ソードアート・オンライン ~少女のために~   作:*天邪鬼*

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 夏の海、5分たったら、ゲロゲロケ~

 トイレが臭く、なった我が罪

 *天邪鬼*


45話 暴く

『あんよが上手!あんよが上手!』

 

「アイは俺を何だと思ってるんだ………」

 

入院生活で最も暇な時間帯。

それは、朝飯も食べて点滴を変えたりと看護師からの手厚い体調検査が終了した後の昼食までの時間だ。

面会時間でも無いしリハビリの時間でもない。

マジで暇な時間帯。

パソコンをするにも、看護師さんからストップを掛けられてしまったのだ。

”ネット代が凄いことになって親にも迷惑でしょ!それに目が悪くなっちゃうよ!”っと新人女性看護師さんに怒鳴られてしまった。

因みに新人さんかベテランさんかを会話もせずに見分ける方法は簡単。

点滴の際、血管に針を入れる時、痛かったら新人さん、全然痛くなかったらベテランさん。

血管を外した時の痛みは若干涙目になる程である。

俺は4回ミスられて涙目になってしまったり、最終的にベテランさんが痛みも無く一発で成功させてみせたり、あの無意味な4回の苦痛は何だったのかと落ち込んだりした。

とにかく!!俺は現在、点滴スタンドに両手でしがみつきながら歩く為の自主練をしている。

アイに茶化されながら………

 

「大分歩ける様になったな………」

 

『支えが無いと駄目ですけどね。もっと食べてもっと動きましょう』

 

「食べてるよ。量が少ないの」

 

いくら俺が少食だとしても、今は成長期の食べ盛りな時期。

病院のご飯は正直物足りないと思ってしまう。

たまには熱々ラーメンとかをガッツリと食べたい。

病院のご飯ってぬるいんだもん。

まぁ、熱々を食べて食道癌の可能性が高くなった危ないもんな。

栄養士さんも色々考えてるんだと思う。

 

「だぁ………!!」

 

『お疲れ様です。今日のリハビリは午後ですので時間はたっぷりありますよ。筋力アップ頑張りましょう!』

 

俺がベッドに倒れるとポケット内から伸びるコードを通して俺の耳に装着されているイヤホンから激励が飛んだ。

昨日まではイヤホンなんてしていなかったのだが、1人なのに誰かと話していると例の新人看護師さんに心配されて精神科に連行されたのがイヤホン装着の理由。

イマジナリーフレンドと言う精神病みたいなものと勘違いされたらしい。

極端に言うと自問自答の究極形態のような状態だと先生が言っていた。

人間関係が苦手な幼い子に多いそうだ。

症状は人それぞれで、人だったり時に妖精さんが自分と会話してくれるらしい。

それを拗らせるて二重人格になったのではないかと新人看護師さんはあたふたしていた。

だが、俺にはアイという可愛い妖精さんがいるんだ!!

浮気なんて絶対しない!!

 

『それで、例の件はどうするんですか?』

 

っと、俺が馬鹿な事を考えているとアイが唐突に尋ねてきた。

例の件とは勿論あれだ。

俺は小声で呟いた。

イヤホンのコードの途中に小型マイクがあるので小声でも十分アイに届く。

 

「本当だよ。須郷伸之………感情の操作なんてふざけてるのか?しかも、SAOのクリアと同時にプレイヤーを数人奪う計画だなんてな。カーディナルに直接手を出してないにしろ中途半端に力があるのがイラつく。しかも、先に奴をどうにかしないとSAO攻略できないし………」

 

『情報が本物だとしたらですけど………エギル様の様子を見ると、どうやら信用できる情報屋らしいですし………』

 

「あのバッバめ………」

 

『エギル様の事ですか?いや、たしかに同じアフリカ系アメリカ人っぽいですけど、別にエビ漁師を目指してるわけじゃないですよ。多分』

 

アイは話が通じるから嬉しいよ。

フォレスト・ガンプって名作だもんな。

俺が今まで見た映画の中でも一番のお気に入り作品。

”人生とはチョコレートの箱、開けてみるまで中身は分からない”

一般的にはこれが有名な言葉だ。

けど、俺にとっては”走るのよフォレスト!走って!”が名言となっている。

………そんじゃ、俺もそろそろ走り始めましょうかね。

 

「アイ、須郷の居場所を調べてくれ。ただし、研究内容には手を出すな。俺と2人で安全第一に盗む。誰にも気付かれないよう慎重に………でも、確実に須郷を追い詰める。そして、準備が整いしだい、殺る………」

 

『………随分と本気ですね。たしかに須郷が研究してるであろう内容は許されない物です。しかし、和人様は何か別の理由で須郷を止めようとしている気がします』

 

アイが質問でも無く、ただ自分の思いを漏らした。

その声音は何処か冷たく、何を隠しているのかを問いただしているように思えた。

 

「レクトってさ。アーガスと肩を並べる程の大企業だろ?まぁ俺は茅場さんに憧れていたからアーガス以外興味無かったんだけど」

 

『はい、アーガスの方が企業としては大きかったですけど、レクトも大企業には間違いありませんでした』

 

「でも、流石に無関心ってのはどうかと思ってな。レクトの社長は誰なのかとか、色々調べた事があるんだ。勿論、合法で」

 

『………』

 

アイが何も言わなかったから、俺は話を進めた。

 

「レクトの最高責任者は結城彰三。妻の結城京子。長男は結城浩一郎」

 

『何でそこまで調べてるんですか………たまに和人様を怖いって感じる時があります………』

 

声だけでもアイが引いてるって分かる。

というか、調べるも何もレクトって凄くオープンなんだもん。

調べるって実感さえ無かった。

でも、たしかにここまで知っていたら怖いよな普通。

俺は1つ咳払いをしてから再度説明に入った。

 

「………で、最後の1人の名前が結城”()()()”」

 

『………偶然って可能性は?』

 

「俺もそう思って菊岡さんに訊いたんだよ。そしたらさっきこれが届いた」

 

俺はポケットからアイが居るスマホを取り出して操作した。

メールボックスを開き、菊岡さんから届いたメールを画面に表示する。

朝早くにアイはスグの所に行ってしまっていて、このメールの事を知らない。

 

『………成る程です』

 

「須郷がSAOプレイヤーを捕らえるとしたら真っ先に捕まるのが彼女だ」

 

スマホの画面には俺達が今いるここよりも少し豪華な病室。

そして、その病室のベッドにナーブギアを頭に着けたまま横たわっている少女。

SAO最強ギルド血盟騎士団の副団長、閃光のアスナが写し出されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう嫌だ………バレたら絶対クビにされるよ………」

 

病室の入り口、壁に寄り掛かりながら目を死なせている女性が1人いる。

肩に軽くかかるぐらいの黒髪に下ぶち黒眼鏡をかけた女性看護師。

目さえ死んでいなかったら童顔美人なのに残念だ。

 

「和人君酷いよ………折角、夢だった看護師になれたのに………」

 

「巻き込んでしまったのは申し訳ないです………でも、ここまできたら最後まで協力してもらいますよ」

 

俺は負のオーラを絶え間なく発生させる新人看護師の五月女(さおとめ)夏凪楽(ななら)に言った。

小さい頃はこの独特な名前で虐めにあっていたと言っていた。

たしかに、珍しい名前の持ち主。

 

「お兄ちゃんって時々酷いよね………」

 

ベッドの横で夏凪楽さんを哀れむように見ているスグが苦笑いした。

そんなスグを無視して、俺はベッドサイドテーブルに並べられた3台のパソコンを起動させる。

電源用のケーブルが各パソコンから延びていて病室にあるコンセントに突き刺さっていた。

数が足りなかったのでOAタップを使用している。

明らかに病院関係者が見たら怒るレベルの器具である。

………病院関係者は居るけどね。

 

「悪者やっつけるから手伝って下さい………ってあのコミュ障和人君に頼まれてさ………嬉しくなっちゃってさ………何で私の将来が危ぶまれてるんだろう………」

 

仕方ないじゃないか!

俺は悪くない!!

家に帰らせてくれないならここで須郷の悪行を暴かないといけないのだからな!!

その為には協力者が必要になる。

協力者の候補としては安岐さんも頭に浮かんだのだが、あの人見た目若いのに看護師の中だと結構上の人らしい。

それなら夏凪楽さんのような新人看護師の方が、言っちゃ悪いけど扱いやすい。

話を聞いて最初は意気込んでいたものの、途中から自分がしている深刻さに気付いてああなっている。

勿論、夏凪楽さんがクビにならないように全力を尽くすのが道理だ。

これ以上、迷惑はかけられない。

 

『準備が整いました』

 

パソコンからアイの声が聞こえてきた。

 

「アイさんも凄いですね………こんな危ない計画に荷担するなんて………」

 

夏凪楽さんにはアイの事を親戚の人と紹介している。

家が遠いので病院には来れないから、電話でコミュニケーションをとるとも伝えてある。

それにしても、何だかんだ言って俺達の事をチクる気は更々ないようだ。

感情制御の研究をしていてその為にSAOプレイヤーを巻き込もうとしている奴がいる!!って聞けば普通、頭おかしいんじゃないか?と思って精神科に連れて行かされる。

別件で連行されたけど。

変に俺を信頼していて、変に正義感がある女性だ。

 

「良いですか?出来るだけ早く証拠を見つけてください。そして!絶対私をクビにさせないで下さいよ!?本当は電化製品の持ち込み禁止なんです!!仮想課の人が用意した物ならともかくも………和人君自身が用意した物は別なんですよ!!」

 

「だ、だ、大丈夫です………バレないように医師が見回りしない時間帯を選んでますし、お、俺の担当看護師は夏凪楽さんですから看護師も来ませんよ…………多分」

 

「そんなおどおどしてたら説得力無いよ」

 

涙目の童顔美人が俺の手を握ってくる。

そんなシチュエーションでコミュ障の俺が冷静でいられる筈がない。

俺の手はチワワのように震えているが、夏凪楽さんの手を握る力が強すぎて強制的に止められている。

痛い、痛い、痛い…………

 

『夏凪楽様、早く始めれば早く終わります。早く終わればバレる心配もありません。よってクビになる危険性も下がります』

 

夏凪楽さんは、でも………でも………とぶつくさ言っている。

早く済ませないと夏凪楽さんのライフが0になってしまう。

俺は手を外してもらってからパソコンに向き合った。

 

「さてと…………何もかも暴いて殺る!!」

 

こうして俺はキーボードを勢い良く叩き始めた。




気付いてしまった…………ALO編どうしよう…………
ま、なんとかなるでしょ!!

そんな訳で、
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