ。」

 

俺は殺人に自殺を目論んでいた人物の話を聞き続けた。

俺だって木綿季が動けなくなってしまった原因の事故を起こしたトラック運転手を殺したいと本気で思ったことがあるし、突っ込んできたトラックに何故気づかなかったのかと自分を呪い、木綿季をSAOに巻き込んでしまった時には自分に殺意さえ湧いた。

 

「でもね、居場所を突き止めて、果物ナイフ1本と睡眠薬を大量に持ち込んだ私に茅場先輩は、自分の身の回りの世話を頼んだの。そして、何の危機感も躊躇いもなく、SAOにログインしていった。驚いたわよ。自分を殺しに来た女の前で無防備な姿を見せるんだもん。絶好のチャンスだったわ」

 

神代さんは可笑しいでしょ?とクスクスと笑った。

殺しを計画していた人間とは思えない程、綺麗な笑顔だった。

 

「結局、私は殺せなかった………ナイフを掲げて後は降り下ろすだけだったのに、手元が震えてしまったの。私はナイフを捨ててその場で泣き崩れた。大の大人が子供みたいにわんわん泣いちゃったのよ」

 

「何故、殺せなかったのですか?」

 

「人を殺したくない、自分は死にたくない、色々あったと思う。けど、一番はやっぱり好きだったからかな」

 

神代さんは俯いて頬をほんの少しだけ紅くした。

話す時の表情もそうだけど、この人がする行動の1つ1つが絵に描いたように美しく見惚れてしまう。

だからだろうか。

神代さんは嘘を言っていない、彼女は本心を話してくれている、俺はそう感じた。

 

「君はどう?心から好きな子が犯罪者になってしまっても、好きでい続けられる?夢を叶える為に頑張ってきたその人を否定できる?」

 

俺は直ぐに答えることは出来なかった。

木綿季がそんな事をするとは到底思えなかったから。

しかし、それでもだ。

もし………もし木綿季が自分の夢の為に決して許されない事をしても、俺は木綿季を好きでいられるのか?

間違ってると分かっていながらも、世間を無視して木綿季と一緒に生きていける?

ちゃんと、罪を滅ぼした方が為になるのではないか?

それが木綿季の全てを否定する事になっても………

 

「俺は………」

 

『木綿季様に着いていきますか?』

 

「………”コツッ”」

 

多分、神代さんと同じような行動をするだろう。

ベタで、中二病のような発言で、口に出すのは死ぬ程嫌だけど。

例え、世界中全ての人間が木綿季の敵になったとしても俺は絶対に木綿季の味方だ。

それぐらい俺は木綿季が好きだし、愛してる。

そんな俺の顔を見て、何を察したのか神代さんは同士よ!みたいな顔になった。

恥ずかしい………

 

「ナーブギアは2台あるわ。1つは茅場先輩が使ってるけど、もう1つは空いてるの」

 

「何で2台あるんですか?」

 

神代さんの物かと思ったけど、別に必要ないし邪魔になるだけ。

茅場さんは何の為に2台用意したのか分からない。

 

「これを読んで見て。私が始めてここに来た時からある手紙よ」

 

神代さんが前にあるテーブルに引き出しから折り畳まれた1つの小さな紙を取り出した。

何処にでもあるメモ用紙で、俺も持っている物だ。

神代さんはそのメモ用紙をとても大事そうに俺に渡してきた。

自然と受け取る時の手が必要以上に丁寧になる。

そして、俺は恐る恐るメモ用紙を開いた。

 

” 望むなら相手になろう、和人君 ”

 

それだけだった。

つまり、茅場さんは方法はどうであれ俺が途中でSAOから抜け出す事を予想していたのだ。

抜け出して、自分の居場所が割れると分かっていて、これを書いた。

神代さんが意地悪そうに笑った。

 

「どうする?茅場先輩は意外と男の子よ。決闘かもね」

 

「………でも、それじゃ」

 

「私は止めないわ。茅場先輩が君に殺されたとしても、私は君を恨んだりしない。だって、茅場先輩が決めた事よ。それとも、自分の心配をしてるの?」

 

それは無い。

負け覚悟で戦いに挑むのは後に何かを残す為にやることだ。

だが、今の俺には続く奴がいない。

木綿季やアイが続いてくれるかもしれないが、戦いを見れないんじゃ意味が無い。

だから、負け覚悟での勝負はしない。

 

『私はパパに従います。パパがどう判断しても私はパパを肯定します』

 

左耳のイヤホンから逞しい声が響いた。

茅場さんからのメッセージを見つめながら笑みが溢れる。

 

「ありがとう…………」

 

俺はボソッとマイクに向かって言った。

神代さんは首を傾げている。

いきなり、独り言を言ったように見えるからだろう。

俺は神代さんの顔を見た。

 

「メッセージを飛ばしても良いですか?」

 

「………準備をしてくるわ。10分ぐらいしたら戻ってくる」

 

神代さんは障子とは別にある、いたって普通のドアから出ていった。

少しして階段を降りる音が聞こえた。

俺は携帯を取り出してホーム画面を開く。

アイは白いワンピース姿で両手を後ろに組んでいた。

 

「皆に伝えてくれるか?」

 

『何なりと』

 

「茅場さんと勝負をしてくる。全てが終わったらオフ会しような。当然、エギルの店で………それと、」

 

俺は息を大きく吸って吐き出す。

思うのは簡単でもいざ口に出すとなると変な躊躇いがある。

恥ずかしがってる場合じゃないのに、もしかしたら最後のメッセージになるかもしれないのに。

 

「木綿季、好きだ。この世の誰よりも愛してる………以上だ」

 

『承りました。パパが言ったら私も伝えに行きます』

 

俺はそこで考えるのを止めた。

とにかく、冷静でいたかった。

これから待ち受ける死という可能性から逃げ出したかった。

それでも、俺は戦うのだ。

SAOを開発してしまった自己満足の罪滅ぼしの為に。

命を賭けるのだ。

 

「準備が整ったわ」

 

無心状態の俺の肩に神代さんの手が置かれた。

神代さんの心境も複雑だろう。

なんせ人を殺す準備をしているのだから。

自分の意思で愛する人を殺せなくても、愛する人の意思で愛する人が死ぬ。

そして、愛する人の意思で目の前の少年が死ぬ。

こんな経験をするのは世界中でも神代さんただ1人だけだと思う。

 

「分かりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神代さんに支えられながら俺は軋む階段を降りていった。

階段を降りきり、薄暗い廊下を通る。

廊下も階段と同じで軋む。

それで、地下は1階よりも肌寒かった。

 

「ここよ」

 

俺を支えてくれていた神代さんが足を止めた。

廊下の突き当たり、茅場さんがSAOにログインしている部屋。

アイに頼めば直ぐにでも、警察を呼べる状態ではあるが、勿論しない。

俺は手を伸ばしてドアノブを回した。

 

「………久し振りですね。茅場さん」

 

部屋には2つのベッドが用意されていた。

茅場さんは本当に俺が来ると思っていたのかと感心した。

その茅場さんはドアから見て左側のベッドに灰色のジャージ姿で寝ていた。

たまに戻ってくるからか、髪もしっかりとしていて髭も剃ってあり、健康そうに見えた。

けど、痩せ細っている。

俺は神代さんの支えを解いてもらい、自分の力で空いているベッドに向かった。

世間では知られていない、10001台目のSAOソフトが搭載されているナーブギアを手に取った。

 

「私は外で待ってるわ。………終わったら音が鳴る筈だから」

 

音、脳が焼かれて心臓が止まる時の音。

ナーブギアにはそんな機能も付いているのか。

流石に死んだ時の音だとは言いにくいだろう。

それに、2人のどちらかが死ぬ瞬間を見たい筈もない。俺も外で待っててくれた方が緊張しなくてすむ。

すると、神代さんはおもむろに茅場さんに近づいていった。

そして、

 

「愛しています」

 

垂れる髪を耳に掛けると、神代さんは俺が見ている前で茅場さんにキスをした。

俺は驚き目を瞠る。

神代さんは驚く俺に一度だけ、照れた顔で手を振ってから部屋を出ていった。

 

「大胆だ………」

 

俺は呟き、ベッドに横たわった。

ナーブギアを被る。

もう、後戻りは出来ない所まできた。

後は殺るしかない。

 

『帰って来ますよね?』

 

俺はイヤホンを外して、携帯の画面を見た。

アイが顔をうつ向かせていた。

そのせいで表情が分からない。

分かるのは涙声だということだけ。

 

「当たり前だろ」

 

『本当ですよ!約束ですよ!生きて帰って来て下さいね!パパ!!』

 

画面いっぱいに泣きじゃくるアイの顔が表示された。

ここまで感情を表したアイは初めてだった。

俺はそっとスマホにキスをした。

そして、不敵に笑う。

 

「俺を信じろ!」

 

『………はい!!パパ、大好きです!!』

 

それを最後にアイは画面から消えた。

しかし、アイが画面から消えてもアイの泣きじゃくる顔が、大好きと言った時の顔が、忘れられない。

 

「茅場さん、向こうで会おうぜ。勝つのは俺だ。あんたもそうだけど、俺にだって待ってくれている人が居るんだ」

 

俺は横目で茅場さんに言った。

当然、返事はない。

深呼吸をし心を落ち着かせた俺は覚悟を決めて懐かしのあの言葉を言う。

 

「”リンク・スタート”!!」

 

今日の日付は2024年 11月7日。

この季節にしては珍しく暖かい気温だった。

そして、和人には知らされていないが木綿季の治療が終了する日でもあった。




えっと、何だこれは?…………もう1度言います。
何だこれは!?
自分で書いてるのに他の人の作品に感じる…………
ストーリーが滅茶苦茶だ!!
これで良いのか!?本当にこれでに良いのか!?

めっちゃどうでもいい訂正。
前話に出てきた青々とした稲、11月って稲刈りの時期じゃね?と思い少し変えました。
うん、どうでもいいですね。

それでは、評価と感想お願いします!!!

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